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FEATURE / 特集記事 Mar 08. 2017 UP
【SPECIAL INTERVIEW|cafe TSUNEZUNE / トコナメハブトーク 】
地方だからこそ生み出せる、余剰スペースの使い方。

まちのメディアピープル#05:cafe TSUNEZUNE(愛知|常滑)

 

 

海と山に囲まれた知多半島の中ほどに位置し、中部国際空港を擁する常滑市。古くから窯業が伝統産業として栄え、日本六古窯に数えられるなどその歴史は深い。そんな常滑市に店舗を構えるのが、今回、お話を伺うことになったcafe TSUNEZUNE。古い倉庫をリノベーションして2014年にオープンした同店は、デザイナーのナガオカケンメイ率いるD&DEPARTMENT PROJECTが発行する、ロングライフデザインの観点から独自の審美眼で選び出したその土地の物や場所を紹介する観光ガイド『d design travel』の愛知号でも取り上げられるなど注目を集め始めている。

通常のカフェ営業の他にも、イベントや展示会も催され、中でも定期的に開催される、全国からゲストを招いたトークイベント「トコナメハブトーク」は興味深い。建築やまちづくり、デザイン、民藝などをテーマに、ざっくばらんに語られるこのイベントは、参加費無料のイベントとは思えない内容の濃さで、各地からオーディエンスが集まる人気イベントとなっている。この「トコナメハブトーク」の魅力を、謎を、探るべく、私たちは常滑のcafeTSUNE ZUNEへと向かった。

黒いトタンの壁が美しい、凛とした佇まいの建物。入り口をくぐり、店内へと続く階段を上がると、カフェ店内は木の温もりを感じるあたたかな空間になっている。カウンターと、テーブル席がひとつだけの小さなカフェかと思いきや、カウンターの背後の仕切りを開けると、奥には開放的なイベントスペースが広がっていた。やわらかな光と風が入る心地よい店内で、トコナメハブトークを主催する3人である、フリーデザイナーの河合秀尚さん、cafeTSUNE ZUNEの店主・河合忍さん、そして建築家・水野太史さんにお話を伺った。

 

まちのメディアピープル#05:

SPECIAL INTERVIEW:
cafe TSUNEZUNE / トコナメハブトーク
Hidenao Kawai , Shinobu Kawai, Futoshi Mizuno

Interview,Text&Edit:Ami Sakakibara[LIVERARY]
Photo:Yoshitaka Kuroda[LIVERARY / ON READING]

 

地方だからこそ生み出せる、余剰スペースの使い方。

―素敵な建物ですね。こちらは古い建物をリノベーションされたと伺いました。築何年くらいなんですか?

河合秀尚(以下、河合):築60年くらいです。もともと盆栽鉢の貿易の梱包作業をしていたところなんです。リノベーションの設計をしてくれたのがこちらの、太史君で。

―皆さんは、常滑ご出身なんですか?

河合:僕は足助町の里山育ちで、就職したのがきっかけで、知多半島に来ました。

河合忍(以下、忍):私はずっと常滑です。

水野:僕は高校までこっちで、建築を学びに京都の大学に行きました。途中休学して、ここから近くにある集合住宅を学生時代に設計したんですけど。

―在学中にですか?

水野:そう。結構大変でした。2年くらいかけて事業計画とかもやって。休学してる間は、常滑に住みながら名古屋の設計事務所で丁稚奉公みたいな感じで修行して。大学卒業後は東京の設計事務所でアルバイトしてしながら勉強しました。東京にいるときに、勝手に常滑の都市計画みたいなものを作っていて。

―え、勝手に?(笑)

水野:そう。

:その都市計画を見せてもらったから、リノベーションの仕事を水野君に頼んだんです。

河合:その計画、市長に提案してるんだよね。すごい計画で。

:常滑散歩道の丘陵を利用して、穴掘って、風呂!みたいな。それ見たときにここに住みたい、って思って。この人すごい!みたいな。(笑)

水野:そんな風に言ってもらえて、ありがとうございます。

:実は、中学校の同級生なんですけど当時は全然接点なくて。久しぶりに会って、これを見せてもらって、建築の人ってこんなこと考えれるんだ~と驚きました。ちょっと建築家のイメージが変わりました。

―そうですよね。建築家って、全然建物だけじゃないですよね。全体の環境とかも設計する、って感じですよね。

河合:建築家って、グラフィックのことも話せるし、プロダクトのことも話せるし、全部を内包してるんだよね。だからすごいと思う。ここをどうするかみたいな話の時に、いいタイミングで太史君に出会った。最初はほかの人にお願いしようと思ってたんだよね。

 

 

―それは…奇跡のタイミングですね。

河合:太史君に設計を依頼したら、最初にオーダーしてたものと違ったものが出来上がってきたんだよね。でもそれが、絶対こっちのがいい!というもので。

:細かいことは言ってないんだけど、すごくいいものが出来上がってきたんです。

水野:最初の依頼が、現実的に難しかった、というのもありますけどね。(笑)

―最初からイベントをやることを見越した設計を依頼されたんですか?

