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FEATURE / 特集記事 Oct 18. 2016 UP
【SPECIAL REPORT:アッセンブリッジ・ナゴヤ2016】
切り出した丸太とともに、川沿いを移動し、港まちに上陸!?
前衛集団・ヒスロムが企てた、壮大なるフィールドプレイ。その③

Assembridge NAGOYA 2016

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ヒスロムの撮影動画より

 

京都の前衛集団・ヒスロム。現在、開催中の「アッセンブリッジナゴヤ2016」にて彼らの作品は展示されている。前回、LIVERARYでは彼らの制作過程の初日を追った(コチラ)。「丸太とともに川沿いを移動しながら、港まちを目指す」という、パッと聞いてすぐに理解することができないであろう、この大がかかりなプロジェクトはその後も数日間に渡って継続された。制作初日以降の同行を、港まちづくり協議会・古橋敬一が追った連載シリーズ後編。ついに、ゴール地点(展示会場)の港まちへ向かう……。果たして無事たどり着けたのだろうか?いよいよ撮影はクライマックスへ。

 

【SPECIAL REPORT:アッセンブリッジ・ナゴヤ2016】

切り出した丸太とともに、川沿いを移動し、港まちに上陸!?

前衛集団・ヒスロムが企てた、壮大なるフィールドプレイ。その③

Text&Photo : Keiichi Furuhashi [ JOINT COMMTTTEE OF PORT TOWN ] 
Edit : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY ] 

 

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Day5(9月11日)

またしても晴れ。雨雲はどこにいるのだろう。今日からは、ゴムボートに加えて、アルミボートが登場。新しい機材をセットするのにも今まで以上に時間がかかってしまった。先に弁当を食べて、準備を急ぐ。

川の様子は、昨日までのそれとは全く別物となった。流れに身をまかせながら動くことしかできなかった昨日までとは打って変わって、目に見える流れというものは、ほぼない。アルミボートを降ろし、エンジンを取り付けた。

 

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今日は、一旦丸太から離れ、エンジンを動力にしたボートの感触をつかむための新しい遊びにチャレンジすることに。アルミボートに搭載した小さなエンジンで、果たしてどれほどのスピードが出せるのかを探らなければならないからだ。ようやく準備が整って入水できたのは、14時頃。

 

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川を囲む風景は全くと言っていいほど違う。河岸を利用した市民農園が広がっていたり、ゴルフや野球を楽しむ人たちもいたり、釣りをやっている人たちもちらほら。

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当然、そうした人たちに、「何やっているんですか?」「何かの調査ですか?」と幾度となく声をかけられることにも。その度に、アートプロジェクトで、、、という説明は、どうにも伝わらないのだが、「庄内川上流から丸太を切り出して名古屋港まで移動していくんです」という説明には、誰もが目を丸くして興味津々そうなのが面白かった。

 

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16:00

あっという間に夕暮れ時。

水色とオレンジが混ざり合う。

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アルミボートに積んだ高圧洗浄機を使って、新しい遊びも。水しぶきが綺麗。

 

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このプロジェクトは、突拍子もないように聞こえるけれど、話そのものは明瞭なんだと思う。そして、本当に彼らはとても楽しそうなのだ。

 

21:00

夜間撮影

夜間には、発電機を乗せ、工事用の照明器具を使った撮影も行った。岸から彼らを見守りながら、あのエネルギーは一体どこから来るのだろうと今更ながらに思った。

 

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23:30

夜間撮影終了

明日の朝7時過ぎには、予定している入水ポイントに辿りつかねばならない。彼らと丸太がいよいよゴールを目指す最終日となる。

 

 

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Day6(9月12日)最終撮影日

7:30 

入水ポイントの一色大橋に到着。

 

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ここから、一気に飛島エリアまで向かう。

そこでグレートマリンのモーターボート2台と合流する予定。思いの外、潮が引いていて、浅瀬が広がっている。エンジンプロペラが、川底に当たらないだろうか。様々な不安がよぎるが、とにかく10時を目指すより他はない。とにもかくにも動き出す。

 

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丸太もとうとうここまで来た。旅もクライマックスだ。ここからは、ヒスロムたちを見送って、飛島へ。

 

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10:00

飛島のグレートマリンにて、ヒスロムたちを待つ。

待つこと、しばし。

ほぼ予定通りに、ヒスロムたちが見えてきた。

 

