SPECIAL INTERVIEW: KEI TANAKA[Hei Tanaka]
新生HeiTanaka、メンバー紹介 by 田中馨。
―では、順番に各メンバーを紹介していってもらえますか?
えっと……では、先程から何回も名前が出ていますが、池ちゃん。以前のHei Tanakaのツインドラムのうちの1人で。その、彼の音楽に立ち向かう姿勢はとてもユーモラスでありつつ、人の心を打つもので。根は真面目だし。真剣にキャッチーな様子がもう素晴らしくて。
前HeiTanaka(田中馨+池田俊彦+シャンソンシゲル)
―僕、前のHei Tanaka見た時に思ったのが、もっと上手い超絶バカテクみたいなドラマーを置いたほうが、馨さんが作りたい曲の完成系そのままをやってくれそうなのにな〜って思ってました。でも、そうじゃないんですよね、狙いは。
そうそうそう。なんか僕もそうなんですけど、やっぱりできないことがある人は、その分、特殊な存在になれるというかね。できない人ってのは、できなかった時に、回り道をしながらも、どうすればそれが成立するか?って考えることができるから。アフリカのリズムとかも、ロックと違ってドラムセットじゃないないから訛りがある独特のグルーヴになるわけで。右手だけでやるからとか。それは、そういう部分が好きなんでしょうね。すんなりいかない感じが。まあ、ちなみに、池ちゃんって普段ドラマーじゃないからね。スティックも握りしめるように持ってるし(笑)。驚愕です(笑)
―握りしめる(笑)。
あの握りしめるようなスティックの持ち方は、もう……外山明さんか、池ちゃんくらいです。
―(笑)。
まあそういった意味では、直感的で選んだメンバーではあるけど、みんなそういう部分を感じて、声をかけさせてもらった。それは僕が理解してる、この人はこういうことができるっていうんじゃなくて、プレーの中にこの人はなんかある!みたいな引っかかるプレーをする人を選んだんだと思います。
―なるほど。続いて……。
さとぅー(ex.THEACTWEACT / ex.6EYES)
さとぅーくんの場合は、会ったことなかったけど、トクマルにメンバー誰がいいか相談してた時に、「最近サックスでいいなって思った人はさとぅーくんだ」みたいな話を聞いて。初めてさとぅーくんに会ったときは、「さとぅーくんって怒る人?」とか聞いたんですけど(笑)もう、仏のような人でしたね。トクマルが「この人、面白い」って思う感性は相当なものだから。そのトクマルが言うなら、これは一緒にやってみたい!って思って。で、一緒にやることになった。
さとぅーがもともと所属していた愛知のバンド、THE ACT WE ACTは名古屋公演に出演。
―名古屋のバンド界隈では、まさかさとぅーが馨さんのバンドに入れてもらえるなんて(笑)!っていう衝撃が走りましたよ…。てか、トクマルさんの推薦力、すげえ〜。ということで、続いて、黒須さんについてお願いします。
黒須遊(RIDIMATES)
黒須は中学からの同級生でよく知っていて、ずっと音楽を続けている。でも、フィールドも若干違ったりもするんだけど、黒須がすごい怒りん坊だから。バンドの中に怒りん坊は1人でいいなって思ってたから(笑)。僕の思う中では、今回のメンバーの中では珍しく、すごい純粋な音を出せる人な気がしていて。多分、Hei Tanakaみたいな音楽をやった時に1人でも純粋な音を出してくれる人がいるといいな、と。それは黒須の人柄なんですけど。「これ、やって」って言ったことを、きちんと取り組んで音に出す人。すごい練習して。壁を越えるために努力する、っていうのができるタイプの人なんですけど。それが羨ましいなとも思うんですよね。僕はそういうところがないので。黒須は、体育会系っていったら、体育会系ですね。昔から羨ましいなと思ってた。羨ましいっていうか、そこがいいところだなって思ってたので。あと、しっかりとお客さんに楽しんでもらえる要素を提供できる人だとも思うし。前のHeiTanakaが、シゲルと池ちゃんと僕の「ズッコケ3人組」みたいな位置だったので、そこから1歩先に行きたかったのもあって。そこへ行くためには、黒須って存在はすぐに頭の中に浮かびました。
あだち麗三郎
