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WHAT ABOUT YOU? #29 / 小林萌(vent.de.moe)

Interview by KYOKO KURODA(ON READING)

 

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。

このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、今シーズンよりデビューした、自由でコンテンポラリーな新しい扇子ブランド、vent de moe(ヴァン・ドゥ・モエ)小林萌さんにお話を伺いました。

 


 

―絵をかいたり、ものを作ったりというのは小さいころから好きだったんですか?

そうですね、小学校の家庭科の時間に、スズランのモチーフがついた小さなフェルトのキーケースを作って、おばあちゃんにプレゼントしたら、とても喜んで使ってくれて。自分がつくったものを、生活の中で使ってもらえるということにとても高揚したのをおぼえています。こんなに喜んでもらえるならば、と、たくさん作って近所の人や友達のお母さんにもあげていました。

その時の体験が、自分の原点としてずっと心に残っていて、今回、「vent de moe」の巾着やラッピングペーパーの絵として、林青那さんに描いていただいたイラストレーションにもスズランのモチーフが入っています。スズランには、幸福の再来という花言葉があり、林さんからは、夜にぼんやりと白く光っているスズランは、これからを照らす灯りのようでもありますね、とも言ってもらえました。

 

 

―将来は何になりたかったんですか?

高校生の頃にファッションデザイナーになりたい、と思うようになり、雑誌の「流行通信」や「装苑」を愛読したり、自分の服を元に、新聞紙で型紙をとって洋服を作ったりしていました。その後、東京の大学に進学して美術史を学んだんですが、洋服を作りたい、という気持ちも持っていたので、早稲田大学の繊維研究会というインターカレッジサークル(他大学の学生にも開かれたサークル)に入りました。繊維研究会は、日本で一番長い歴史を持つファッションサークルで、みんな独学で服を作って、スポンサーも自分たちで探してファッションショーをしたりといった活動をしていました。ka na taの加藤さんとか、アンリアレイジの森永さんとか、ケイスケカンダの神田さんとか、シトウレイさんも卒業生としていらっしゃいました。まず、文化服装学院の教科書を買って、はじめはさっぱりわからないんですけど、調べたり先輩や服飾の大学に行っている人に、縫製を教えてもらいました。大学時代は、学校の課題よりも服作りに夢中でしたね。私はここで4年間、ハンドワークよりのものを作っていました。もちろん工業ミシンとか縫製の技術を追求していくことも素晴らしいんですけど、それよりも私は手縫いとか、刺繍が好きで。刺繍の方が作業量は断然多くて、進まないんですけど、そっちの方が自分にとっては”早い”な、って思ったんですよね。手縫いには、限界がないんじゃないかと。

 

 

―卒業後はファッションの道に進まれたんですか?

いえ、ファッションにはいかず、美術館の運営をしている芸術文化財団に就職しました。3年勤めて今度はNPO団体に転職して、児童館にアーティストを招致する企画や運営の仕事をしていました。その後、26歳で結婚、出産をして、さあこれからどうしようかなと思っていたころに、コシラエルのひがしちか(日傘作家)さんと出会いました。

共通の友達に「紹介したい人がいる」と言われてコシラエルのお店に行った時に、パリのお菓子屋さんのレシートが入っているテキスタイルを見て、「私も同じものを持ってます!今度持ってきます!」と、自分の日々貯めていた石や押し花や紙ものや…そういう細々したものを持ってまた会いにいったんです。ちかさんはそれらをよく見て、わかってくださって、いろんな話をしました。もしかして前世で同僚だったんじゃないかとか(笑)そして、「ちょうどいま日傘に刺繍をしてくれる人を探しているんだけど、やってみない?」と言ってくださって。「やります!」と即答しました。自分の中でなにかがパーンとはじけたような出来事でした。今まで自分が好きだったものや作ってきたものがすべてつながっていくような不思議な感覚で、私はこの先これで生きていきたい、とその時思いました。

 

 

―ひがしちかさんはインタビューの中でも「自分の棚卸」っておっしゃってましたね。傘にたどり着くまでに、自分が好きなこと、やりたいこと、できること、そういう自分の持っているすべてを整理して考えたと。

そうそう、まさにそうです。刺繍の図案については、最初の数本はちかさんから指示をいただいていたんですけど、それ以降はお任せしてくださいました。店舗の中で、私が刺繍した日傘の展示をしてくださって、初めて自分の作ったものを人に見てもらうという機会もいただいて。コシラエルの刺繍のお仕事は2シーズンやらせていただきました。その後、子どもの環境も含めていろいろ考えて、「東京はもういいかな」と思うようになり、2年前に家族で私の故郷の長野へ引っ越ししてきました。その頃には何となく、自分で何かをしようと思うようになっていたのですが、とりあえず仕事をしなければと思って、9時~16時で事務の仕事をしていました。子育てもあって、自分のことを考えることができるのは朝しかありませんでした。最初は週に2日くらい朝4時に起きて、制作をしていたんですけど、描きたくて、自然と毎日起きるようになりました。それと私が4時に起きて来るので、猫がごはんをもらえるというので、呼びにくるようになって(笑)それが目覚まし時計になってありがたかったですけどね。とにかく毎日、1枚絵を描くというのを続けていました。その頃に描いた絵が、今回のプリントの扇子の原画になっています。

仕事をしていると、経済的には安定はするんですけど、ものすごく疲れてしまって。このままだと自分がダメになっていってしまう、と思って、よし、もう動いてみようと思いました。まず思ったのは、道具を作りたいということ。それで自分の今までやってきたこと、できることを最大に活かせるのは何かって探して、扇子にたどり着きました。

扇子は、手に収まる小さい面積で、いろんな素材の組み合わせもできたり、手仕事も加えられたりとなんでもできそうだなと思いました。鞄のなかに入れて日々持ち歩いて使う道具であるというところもいいと思いました。

あと、近所にあるよくいくお花屋さんで、「このお花は、閉じたり開いたりいろんな変化があって表情が変わって長く楽しめますよ」と言われたときに、扇子にも共通しているな、と思ったんです。お花みたいに、いろんな顔をした扇子が一本一本並んでるお花屋さんのような扇子屋さんがあったらいいかもしれない、と思いました。今回のDMにも載せた文章ですが日々の小さな嬉しいことやかわいらしいものを集めて「枯れない花をつくろうと思った」んです。

 

 

―ようやく扇子にたどりつきましたね!作家として1から10まで自分でコントロール出来るものではなくて、職人さんとのものづくりが必要な扇子を選ぶというのは、ハードルにならなかったんですか?

