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FEATURE / 特集記事 Apr 26. 2016 UP
【SPECIAL INTERVIEW】
imo market・水谷竜也
「ボトルガーデン」の中で育まれる、本物の自然と純真な愛情。

 

小さな庭園に吹き込まれる、純真たる愛。

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―もともとは海外での旅を通して、向こうで植物を採取するというのがきっかけだったという話でしたが、今はもうほとんど岐阜の山県で採ってるんですか?

岐阜が地元で実家の持ち山があるんです。あと、九州にも採っていいよって許可をもらっている山があります。持ち山の方は、もう自由に、好きなように山の世話をする。どういうやり方が一番良いのかはまだわかりません。実家に持ち山があったというのもきっかけの一つです。田舎の実家で山を持っているということは自然な事です。 学校のクラスメイトの半分くらいが持ち山を持っていましたよ。

―え、普通に考えたらすごいですよね、それ(笑)。

田舎だとけっこうある話ですよ。うちの場合は、松茸が生えるから、畑みたいな感覚で、うちのじいちゃんが買って。いまやもうまったく生えないですけどね。ちっちゃいころは松茸山だったんですけど、気づいた時にはもう松茸は生えない山になってました。相当放置された状態だったんです。その時に、この山をどうしていくんだろう?と疑問に思ったんです。そういう山は、個人の持ち物なので国も干渉できないですし。それで、どうなっていくんだろうって。

―そういう知識はどのように得ているんですか?

山の師匠のような人がいます。それぞれのジャンルにスペシャリストがいるものですよね。そういう人たちのことに興味があるし、純粋に尊敬できるんです。

―海外に行っていた理由は「経験値を高める」というものでしたが、その気持ちが今でも常に持ち続けている感じなんですね?常に、色んな新しい面白そうな人と出会いたい欲というか、水谷さんが言う「師匠」と呼んでるような人たちを見つけて、そこから得られる知識とかを吸収したい!っていうのがすべてのモチベーションに繋がっているんですかね?

そういう欲はあるかもしれないですね。

―なんていうか、能動的な受動っていうか、吸収するために動くっていうか、そういう感じが…その繰り返しって感じですね。

現状はそんな流れですね。でも、ボトルガーデンに関しては自分で向き合って一つ一つ作っていくしかないので。それとはまた違う分野に飛んでる感覚はありますね。

―じゃあ、ボトルガーデンの「師匠」はいるんですか?

いないです。

―いないんですか?!独学で?

もちろんいろんな人や情報に影響は受けてますが、やってみては失敗したり成功したりを繰り返して…。これをやり始めた当時は、こんなことやってる人を知りませんでしたから。

 

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imo market・水谷さんの工房の一部。

 

―その時はまだボトルガーデン自体はなかったんですか?

たぶん僕が思い描くボトルガーデンは無かったと思います。盆栽や単純なテラリウムは別として。なので、まずたくさん作って上手に作れる人になろうと思いました。

―知識ももちろん必要だと思うんですが、やっぱり美的なセンスなんかも必要ですよね?こっちから見た方が見栄えが美しい、だからこっちが正面、とか?

そうです。植物にも石や流木にも顔があるんです。それを見極めて、向きを決めてあげる。後は造る人次第で、経験値をもとに美しいと思う一景を造ると。庭師さんが木や石の顔を見て植えるのとまったく一緒で。僕は草一本一本の顔を見ながら植栽していきます。そういうことは、すぐ分かるようになると思うんですけど。庭って庭師さんによってみんな違うじゃないですか?つくっている人も違えば、管理してる人も違う。それと一緒なんです。ボトルガーデンのビンの中は「小さい庭」だと思ってます。手入れの仕方、管理の仕方で変わってきます。例えば、(手入れ作業のひとつとして)ふうふう息を吹きかけるんですけど、その息の吹きかけ方ひとつとっても、違ってくるんです。

―え、息を吹きかけるんですか?

息を吹きかけてやってビンの中に風をおこしてやるんです。そうやって、空気を回してあげてるんです。

―自然界だと風が吹く代わりに、息で風をつくるっていうことですか?

そういうことです。ビンの中って空気が止まってるじゃないですか。もちろん、止めるための装置だから。その中に植物を入れてあるので、植物に影響する自然現象を、持ち主がやらないといけない。それが、植物の世話をするということ。このビンの中でもちゃんと長く育つ、寿命を全うできる種類の植物を使ってもちろん作るんですけど、でも、飼い主が自然現象を与えないと、ずっとは生き続けられないという存在なんです。単体ではとても弱いんです、自然から与えられる外的要因で成り立っている。かなり閉ざされた自然環境なので。でも、それが自然だと思うんですよ。そういう事を学んでほしいなと。

ーなるほど。

家も人が住んでいなかったら、朽ちていくじゃないですか。今、アトリエ兼住居にしているこの家も築100年くらいで、引っ越して来たときにはすごい悲惨な状態でしたけど、住み始めて、風を通してあげたら、だいぶ良いですね。

―風って、重要なんですね。

風は重要です。「気が通ってる」とかいうじゃないですか。気が巡る、とか、気が溜まるとか。リンパに老廃物が溜まるのと同じで。それを風が通ることで、循環させてくれるんです。風がこない場所って、大体そういうところは、朽ちてたりとか、床が落ちていたりとかします。だから、持ち主が風を送るんです。植物自体を風(息)で動かしてやる、っていうのは重要なことなんです。それと同様に、地中に溜まっている水を動かすっていうのも重要です。定期的に、大雨を降らしてあげるんです。ほとんど大雨なんて降らせないんですけど、すごい乾いてるな~っていう時に、大雨を降らせてやる。砂利の表面よりも上に水がくるくらいに、洪水させてあげて、その上がってきた水を全部スポイトで抜くんですよ。

―あえて余分に水を与えて、溢れた分を吸ってあげるんですか?

