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FEATURE / 特集記事 Mar 08. 2017 UP
【SPECIAL INTERVIEW|cafe TSUNEZUNE / トコナメハブトーク 】
地方だからこそ生み出せる、余剰スペースの使い方。

まちのメディアピープル#05:cafe TSUNEZUNE(愛知|常滑)


観光じゃない、産業としての焼き物を見ると、常滑はもっと、面白い。

 

河合:そういえば一度、出張ハブトークっていうのもやったことがあるんです。名古屋のhaseというギャラリーのオーナーが「これだけ人が集まるのはすごいね」と言ってくれて、日野明子さんがいらっしゃるときに、ちょうどタイミングがあってやることになりました。

水野:最初は、haseに行って日野さんとトークするっていう企画だったんだけど、しゃべるのはこちらは完全に素人だし、そんな中に行ってもあんまり意味ないかなと思って。自分のトーク力のなさには自覚的ですから(笑) だから、日野さんに常滑に来てもらって、面白いところを見てもらってからhaseに行ってみんなに話すっていうのだったら、イベントとして成立するかなと思って。常滑で撮った写真とかもスライドで見せながら、名古屋の近郊にある常滑っていう産地の現状とかを日野さんにしゃべってもらうっていう提案をさせてもらいました。

―それって、まさに「おすそわけ」ですね。常滑から名古屋に持っていって、名古屋の人におすそわけするっていう。

:日野さんが、いい意味で常滑の印象が変わったって言ってくれてて。もうそれだけで、よかったなとと思いました。

―そうですよね。そのときはどこを回られたんですか?

河合:TSUNE ZUNEの大家さんでもある山秋製陶所の製造の工場と、太史くんの関わっている水野製陶園です。

水野:日野さんは、焼き物の職人さんや作家さんのアトリエにはすでに行ったことがあるみたいだったので、焼き物の工場を見てもらおうと思ったんですよね。常滑ってそういうところがいっぱいあって。実は、産業としての焼き物っていうのが常滑の一番の特徴なので。日野さんもそれを面白がってくれたんじゃないかな。日野さん自身、工業製品も好きな人だと思ったから。

河合:常滑って、どうしても急須とか招き猫のイメージが強いけど、実はインフラの焼き物を作っていた産業としての歴史もあって、そっちの常滑焼も魅力的ですよ。観光からだと見えにくいんだけど、もっと広い常滑が見える。

 


<常滑の街を歩くと、あちらこちらで土管が見られる。石垣の代わりに使われていることも。>

 

―日本の生活の基盤を支えてたってことですもんね。

水野:土管が、産地としての常滑をいちばん盛んにした物なんですよ。土管ってもともとイギリスから輸入してたんですけど、日本は貧乏国で逆にイギリスは発展した国だったから、輸入なんかしていたらコストがめちゃくちゃかかってしまう。だから、早急に土管を作る必要があった。そこで常滑の鯉江方寿っていう人が製造方法を開発して、しかもそれを閉じずにみんなに型を開放したらしいんです。

―土管なんて、器よりもっともっとインフラですもんね。

水野:下水管ですからね。

河合:衛生陶器っていうんだけど。そういう生活の基盤を支えてる産地だっていうのをわかってもらえると、もっと常滑ってかっこいいかなと思って。

―かっこいいです!!

河合:そこが、他の産地とは明らかにちがう特徴です。

水野:大きいものを扱ってきた町なんで、考え方も、ダイナミック。悪く言えば大雑把なんですけど。(笑)以前、瀬戸と常滑の焼き物が使われた街並みを比べた本が出ましたけど、瀬戸は整然としていて綺麗なんですけど、対して常滑は、「使えりゃいい」って感じで…。塀を土管でつくって、足りないところは破片で埋めるみたいな。(笑)逆にかっこいいですけど。

河合:本当によくあらわしてるよね。まち歩きが評判よくて、特に太史君の建築家の友人とかが度肝抜かれて帰っていく。

水野:そうなんですよ。新しいコンセプトが生まれた、とか言ってね。

河合:窯づめに使う道具も傷になったりすると、捨てずに使っているのはよく見かけます。

―なんでも無駄にしないんですね。塀に埋め込まれている土管や焼酎瓶は、元々は用途があって使ってたものを使わなくなったからこういう形に利用してるってことですか?

水野:たぶんB品とか不良在庫を使ってるんだと思います。だから見た目は全然気にしていない。”用”しかないんですよね。でも、土管とか、うまく考えたな、と思って。コンクリートって普通は型を木枠とかで作るんです。でも、土管を型にしてしておいて、そこにセメント流せば、そのまま打ちっぱなしでいいんですよ。型枠外す手間もないし。強度とかはたぶん計算してないから、構造的には怪しいんですけど(笑) でも、もし強度計算して鉄筋入れてやっていたら、コンクリートの中性化とかも陶器で防げるから、理にかなってるんです。この時の職人さんがそこまで考えてるとは思えないですけどね。

―自分のところで作っている商品の不良品を、捨てるのもったいないから利用しよう!みたいなことですかね。

水野:そうですね。あとは、アーティストの大竹伸朗さんが直島の銭湯の絵(「直島銭湯I♥湯」というタイトルの作品)を常滑のINAXで作業されたんで、その際に滞在されたときに、常滑のまちに結構衝撃を受けたみたいですよ。塗装するときに、日本は普通下にブルーシートとか引いて養生するじゃないですか。でも常滑のまちは、全部垂れ流し。下にペンキとか、コールタールとかが流れ出てて。それにすごい感激されてました。海外とかではよくあるけど、日本ではじめて見たって言ってましたね。(笑)

―まち全体が、ダイナミックってことですよね。

河合:昔の共同で使っていた窯は、度肝抜かれる窯のでかさですよ。あれは、遺跡みたいだよね。アンコールワットみたい。ぜひ見に行ってほしい。

:あの大きな窯に、火が入ってたかと思うと、恐ろしくなってきますよ。常滑って、ちょっと炭鉱の町みたいなところがある気がします。

水野:みんな土管作る工夫たちだから、この辺の昔のラーメンとかは塩分が濃いめだったり。

 

 

―産業遺産なんですね。じゃあ、その時代の後に、器を作る作家さんが出てきたんですか?それとも同時代にあったんでしょうか?

