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WHAT ABOUT YOU? #30 / guse ars

Interview by YOSHITAKA KURODA(ON READING)

 

東山公園のbookshop&gallery ON READINGでは、定期的に様々なアーティスト、クリエイターが展示を開催しています。

このコーナーでは、そんな彼らをインタビュー。 今回は、陶片の柄を再構成することで生み出したパターンをもとに、アートオブジェや本の制作、デザインなどを手掛ける、村橋貴博さん、岩瀬敬美さんによる2人組のアートユニット「guse ars」にお話を伺いました。

 


 

 

 

−お二人は大学で出会ったんですよね?

村橋貴博(以下、村):そうです。大学は武蔵野美術大学空間演出デザイン学科でした。インテリア、ディスプレイ、店舗設計からファッションやグラフィック、ファインアートまで、“空間”にまつわる幅広い領域を扱っていました。わりと自由にやりたいことがやれる環境で、二人とも卒業制作ではインスタレーションの作品を作りました。

 

−もともと、家具やインテリアに興味があったんですか?

岩瀬敬美(以下、岩):私は小さいころからインテリアが好きで。家具を作るというより、組み合わせることが好きで、インテリアコーディネートとか空間の作り方に興味があって入学しました。

村:岩瀬は正統派ですね。僕は、たまたまこの学科に入れたので(笑)。もともとは、イラストレーションやグラフィックがやりたかったんですが、自由度が高そうな学科だったので、いろいろ好きなことがやれそうかなと思って。在学中は、空間の勉強もしながら絵を描いたりしていました。

 

−小さいころから絵は描いていたんですか?

村:そうですね。毎日描いてました。父親が図面をひく仕事をしていたので、青焼きの紙をたくさん持って帰ってきてくれて。ドラゴンボールの模写とかばかりしていました。(笑)

岩:私も小さいころから絵が好きで、高校は美術部で油絵を描いてました。父が趣味で絵を描いていて、油絵をやってたので、自然と絵に触れる機会は多かったのかもしれません。理想のおうちとか描いてみたり。

 

 

−大学を卒業してからは、どういう道に進まれたんですか?

岩:私は、家具だけじゃなく、器や雑貨などを広く扱うインテリアショップに入って、販売とディスプレイの仕事をしていました。ディスプレイの仕事は、商業的な考えに基づいているものなので、どうしても売上に縛られたりというところはあって、自分たちで自由に何かをやりたいなと思うようになりました。

村:僕は、子どもたちに造形を教える仕事に就いて、自分でもずっと絵を描いていました。特に、展覧会など人に見てもらう活動はしていなかったのですが、2009年に最初のZINE’S MATE(現在のTOKYO ART BOOK FAIR)が開催されるというチラシを見て。面白そうだから出してみよう、と思って、ZINEを作って応募しました。その後ぐらいから、guse arsの活動も始まって、個人での作品も発表し始めました。

 

−guse arsはどのように始まったんですか?

岩:友達と海に行ったときに、石とか貝殻とかシーグラスとかといっしょに陶片も拾ったりしていて。こんなに落ちてるんだ~と思って。陶片の模様を見ていろいろ話している中で「washed pattern」のアイデアが出てきたんです。陶片に残っている模様はきっと、もともとは器やタイルの絵の一部だったんだろうけど、ここに描かれている線を種にして、新しい模様がつくれたら面白いんじゃないかと。それを形にするためにguse arsを2010年に結成しました。最初の一年は、千本ノックのように、とにかくひたすら模様を作ってました。

 

−そうなんですね、先に二人で何かやろう、と思って考えたわけじゃなく。

村:そうなんです。陶片のアイデアとguse arsは、ほぼ同時に出てきました(笑)。それもあって、ずっと同じコンセプトでぶれずにやっているってところはあります。最初に、コンセプトブックともいえる「washed pattern」という本を作って、2010年のTOKYO ART BOOK FAIRに出展しました。そこで、元・UTRECHTの江口さんに声をかけてもらって、初めての展覧会をしました。初期は割と、本を作ることがベースにあって、それに合わせて作品を作ったりしていた部分もあったかな。

岩:始まりが本だったこともあって、自然と本屋さんとの関わりも持てるようになって、こうして展示をさせてもらう場所も本屋さんが多かったりしますね。

 

2010年に出版した「washed pattern」のコンセプトブック

 

−陶片の模様を再構築して新しい模様を作る、という「washed pattern」のコンセプトはどう産まれたんですか?

岩:陶片を見ながら、もともとは何だったんだろうとか、どういう柄だったんだろうとか話している中で、結局のところはわからないから、元はなんだったかということよりも、新しい見え方ができたら面白いな、と思って。

村:よく、模様の続きを想像して描いているんじゃないかと言われることも多いんです。でも、もともとどうだったかというのはわからないんですよね。わからないんですけど、ここにある模様を繰り返すことだったらできるんです。そうやって手を動かしてみて、新しい模様を作ってみると、想像してたよりもすごくよくて。きっと和柄の一部だったんだろうな、というものでも、繰り返してパターンにすると全然違う雰囲気になったり。想像を超えるものになったりするんです。それが面白い。陶片の模様はこのパターンの一部なのだから、もしかしたら、ほんとにこれだったんじゃないか、とか、これが何らかの形で生活の中で使われて、また割れたら陶片になって…とか、そういう想像が止まらなくて。

 

 

−陶片から抽出した模様をパターンにしようと思ったのはなぜですか?