自然界だったら、砂利の底がないのと同じなので、水がちゃんと吸収されて下へ浸透していくじゃないですか。でも、ボトルの中には水の逃げ場がないんです。ときどきそうやって、逆に溢れ返らせてやって、水を吸ってやる。そうすることで、まわるじゃないですか。増えて、吸われて、かきまわされてるような感覚。砂利の中に住んでいるバクテリアたちもいっしょに砂利の中を動くので、状態が良くなるんです。溜まってるところから広がっていくというか。まわっている水は腐らないんです。

―植物の育て方としては初めて聞いた話ばかりです。難しそうですね…。

いや、育てるのは簡単ですよ。でも、僕が難しく考えちゃってるだけですよ。ただ空気を動かして、たまに大雨降らせて、水抜くだけですよ。全然、簡単です。逆に水やりとか手を入れすぎて、枯らす人の方が多い。愛情表現が水やりばっかりの人はだめです。それは自己満足でしかないから。植物と向かい合い、状態を見極めれば栄養剤も必要ありません。与える水によってたまにアルカリ性に偏るので、酸性の木酢液を垂らす程度に霧吹きに混ぜたりとかもするんですけど。ほんの少し、コツを掴めば手間は本当にかからないですよ。

 

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―今はボトルガーデンがメインですけど、今後のimo marketの展開として、新たにやりたいことが見えてくるっていうことも?

2015年には庭仕事のお師匠に協力してもらって庭を造らせて頂いたり、ワークショップをやらせてもらったりと自分にとっても、とても勉強になったので、無茶のない程度に今後もおもしろそうな事には挑戦したいと思ってます。ただ、今はそれらの経験も生かしつつ、ボトルガーデンに対する研究を深めようと考えています。奥行きが深いので、そう易々とマスターできてなくって。そして、僕だけが理解した技術になってしまう状況は良くないと思っています。

他のボトルガーデン作品を見て、嫉妬したりとかってありますか?

ないです。でも、その作品が何の為に作られたか?どのような作り手がどのような思いや文脈を持って製作しているのか?は見るようにしています。その反面、自分も見られているということを意識していますね。極端な話、見栄えだけで良いとか、売れれば良いというだけで、砂漠のような所が自生地の植物を瓶の中に寄せ植えしてあれば「かわいそうだから、やめてあげて」とは思いますね。

―なるほど。

人間に「海の中で生きろ」ってくらいのことだと思うんです。表現下手ですけど、そこ迄じゃないにしても過酷な状況だと思うんですよ。自生地の環境を考えれば、例えばサボテンの自生地って砂漠じゃないですか?ビンの中は風通らないし、砂漠って吹きさらしじゃないですか。その時点で、その変化に耐えられるのか?。おそらく無理があると思います。元気な姿を見たいですよね。特殊な、レアな植物を手に入れたい、育てたいっていう風潮もありますが、それぞれの植物の適した環境をつくれるのか?っていうのは重要だと思います。

―植物だって生き物なんだ、ってことですね。重要ですね。

たいして珍しい植物じゃなくても、元気良く育っている植物は美しいですよ。ボトルガーデン一つ作るのにも、もろもろ時間も手間もかかるので、決して安いモノでは無いのですが、もう少し生産体制を整えていければなと思っています。今この次のレベルのことをやろうとすると、もうこれが限界だなと思ってて。なので、いいお弟子さんが来てくれるといいんだけど(笑)。

ーじゃあ、お弟子さん募集!ってことで。今日はありがとうございました。

 

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imo marketのボトルガーデン作りの一連を学ぶワークショップが、オイシイワークスとの共同企画として、昨年夏に岐阜の山県にて開催されました。当日の模様を、LIVERARYスタッフによる参加レポートでご覧ください。

 

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イベント情報

2016年6月4日(土)、7月3日(日)
yamagataボトルガーデンワークショップ

2016年6月4日(土)
ワークショップとフィールドワーク
会場:岐阜県山県市・旧北山小学校(岐阜県山県市神崎100)
集合場所:JR岐阜駅(送迎希望者のみ)
スケジュール:9:00集合/ 10:30旧北山小学校/11:00ワークショップ&フィールドワーク/18:30JR岐阜駅・解散

2016年7月3日(日)
お手入れワークショップと展示販売会
会場:LABOEAT(名古屋市中区正木1-13-14,1A)

参加費:10000円(大人1名・材料費込み)※岐阜駅まで送迎無料。昼食は各自実費にて。
※申込フォーム http://goo.gl/forms/vCf52GlzGw
問:info-yamagatasya@g-yamagatasya.org(NPO法人山県楽しいプロジェクト)

 

imo market(イモマーケット)
自生地からその植物に最適な環境を学び、人々の日常生活に寄り添う事のできる「仮想的な自生環境」を作る事を生業としております。単に瞬間的な「美しさ」だけでなく、植物の生長という時間的な変化そのものに「美しさ」を見出し、所有者が環境を整える事で持続可能となるアートオブジェクトとしてご提案させて頂きます。http://imomarket.jp/

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