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FEATURE / 特集記事 Jul 21. 2015 UP
【SPECIAL REVIEW】ベルセバのスチュアートが監督をつとめる話題の映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』。その魅力を多屋澄礼が語る。

センチュリーシネマ(矢場町)

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ベル・アンド・セバスチャンのフロントマン、スチュアート・マードックが脚本・監督を手掛けたミュージカル映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』が、8月8日より、センチュリーシネマで上映される。

~STORY~
舞台はスコットランドのグラスゴー。うつ病と拒食症のために入院中の少女イヴは、一人ピアノに向かい曲を書いていた。ある日、イヴは、病院を抜け出し向かったライブハウスで、アコースティック・ギターを抱えたジェームズに出会い、さらに友人のキャシーを紹介される。ジェームズの案内で街をめぐりながら、イヴが作る音楽を聴いているうちに、3人は音楽を一緒に作り始めることに。その夏、3人の友情と恋が、音楽にのって始まった-。


「ベル・アンド・セバスチャンのフロントマン、スチュアート・マードックが初監督をつとめるラブリーな青春群像劇」

Text by Sumire Taya (Twee Grrrls Club / Violet And Claire)

 活動スタートから20年以上経った現在でも、第一線で走り続けるベル・アンド・セバスチャン。その人気はグラスゴーだけに留まらず、世界中に熱狂的なファンがいるほど。かく言う日本での人気も根強く、ベルセバという愛称で呼ばれている。今年の初めにはベルセバの今までの活動をまとめたムック本が発売され、フジロック・フェスティバルにも出演が決まっている。コンスタントにアルバムを発表する合間をぬって、フロントマンのスチュアート・マードックが初めて監督・脚本を手掛けたのが本作『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』だ。

 そもそも、スチュアートが脚本、監督として映画をつくる事自体が驚きだったが、そのプロジェクトを「Kickstarter(クラウドファンディングの大手サイト)」を通じて資金集めをするなんともDIYな姿勢に一番驚かされた。ファウンディングに参加する事で、映画の試写に参加できたり、劇中で使われた主人公イヴの日記がもらえたり、スチュアート直々に撮影場所を案内してくれるツアーに参加できたり、とにかく何でもありなのが面白い。そんなプロセスを経て完成したこの映画の誕生には、先に語っておかなければならない序章がある。

 「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」という作品のタイトル、これは映画以前にスチュアートがベルセバのサイドプロジェクトとして始めたもの。プロフェッショナルでなくても、オーディションというかたちでヴォーカルを世界中から募集するという一大プロジェクトで、アルバムも一枚リリースし、その中の楽曲が劇中でも使用されている。スチュアートが映画制作を視野に入れてこの音楽プロジェクトをスタートさせたのかは不明だけれども、歌詞とストーリーがパズルのように見事にはまっているのが「お見事!」と拍手したくなるほどである。アントン・コービン(ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスの伝記映画「コントロール」)やマーク・ウェブ(「500日」のサマー)、スパイク・ジョーンズ、ミッシェル・ゴンドリーなどPVディレクター出身の素晴らしい映画監督は沢山存在しているが、ミュージシャン自身が映画監督になるのは異例である。無謀にも思えるこのプロジェクトを音楽制作と並行して手掛けていたスチュアート・マードックには脱帽である。

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 アートワークやPVなど、ベルセバのヴィジュアルにはゴダールやトリフォー、ロメールといった「ヌーヴェルヴァーグ」なエレメントを感じられる。そして、この『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』でもそういった要素は随所に発見する事ができるので、往年のファンにとっては宝探しのような楽しさもある。イヴを演じるエミリー・ブラウニングはオーストラリア出身で現在26歳の若手女優。どこかアンナ・カリーナを彷彿させるクラシックな顔立ちがこの映画にばっちりはまっている。お目当ての男の子”アントン”が働くヴィンテージショップでイヴが着たレディーな魅力たっぷりのブラックドレス、キャシーの家を訪れる際の探偵風コート、スミスのTシャツなどファッションにフォーカスして観ても楽しめる。

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 もちろん音楽面においては文句の付けようがないほどパーフェクトだし、小物などのアイテムひとつとって見ても、エスプリを感じる事ができる。だからこの作品を観ている時は一秒たりとも画面から目を離せない。では、肝心のストーリーはどうなの……?と心配する人もいるだろう。スチュアート・マードックは音楽畑の人だし、処女作にしてそんな100点満点な作品を生み出せるなんて信じられないって人が出てきてもおかしくない。むしろそう心配するのが当然である。でも、幸運なことにそういった心配はいらない。本作はバックグラウンドを知っていたら2倍にも3倍にも楽しめる作品であると同時に、知識があるなしに楽しめる「青春群像劇」だから。難しい事抜きに純粋な気持ちで「良質なポップソング」とイヴ、ジェームズ、キャシーの3人の成長の姿を堪能すればいい。「レコードを出すのが夢なんだ」と語るジェームスの純粋さに、私たちが過去に置いてきてしまった「憧れ」や「夢」の存在を再認識させられる。映画を観た後に、ついギターを手に取り、曲をつくってみたくなる。その衝動がとても尊いことだと私は信じている。


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多屋 澄礼
1985年 東京出身、現在京都在住。インディ・ポップという音楽ジャンルを軸にイラスト、ライター、DJとして雑誌や本などで執筆をてがける。女性DJグループ、TweeGrrrls Club主宰、レーベル&ショップ、VioletAndClaireのオーナーとして、女性作家や海外の雑貨などをセレクト。Twee GrrrlsClub編集として『インディ・ポップ・レッスン』を刊行。アレクサ・チャン『IT』日本語版の翻訳を手がけ、2015年には女性ミュージシャンのライフストーリーを綴った『フィメール・コンプレックス』、京都のガイドブックとして『New Kyoto 京都おしゃれローカルガイド』をリリースしている。

イベント情報

8月8日(土)~ ロードショー
『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』
公式HP:www.godhelpthegirl.club
監督・脚本:スチュアート・マードック
製作:バリー・メンデル出演:エミリー・ブラウニング/オリー・アレクサンデル/ハンナ・マリー
画像:© FINDLAY PRODUCTIONS LIMITED 2012
配給:アット エンタテインメント/配給協力:武蔵野エンタテインメント
イギリス/2014年/英語/カラー/DCP上映
111分 PG-12

上映劇場:センチュリーシネマ  名古屋市中区栄3-29-1 名古屋パルコ東館8F
http://www.eigaya.com/

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