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シネマパラダイスの怪人|Vol.2 なるほど!ザ・似非ワールドミュージック

2014.02.04.Tue | Text by Yusuke Asano(asana,BEMBE)

皆様、明けましておめでとうございます。 初回の更新が11月でしたので先月は落としてしまいましたね、すんません。

さて、今回の話は映画音楽におけるワールドミュージック(または民族音楽)の扱われ方についてです。

 

篠田正浩監督 「心中天網島(しんじゅう てんの あみじま)」

そこでまず皆様にご紹介したい映画は日本のヌーベルヴァーグを代表する監督の 一人である篠田正浩監督の名作「心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)」

 

 

原作は松門左衛門作の人形浄瑠璃。作品を映画化するに当たって、篠田監督はおそらく予算的な問題もあったのでしょうが、普通の劇映画でなくあえて登場人物を舞 台上の人形の様に扱うという実験的かつ野心的な演出を試みます。遊郭をはじめと した舞台を抽象的な現代美術で作り、映像を白黒にすることでシャープで鮮烈なコントラストを生み出しました。特にこの映画の裏/真の主役ともいえる黒子達は、 登場人物たちの後方に常に影のように存在しながら物語をコントロールし、成り行 きをあらかじめ知っているメタな存在として映画を異化しています。

そして前回に引き続き作品のシャープさをより引き立てている武満徹のサウンドトラック。僕は初めてこの作品を観たときに驚きました。なんと冒頭からいきなりバリ島の民族楽器、ガムランが鳴り響いているではないですか。

 

ガムランといえば僕がasana名義で作曲するときによく使うインドネシア、バリ島の 鉄琴のような楽器なのですが、映画音楽のサントラにこんなにも早い時期から使わ れていたとは。

僕には武満の意図がよく判ったのですが、実はバリ島には「グンデル」という影絵 の人形劇に付けるガムラン音楽があって明らかにこれを意識してるんですね。

日本の人形浄瑠璃にバリの人形劇用のガムランを合わせることでよりエキゾチック でどこの国か限定できないような、アジア的な叙情を引き出していると。

この映画は篠田正浩の妻でもある若き日の岩下志麻のひとり二役、お歯黒ギャル感 に萌えたり(笑)、舞台美術の美しさがやはり見所なんですが、やはり武満のこの 似非ワールドミュージック感(架空のアジア)がなければ魅力は半減どころでは無 かったでしょう。そして映画を観進めていくとラストシーンのあたりではなんとチャ ルメラの様な音が。

 

これは僕には一瞬、モロッコの山奥にシーラカンスの様に存在している太古の原始トランス音楽、「ジャジューカ」からインスパイアされたものかな?と思ったので すが真相は判りません。韓国にも同じようなチャルメラを使ったフリージャズの様 な民族音楽があるのでそっちかとも思ったのですが、やはり聞き直してみるとメロディーのフレーズと太鼓がジャジューカぽい!

 

フェリーニの「サテリコン」

で、この様な民族楽器をつかった映画音楽は他にどのようなものがあるかというと

フェリーニの「サテリコン」という映画でなんとあのニーノ・ロータがこれにも負けないくらい胡散くさく、エグい似非ワールドミュージックを作っているのです。

いやあ、こちらは強烈ですね。今度はバリのケチャにガムラン、インドのシタール、 アフリカンやらサンバ的なリズムなどなどが、まあこんな感じでしょ~とでも言い たげな適当さ加減でサイケデリックな闇鍋状態(笑)凄まじく強烈な似非ワールド ミュージック&宗教音楽を作り出しています。これ、かなり僕は好きなんですが (笑)恐るべき妄想力。

ニーノ・ロータはフェリーニ作品では「道」の主題曲や「ゴッドファーザー愛のテー マ」のセンチメンタルな曲がよく知られていますが、こんな分け判らないヘンテコ 音楽を作ってるんですよね(笑)

 

大友克洋の映画版「AKIRA」

あとは知られたところでは大友克洋の映画版「AKIRA」での芸能山城組のサントラ。

こちらもバリのガムランの一種ではあるのですがよりマニアックな竹のガムラン 「ジェゴク」の引用から成り立ってますね。太い竹を叩くことによって得る、ボディ ソニック的な重低音、人力テクノとも言えるミニマル、トライバルかつトランシー な音像がAKIRAのイメージとぴったりと合っていますね。たしかこれ他にもアフリ カのピグミーを意識したような音もあったような気はしますが、確認していなので 判りません。

 

マヤ・デレンとテイジ・イトウ

最後にマニアックなあなたの為に実験映画の母、マヤ・デレンとその旦那である伊 藤さんのサントラで締めましょう。これは実験映画を語る上では外せない女流作家 マヤ・デレンの代表作「午後の網目」


 

テイジ・イトウさんの音源はそれこそ最近になってやっとジョン・ゾーンのレーベ ルから作品集がリリースされましたが、あまりにも謎に包まれたこの日本人の奏で る似非ワールドミュジック、またタヒチのヴードゥーとの関わりなどはこれからやっ と日の目を見ていくことでしょう。

次回の映画寄席、ファントム・オブ・シネマ・パラダイスは、

第11回 恋愛映画狂騒曲

場所は、今池 ValentineDrive にて

2/4(火) 19:30スタートです。

テーマはヴァレンタインデー直前&お店の名前もヴァレンタインドライブということで劇ヤバ大人の恋愛映画特集。絶対DVDレンタルの恋愛映画コーナーには置いて いないトラウマを与えるような変愛映画の数々をご紹介します。

先着でファントムデザインによる特製チロルチョコもプレゼント予定!(笑)

イベント情報

2/4(火)
ファントム・オブ・シネマ・パラダイス!!!
第11回 恋愛映画狂騒曲
場所:今池ValentineDrive
19:30 start
チャージ ¥500
【Starring】 浅野裕介(asana、BEMBE、レコード寄席「地獄のレコード黙示録」) / 藤井あきのり / 太田助手

浅野裕介/
asana名義で5枚のアルバムリリース。ポストアフロビートバンドBEMBE 主催。自主イベントAFRONOVA,colors of sound企画。 音楽トークイベント、地獄のレコード黙示録。たまにレコーディング、マスタリング。映画と料理。

 http://www.thanksgiving-net.com/asana/

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