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WHAT ABOUT YOU? #26 / 渡邉紘子

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

 

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。

このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、「日常の小さな喜び」をテーマに布や糸を使用し、作品を制作するアーティスト渡邉紘子さんにお話を伺いました。

 


 

 

—渡邉さんは大学ではテキスタイルを勉強されていたとのことですが、ファッションに興味があったんでしょうか?

中高生の頃は本や雑誌がすごく好きで、漠然と外国に関する仕事をしたいな、とか本や雑誌に関わる仕事がしたいな、と思っていました。パルコで当時「Olive」の編集長だった遠山こずえさんのトークショーを見にいった時、「雑誌の編集長をしていなかったらなにになりたかったですか?」という質問に「エディトリアルデザイナー」と答えてらっしゃって。「そんな仕事あるんだ!これだ!」って。すごくミーハーなんですけど(笑)

—じゃあ当時はデザイナーになりたかったんですね。どのように作家活動を始められたんでしょう?

そうなんです。大学もグラフィック科志望だったんですが、受かったのはテキスタイル科でした。でも、なんか肌にあっていて。

同じ大学の先輩にKIGIの植原亮輔さんがいらっしゃったり、ファイバーアートとかインテリアとかファッションとか、いろんな先生や先輩がいたので、そんなに焦ることもなく、大学では好きなことをやっておけばいいのかな?将来やることと違ってもいいのかな。と思っていました。テキスタイル科は繊維を使ってやること全般を扱っていて、染めや織とか、籠を編んだりすることも学びました。3年生からは”織”を専攻しました。”織”は、地道な作業だけど間違ったら戻れるし、先にアイデアを練っておいてそれに向かって作業していくというプロセスは、今の作品の作り方にも通じていると思います。そのころから、インスタレーションというか空間を作ることに興味が湧いて、作品をもうちょっと作りたいなと思ったので、卒業後フィンランドに1年間留学することにしました。フィンランドでは、デザインの大学でブックバインディングとか活版印刷とかガラスとかニットとか、さまざまな授業を受けることができました。帰国後はインテリアの壁紙をデザインする会社や、オーガニックコットンの会社で仕事をしていたんですけど、「30歳までに個展をしたい!」という気持ちが芽生えてきて。両立は難しいなと思って、会社を辞めました。

 

 

—なるほど、「展示をしたい」っていうのが先にあったんですね。初個展はどんな展示だったんですか?

2010年に吉祥寺のカフェ「横尾」で開催しました。壁面に、布と糸を使って作った作品を展示しました。作っているものはその頃からほとんど変わってないですね。その展示を見てくれた友人が繋いでくれて、次は代々木にあった「ダダカフェ」で展示をしました。「横尾」に続いてカフェでの展示だったんですが、どこに座ってても見ることができて、お茶を飲みに来ているお客さんの邪魔にはならないようにするにはどうしたらいいかと考えて、天井からモチーフを吊り下げる展示をしました。それが、今のようなインスタレーションという方法につながる空間を使った展示でした。それを見た「Lamp Harajuku」のディレクターの方から声をかけていただいて…と、一つの展示から、次の展示や企画が繋がって今に至っています。

 

 

—今回の展覧会について聞かせてください。

今回の展覧会「ハピネス」はもともと、東京・目白のブックギャラリーポポタムさんと、FUUROさんの二店舗で同時開催した展覧会を再構成しています。ON READINGの店内スペースには私が実際に体験した”本当の話”を元にした作品、隣室のON READING GALLERYでは、”嘘の話”を展示しています。この作品の構想を練っている頃、ネガティブな事も含め色々印象的な出来事があり疲れてしまっていたのですが、思いきってそれをネタにして制作してみたら、笑うことができて元気になれました。ネタにして、自分の中に受け入れて、栄養にしてしまう。見ている方にネガティブ解消法のような提案ができたらと思いました。

