SPECIAL INTERVIEW: KEI TANAKA[Hei Tanaka]
田中馨と探る、HeiTanaka。最深部に眠るのは、パンク?ハードコア?!
―馨さん自身、今はHei Tanakaのことで頭がいっぱいだと思うんですけど、他にもいろいろやってるじゃないですか?それってどういう頭の中になっていて、何が結局やりたいのかな〜?って。
いろいろやったりしてるから、周りは迷惑してる部分もあると思うんですけど。僕は、そんなに器用でもないので、Hei TanakaやったらHei Tanakaばっかりのモードになっちゃったりするんだけど…。ただ、だからといって他でやってることが重荷になったり、やだな~とは全く思わない。よくある話かもしれないんですけど、むしろ余計に「ああすごいな〜このバンドは!」って気づかされたりしていて。それが自分のすべての活動にフィードバックされるんです。自分が参加している、ショピンだったら、ショピンっていう生命体で動いてる感じがするし。僕が細かいことを口にしなくても、ステージに立った時に、今やれることを一生懸命やると、ちゃんと素晴らしいショピンの音楽になる。それは、それこそバンドの凄さというか。ある意味Hei Tanakaもそうなりたいというか。「田中馨発信のひとつのプロジェクトの人たち」っていう次元じゃないところへ行きたいですね。
―バンドを“ひとつの生命体”と表現する馨さん、素敵です。ちなみに、今回のイベントタイトルも馨さんらしく、何だか変てこですが、これはどんな意味なんですか?
「列島は世界の雛形」ってすごい良い言葉だなと思って。実はラジオを僕、やりたくって。
―え?ラジオ?
そう。で、その時に一緒にやりたい奴がいて。すごい変な奴なんですけど。その人にラジオのタイトルはどうする?って訊いたら、「列島は世界の雛形、でしょ」って言われて…。
―(笑)。
すっげ〜!天才だな〜って思って。でも、その言葉を改めて噛みしめてみると、確かにそうだな〜と思ってきて…。日本列島を見れば、全てが詰まってるんだ、みたいな。日本列島に住むものとしての気概を持って行こうと…。
―フランク・ザッパってのは、馨さんが付け足したんですか?
これは松永良平さんっていう音楽ライターさんがいて、松永さんが前のHei Tanakaを見たときに、ツイッターか何かに「Hei Tanakaって音楽を、あの世のザッパに教えたらなんて言うだろ」みたいな感じで書いてあったので、その言葉がすごい好きで。それ、いただいていいですか?って。
―その2つを組み合わせて…ちょっとよくわかんない感じのイベントタイトルに(笑)。
よくわかんない感じになっちゃった。文字数多いよね(笑)。
―謎めいた感じの音楽とか言葉とか人が好きなんですよね?きっと馨さん自身。
もちろん聴いてもらって、踊って欲しいとか騒いで欲しいってあるけど、実際僕ライブ行っても、踊らないし騒がないんですよ(笑)。でも、身体が動くとか、踊るとか、そういう動き方をしなくても、細胞が騒ぐ時があるじゃないですか。だから、どっかの細胞が動いて欲しい。微動だにしてない僕みたいな人が集まったとしても、そこを目指しているというか。
―世の中的には、シンプルで分かりやすいものみたいなものが今、良しとされてる風潮があるじゃないですか。例えば、何かのビジュアルとかイラストとか、最近って白地に黒線みたいなのがオシャレとされたりしていて。絵もそうだし、音楽もそういうものが流行っている気がします。分かりやすくて、なんか聞いたことがあって、誰もが良いって思えそうな感じの音楽ばかりが流行っているというか。それに対する逆行を体現しようとしているんじゃないか、とも思えます。
わかります、わかります。音もね、武部くんが言うようにシンプルになってきてるというか。
―まあ、わかりやすいものが悪いって言うわけではないんですけど、例えば、トクマルさんの音楽ってポップなんだけど、でもなんか分かりにくさというか、難解さも同居して存在している、という感じがしますよね。HeiTanaka的にもそういうポップ性とプログレ感の同居は狙っているのでしょうか?
