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FEATURE / 特集記事 Sep 27. 2017 UP
【SPECIAL INTERVIEW】
第16回AAF戯曲賞大賞受賞作品『それからの街』上演。
ミニマル楽団・東京塩麹でも活躍する若手作家、額田大志が提示する“音楽的演劇”とは?

愛知県芸術劇場・小ホール(愛知|栄)


額田大志


額田大志は現在注目を集める、新進気鋭の若手アーティストだ。

現在24歳の額田は、高校在学中から都内のライブハウスを貸し切ってイベントを主催するなど精力的に活動。その後、自身のつくりあげたミニマルミュージック楽団・東京塩麹のバンマスとして才能を発揮している。人力で構築されたミニマルミュージックを通じて、新たな音楽の可能性を追求する東京塩麹での活動とはまた別軸で動いているのが、2016年6月よりスタートさせた演劇ユニット・ヌトミックでの活動である。

額田が東京藝術大学在学時に卒業制作として上演した演劇作品『それからの街』は、HEADZ代表も務める批評家・佐々木敦に絶賛され話題に。同作品の戯曲(=演劇の台本)が愛知県芸術劇場が主催する「第16回AAF戯曲賞大賞」を受賞。2017年10月21日(土)〜23日(月)の3日間、全4回にわたる『それからの街』愛知公演が、愛知県芸術劇場・小ホールにて上演される。

 

『それからの街』愛知公演は愛知県芸術劇場プロデュース公演として一新。

額田が演出した初演とは異なり、『それからの街』愛知公演は演出家に鳴海康平(第七劇場)を迎え、全キャスト公募の新たな作品として生まれ変わる。キャストには、中林舞、南波圭(なんばしすたーず/青年団)、茂手木桜子(さいたまネクスト・シアター)、山内庸平といった県内外の名だたる役者らが、公募にも関わらず集結した。この状況からもこの作品に対する期待値が見えてくるはずだ。

 


写真左から、鳴海康平(演出)、山内庸平(出演)、南波圭(出演)、額田大志(劇作)、中林舞(出演)、茂手木桜子(出演)、茂手木桜子(出演)、福留麻里(振付)

 

愛知公演でさらなるアップデートが期待される本作『それからの街』は、既存の舞台演劇の概念をいい意味で裏切った、新しい表現と思想を切り開くポテンシャルを秘めている。「どんな風に料理されるのか、自分が一番楽しみにしているかもしれない」と語る、作者・額田大志にインタビューを行った。

 

SPECIAL INTERVIEW:

MASASHI NUKATA

Interview&Text : Takatoshi Takebe [LIVERARY/THISIS(NOT)MAGAZINE ]
Photo : SaraHashimoto [ LIVERARY ]

 

現代音楽は、ロックよりも現代演劇の方にむしろ作り手の思想が近い 

 

ー額田さんは「東京塩麹」などでの音楽活動の印象が強かったので、昨年、愛知県芸術劇場の戯曲賞で大賞を受賞されたと聞いて驚きました。もともと「音楽」での表現活動から入って「演劇」というジャンルに関わりを持った経緯についてまずお聞きしたいです。どうしてそういう流れになったのでしょうか?

僕が在学していた東京芸術大学音楽環境創造科という学科は創設されてからまだ15年くらいの新しい学科で。ゼミが幾つかあって、音響、アートマネジメント、舞台芸術、音楽社会学……と。僕はその中の作曲コースだったんですが、作曲だけではなく、演劇やダンスや音響作品を論じることがあったり、音楽だけでなくいろいろなジャンルを包括している学科にいる、という環境だったんです。

ーなるほど。

「音楽」と「演劇」と分けると考えにくいかもしれません。例えば、僕がやっていた現代音楽は、ロックよりも現代演劇の方にむしろ作り手の思想が近いと思うんですよね。現代音楽をやっていく中で学校の環境もあいまって、ゆっくり今の活動表現のスタイルになっていったわけです。だから、よし、明日から演劇をやろう!とかではなく、いつの間にかこれをやっていて、今ここにいる形です。

ーでは、ご自身が「演劇」の作り手側になるうえで、何か大きなきっかけになった演劇作品とかはないんでしょうか?

それも環境の力が大きくて。割りとナチュラルに演劇を観る環境にあって、友達の舞台を観に行ったり、舞台の音楽を作ったりはしてました。でも、記憶にあるのは、自分にもこの方法論だったらできそうだなって思ったのが、平田オリザさんの「青年団」で。平田オリザ=劇団「青年団」主宰。現代演劇の改革者と言われる。

演出の構造がおもしろくて、0.1秒、0.2秒単位でセリフのタイミングを指示したり、めちゃくちゃ緻密に作り込まれていたんです。その発想から生まれる戯曲って、もはやかなり音楽的(楽譜的)だなと。そこまで指定したら、台詞も音として認識してるんじゃないかなとも思って。青年団は僕が考えていた演劇と真逆のことをやっていたので、これならできるなって思ったというか。演劇は全くわからなかったけど、楽譜的な発想に落とし込んだら自分も演劇作品を作ることができるんじゃないかと思いました。