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幸運にも快調なペースで進むことができたようだ。

潮風の香りが立ち込める中で、撮影を続ける彼らを見守りながら、明らかに海に出ているんだという実感が沸き立つ。

 

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結果的にはほぼ予定通りの10時頃には、グレートマリンの船と合流。

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こちらは、グレートマリンのユキさん(左)とヒロキさん(右)。

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ここで約2時間、丸太をグレートマリンのボートに引き継ぐシーンを撮影。ヒスロムは、これまでとは全く異なる海の波に、相当な悪戦苦闘を強いられる。

 

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やはり、ボートの操作も撮影のカメラワークも散々だったらしく、波の落ち着いた場所で再撮となった。

 

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12:00

グレートマリンにてカレーライスをいただく。大盛りのカレーライスが美味い。

 

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13:00

ここまでは、ほぼ予定通り。午後は、トリトンをくぐって金城埠頭を迂回しながら進み、今度は海側から港まちを横目に堀川を上がり名古屋清港会を目指す。航海途中で、いいポイントがあれば、遊びにも挑戦したいが、先の波しぶきが頭をよぎる。丸太の表情もだいぶ変わってきたように感じる。

 

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13:30

丸太とグレートマリンの船が出会うシーンを再度撮影。

今度は、一発でOK。丸太を牽引する中型船と撮影用の小型船に分かれてグレートマリンを出発。圧倒的なスピード感に改めて唖然としたが、すぐに身体が高揚してくるのがわかる。この状況下の中で何ができるか。すでに気持ちはそちらに向かっているのだ。

 

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14:30

まるでマンションのような巨大な自動運搬船のすぐそばを通りすぎる。監視警戒艇の様子を伺いながら、自動車運搬船の近くでの撮影も決行。ヒヤヒヤしたが、注意されたら、頭を下げて中止するだけと、こちらも腹をくくる。まるで、象とアリのような対比、丸太はさしずめマッチ棒か。

 

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でも、ヒスロムはいたって真剣。夢中になってカメラを回し、丸太にしがみつく。グレートマリンの船を操ってくれたユキさんとヒロキさんも、「なぜ丸太を?」という疑問がいつの間にか消えてしまった様子だ。

 

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その後は、撮影する船を入れ替えたり。最速で飛ばして浮き上がる丸太を撮影したり。

 

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15:00

予定通り、名古屋清港会に到着

ユキさんとヒロキさんもこの表情。行為の意味はともかくも、一緒に遊ぶと、人と人の距離は、ぐっと縮まる。

 

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名古屋清港会は、名古屋港に注ぐ河川や港湾区域の清掃作業を担っており、そこには、集めてきた様々な漂流物を引き上げるためのクレーンがある。このクレーンを使って丸太を引き上げる、というのが今回のプロジェクトのゴールだ。

 

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15:30

丸太引き上げの撮影スタート

丸太を平行に引き上げるために、何度もロープを結びなおし、丸太が引き上げられた時の水滴や静寂の瞬間をどう撮影するかを議論し、撮影が何度も繰り返される。

 

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緊張する時間だった。

周りでそれを見守る関係者も、固唾を飲んで見つめている。改めて、このプロジェクトに多くの人々が関わってくれていたことがわかる風景だった。

 

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16:30

全ての撮影が終了

クレーンに引き上げられた丸太が無事、トラックの荷台に収まり、撮影は無事終了となった。ヒスロムたちは、グレートマリンの船に乗って、再び飛島へ。まだ残作業が残っているのだ。とはいえ、プロジェクトは一旦ここで区切り。夕暮れの堀川。海へと向かう2艘の船。ヒスロムや関係者の人々の笑顔も含め、中々素敵なエンディングムードが漂っていた。

 

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ヒスロムは、これまでにも様々な場所でフィールドプレイを繰り返し、それらのパフォーマンスを映像作品として残してきた。しかし、今回は、そこにもう少しストーリー性を織り交ぜた、短編映画のような作品づくりを目指してきたという。4メートルを超える丸太を庄内川上流から切り出し、これだけの長距離を、わざわざ効率的とは程遠いやり方で移動させる。それが一体何のためだったのかは、未だによくわからない。よくわからないが、そこには見る者の側の想像力を刺激する物語的な世界観が確かに存在している。

 

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完成した動画作品より

 

現在、映像と丸太の展示は、すでに始まっていて、多くの人々が訪れている。この記事を読んでいただいた方には、ぜひ一度、ご覧いただきたい。また、10月22日には、ヒスロムによるパフォーマンスも開催が予定されている。そちらも必見なこと間違いない。

