Youtube
instagram
twitter
facebook
FEATURE / 特集記事 May 28. 2014 UP
トクマルシューゴが編み込んできた10年間。
見つめてきた音楽と世界。そして見据える、音楽と未来。

Special Interview : SHUGO TOKUMARU

 

tokumaru_morimiti

 

緻密に構築されたポップミュージックと、バンドマジックに満ち満ちた壮大なステージングで、既に世界中を虜にしてきた日本人音楽家・トクマルシューゴ

今年、活動10周年を迎える彼は、「活動10周年記念ツアー」に、「初のライブDVD制作」を企画。どちらも音楽シーンではよくあるトピックだが、そこには、トクマルシューゴなりのエポックメイキングが散りばめられていた。(前回記事ご参照ください)

 


トクマル全体像

 

今回、インタビュー取材をさせてもらったのは、2014年5月11日。愛知県蒲郡のビーチで行われた野外イベント「森道市場2014」大トリとしてステージに立った、その2時間程前のバックステージにて。

これまで紡がれてきた10年と、現在地点、そして、30年後の未来予想図まで…。独自の時間軸で見据えられた、「音楽とトクマルシューゴ」論。じっくり語ってもらいました。

 

SPECIAL INTERVIEW:

SHUGO TOKUMARU

Interview , Text & Edit  by  Takatoshi Takebe[THISIS(NOT)MAGAZINE , LIVERARY]
Photo by  Carlos Yabuki ,  Tomoya Miura (LIVE PHOTO)

 

 

DSC_0258.jpg_mabusii

 

 

<音楽と人、人と音楽> 

 

—今回10周年の節目で初めて映像作品を作るってことで、CAMPFIREをつかった「クラウドファンディング」で投資金を集めるっていうやり方をされましたよね?(コチラご参照ください)また、前作のアルバム『In Focus?』には特典音源として、収録曲に使われているフレーズなどを分解した音素材を著作権フリーで(ユーザーはそれを使って音楽を作ってもOK)付けたり…どうしてこのような仕掛け方をするんですか?

仕掛け方(笑)。僕の場合、音楽を作ってるだけで充分は充分なんです。でも、CDを出すっていう面では、ただそれ(音楽)をリリースするっていうだけでは満足いかない一面もあるというか。それは、自分がリスナーとしての立場としてもそうで。それをなんとか解消したいな、と。

—普通のミュージシャンって、CDをつくって→レコ発ツアーをして→また新作の制作に入って…っていう流れが基本ですよね。極端なことを言ったら、製作とライブ、その2行程の繰り返しかもしれない。それに飽きてしまった?ということですか?

まあ、それはそれでいいんですけど。それだけだと、時間が余ってしまうというか。楽曲の制作をして、ライブをしてっていうだけでは。

—時間が余る…。じゃあ、けっこう暇っていうことですか?(笑)

暇じゃないけど(笑)。時間があると、常に、なんか考えてしまうというか。おもしろいことはないかな、と。

—でも、やはり、そこは大前提として「音楽」を中心とした、何かしらのエポックメイキングを考えているってことですよね。音楽との出会い方を増やすというか…。

そうそう。別に「エンターテイメント」を追求したい!ってこととは全然違って。お客さんを喜ばせる為にやるっていうよりも、大前提として「自分がおもしろがれることをやりたい」っていう気持ちが強いです。そうすると、生活がまた音楽漬けになって、また面白いものが作れるかもしれない、っていうのもあると思う。

 


 

—自身がオーガナイズから運営まで主催しているフェス「Tonofon Festival」なんかもそのひとつの要素ってことですね。では、さきほど冒頭でお話しした、今回の映像作品を作るために打ち出した、クラウドファンディングの話に戻るんですが…ぶっちゃけ、あれってけっこうネガティブなイメージにも取られると思ったんですよね。まだ日本では、そこまで認知されていないやり方だから、っていうのもあると思うんですが端的に言えば、「お金を集めるシステム」であるわけで。それでもどうしてもやりたかった?

そうですね。否定的な意見もあるのかもしれない。今回は無事、目標金額は集まったわけですけど。少しかっこ悪いかもしれないですが、最悪、失敗してしまってもそれはそれでいいと思っていて。海外では、クラウドファンディングは、すでに主流になってきているアクションなんですけど。日本ではまだそこがうまく伝わりきっていないというか。今はまだどうしてもお金の数字ばかりに目がいきがちかもしれないですが、本当の目的はそこじゃないんです。ゴールとする目標があまりに利益を優先したようなものだったら、僕はやる意味がないと思うんですが、そこにおもしろみを感じられるものだったら、やり方として大いにアリ!だと思うんですよね。あまり熱く語りすぎると逆に怪しくなりそうなので、もっとナチュラルに出来たら良いんですが。

—なるほど。そういえば、トクマルさんは、ソノシートで作品をリリースしたこともありましたよね最近、国内では、カセットテープがまた盛り上がってきていたり、海外ではCDでもレコードのようにダウンロードクーポンが付いてるのが主流になってきたり…なんて話も聞きますが、「音楽」の届け方の仕掛けのひとつとしてのそれを入れる媒体についてはどうでしょうか?リスナー側も、CD自体におもしろみを感じなくなってきてたりするんですかね~?

