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【SPECIAL COLUMN|アッセンブリッジ・ナゴヤ2016】川から海へ、挑戦と発見の日々。前衛集団・ヒスロムが綴った、フィールドプレイの記録。

Text by Hyslom

 

2016年秋、名古屋の港まちを舞台に開催された、音楽と現代アートの祭典「アッセンブリッジ・ナゴヤ2016」で「岐阜の山から切り出した丸太とともに川沿いを移動しながら、港まちを目指す」というプロジェクトを敢行した、京都の前衛集団・ヒスロム

■プロジェクト初日を追ったレポート記事 http://liverary-mag.com/feature/51473.html

■2日目〜4日目 http://liverary-mag.com/feature/51751.html

■5日目、そして最終日 http://liverary-mag.com/feature/52492.htm

■ヒスロム・スペシャルインタビュー http://liverary-mag.com/feature/52934.html

 

彼らの活動はLIVERARYで密着取材させてもらったが、同プロジェクトに至るまでの経緯〜軌跡を、本人たち自らが綴った、まるで旅の記録のような、裏レポートのようなテキストが届いたのでここに掲載する。

 

【SPECIAL COLUMN】

川から海へ、挑戦と発見の日々。
前衛集団・ヒスロムが綴った、フィールドプレイの記録。

Text: Hyslom

 

皆様

「アッセンブリッジ・ナゴヤ2016」で展示させていただいた2本の丸太はいま、作業場にて保管しています。去年の夏に切りだした丸太は水分が抜けてきて、ずいぶんと軽くなってきました。以前は4人で持つのがやっとでしたが、今では2人でも持てるほどの重さになっています。2本ともに重さもそっくりです。
さて、前回の記事では最終稿と記載されていましたが、展示に至るまでの出来事をヒスロム自身で振り返り、執筆させていただければと思い、特別に記事第5弾をLIVERARYさんにお願いし掲載させていただく事になりました。「美整物-1本の梁を巡る」という作品の切っ掛けから、川から海へ、その道中の出来事。展覧会中のパフォーマンスなど自分たちのメモも含め記載致しました。長い文になりますが、お時間がある際、1つの作品•展覧会に存在した様々な時間を巡りながら読んで頂ければ幸いです。

2017年1月26日 ヒスロム

 

 

「木」との出会いを求めて

2014年

友人宅のはなれを解体した際に出て来た梁。黒く埃を被った木の面には、「昭和10年4月27日 建立 施主 ちばきたろう」と記載されていた。

この木、この梁は何の木で、何処に生え、何処から来たのだろうか!?

 

2016年6月[木を探す]

「あの梁はたぶん松の木やろうけど、真っ直ぐすぎるし、もしかしたら杉かもしれへんな。」

2年前の時間、梁の感触を思い出しながら、名古屋港から庄内川沿いを上がって行く。

山道になり、川幅は狭く、良い感じの木々が生えているのが見えてくる。

杉の木は多いが松は少ない。何処で、どうやって切らせてもらう木を探そうか!?。

「切る予定が9月やったら…そもそも、木は秋から冬にかけて切るもんで、夏場に切るもんじゃないで。」話しかけたおじさんに言われてしまう。

来年にする!?、昨年切って寝かしている、木を探そうか!? 作品の為に無理矢理切るか。どうしょうか。

「木探してるんですが…夏場に木切るとやっぱ良くないですよね!?」林業の会社に相談。

「昔はそうやけど、今は合板にするから関係ないかな。梁にするなら、丸太やし問題ない。この建物の木は全部夏場に切った木やしな。」

この言葉に救われる。夏に切るのはベストでは無いが、少し前向きに進める。
もう日が暮れそうなので、帰路に向かう際、採石場を通る。

「今後、崩されるであろう、採石場の木ならお願いできるかな?」

建物の中にモヒカン風の髪型のお兄さんがちらっと見える。
なんと、モヒカン風のお兄さん(ようへい君)は採石場の常務で。兄弟でこの現場を回している
僕らのお願いを楽しんでくれて、直ぐに採石場内で切れる木を一緒に探してくれる。
その後、家にも招いてくれ、奥さんのまりのちゃん、犬のチョリ君とも出会う事ができた。
ようへい君宅は道を少し外れた山の中に、ぽつんっとある感じで、庭に広いオープンデッキ、薪ストーブがあったり、露天風呂もある。