河合:そうですね。

:基本的には、カフェスペースの方しかいじってません。イベントスペースの方は、壁もそのまま。床を拭いたくらいです。

河合:階段下のエントランスとか、1階の変わった材質の壁とかは、全部太史君の提案です。

水野:今のカフェスペースの入り口はもともと階段がなくて、カフェスペースとイベントスペース合わせたワンフロアでした。最初は外階段からのアプローチにしたいっていう相談を受けたんだけど、トイレはもともと1階にあったので、1階の階段下をエントランスにすると、トイレもそのまま使えるし人が集う場所としてもいいかなと思って。

河合:今1階には木工作家の方がアトリエとして借りてて、その横には「炎友会」という70代の方たちがやっている陶芸のギャラリーがあります。エントランスは1つなんだけど、そこから入るといろんな人が色んな活動をしているマンションみたいな感じがいい、っていう提案を太史君からしてもらって。結構静かな町なんだけど、賑わいを感じさせる場所にできたらいいなと。

 

 

―なるほど。人が集う場所になっているってことですよね。それにしても、イベントスペースがとても広いですね。

河合:まず、カフェスペースが小さいっていうのは、ひとまずは僕ら2人でできるように最小限のスペースで作っています。空調を効かせるためにも、ちいさく仕切っている。

水野:あとは、余剰スペースが作れるっていうのは地方の良さじゃないかと思っていて。余剰の使い方として、いろいろ手をかけて投資してやるよりは、余剰に寄り添うことで、その余剰が活きるっていうやり方の方が現代的っていう感じがしています。地方だと、空き地、空き家がどんどん余ってきていて…。ほったらかしだと何も使われないスペースだけど、近くにいて、たまにイベントやギャラリーとして使ったりすると、そこが活きたスペースになる。河合さんに提案した時、ここを半外部だと考えてほしいと伝えました。イベントスペースの方は、いい季節とかイベントの時に開放するようにすることで、あんまり無理せずに豊かな空間やプログラムが作れるんじゃないかと思ったので。

河合:カフェは日常、時々やれるイベントの場は、この地域が面白いってことを発信できるスペースにしたいという思いがあります。

―なるほど。イベントスペースを半外部にすることで、風通しの良い空間になって、外部の方も自由に利用できる。

河合:今2年やってみて、ようやく第三者のイメージが確立してきた感じがあります。最初はすごい計画したんですよね。企画書も起こして、もっとイベントを回す予定だったんだけど、できることしかできなかったのが正直なところです。

なので、ここのイベントスペースで定期的に開催しているトークイベント、トコナメハブトーク(以下、ハブトーク)の存在はここにとっても大きいです。人と出会う機会が増えることでこの場所も良くなっていると実感しています。

:もともと、ここはお店をはじめる前から「常滑フィールドトリップ」という常滑の街を使ったアートイベントの会場として開放していたことがあったので、この場所に人がいるっていうのを想像できていていたのも大きかったです。

河合:常連さんは地元の方が多くて、観光の方は、ハブトーク以外にでもイベントや展示会をやったりすると、やきもの散歩道を下って来てくれる。地域に寄り添う場としてはかなり形が出来てきたと思います。

―器の広いスペースになっているんですね。実際、これだけ広さが確保されていると、なんでもやれますね。

河合:現に、芸大のプレゼンテーションなんかをやったりとかしてます。最大60人くらいは入れますね。

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cafe TSUNE ZUNE
住所:愛知県常滑市栄町7 丁目164
営業時間:10:00~17:30
定休日:火・水曜日
http://tsunezune.jp/

トコナメハブトーク
常滑内外のいろんな分野でおもしろい活動をしている人を交えて、その活動のことや常滑のことなどを、ざっくばらんに語り合うイベントです。中部国際空港がハブ空港であることから、集合と拡散する場所(ハブ)をイメージしてハブトークと名付けました。気軽で楽しく良い刺激になるような、「まかないめし」であり「おすそわけ」のようなイベントにしたいと思っています。「まかないめし」というのは、そこにあるもので、肩肘張らず内容(おいしさ)重視、時に実験的、という意味です。「おすそわけ」というのは、常滑の人や、常滑に全国・海外から来るおもしろい人たちに話してもらい、それを共有する場になれば、という意味です。そうして聞くほうは何か良い刺激になったり、話すほうはそれが広く伝わったり考えていることがまとまったり、またその話を受けて参加者どうしが話すことで交流や新しい動きが生まれたり、何かのかたちでアーカイブすることで、常滑の現在が見えてくるような、一石が二鳥にも三鳥にもなるようなイベントにしたいと思っています。
<トコナメハブトーク製作委員会>
水野太史/水野太史建築設計事務所
河合忍/TSUNE ZUNE〈常々〉
河合秀尚/Design IROHA

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