あだちくんは、僕がお芝居の音楽やってた時に1回録音をお願いして、やってくれたんですけど。その時もへんてこな曲をやってもらったんだけど、すごく楽しそうにやってくれたっていうのと、あとは音が好きだったっていうのが一番かな。あとはこれまで、何度も共演したことがあって。まあ、SAKEROCK、cero、カクバリズムとか……もちろん繋がりはもともとあったけど、打ち上げとか飲みの席でちょっと話すぐらいの関係だったのに、一緒にやってみたいなって思って。で、声かけたらやってくれることになって嬉しかったです。サックスの3人のキャラクターは、みんなすごい良いです。
―なるほど。ということで、前HeiTanakaから参加している池ちゃん(Dr.)、サックスチーム3人衆の紹介が終わりました。最後は、名古屋で小鳥美術館として活躍中のGt.まきお君ですね。小鳥美術館と馨さんは、もともとSAKEROCK時代からの関係性がありましたよね〜。
まきおこと、牧野容也(画:小鳥美術館・学芸員)
そうそう。まきお君は名古屋在住だし、一緒にやれるとは思ってなかったけど、まあ、彼についてもトクマルに相談してる時に「ギターはどんな人が理想なの?」って聞かれた時、「理想を言うと、まきおくんみたいな人かな」って言ったら、「ああ、彼みたいな人を他に見つけるのは難しいね」ってトクマルが言ってて(笑)。あと、もともと冗談みたいに言ってみたんですよ。「今度、新しくバンドをやろうと思っていて、ギターを探してるんだけど、やらない?」って。そしたら、「いいよ」って笑顔で二つ返事で(笑)。
―(笑)。
小鳥美術館は、田中馨(Ba)、イトケン(Dr)によるバンドセットでのライブも数回行っている。写真奥:まきおくん、手前:田中馨。
で、まきお君もやっぱり演奏している様がいいんですよね。もちろん、小鳥美術館のフレーズを弾いてる時もめちゃめちゃかっこいいけど。なんか、普段弾かなそうなフレーズを弾いてもらっていて、ギャップかもしれないですけど、かっこいいんですよ〜。どんなフレーズ弾いても、かっこいいってすごいなって。あと、たまに急に変なことを言い出すんですよね。ショピンの曲にオリジナルの振り付けをつけたんだ、って急に言われたりして(笑)。それをその場で踊ってくれるんだけど、すげ~変なの!気持ち悪っ!みたいな(笑)。珍しい存在ですよ。何しても正解な人っていうか…。なかなかいないですよね。
―なるほど。曲の作り方としては、PC上で作ったものを楽譜に落としてメンバーに渡す感じですか?
去年ぐらいからHei Tanakaは、どうしようかなって悩んでいて。で、こんなことやりたいなっていうのはあったけど、全然曲になっていないから録り溜めてたんですよ。だからその時点では、サックスじゃなくて、マリンバだったり、スチールパンだったりいろいろ構想はあったんだけど。メンバー構成とともに楽器が定まってからは、このフレーズをサックス3本でやると、こうかな〜とかって作り直していった感じ。
―さっき言ってたユアソンのJxJxさんとの会話で、「根本は一緒だよね」みたいな話ありましたけど、音楽的にこういうものっていうのは具体的にないんですか?
まきおくんに音源を聞かせた時に、言ってた表現だけど、「フレーズを1個1個抜き取るとすごく可愛いんだけど、可愛い顔したフレーズが、鬼のように襲ってくるような曲だね!」って(笑)。
―なるほど…。そもそも馨さんのソロの楽曲ってざっくり言ってしまえば、可愛らしい音楽じゃないですか?でもなんかどこか変だぞって感じがする。強引に言うと、それをバンド化した、みたいな感じですかね?
そうですね。それをさらに、ちょっと変だぞの部分をすげ~底上げした、みたいな(笑)
―「どこか変だぞ」→「明らかに変だぞ」になっていった?(笑)
もう「これは明らかに異常だ!」って感じ。基本的には異常な空気しかないです(笑)。目を凝らしてみると、あっ、可愛いところもある!みたいなくらいで。
―なるほど。ちなみに、「HeiTanaka 2016年メンバー」ってインフォには書いてあったんですが、もしかしたらまたメンバー変わるかもしれないんです?
それは、まだ決めてないんですけど。メンバーの皆さんの事情もあるだろうしね(笑)。とにかく1回やってみないとわからないなっていうことが多かったから。1回やるまではそういうスタンスで。「バンドやります!」ってあんまり言いたくなくて、今回は。
―「バンド」っていうものへの執着が、SAKEROCKとかを経て、もうなくなったって感じですか?