 

 

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ヒスロムを追いかけ続けたこの連載は次回で最終章を迎える。ヒスロムと服部浩之(「アッセンブリッジナゴヤ2016」「あいちトリエンナーレ2016」キュレーターのひとり)との対談の様子をレポート。お楽しみに。

イベント情報

2016年9月22日(木)〜10月23日(日)
Assembridge NAGOYA 2016
会場:名古屋港〜築地口エリア一帯
休館日:9月26日(月)、10月3日(月)、10月11日(火)、10月17日(月)
※名古屋港ポートビル展示室は10月17日(月)のみ休館
主催:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会
構成団体:名古屋市、港まちづくり協議会、名古屋港管理組合、(公財)名古屋フィルハーモニー交響楽団、(公財)名古屋市文化振興事業団
問:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会事務局
名古屋市港区名港1-19-23 港まちポットラックビル
TEL 052-654-7039(受付11:00〜19:00)
http://www.assembridge.nagoya

【音楽部門】
2016日9月22日(木)〜9月25日(日)
ピクニックに出かけるように、港まちで音楽を。
港まちに、総勢200名の奏者が集結!

会場:つどいの広場特設会場 水の劇場<ヴァッサービューネ>、名古屋港ポートビル、ポートハウス、港橋広場公園、名古屋港水族館、港まちポットラックビル、港まちの喫茶店、居酒屋 ほか
出演者:名古屋フィルハーモニー交響楽団、ジャン=マルク・ルイサダ、ミシェル・ベロフ、円光寺雅彦、なぎさブラスゾリスデン、三浦一馬、村治奏一、中部フィルハーモニー交響楽団、セントラル交響楽団、茂木大輔、大宮臨太郎、島田真千子、宮坂拡志、朴葵姫、赤坂智子、高橋礼恵、辻本怜、山根一仁、今峰由香、岩崎洵奈、名古屋ダブルリードアンサンブル、名古屋アカデミックウインズ、愛知室内オーケストラ、Arion Saxophone Quartet、弦楽アンサンブルフルール、Nuovo anno、La la quart、Fleurs、トリオ de ブランチ、Trio Reson、ISSAKU & SACCO、加藤恵利子、佐藤光、佐野功枝、安田祥子、吉田絵奈、KASH ほか
料金:無料 ※ヴァッサービューネでは一部サポーター席(有料)、ポートハウスの公演ではアッセンブリッジサポーター限定公演があります
企画:中村ゆかり

【アート部門】
2016年9月22日(木)〜10月23日(日)
パノラマ庭園─動的生態系にしるす─
会場:港まちポットラックビル、旧・名古屋税関港寮、名古屋港ポートビル、ボタンギャラリー、旧・潮寿司 ほか
時間:11:00〜19:00
パスポート料金:700円(「あいちトリエンナーレ2016」のチケット提示で600円)
※名古屋港ポートビル展示場入場券を含む
※中学生以下は無料(名古屋港ポートビル展示室はのぞく)
※パスポートは、ご本人に限り会期中何度でも入場可(名古屋港ポートビル展示室は1回のみ)
参加アーティスト:碓井ゆい、臼井良平、L PACK.、遠藤俊治、オル太、城戸保、クリス・チョン・チャン・フイ、コラクル+渡辺英司、ゴードン・マッタ=クラーク、下道基行、鈴木悠哉、玉山拓郎、徳重道朗、トラベルムジカ、中尾美園、ヒスロム、山本聖子
企画:服部浩之、Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya](吉田有里、青田真也、野田智子)

<関連イベント>
2016年10月22日(土)
ヒスロム関連イベント2:
ヒスロムパフォーマンス
会場:旧・名古屋税関港寮
時間:19:30〜20:30
定員:30名(予約不要)
参加費:500円

ヒスロム

hyslom/ヒスロム(加藤至・星野文紀・吉田祐)は山から都市に移り変わる場所を定期的に探険している。2009年から始動。この場所の変化を自分たちが身体で実感する事を一番重点に置き、その時々の遊びや物語りの撮影を行う。ここでの記録資料を作るにあたり、映像、写真の他に出会った人々を演じることや、日記、スケッチの作成、立体物の制作やパフォーマンスなど様々な方法を試みている。2012年第6回AACサウンドパフォーマンス道場で優秀賞を受賞。http://hyslom.com/index.html

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