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FEATURE / 特集記事 Nov 16. 2017 UP
【SPECIAL REPORT&INTERVIEW】
美術家/映像作家・山城大督が港まちを舞台とした、参加型の作品を発表。
このまちと交わした27の約束から見出される、時間軸との戯れ。

FEATURE:Assembridge NAGOYA 2017|2017年10月14日(土)〜12月10日(日)|名古屋港〜築地口エリア一帯(愛知|港区)

 

ーまず、今回このような作品を作るに至ったその経緯について教えてください。

2009年につくった《Time flows to everyone at the same time.》のような『まちと人とシーン』を結ぶ作品を、この港まちで作らないか?」というお誘いを「アッセンブリッジ・ナゴヤ」の企画チームから受けまして……

ーそれはどんな作品だったんですか?

訳すと「時間はすべてのひとに同時に流れる」っていう意味で、まさにそれがコンセプトです。広島市の住宅街を舞台にした作品で、ピアノが弾ける約50人の小中学生たちに協力してもらい、会期中の日曜日の午後、1時間ほど自宅のピアノを弾いてもらいました。鑑賞者は、子どもたちの家がマッピングされた地図を持ちながらそのまちを散策する……そうするとピアノの演奏が家の外まで漏れて聴こえてきて、気がつくとそれはまち中で同時多発的にピアノが再生される現象になっている。そんな作品でした。

 

 

ー作品と言っても、かなり参加型で、イベントのような作品ともとれますね。

そうですね、展覧会の中で数日間実施されるというイベント形式でやりましたね。

ーそれと同じような作品を出してほしいというのが最初のオファーだったんですね。

そういうことです。でも、同じことを違うまちでやるってことに少し抵抗がありました。さらに、「作品を作る」という視点でこの港まちを歩いてみると、やっぱりここで新作を作ってみたいという思いが強くなっていきました。

ーその後、どういったプロセスで作品作りに向かっていったんですか?

今、自分が住んでいるのが名古屋市内なので、港まちまでは通える距離であったということもあり、のべ2ヶ月間ここに通いました。でもなかなかこのまちでやるべき作品というのが思いつかない日々が続いてたんです。というのも、ひとりでまち歩きしても、まちの個性が表面的にしか見えてこない。もっと面白い場所があるだろうと思って、おじさんおばさんに話しかけても、あまり対話にならなかった。なんというか、まちから作品のヒントを得ることができない状態でした。どうしようかと困っていたんですが、港まちづくり協議会の古橋敬一さんや吉田有里さんと歩いてみると、驚きました。まちを2ブロック歩くだけで、1時間半くらいかかるんです。本当にどんどん人が話しかけてくるし、いろんなところに連れて行ってもらえて。

 

まちづくり協議会・古橋敬一さん。彼についてはこちらの記事を参照 >【SPECIAL REPORT & INTERVIEW】「アッセンブリッジ・ナゴヤ」が、このまちにもたらした可能性とは?音楽とアートが港まちに溢れた2日間をレポート!現代美術作家 × クラシック奏者 × 港まちづくり協議会による3者対談も。

 

ー古橋さんはこのまちの人気者って感じですね。

そうそう。古橋さんってもう10年もこのまちに関わっているからね。「ちょっと、寄って行きな」と住民の方のご自宅でご飯食べさせてもらったりもしました。釣り糸を垂らしたら一つのポイントで出来事の入れ食い状態みたいな感じで(笑)。27の約束の中に「港のひばりと酒と唄」って約束があって、これはひばりちゃんって呼ばれている港まちで有名なかなりキャラだちしたお母さんがいるんですけど、古橋さんとひばりちゃんとの信頼関係があったからこそできた約束だったりします。そういうネタ集め的なことを古橋さんや吉田さんといっしょにやっていったわけです。そして、いろんな人の「時間」に思いを巡らす今作《Fly Me to the TIME.》の構想に行き着いたんです。

ー古橋さんや港まちの人たちの協力なしでは完成しなかったという意味でも、今作《Fly Me to the TIME.》はこのまちとかなりリンクしていて、まさにこのまちでしか作ることができない作品になっているんだなって思いました。まちをリサーチするにあたって、そもそも今回の全体にかかるサブタイトル「タイム・シークエンス」というのは意識しながらリサーチしていったんですね。

 

 

最初、そのサブタイトルを聞いた時、自分が映像作家としてやっていることと、そのテーマが全く同じベクトルの話だな、と直感的に理解できて。

ーというと?