そうなんですよね。僕らの持ち味としては、「あれ?よく見たら可愛い!」っていう要素があるはずなんで(笑)。もはや、音楽でもなくて、可愛らしさで勝負する!くらいの(笑)。
―(笑)。
まあ、なんというか、自分ができるやり方、やれることって多分そんなになくて。それをどう組み変えるのかっていう…。中学生のときはパンクを聴いて、高校生でハードコアとかも聴いてたし。それが、今、35歳とかになって、いろんな音楽を聴いたり、自分の今の流行りとかあっても、その根っこの部分はなかなかさておいて作れないな〜と思う時はあって。う〜ん……だからそういう意味では時代に逆行してるのかな〜。明言はできませんが。
多分、まあ今はこれがやりたかった、という感じでしょうね。一番音楽が不自由な時代に聞いていたような表現というか。中学生だったら楽器弾けない、理論が分かんない、知識がない。だけど好きだった、みたいな部分を1回消化しないと、30歳の頃に好きになったような音楽をできないって思ったんじゃないですかね(笑)。一番不器用だった時代の自分に対して、答えを出さないと次にいけない気がしているのかもしれない。
―頭のどこかにずっと残っていた、自分の本当にやりたかったことが、Hei Tanakaだと?
うーん。それこそハードコアとかをやるのではなくて、その中高校生の頃の衝動のようなものがあって、色んなものを経験して、吸収した現在の僕が、答えを出したいなあって思って選んだやり方が、今回のHei Tanakaかもしれないですね。
―HeiTanakaは、パンクであり、ハードコアである?
それはね、あると思います!
―なるほど!それが、いろいろおかしなことになってしまって、アウトプットとしてはこうなった!みたいな感じってことですね。
そうですね。なんか、ちょっとこれ、あれですけど。もし、見てもらってね、「これはパンクであり、ハードコアである音楽だ!」なんて、もし言われたら、すごいうれしいんだけど。でも、やっぱりその純粋なパンクやハードコアに、いろんなものがくっついてきちゃってて、なんかもう密林みたいになってるから(笑)。
―きっと、パンクとかハードコアってもしかしたら核にあるのかもしれないけど、それは見つけられないくらい埋もれてますよね?
埋もれてますね。誰もわかんないくらいの所に。
―当日のライブ、楽しみにしています!今日はありがとうございました〜。
バンドになりたいけど、まだバンドじゃない。ハードコア/パンクのハートも持ち合わせ、可愛らしさと怪奇性を混在させた未知数の高い音楽を鳴らす…HeiTanakaの全貌がいよいよ明らかになる、2月21日(日)。新栄Vioで行われるHeiTanaka名古屋公演、その眼と耳で聴いてみてほしい…。
ちなみに、元HeiTanakaメンバーで今回のHeiTanaka名古屋公演に出演する、シャンソンシゲルによる個展「DANCE,CHANCE,ROMANCE」がLIVERARY officeにて開催中!こちらもあわせてぜひ!
田中馨
得意なのはコントラバスとエレキベースと曲作り。 2011年まで、SAKEROCKのベーシストとして活躍。2012年から自身のプロジェクト「Hei Tanaka」を結成。そしてそっと休止。2016年メンバーを改たに本格的に再始動。
Eテレ みんなのうたや、おじゃる丸エンディングテーマなど、幅広い層に人気のアコースティック・デタラメ・うたものユニット、ショピン。赤ちゃんと楽しむ世界の遊び歌、わらべ歌を演奏する、チリンとドロン。子供も大人も遊びの発明家 小学生からのワークショップを主宰する、ロバートバーロー。マルチインストゥルプレーヤー・yumiko率いる コーラスシンフォニックバンド、Yankanoi。トクマルシューゴバンドでは長年ベーシストとして数多くのフェスや海外ツアーに帯同。その他にもOorutaichi Loves The Acustico Paz Nova Band、川村亘平斎をはじめ、多くの録音やサポート等、素敵な音楽家達に誘って頂いたりしている昨今。舞台の音楽を担当を担当することも多く、ペンギンプルペイルパイルズ主催の倉持裕の作品や、劇団はえぎわ主催のノゾエ征爾の作品に多く関わる。2015年、SAKEROCKの解散ライブを両国国技館で盛大におこない、2016年1月には自身のバンドHei Tanaka主催の初企画で渋谷WWWをSoldout!今後のHei Tanakaの活動も見逃せない。
ライブハウスや各地のフェス、舞台作品、現代美術、こども達。数多くの面白そうな現場に節操なく現れて、かすかな波紋を呼んでは消えていく、少し頭がおかしい部分もある様子。そんなちょっと不思議な田中印の活動は今の日本の中でとても貴重で稀有だと評価する人もいるとかいないとか。