水野:作家となると、鯉江良二さんの影響もあったのかもしれませんね。現代陶芸の先駆者の走泥社の八木一夫とかの少し年下ぐらいだと思うんですけど、鯉江良二さんっていう有名な陶芸家さんが常滑にいて、この人が有名になりだしたころ位から、制作の場所に常滑を選んで来る人が増えたようなことを聞きました。良二さんは、常滑で生まれ育って、若い時タイルの工場でも働いているんですよ。そういった産業的なアイデアを焼き物に落とし込んでて。シャモットっていう焼き物の収縮を調整するための素材(耐火粘土を摂氏1300~1400度で加熱したのち、くだいて小さな粒にしたもの。耐火煉瓦の原料など。)があるんですけど、シャモット100%の陶芸作品をつくったり、生焼けの状態と焼いてある状態の焼き物を屋外に置いて、雨が降ると生焼けの物だけ崩れていくっていうインスタレーションをやったり。すごい考え方の柔らかい人で、書いた文章も面白いんですよ。なんか大きい人ですよね。そういえばハブトークにも来てくれましたよね。

―そうなんですか!

水野:常滑の現代陶芸っていうのは、鯉江良二さんをはじめ良二さんの同級生で友達の陶芸家の冨本泰二さんらの活躍が噂になって、外にも認知されて、徐々に作家が集まってくるようになったんじゃないかと思います。

:まだそういう、良二さんみたいなレジェンドたちが身近にいて、その人たちから直接当時のことを聞いたりできるのは本当に貴重なことです。

―常滑の歴史だし物語だし、財産でもありますね。

水野:だからなおさら、この現在進行形の常滑を記録して、アーカイブしていきたいっていう気持ちがありますね。

―なるほど。まだまだこれから、常滑も、トコナメハブトークも面白くなっていきそうです。今日はありがとうございました。

インタビューに向かう道すがら、やきもの散歩道にあるたまたま入った陶器のお店で、常滑の焼き物の話を伺った。焼き物の産地というものは、全国的を通して、都会に近く豪華絢爛な焼き物を作っている産地と、庶民の焼き物を作っている産地がセットになって存在していることがほとんどだそう。愛知県では常滑と瀬戸がその関係にあたる。そのため、伝統的な常滑焼は素焼きのものが多く、質素にみえる。それは言い換えてみれば、人々の暮らしに寄り添い、料理を盛り付けて初めて本来の用途が生まれる、生活に欠かせない道具としての力があるということだ。この地域のいいところを発見し理解し、器の広い”場”をつくる河合さん。その”場”に常に居て、来る人を受け入れてくれる空間をつくる忍さん。その空間に、人を集め、つなぎ、また広げる、料理のような美味しいコンテンツを盛り付ける水野さん。トコナメハブトークはまるで、常滑焼そのもののようではないだろうか。「用途を持って真の豊かさを得る」、その精神は、常滑に住む人々にも、街並みにも受け継がれていた。これから常滑は、知多半島はもっと面白くなる!そんな心躍る期待を胸に、今後もトコナメハブトークに注目していきたい。

 

Tokoname Hub Talk vol.8 トコナメアート夜話 開催決定!
2017年3月11日(土)
ゲストスピーカー:蔡筱淇&吉川公野
詳細はこちら。

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cafe TSUNE ZUNE
住所:愛知県常滑市栄町7 丁目164
営業時間:10:00~17:30
定休日:火・水曜日
http://tsunezune.jp/

トコナメハブトーク
常滑内外のいろんな分野でおもしろい活動をしている人を交えて、その活動のことや常滑のことなどを、ざっくばらんに語り合うイベントです。中部国際空港がハブ空港であることから、集合と拡散する場所(ハブ)をイメージしてハブトークと名付けました。気軽で楽しく良い刺激になるような、「まかないめし」であり「おすそわけ」のようなイベントにしたいと思っています。「まかないめし」というのは、そこにあるもので、肩肘張らず内容(おいしさ)重視、時に実験的、という意味です。「おすそわけ」というのは、常滑の人や、常滑に全国・海外から来るおもしろい人たちに話してもらい、それを共有する場になれば、という意味です。そうして聞くほうは何か良い刺激になったり、話すほうはそれが広く伝わったり考えていることがまとまったり、またその話を受けて参加者どうしが話すことで交流や新しい動きが生まれたり、何かのかたちでアーカイブすることで、常滑の現在が見えてくるような、一石が二鳥にも三鳥にもなるようなイベントにしたいと思っています。
<トコナメハブトーク製作委員会>
水野太史/水野太史建築設計事務所
河合忍/TSUNE ZUNE〈常々〉
河合秀尚/Design IROHA

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