音楽をどう聞きたいか?っていうのはけっこうみんなそれぞれあって。もうyoutubeで満足って言う人はかなりいっぱいますし、子供が「音楽聞きたい~」と言って親にiPhoneの操作をせがむ風景を見たりすると、もうそれで事足りてる、というよりその選択肢以外ない、くらいになってきてるわけで…。そういう現状を考えると、今後、もっと音楽の聞き方、接し方って変わっていくんだろうな、って思うんです。いま音楽の聞き方の自由度自体はすごく高いので、各々がおもしろいと思うものを聞けば良いのだけど、だったら、技術者側に委ねるだけではなく、ミュージシャン側も常にどんどん新しいことを考えていかないとなって。「こんな風に聞いて欲しい」という願いがあるんだとしたら、なおさら。

 

 

—時代を先回りしていくって考え方でしょうか?

例えば、iPhoneとかで音楽を聴いて育った子供たちは、もしかしたら逆に、CDという媒体がおもしろいと感じるかもしれないし。そうなってくると、自分の場合はそれよりももっと変なおもしろいものを探していかないといけないなっていう。…そういうことを考えるのが単純に楽しいんですよね。ただの”新しいもの好き”なのかもしれないけど、先回りすることも、昔を掘り下げることも両方とも面白くて。さっきの話、クラウドファンディングって何百年も前の大昔からあるものだけど、日本ではまだ新しいことで。一度、自分でやってみてすごく大変なことだってわかったし。

—大変だったというのは、ユーザーとのやりとりが?ってことですか?

まあ、生半可な気持ちでこれをやると絶対に失敗するし、決していい結果にはならないだろうなと。「音楽」って今は誰もが簡単に作れる時代で、それをネット上で配信したりすることも責任なく気軽にできるようになってしまったわけで。でも、今回の企画を通して、「音楽をつくるっていう行為に対しての責任」を感じられたのは大きかったですね。今まで以上に、お客さん、リスナーと自分との関係性が強く意識できました。こっちとしても、ちゃんと(投資してくれたお客さんに対して)お返ししたいっていう気持ちにもより強くなりましたね。それで、またいい音楽の制作に迎えるんじゃないかなって。

—CDをつくって→流通に流す→それが小売店の店頭で売れていく、っていうシステムが定番化してしまったことが、逆にミュージシャン(作り手)と、リスナー(受け手)の距離間を乖離させてしまっているとも考えられますよね。そこの距離感をより近づける為の仕掛けのひとつがクラウドファンディングだった、とも言えますかね。

実際に音楽が買われていく、そこで対価が支払われる、っていう行為がきっと何十年か前までは、もう少し目に見えていたことだと思うんですよ。割と最近は、ある種、ビジネスめいてしまっていて。

—イニシャル(初回出荷数)何枚付いた?とか、そういうのですよね。

そうそう。そういう話ばっかりになってしまうと、もう数字でしか、見えないわけで。リアルが見えないというか。お客さんの気持ちも見えなくなってしまう。お客さんとの距離感を可視化するという意味合いでは、ライブや生配信にも近い感覚で。

—対リスナーとの関係性が数字化されてしまう、というところでは、クラウドファンディングはよりそういう方向に近いものだと認識してしまっていましたが、CDをつくって普通に流通を通して売るっていう現状と比べて、実は、むしろ、お客さんとの距離感をより感じられるツールになった、っていう結果はおもしろいですね〜。

そうです、そうです。

 

<続きは次ページへ>

1

2

イベント情報

2014年6月6日(金)
10周年記念プレミア公演”Night Piece”完全再現+α ワンマンライブ
開場18:00/開演19:00
会場:愛知・名古屋 千種文化小劇場
出演:トクマルシューゴ(フルバンド編成)
チケット:前売4,000円【SOLD OUT !!】

トクマルシューゴ
様々な楽器や非楽器を用いて作曲・演奏・録音まで、ひとりで作り上げる音楽家。2004年NYのインディレーベルより1stアルバムをリリース。 無名の日本人、日本語歌詞であったにもかかわらず、各国のメディアで絶賛を浴び世界中から注文が殺到。 国内外のフェスに多数出演。2012年末には最新作アルバム「In Focus?」をワールドリリース。自らが主催するフェス『TONOFON FESTIVAL』など開催。なお、 「トクマルシューゴバンド」には、 トクマルシューゴ(vocal , guitar)の他、岸田佳也(drums) 、 イトケン(drums, toy pianos) 、ユミコ(accordion, glocken, toys) 、シャンソンシゲル(andes, toy percussion) 、田中馨(bass, cavaquinho) といった錚々たるメンバーが参加。

http://www.shugotokumaru.com/

RELATED
あなたにオススメする関連記事


PICK UP
特集・ピックアップ記事