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WHAT ABOUT YOU? #7 / 寺本愛

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

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東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。 このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。搬入中のざっくばらんな会話をお楽しみください。

今回は、第9回グラフィック「1_WALL」グランプリ、第31回「ザ・チョイス」年度賞大賞を受賞し、ファッションやインテリアなど様々な分野とのコラボレーションも行う話題のイラストレーター、寺本愛さん。その緻密なスキルとユニークな発想の源は、どこにあるのでしょうか。


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_はじめて寺本さんの作品を観たとき、とにかく、圧倒的なオリジナリティと画力をもっていて驚嘆しました。武蔵野美術大学を卒業後、チョイスで入選、1WALLでグランプリ、とトントン拍子でご活躍ですよね。一貫して「ファッション」をテーマに掲げられていますが、もともとファッションに興味があったのでしょうか?

小さい頃から、絵を描くのが好きだったので自然と美大を受験したのですが、大学では、絵やアートが多角的に学べそうだったファッションのゼミに入りました。とはいえ、ファッションがもともと好きだったわけではなく、ゼミに入るまでは特に意識したことはなかったんです。私が入ったのは、YUB-YUM(ヤブヤム)のパトリックさんのゼミで、服そのものを創るというよりも、ファッション全体の感覚を学ぶという授業でした。映像をつくったり、インスタレーションを制作したり、写真集をつくったり、実際服をつくったことは一度だけしかありませんでした。私はずっと劣等生で(笑)。それまでも、今の絵の初期段階のような絵を描いてはいたんですが、パトリックさんのアドバイスで、卒業制作に取り組んだ時にそれを一回全部忘れて、イチから考えて描いてみようと。2m×1m×5枚の超大作を描いて、それがようやく評価してもらえて。それで手ごたえを感じたんですけど、このままでは仕事にはならないな、と思って、以前から描いていた女の子の絵と大学で学んだファッションの概念を組み合わせてみよう、と卒業してから1年くらいで今の作風にたどりつきました。

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<引用:寺本愛 tumblr. より http://mmtaz.tumblr.com

_卒業するころには、絵で仕事をしようと思ったんですか?

そうですね、就職はしなかったんです。なんとかなるだろ、という変な自信があったんでしょうね。

 _大学のゼミで学んだことが、そのまま現在の創作のテーマになっているんですね。

はい。一般的にイメージするファッションというのは、「流行」が第一になってしまっていますが、時代が変わってもずっといいもの、流行り廃りがないものというのを探したくて、「Timeless Fashion」をテーマに制作をしています。

_絵は、どんな画材で描いているのですか?

Gペンと、ベタを塗るペンと鉛筆で描いています。

_前に展示を拝見した時に驚いたのが、修正液を使ってらっしゃいますよね。Gペンとかホワイトを使ってらっしゃるところとか、そういうところも漫画の原画みたいだと思いました。寺本さん自身、漫画も描かれていますが、漫画にも影響を受けているんですか?

修正液についてはなんにも考えてなかったです(笑)漫画もあんまり詳しくなくて…

_そうなんですね~。てっきり70年代の少女漫画とか、竹宮恵子さんに影響を受けているのかと思ってました!

よく言われます!でも、未来っぽいとかSFとか自分ではあんまり意識してなかったんです。ただ単純に、少女漫画の絵の目のキラキラを、簡単な記号で置き換えよう、という発想で、そこから少しずつ変化して今の描き方に落ち着いたんです。以前は反射の光で瞳が輝いているイメージだったんですが、今は瞳そのものが光源になっていて、こちらから光を発しているイメージで描いています。

_影響を受けた人とか好きなアーティストとかいますか?

横山裕一さんです。高三の時に、六本木クロッシングで横山裕一さんを見て、ガツンと衝撃を受けました。あとは、弟と一緒に小学校の時にハマったのが「サイボーグクロちゃん」という横内なおきさんのマンガ。サイボーグになってしまった黒猫のクロちゃんのお話で、最初はシンプルなギャグ漫画だったのか段々ダークな展開になっていくのが面白くて、夢中で読んでいました。ストーリーももちろん、絵の細かい部分とかまで何度も何度もみて真似して描いては、インターネットで投稿していました。横内さんのこの美しい楕円!天才です~。一度お会いしてみたいです。

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<寺本愛『COLLECTION』#1 THE LAKE http://artlabo.ocnk.net/product/4833

_今年に出版された「COLLECTION #1」もとても興味深い作品集になっていました。

私は服が作れないから、紙面上でコレクションを作れたら、と思って描きはじめました。「COLLECTION #1」はある湖の周りで暮らす人々と彼らが身に付けている服やアイテムを描いたのですが、これは以前訪れた諏訪がモチーフで、それに八丈島の記憶も少し混じっています。実際に見たものや、古い写真資料をみて想像を膨らませています。旅行記のようにストーリーがでてきたのは後からでした。それを描いてからずっと「日本」が抜けなくて。笑

 _いっそ、47都道府県で作っていくのも面白そうですね!実際にその土地に行って、伝統的な産業や工芸と結びついた服や道具をリサーチしたり。

そういうのやってみたいです!土地の風土は服に表れますよね。必要があって着ている、必要があって使っている、ということに惹かれます。

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 _今回の展示についてお聞かせください。

 今までは、人物を中心に描いていたんですが、今回は道具がテーマです。パン切り包丁とか、その用途のためだけに作られた道具の微妙な差異や木と金属の異素材の組み合わせとかが面白いなと思って。神戸の竹中大工道具館(http://www.dougukan.jp/exhibition)には、昔からの大具道具が展示してあって、昔はひとりの大工さんで50種類以上の道具を所有していたそうで、見たことのないノコギリなどがたくさん展示してありました。必要があってそのかたちになっているんだというのに惹かれて、どんどん描いていたら結果として刃物ばっかりになっちゃたんですけど(笑)

 _究極の用の美ですよね。全て実在する道具なんですか?

少し脚色を加えている部分はありますが、ほとんどは実在する道具です。今回の展示作品の中では2点だけ、架空の道具があります。ちなみに、これは一番初めに描いた絵で、実際には存在しない道具です。これはひしゃくのようだけど、下に石みたいなものが付いていて、直接火にかけることもできて、水を汲める、みたいな。素材の違いの面白さを描きたいなと思って。

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―わ、そうなんですね。そうやって見ると、どの絵もアヤシイです!(笑)  今後、やってみたいことはありますか?たとえば、描いた絵を実際に服に起こしたい、とか。

やりたいです!とはいえ、ブランドとかっていうことではなくて、単純に着てみたいな~と思います。例えば「COLLECTION」の中の1つだけ服にする、とかやってみたいです。あとは、「COLLECTION」は、年1冊ペースで出版していきたいと思ってます。

イベント情報

2015年11月11日(水)~11月30日(月)
寺本愛 個展 『TOOL』
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
www.onreading.jp

寺本 愛 / Ai Teramoto
「タイムレス」をテーマに、瞳に光源を持つ人物達の様々なスタイリングを描く。
1990 東京生まれ
2012 武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業
【受賞】
2013 第186回 「ザ・チョイス」入選(本秀康 選)
第9回グラフィック「1_WALL」グランプリ
2014 第31回「ザ・チョイス」年度賞大賞
【出版】
『PERMANENT CULTURES』 / Fm
『COLLECTION #1 THE LAKE』 / Self-publishing
http://mmtaz.web.fc2.com

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