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FEATURE / 特集記事 Jul 11. 2014 UP
【SPECIAL INTERVIEW】平野勇治(名古屋シネマテーク)
文化を届ける仕事論。“体験としての映画”を、名古屋で、これからも。

まちのメディアピープル #01:平野勇治(名古屋シネマテーク)

 

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“体験”としての映画を提供する
 
映画館としては、そういった(映画館に足を運ぶ)人が増えてほしいわけですよね?今、映画館で映画を見るということにはどんな意味があるとお考えですか?その通りで、体験としての“映画を観る行為”っていうのは、もっともっと人々のなかに入っていかないといけないとは思っている。ある時期までの映画を見ていた人というのは「どこで、誰と」映画を観たのかというのが大きかった。 
 
他人には「いい映画あったんだよ」なんて言っているけど、実は「誰誰と観に行って…」というのが心の中にはある。帰りにお茶を飲んだとか、見に行く前の電車の中もドキドキで、とか。トータルの体験としての“映画”。今の映画はほとんどがシネコンじゃない?シネコンは映画を快適に見るということを追求した結果だと思うんだけど、どこも同じになっている。同じような受付のシステムで、中に入っても一緒で、自分が何番スクリーンで見たかなんてわからない。だから映画を見たという記憶はあっても、「どこで観た」という記憶が人々のなかからはなくなっていく時代だと思う。 
 
逆にミニシアターは一館一館みんな顔が違うから、それを1つの映画体験として持ってもらえたらいいなと思う。お客さんには聞いてないけど、ミニシアターが好きな人はもしかしたらそうした映画館体験を、どこか得難いものとして感じてくれているのかもしれない。 
 

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だからこそ映画を見る場が、これから意味を持っていくことができるんじゃないかとも思っていて、いくつかの映画館と連携して会員の相互割引というのを5月からはじめたんです(全国ミニシアター会員相互割引)。シネマテークの会員だったら、沖縄のある映画館も割引がありますよという風な感じです。北は札幌から南は沖縄まであるんです。映画をずっと名古屋で見ているお客さんはシネマテーク、シネマスコーレ、名演とかは知っていると思うけど、他の都市にもそういった場所があるということを知ってほしい。
 
で、都市の規模的にうちよりも尾道の劇場のほうが苦しいに決まっている。そういうところにもすごく頑張っている劇場があって、こうしてみんなで連携して(相互割引なんかをやってみて)遊んだりしていくというのをお客さんにも提示したい。ミニシアターはうちだけじゃなくて各地にある。浜松だって静岡だってあるんだから、一度行ってみてほしい。 出張や旅行のときに映画館の前まで行くだけでもいいと俺は思っているんだけど。 
ミニシアターの映画って言うのは、愛知県下でうちしかやらないという映画が多いわけだよね。だから、うちの上映期間が終わって見逃してしまったという場合も、実は浜松で上映中だったりすると「1時間以内に行けるじゃん」と。京都に行ってなんか食って、ちょっと観光して、ついでにこの映画見られる、しかも割引がある。そういう風になればいいなと。

加盟している映画館の20数館がHPでもTwitterでもなんでもいいんだけど発信することで、ミニシアターというものを、お客さんの中に映画体験として(浸透させていきたい)。うちの会員証を持って、高崎に行ったり静岡に行ったりするなんていうのは典型的な映画体験だと思うんだよ。シネコンの会員証を持って系列のシネコンに行ってもどこも同じだから。そうではない映画体験をしてほしい。僕も他の映画館の会員証を見たいよ。うちの会員証はぼろっちいけど、会員証も個性があるから。

 

映画文化を“紡いでいく”ために
 
―最後に、これからのシネマテークはどう変わっていくのか、もしくは変わらないのかを聞かせてください。
 

アンリ・ラングロワっていう、映画を収集・保存・上映する「シネマテーク・フランセーズ」というフランスの施設の創設者の人の評伝(『映画愛‐アンリ・ラングロワとシネマテーク・フランセーズ』)がある。もう映画にとりつかれたような人でさ、「どんな映画でも収集・保存しておかないといけないんだといって、戦争中も自分の庭に穴を掘ってフイルムを埋めていたりしたらしい。

ここ(シネマテーク・フランセーズ)で、ゴダールだってトリュフォーだってヴェンダースだって映画を見て育っていった。ヴェンダースはドイツからフランスの国立の映画学校に入ろうとして落第したのにパリから離れないでここでひたすら映画を見ていた。私がこの本を読んだのはシネマテークができてからだし、シネマテークっていう名前もひたすらみんなで飲みまくった末に超適当に「もういいよ、名古屋シネマテークで」という具合に決まったわけなんだけど、「(そうした名前を)付けた以上は(そんな場所でありたい)」という気持ちも少しはある。

ある時期からうちで舞台あいさつをしてくれる監督のなかで、どれだけ心から思っているかはわからないけど「シネマテークで映画を見てました。こっち側に立てるなんて」という風に言ってくれる人たちが出てきた。例えば、山村浩二っていう『頭山』っていう映画でアカデミー賞にもノミネートされたアニメーション監督がいるんだけど、彼はこっちの出身で、シネマテークでよく映画を見てくれていたんだって。
『リンダ リンダ リンダ』を作った山下敦弘もうちで映画を見ていたらしい。映画をつくりはじめてから知り合ったんだけど、園子温もうちに入り浸って、仕事がない時代にうちのスタッフの家に泊って、夜は酒を飲んで昼はうちで映画を見てという生活を送り続けていた。

七里圭っていうアート系の映画をつくっている監督もいる。
そうやって、うちで映画を見ていた人が、うちで上映する映画をつくり、舞台に立って「こっち側に立てるなんて」って言ってくれることが増えてきた。
それを見たときに、「そうか、明日俺が面白い映画を見たいなら今日面白い映画をやってないとだめじゃん」と思った。うちで見た映画だけじゃないと思うけど、うちで上映した映画が見た人に刺激を与えて、いつかその人が作る側に回って、俺に面白い映画を見せてくれる。監督じゃなくても、映画に携わりたいと思う人が増えていく。 シネマテークはそういう映画館であり続けたい。

 

 

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名古屋シネマテーク
名古屋市・今池にあるミニシアター。
1982年に設立。 (ただし、前身にあたる自主上映団体「ナゴヤシネアスト」が活動しはじめたのは1971年)
客数は40席。上映作品は、邦・ 洋画を問わず、ロードショー公開から監督特集などの企画ものまでバラエティーに富んでいる。詳しくは、上映作品のスケジュールを御覧下さい。
http://cineaste.jp/

 

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