もちろんその方が楽だし責任もとれるんですけど、やはり道具を作りたいと思っていたので、自分のできない専門的な部分は人にお願いしよう、と最初から思っていました。扇子をつくろう、と思ってまずは、京都の扇子の組合にかたっぱしから電話しました。「扇子を作りたいです。何もわからないので教えてください」と。大体は電話口で「扇子なんて難しいからやめたほうがいいよ」と門前払いだったんですが、3人会ってくださるといってくださって。「すぐに行きます!」と翌日とんでいきました。骨の職人さんと、貼りの職人さんにお会いすることができて、お願いできることになりました。京都に通ってあれこれお話を聞いたり、見学をさせていただいたりしたのですが、個人で扇子をやるという人は今までにいらっしゃらなかったようです。扇子を始める前に、劇団の脚本を書いている友人と話していたら「劇団は、役者や多くの人が関わって作り上げていくもので、最初に自分が脚本を書いていた時に想像していたものとはまったく違うものになっていくけど、それを認めて大切にしてるから自分の予期せぬものに出会えるし、それこそが喜びだ。」と言っていて、これから職人さんやいろんな人と一緒にやっていくときに、私もそうしていけばいいのかなと思ってます。

 

―「vent de moe」は今年がデビューですが、播州織のhatsutokiさんとのコラボレーション扇子や、93歳のおばあさんが編んだニットの扇子、そして会場構成やパッケージなど、さまざまな人がかかわっていますよね。

そうですね。扇子の職人はもちろん、いろんな人に入ってもらって一緒にやっています。

自分には技術は何もないので、もっている方からお借りしようと思って。たとえば、職人さんに対しても、色味の指示はしていますが、骨の形はお任せにしていて。あまり私の方ですべてを決めつけすぎないようにしています。

 

 

―余白を残しているんですね。ニットの扇子はどのようにうまれたんですか?

私が産まれたときに、おばあちゃんがモヘアのカーディガンをお宮参り用に作ってくれたんです。それを母がとっておいてくれていたので、1年前に息子用にもらってきて、部屋でずっと見ていて。扇子には「飾り扇子」というのがあるんですが、私が飾り扇子を作るなら、あったかいものにしたいなと思ったのがきっかけです。そんなときに「みなとまち手芸部」の活動を知って。こんなすごい人たちがいるなんて、と会いに行って直接お願いをしに行ったんです。扇子ってやっぱりシーズンものになっちゃうんですけど、「飾り扇子」は年中楽しめるし、生活の中で誰かの手仕事がそばにあるというのがとてもいいと思いました。

 

―今回の展示会には、小さな積み木や割れた陶器、植物が配置して空間を彩っています。個人的には、扇子以外のこうした部分にもえさんの世界観を感じられてたまらなく魅力的です。

昔から、小石やガラスのかけらやパッケージや、小さいものや古いものを集めちゃう癖があって、今回インスタレーションにも使用したり、コラージュの素材にも使っています。

人よりすこし、物質に対して執着があるようで、そういう私を、親は少し心配していたようです(笑)。でも大人になって、柳本浩一さんや、古道具屋さんのように、ものが好きだということやものを集めること自体を仕事にしている人たちがいるということを知って、私、普通なんだな、このままで大丈夫なんだな、と思えるようになりました。

あと、今回は”時間”がキーワードのひとつになっています。たとえば、映画を観たら、帰り道の風景が変わっちゃうじゃないですか。私には映画は撮れないけど、展覧会の空間を映画の1シーンみたいに作ることはできるかもしれない、と思ったんです。

 

 

―プリントの扇子の図案は、小林さんのコラージュ作品でできています。これらはどのようなイメージで描かれたものですか?

プリントの扇子は、描き貯めた絵や、今まで集めてきた小さいものたちをコラージュして図案を作っています。ほうきや、かごなど家事につかう道具を描いたものや、子どもと行った児童館で見た手作りの積み木や、京都へ職人さんに会いに出かけたときの新幹線の切符、植物園でであった美しい花など、日々の生活の中で見たものや心を動かされたものがモチーフになることが多いですね。ものづくりをしていると日常の些細な出来事とか自分の感情がものにうつっちゃうんですよね。

 

―「vent de moe」デビューの展示会は名古屋が3会場目ですね。ここまでやってみていかがですか?

道具を作ることって、緊張しますね。扇子というのは誰にとっても必需品というわけではないと思いますが、「この存在を持ち歩きたい。癒されます。」とおっしゃってくれる方がいて、本当にうれしく思っています。今後は、新しい柄や扇子と一緒に楽しんでいただける香りなどにも挑戦していきたいなと思っています。

 

イベント情報

2018年5月26日(土)~6月3日(日)
vent de moe debut exhibition 「夏の美しい友達」展示即売会
会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A&2B
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
問:052-789-0855
http://onreading.jp/

作家在廊予定日:5/26(土)、27(日)、6/2(土)、6/3(日)

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