 

 
第16回AAF戯曲賞大賞作品『それからの街』の戯曲

 

ー手法的には、楽譜に音符を落としていくような感覚で、音符ではなくセリフを落としていくように演劇をつくる、そんな方法論ってことですね。その手法なら、音楽的であることを演劇的にアウトプットできる、と。

つまりそういうことですね。

ーでも、演劇って音楽でいったら歌詞にあたるのかもしれないですが、ストーリーがあるのが基本じゃないですか。取材前にYouTubeにアップされている初演公演を観させてもらいました。

眠くなりませんでしたか?(笑)

ー(笑)。『それからの街』にも、もちろんストーリーがあるわけですが、そのストーリー自体に起承転結がないことによって、逆に最後まで食い入るように見ちゃいました(笑)。これってつまり、先にストーリーを作っておいて、後からセリフを音のように分解してリミックスしたような作り方なんでしょうか?

 

『それからの街』(初演公演より) 

※こちらの映像は初演公演の記録映像。愛知公演では、演出〜舞台装置、役者がすべて一新され、全く新しい公演となることが予想される。

 

 

リミックス感覚で作った、という表現であってると思います。まず、漠然とした大枠の話は一応あって、あとは、舞台上のどこにどの役者がいてほしいってのがあって、その動きを元に台詞をコピー&ペーストをしていったというか。

ー途中、元のセリフにある言葉を削ったりして非言語化したりもしてますよね。この言葉のコラージュのような継ぎ接ぎの台詞をあえてリアルタイムに人間が演じるってすごく大変そうだなって思いました。演者はどんな気持ちでこの作品に対して取り組んでるんでしょうか?

役者をお願いした人たちからも、「これは何が面白いかわからない」って言われましたね(笑)。「絶対、面白いから!」って説得し続けて練習してもらって……。なんとか初日にたどり着き。そのあとは一気に動員も伸びて役者のモチベーションも上がり、無事に初演を終えることができました(笑)。

 ー(笑)。この『それからの街』においては、役者さんたちはセリフを決められた通りに、決められた速度で話すことが強いられるわけですが、それって役者側の個性を排除したいのかな?とも取れました。極端なこと言ったら、役者たちがコンピューター制御されているロボットのようにすら感じました(笑)。

役者の個性の話だと、どれだけ台詞が非言語的になっても人間の個性は絶対に出ると思っていて。例えば、楽器でいうと同じ楽器であっても別の人間が鳴らしたら絶対音が違うと思うし。演奏者が違うことで音楽が変化するのと一緒で。だから役者側に対して「個性を消せ」とは全く言ってないんです。むしろ、出してほしいですね。

ーでは、例えば、リアルタイムで演じているのに、編集された映像作品のようにも感じました。映像化しようとか、そういったことは思わないんですか?

実際演じている時、セリフを何回も繰り返している姿を見ていると、だんだん役者じゃなくなるというか、セリフを何回もいうことでそのセリフを言わされている様に見えてくると思います。それがリアルタイムで共用できていることが大事じゃないのかなって気がしていて。

 


愛知公演に向けての稽古風景

 

映像だと作られた姿で、編集されたものであるっていう前提で観るんですけど。今、目の前で起きていることだっていうのをおもしろがってほしいですね。なぜ、機械でやらずに人間でやるかは、人間の方が絶対に良いっていう感覚はあるんです。

 

意味がない、答えがない、無駄なことができるのってアートくらいしかない。
結果を焦らなくても良いと言える状態ってすごく貴重

 
ちょうど昨日、鳴海さん(愛知公演での演出家)演出で上演される、今回の『それからの街』の稽古現場を見学していて、その答えが少しわかった気がして。例えば音楽も、録音されたら「音の波」になるじゃないですか。波形になった瞬間に、それは完成されたものとして客観的に聴くしかできないと思うんです。でもライブや演劇は、リアルタイムにその中に居ることができる。言い換えれば、お客さんは「作品の目の前に存在している」ことになると思います。YouTubeに上がっている『それからの街』も、映像で見たら編集された舞台と思うかもしれませんが、生で見たら余りそうは感じないでしょう。役者の動きや照明など圧倒的に情報量が多く、それが客観性というフィルターを通さずにダイレクトに伝わってくるから。この作品は、生で上演することを前提として制作された以上、映像の視点だけでは伝わらないものがあると思います。

 


写真奥:演出家・鳴海康平、写真手前:ドラマトゥルク・長島確

 

ーなるほど。何となくわかった気がします(笑)。演劇を作るようになってから、逆に音楽作品を作る際に何か自分の意識の変化を感じたりしますか?