—作品集になっている「スプリング・コレクターの話」や過去の作品からは、ファンタジー要素が強い印象があったのですが、今回の展示では、より渡邉さん自身のパーソナリティが出ていますよね。

いつも生活の中で感じたことが作品の種になっています。ファンタジックに見える作品も、もとは、例えばホコリってなんかきれいだな〜とか、落とし物をすごいするからもう落とし物したくない!とか、そういう日常の中で気づいたことや思ったことが始まりで、それをもとにお話を考えたり、少しだけ事実とずらして作品を作っています。ベースになっているのは、当たり前のことなんですが、普通の生活の中に楽しいことや美しいものが潜んでるっていうことなんですよね。それは忘れたくないんです。でも普段はほんと、ひどい生活してるんで(笑)だからこそ、私にとっては制作することがそれを確認する作業みたいなものなのかもしれないです。

これまでは、つらい日常からの現実逃避で作品制作をしていた部分もあって、それが作品のファンタジー的な部分になっていたのかなと思います。ちょうど今回の展示の作品を制作している頃、仕事が変わったこともあって、前ほど不条理な事態に陥ることが少なくなって、現実逃避する必要がなくなったということと、単純に生活のリズムに慣れるまで余裕がなくて、自分をネタにするしかなかったっていうところもありますが、結果として、今までで一番、自分自身にスポットを当てた作品になりました。気恥ずかしい部分はありますが、観た方に笑ってもらえたら嬉しいです。

 

 

—渡邉さんの作品からは幼いころにやっていた”ままごと”の感覚に近いものを感じます。

私、”思い出マニア”なんです。幼少期の記憶が鮮明で、当時の出来事や感じたこと、思ったことを今も大事にしています。制作をするたびに、小さいころから好きなものが変わってないなって感じます。砂場でキラキラした砂を探したり、プチプチを赤く塗ってイクラを作ってお寿司屋さんごっこをしたり。ビーズとか人形の靴とか、小さいつくりのものが好きだったり。あの頃と同じことをずっと繰り返して、そこにつながるものをずっと探しているのかもしれません。

—好きなものや影響を受けたものを教えてください。

本だと、にしまきかやこさんの「わたしのワンピース」(福音館書店)や「ホームスパンのカラークロス」(文化出版社)がとても好きで、展示の前に必ず眺める永遠のバイブルですね。作家さんでは、山田愛子さんが大好きです。植物や布などを使って立体作品やインタレーションを発表されているアーティストで、とても影響を受けています。この方がいるから頑張ろうと思える、指針のような憧れの方です。あと、フィンランドに行ったときにアヌ・トゥオミネンの作品に触れ、こういう作品を作っている方もいるんだな、と励まされたような気持ちがしました。

—最近では、ディスプレイや他の作家さんの作品とのコラボや空間づくりなど多岐にわたる活動をされていますね。今後、挑戦してみたいことはありますか?

ディスプレイのお仕事や、小物を作ることも楽しいのですが、あくまでも制作を軸にしていきたいと思っています。個展はもちろんですが、アートプロジェクトや滞在制作など、いろんなことに挑戦していきたいです。

イベント情報

2017年9月30日(土)~10月15日(日)
渡邉紘子 個展 『ハピネス』
※作家在廊日:9月30日(土)、10月1日(日)、14日(土)、15日(日)
※店休日:10月3日(火)、5日(木)~8日(日)、10日(火)
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A
営業時間:12:00 ~ 20:00
定休日:火曜日
問:052-789-0855
http://onreading.jp/

渡邉紘子  Hiroko Watanabe
「日常の小さな喜び」をテーマに布や糸を使用し、作品を制作。また、その作品を空間的に配置し、インスタレーションも行っている。
1981年生まれ
多摩美術大学 テキスタイルデザイン専攻卒業
University of Art and Design Helsinki(フィンランド)留学
会社員を経て、フリーでの創作活動を開始

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