自分で木を切り造った、オフロードバイクのコースもあったりして、暮らす事を素敵にかっちょよく楽しんでいる。

週末はトランスの野外パーティーで様々な所に出かけ、かなりアクティブな感じ。

 

2016年7月

福井県の森林組合の日野岡さん・材木屋さんの山本さんに、解体で取り出した梁を鑑定してもらい、松の木だと断定できた。

もう一度採石場を訪れ、ようへい君と共に、松の木を探す。あまり松の木が無い、あっても枯れている事が多く、やっと松があっても太さが違う。

曲がり方なども含め、条件を満たす、松の木を求めて山を散策するのは、狩猟をするようでとても良い時間だった。

 

2016年8月

高山建築学校の参加者から、5人が手伝いに来てくれた。

切る松の木を完全に決定し、刃を入れ始める。しっかり木が倒れる様に、周りの木も伐採。ある程度の所まで行くと、最後は斧で倒す。薪割り用の斧なので、なかなか大変、刃が樹にあたると、手が痺れる。

ドッス、ドッス、ドッス。

音と共に身体の芯まで衝撃が来る。皆で樹を囲み、交代で斧を打って行く。
そろそろか?という時に、ようへい君が仕事の合間を縫って登場し、斧を変わると、間もなく松の木はぐらっと倒れていった。

翌日17時過ぎ。現場作業の終わりを見計らって、木を運び出す。

夏場に切った木はやはり、多く水分を吸っていて、むちゃくちゃ重い。男女合計8人で丸太を担ぎ山道を通り、採石現場を抜けて、道路まで運ぶ。

発破の痕跡が残り、巨大な岩がゴロゴロ転がる道中は、常によろめき、苦しみながらなんとか通過。
最後に大きな崖。ここは既に山を喰ってしまって道が無い。

もう辺りは真っ暗。ガがガガガ。巨大なパワーショベル出動。ショベルのバケツを崖手前まで差し出してくれる。丸太と人間を助けに宇宙船が迎えにきた様な感覚。

操縦者はようへい君、隣は奥さん、まりのちゃん。丁寧にゆっくりと、皆一緒に地面まで降ろしてくれる。

 

丸太と遊びながら、海を目指す旅

2016年9月6日

ようへい君宅に置かせてもらっていた丸太を、古虎渓まで運び、入水。いよいよ名古屋港を目指す。急な流れの中でどう、丸太と触れるか、流れの中で身体をどうもっていったら良いか、模索する。ウエットスーツがかなり役立つ。浮力があるので、シュノーケルを付け、流れに任せると空を飛ぶ様な感覚。

ゆっくりと流れが増すとスピードがあがって行く。川に逆らうのでは無く、完全に任せる事が必要そうだ。水中の透明度はほぼ無いので急な所で、前方を向いて流れると、突然岩が出て来て危険。そしてその事に注意深くなり過ぎて力が入り、川を受け入れる事ができなくなる。岩が出て来そうな、流れが急な所は後ろ向きに、ゆるく膝を抱え込むような身体が良いのが分かって来た。足で岩の感触を察知し、避けるのでは無く、流れを使ってすり抜けるような感じに身体持って行く。

丸太とも同じ感覚だと、危険無く一緒に道中を共にできる。川の流れと丸太に連れて行ってもらう。

 

2016年9月12日

グレートマリンhttp://ameblo.jp/greattokaimarine/entry-12199863509.html

舟は思うように進んでくれない。満ちてくる潮に揺られて、あっという間に、もと居た場所へと流されてしまう。ちょっとでも波に逆らうと、舟体は大きく揺れて転覆しそうになる。ひとつひとつの波をかき分けて、ちょっとずつ目的地へ向かう。