いや、「バンド」ってやっぱなんか一生もんじゃないですか。
―背負うものが大きいみたいな?
うーん、だからすごくバンドには憧れますよ。でも、バンドの良さを突き詰めるやり方というか、「このバンドでやっていこうぜ!」とは僕は言えないというか。バンドっていうものに囚われない姿勢にしたいな、と。例えば、それこそ僕、最近お芝居の作曲仕事が多いんですけど、劇団って年に1回公演をするためにその前の2ヶ月間は仕事休んででもがっつり稽古をやる、みたいなスタンスで。「1個の作品を作るぞ!」って集まる時の“濃さ”みたいなものがあって。バンドだと、僕らはバンドだっていう認識だけがあって、ある意味ではバンドって楽に付き合うこともできたりとか、逃げ道も結構あったりもするんじゃないか、と思って。でも、それを乗り越えて、縛らない関係性だから良いみたいなのはあると思うんですけど、そのバンドの良さと、演劇やってるような人たちのぎゅっとした濃さには、同等な素晴らしさがあるんではないか、と。
―バンドだとそのメンバーでやるから意味があるというか、どっちかっていうと人が重要になるっていうか。でも、作品を作るために人を用意する、というか集めるみたいな感じなので。HeiTanakaに関しては、今お話いただいたように、人を重視するバンドというものの良さと、作品性を重視したプロジェクト的なものの濃さというもののちょうど中間な感じがしますね。
そうですね。かといって、作品を作るときにメンバーとの関係を1回作ったら、じゃあ次のメンバー、っていうわけではなくて、やっぱり関係性はどんどん深めていきたいとも思っています。それに、数をこなせばこなすほど、密なものになるとはもちろん思ってるから、単純に僕がやりたいことをやるためのものってわけではないんですけど、バンドっていう形態ではない形態にしたかった、ということに尽きますね。今回は特に、「自分がやりたいことは何か?」「何ができるか?」を探っている段階で、それに向けて、その何かができそうな匂いのするメンバーを感覚で集めて、「このメンバーだったら何ができるか?」ってことを考えていったんで、「バンドを始めたぞ!」って感じではないってことです。まあ、でも、バンドというものへの憧れはあるので、ちゃんとバンドとしての6人にもなりたいという……複雑な思いもあり。
―ややこしいですね(笑)。
現時点のHeiTanakaは、とにかくもう「僕を信じてもらう作業」みたいな感じかも(笑)。「さ〜て、どうしようか?」って顔つき合わせて作っていくんじゃなくて、「とりあえず、もう、信じてついてきて!」っていう。
田中馨
得意なのはコントラバスとエレキベースと曲作り。 2011年まで、SAKEROCKのベーシストとして活躍。2012年から自身のプロジェクト「Hei Tanaka」を結成。そしてそっと休止。2016年メンバーを改たに本格的に再始動。
Eテレ みんなのうたや、おじゃる丸エンディングテーマなど、幅広い層に人気のアコースティック・デタラメ・うたものユニット、ショピン。赤ちゃんと楽しむ世界の遊び歌、わらべ歌を演奏する、チリンとドロン。子供も大人も遊びの発明家 小学生からのワークショップを主宰する、ロバートバーロー。マルチインストゥルプレーヤー・yumiko率いる コーラスシンフォニックバンド、Yankanoi。トクマルシューゴバンドでは長年ベーシストとして数多くのフェスや海外ツアーに帯同。その他にもOorutaichi Loves The Acustico Paz Nova Band、川村亘平斎をはじめ、多くの録音やサポート等、素敵な音楽家達に誘って頂いたりしている昨今。舞台の音楽を担当を担当することも多く、ペンギンプルペイルパイルズ主催の倉持裕の作品や、劇団はえぎわ主催のノゾエ征爾の作品に多く関わる。2015年、SAKEROCKの解散ライブを両国国技館で盛大におこない、2016年1月には自身のバンドHei Tanaka主催の初企画で渋谷WWWをSoldout!今後のHei Tanakaの活動も見逃せない。
ライブハウスや各地のフェス、舞台作品、現代美術、こども達。数多くの面白そうな現場に節操なく現れて、かすかな波紋を呼んでは消えていく、少し頭がおかしい部分もある様子。そんなちょっと不思議な田中印の活動は今の日本の中でとても貴重で稀有だと評価する人もいるとかいないとか。