やはり録音物よりも、ライブの作り方にこだわりが出てきましたね。ライブってCDを聴いてそのアーティストを好きになったら、生で見に行くみたいな文化だと思うんです。だからみんなが知ってる代表曲はライブで絶対盛り上がりますよね、当たり前だけど。だからみんな知ってる音源の代表曲みたいなのはライブで絶対盛り上がりますよね、当たり前だけど。だったら、じゃあそこを盛り上げないのもおもしろいんじゃないかって考えてて、何も言わずに何回も同じ曲やったりしてます(笑)。

 

東京塩麹

 

そういった額田さんの実験的なアプローチって、一見「?」ってなる人もいると思うんです。音楽にしても、演劇にしても。観ている人に対して、どういうリアクションを求めてるのか?狙いはどこにあるのか?ズバリ聞いてもいいでしょうか。

やっぱり演劇にしても音楽にしても、僕の狙いをあえていうなら「こういうのがあってもいいのかな」と、その人の中に余裕が生まれること、だと思います。こういう表現があってもいいよな、っていう寛容さをもたらすことができたらって思うんです。最近思ってるのは、意味がないものがあってもいいんじゃないかなってことで。今、意味がない、答えがない、無駄なことができるのってアートくらいしかないと思っていて……。

音楽も例えば歌が入るまでの時間、つまりイントロがどんどん短くなっていっている気がします。

ー最近は、Youtubeとかでザッピングするように音楽を聴く人も増えてますからね。イントロ長かったら、次の曲に変えられちゃって聞いてもらえないなんてこともありそうです。

でも、そう結果を焦らなくても良いと言える状態ってすごく貴重というか。最近そういう気持ちが大きいです。だから、こういう(『それからの街』のような)演劇があってもいいかなと。

ー今後も音楽的な演劇については探求していく感じでしょうか?

今後の作品作りについては、ストーリーがない状態で、より音楽的であることにフォーカスして演劇的な作品を生み出したいと思っています。ストーリーがなくても1時間くらいのパフォーマンスで演劇として魅せることを今はやってみたいですね。

ーストーリーに主軸を置かない演劇作品だからこそ、演じる人によってまた作品自体が大きく変化しそうですね。愛知公演は、キャストも演出家も舞台装置も初演とはすべて変えているところもある意味実験的ななのかな?と思いました。どんな風に変化するんでしょうか?

初演と違って、演出〜美術面まですべて任せてしまっているので、実際、僕自身もまだどうなるかわからないんです。今回の公演初演を早く観たいなあと自分が一番楽しみにしているのかもしれません。

 

イベント情報

2017年10月21日(土)~23日(月)
第16回AAF戯曲賞受賞記念公演「それからの街」
会場:愛知県芸術劇場・小ホール
時間:
10月21日(土)19:30〜
10月22日(日)14:00〜 / 18:00〜
10月23日(月)19:00〜
出演:中林舞、南波圭、茂手木桜子、山内庸平
作:額田大志
演出:鳴海康平
料金:
全席自由/一般 3,000円 U25 1,000円 (U25は公演日に25歳以下対象、要証明書)※3歳以下入場不可
チケット取扱い:
愛知県芸術劇場オンラインチケットサービス  
・愛知芸術文化センター内プレイガイド(TEL 052-972-0430/10:00~19:00※土日祝休は18:00まで)/月曜定休・祝休日の場合、翌平日)
チケットぴあ [Pコード:459-420] TEL 0570-02-9999
詳細:http://www.aac.pref.aichi.jp/gekijyo/syusai2017/detail/171021_aaf/

【関連イベント】
アフタートーク(※終演後45分程度)
10月21日(土)19:30開演回:鳴海康平、福留麻里、長島確
10月22日(日)14:00開演回:佐々木敦、鳴海康平

プレトーク(※開演45分前から)
10月22日(日)18:00開演回:額田大志、山本麦子(終演後シアターミーティング)
10月23日(月)19:00開演回:福留麻里、スペシャルゲスト

主催:愛知県芸術劇場
助成:平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

 

額田大志 (ぬかた まさし)

音楽家・演出家。1992年東京都出身。東京藝術大学在学中に、ミニマルミュージック楽団「東京塩麹」を結成。これまでに三度の単独公演を行い、人力サラウンド楽曲やミニマル×ジャズなど、新たな音楽の可能性を追求。また、同じく在学時より舞台作品に傾倒。演劇作品の作・演出・音楽を手掛け、“越後妻有トリエンナーレ2015”内で行われたパフォーマンス作品『NATURE AND ME』(演出:ジャン=リュック・ヴィルムート)に音楽で参加。卒業制作として上演した『それからの街』(作・演出)で、東京藝術大学 同声会賞受賞、第16回AAF戯曲賞大賞受賞。また、高校在学中より都内でライブイベントを企画。ディレクターを務める「JAZZ SUMMIT TOKYO」では、2015年8月にクラウドファンディングによる資金調達を経てフェスティバルを開催、成功に導き、音楽家としてのみならず、イベントプロデューサーとしても注目を集めている。2016年6月、舞台作品を上演するためのユニット、「ヌトミック」を結成。

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