「花火大会は陸から見たことないわ。いつも船出してな、海の上から見んねん。人も少なくてええぞ。」と、話してくれるグレートマリンの社長は自作の船に乗り、たった一人で沖縄まで航海しているんだって。丸太を引っ張るユキさんの船は水の抵抗をモノともせず、波をかき分けて突き進んでいく。丸太はしぶきを上げて浮き沈み、時おり見せる艶やかな体はまるでイルカのようにも見えてくる。

そんな丸太の後ろから、横からと、船を巧みに操るヒロキさんは、何かノってきた!と言って、夢中になり丸太を追いかけてくれる。ヒロキさんは蒲郡で行われるパワーボートレースに出るみたい。速さ100 ノット(約185キロ)の船に乗るんだって。船はもう飛行機みたいになって海面を飛ぶんじゃないか。ものすごいエンジンの爆音はまるでボアダムスみたい。これだけでライブができるんじゃないかって思う。

「昔な、浜辺に樹齢300年くらいの、めちゃくちゃ大きな丸太が運ばれて来てな、砂浜にこれまた大きな穴が掘られて、埋められてん。何してんのやろかと思って、10年くらい経った頃ちゃうかな。それをまた掘り起こして運んで行きよったわ。聞いたらそれは家の材に使うって言うてたな。海水は塩やろ?長い時間かけて殺菌するんちゃうかな、木を。埋めとったら風にもあたらへん。要は丸太も風邪引かへんっちゅうこっちゃな。」

名古屋清港会http://nagoya-seikoukai.eco.coocan.jp/html/work-clean.html

丸太を連れて引き上げ場所に着くと、腕組みをしたお兄さんが数人立っている。色んな漂流物を揚げる作業はすごく身体を使う作業なのかな。みんなガッシリとした強そうな姿。丸太を水平に上げたいと伝えると、お兄さんたちはロープの結び目を調整して、丸太への掛け方の指示を出す。

その通りに、海面から自分たちで、丸太にロープを掛ける。お兄さんたちは腕を組み、大きなクレーンで引き上げられていく丸太をじっと見つめている。空き缶、ペットボトル、ビニール袋、丸太、冷蔵庫、洗濯機、扇風機、バイク、舟。廃品回収のおじさんが回収したもの丸ごと海に放り投げたんじゃないか、っていうくらい、本当に色々なモノたちが漂流しているんだな。雨が降る季節には、大量の魚たちが死んじゃうんだって。1回では上手くいかず、ロープを結び直す。その度に丸太は海面をはなれて、空中へゆっくりと昇っていく。海に浮かぶいろんなモノたちが、海をはなれて陸地へと揚げられる。

もう海にはもどって来ないだろうな。何処から流れてきたのだろうか、どのくらいの時間を漂流していたのだろう。遠くの国から来たのかな、すぐそばの川から来たのかな。何年も前?ついさっき?丸太はクレーンからゆっくりと降りてきて、お兄さんたちの手でトラックに載せてもらう。

 

めぐり、つながるたくさんの命

2016年9月22日~ 10月23日

「木は切り倒しても厳密には死んでいない。海水に浸して中の油分が抜け切ったとき初めて木は死ぬ。そこから乾燥させたのち、木はまた生きだすんだ。」こんな話を以前知り合いの大工さんに教えてもらった。木の加工について様々な説があるようだけど、僕たちはこの言葉を信じた。10日間丸太は僕たちと共に川の上流から下り、海を渡って引き揚げられた。

その後、展示場所である元税管寮の庭に穴を掘らせてもらい、展示期間中も水に浸けて加工を続けさせてもらった。水が腐らぬよう木炭と常時水流が生まれるようポンプを入れた。これで微生物が発生して木にとって良くない菌やカビなんかを食べてくれるらしい。