村:パターンは、繰り返しでできているので、どこまでも無限につながっていくことができます。サイズも広さも自由です。もともとは小さな陶片なのに、どこまでも大きく広がっていくことができる。そういう永遠性がいいなと思いました。

あとは、何が描かれていたのかわからないから面白いんだと思います。これがもし、たとえば虎の絵がまるまる残っている陶片で、それを繰り返しても虎柄になっちゃうけど、一部だけが残っていて、元がわからないから繰り返して自由に新しいイメージの模様を作ることができる。抽象度の高いところがよかったのかもしれません。逆に具象的なものを生み出すこともできますし。

 

 

−定期的に各地で展示もされていて、そのたびに違うテーマやコンセプトを表現されていますよね。陶片を拾って模様を作る、という基本のコンセプトはそのままで、こんなにも多くの表現がされていることに本当に驚きます。

村:そうですね、印象としては似てるかもしれないんですけど、毎回、明確にやっていることは違うんです。陶片が何かになるということが、生命や進化を思わせるな、と思ったり、陶片のもつ色や形に焦点をあてたり、拾った場所をテーマにしたり。「washed pattern」は大きな時間の流れの中にあるものなので、続けること自体に意味があると思っていて、しつこくやっています。(笑)

 

−最初からコンセプトもアウトプットも固まっている印象でしたが、8年やってきて、変化はあったんでしょうか。

岩:そうですね、やりながら発見している部分もありますね。繰り返し同じことをやっているからこそ、気づいた部分も多いですね。こういうことを続けていると、友人がどこかに行ったときに拾ってくれた陶片が集まってきたり、陶片に詳しい人が現れたり。やりたいこともまだまだ尽きないです。

 

 

−今回の展示作品についてお話を聞かせてください。

村:今回は、「Pararell broken/unbroken」というタイトルで展示をやっています。今回はguse arsが二人でやっているということもあって、二つの陶片を選んでそれを元に作品を作りました。2会場の同時開催だったので、ギャラリースペースの方では陶器が「割れた世界(broken)」をguse arsの作品で、反対に書店スペースの方では「割れなかった世界(unbroken)」をそれぞれのソロ作品で表現しています。

陶片からパターンを生み出すという行為は、いくつもの偶然性の上に成り立っていて、もしかしたら違う割れ方をしたんじゃないか、とか、違うところに漂着したんじゃないかとか、いろんな枝分かれする瞬間があって。パターンを作っている段階でも、同じ陶片からいくつものパターンが産まれたりしていて、他の可能性もある、ということについては普段から感じることが多かったんです。

今回は、「割れる」という段階に注目しました。もし違う割れ方をしていたら、違う陶片になっていたかもしれないと思って、無地のものに、拾った陶片の模様を絵付けして、違う次元にあるのではなかろうかという陶片を作りました。そこから模様を再構成して、それぞれの並行世界でのパターンを作りました。

 

 

−陶片それぞれのもつ無数の並行世界に妄想が膨らみます。書店スペースの方では、村橋さんのコラージュ作品と、岩瀬さんのペインティング作品の展示をしていただいています。

岩:作品のモチーフになっているのが、DMにも載っている二つの水差しなんですが、これは祖母の家の物置で見つけたものなんです。随分使われていなかったようなのですが、なんか気になって二つもらってきました。忘れられてる、というのもひとつの漂流なんじゃないか、と思ったんです。漂流物を作品に拡げるという意味では、guse arsと近い部分もあります。

村:僕は水さしそのものを写真に撮影して素材にしているんですが、水さしという用途を超えたスカルプチャーをコラージュで表現しています。

岩:私は、この水さし自体の並行世界を想像して、別の国の、別の時代のものだったらとか、同じときに作られた他の水差しの姿を描いています。紋章が入っていたり字が書かれていたり、似て非なる存在です。

村:実は、岩瀬の水さしのペインティングの中には、guse arsが「broken」で取り上げた陶片の模様が入っているものもあるんです。

岩:そこでこの2会場がこっそりつながってるんです(笑)ぜひ皆さん探してみて下さいね。

 

 

 

イベント情報

2018年7月21日(土)~ 8月6日(月)
guse ars / takahiro murahashi / satomi iwase EXHIBITION
『Parallel broken / unbroken』

会場:ON READING 名古屋市千種区東山通5ー19 カメダビル2A
営業時間:12:00~20:00
定休日:火曜日
問:052-789-0855
http://onreading.jp/

在廊予定日:7月21日、8月5日、6日

guse ars|グセアルス
アーティストユニット
2010年結成。東京を拠点に活動する村橋貴博と岩瀬敬美による2人組のアートプロジェクト。海や川に漂着する陶片を採集し、それを創造の種として作品発表、アートワークの提供、デザイン制作などを行っている。また、村橋貴博はコーラージュワーク、岩瀬敬美はドローイングワークなどソロ名義での活動も並行している。
http://guse-ars.com

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