浸け始めて10日ほど経ったころ、ユスリカの幼虫が大量発生した。微生物を食べに来た?調べてみるとどうやら木に害はないらしい、けれどもうねうねしている。見た目はかなり不気味。このまま放っておくと蚊柱が立ち、ますます手に負えなくなってしまうらしい。だけれども生き物が一つ寄りついたということは生態系の始まり、ということかもしれない。魚を入れればユスリカの発生は止まる、魚はでかくなる。その魚を求めて鳥や他の動物がやってくるかもしれないなあ。

 

2016年9月23日〜10月23日 

《美整物ー1本の梁を巡る》2016 展示の様子


撮影:怡土鉄夫/写真提供:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会

 

2016年10月21日 

1ヶ月半ぶりに切り出した丸太の場所を訪れた。林の中は以前とは変わってひんやりしている。地面をよく見てみると、どんぐりがたくさん転がっていて先っぽから薄白い芽が生えている。僕たちはこの丸太を取り出すために、周辺に生えている木を12本切った。その中には樹齢60年ほどの立派なコナラの木もあった。この一帯だけが異様な明るさを放っていた。

丸太の切り株には灰色の泥がぬられていた。動物が擦った跡か!?イノシシか?よく見ると、切り株の上に置いたはずの、元木丸太(根元から4m)は横に少し移動されていた。

「ここは15年後には喰いきっちゃうかな、てことは3年後か。この辺に生えてる木を全部切っちゃうんだよね。」ようへいくんは辺りを見渡しながらこの場所の先について話をしてくれた。山を喰うということはどのような感覚なのだろうか?話によるとまず伐採して根っこを掘り起こした後、発破。亀裂が入った断面をパワーショベルや、むちゃデカイ重機で掘り崩しながら岩石を採取して砕く。木を切るまでは人力でいけるけど根っこを掘り起こすところから、その先のことは到底人間の力では及ばない。僕らにとって未知の領域に、ようへいくんは常日頃身を置いている。この場所は15年後、およそ100m近く沈む。

動物が切り株に身体を擦りつける。そして、きのこが生える。丸太の裏手にはごっそりと立派な白いキノコが生えていた。傘は肉厚で分厚く甘い匂いがする。これは、食えるのか!?「キノコ採りに夢中になりすぎると周りが何も見えなくなる、すると熊に頭をぶつけちまうのさ。」と以前キノコ採り名人のおじさんに教えてもらった。目の前に白く光るキノコが現れるとすーっと引き寄せられてしまう。

 

2016年10月22日

ヒスロムによるパフォーマンス

パフォーマンス:ヒスロム(加藤至、星野文紀、吉田祐、松木直人、高野泰幹)
写真:内堀義之

 

 

展示されていた丸太にヒスロムが体当たりで関わったパフォーマンスの様子。沈められていた土嚢袋の中の泥や水しぶきが飛び交う壮絶な時間となった。

  

 

激しいパフォーマンスの結果、すっかり泥沼と化してしまった展示スペース。泥水の中に潜りながら、照明を抱えながら、ヒスロムの荒々しい息遣いが辺りに響き渡っていた。

 

パフォーマンスの最後に、トラックの荷台に溜められていた大量の水が一気に放出された。まるで生き物かのようにして流れ出した清流は、丸太とヒスロムをあっという間に飲み込んだ。

 


ヒスロム
hyslom/ヒスロム(加藤至・星野文紀・吉田祐)は山から都市に移り変わる場所を定期的に探険している。2009年から始動。この場所の変化を自分たちが身体で実感する事を一番重点に置き、その時々の遊びや物語りの撮影を行う。ここでの記録資料を作るにあたり、映像、写真の他に出会った人々を演じることや、日記、スケッチの作成、立体物の制作やパフォーマンスなど様々な方法を試みている。2012年第6回AACサウンドパフォーマンス道場で優秀賞を受賞。http://hyslom.com/index.html

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