僕が作品を通して表現しているのは、映像の文法の中で起こっている現象や感情を現実空間やプロジェクトで創造することです。映像って、過去にも未来にも移動できて、全然違う時間と時間を結べるものじゃないですか。ある意味、時間を操ることができるメディアだと思ってるんですよ。

ー山城さんの他の作品を見たときにもびっくりしましたが、山城さんって、いわゆる普通の映像メディアの中での映像作家という領域を越えてしまっていますよね。

自分の作品には、いくつかのタイプがあります。前のピアノを使った作品のように「まちと人とシーン」を結ぶタイプの作品制作は、2011年以降自分の中ではストップしていたんですが、今回企画チームからの誘いを受けて再起動させました。はっきり言って、すごく面倒で時間のかかるプロセスを踏む作品形態なので、「開けてはいけない扉をまた開けてしまったな~」という感じでもありました(笑)。

ー(笑)。今日は制作プロセスにも少しだけお邪魔させてもらって、この作品の楽しみ方は理解できましたが、やっぱり一番疑問に思ったことは「この作品でやりたかったこととは一体何だったのか?」という点でした。

それはもうタイトルにすべて込められています。《Fly Me to the TIME.》って、つまりは「わたしをその時間に連れてって」という意味なんですが。その「わたし」っていうのは鑑賞者であって、偶然歩いている通りすがりの人であって。猫かもしれないし、喫茶店の店主かもしれない。全然関係のなかった人と人の人生が交差するということです。でも、人と人が交差する瞬間なんて、どこにでも当たり前にありますよね。「満員電車に同じタイミングで乗った」とか「落し物をして誰か声をかけられる」とかね。でもその当たり前の日常的な交差する「場面」じゃなくて「満員電車で一瞬だけ目があってしまってその人のことを考えてしまった」みたいな、他者の人生に本当に一瞬だけ触れてしまったような「感情」をつくれないか?って。それが、今回の作品でやりたかったことなんです。

ーなるほど~。27の「約束」と表記してますが、映像的に言ったら27の「シーン」ですよね。

うんうん、そうそう。わかりやすく「約束」と言ってるけど、実際は「シーン」であって、それがまちの中にたくさん作られていくことが重要だと思ってます。「シーン」がたくさん集まっていって「シークエンス」になっていって、それが「タイム/時間」になっていく。

 

《Fly Me to the TIME.》の約束のひとつには「警備員と目が合って、ピースサインをするとピースサインを返してくれる」というつい試してみたくなるユニークなものも。(写真提供:アッセンブリッジナゴヤ)

 

ーでもそもそも今お話してもらった「シーン」や「タイム/時間」ってごく当たり前に日常の中にあるものであり、誰もがわかっている概念だと思うんですが、これをアート作品に転換できる、と思ったきっかけってあったんでしょうか?

僕自身が「タイム/時間」を意識するきっかけとなった最初の作品といえるのが、この27の約束の中に入っています。「1時間に1回のアラーム」っていう。

ー「1時間に1回のアラーム」って……それが作品になるんですね!?

もともと2004年に作った作品で、「作った」と言ってもただただ1時間に1回時計のアラームが鳴るっていうだけなんですけど……。これは僕がG-SHOCKを買った時の話から始まります。電波時計なので、めちゃくちゃ正確に1時間に1回のアラームが鳴るわけですよ。当たり前なんだけどね。で、その時計をしていると、NHKの時報とか、電子機器とか、正確に記された「時」とバッチリ同じタイミングでピピって鳴るんですよね。

ーまあ、それも当たり前の話ですよね(笑)。

そう、でもそれまで、そこまで自分がしている腕時計というものと、世の中にある時計がシンクロしていると感じたことがなかったんです。なんかTVや映像のモニターの中とつながっているとも感じられたし、他に同じ時計を持っている誰かがいたら、その人の時計と自分の時計が全く同じ時間にピピって鳴っているんです……それって全く知らないところで別の土地にいる誰かと自分がつながっている瞬間を感じられるんじゃないかって、当時ものすごく感動しちゃって。

ー感動!?(笑)

だから、もう一個同じ時計を買って自宅に置いておいてみました。家から離れたところで自分がしてる腕時計が鳴ってるときに、全く同じ時間に家に置いてきた時計も鳴っている。そんなことが頭の中でシーンとして想像することでつながるっていう。つまりは、「時間」って目には見えないんだけど、それを実感として得られる遊びみたいなことができたわけです。それが自分にとってはすごく映像的であると思えたんです。映画で「一方その頃。何処何処では~」みたいなシーンの場面の切り替えってあるじゃないですか。それと同じような感覚が現実の想像の中で起こせたんです。「時間」というものを意識させられた「1時間に1回のアラーム」を思い出して、あらためて今作に入れ込みました。

ーある種、時間で遊ぶような山城作品の手法の最初期のものを今回の時間をテーマにした作品に持ってきたこと自体、時間軸を越えてきた感じがしますね。

そうそう。他にも今作の中に「イトウ酒店の40年灰皿が使える」っていうのがあるんですけど、これはそのままで、イトウさんところで40年間も使われている先先代がつくった灰皿があって、それをお借りしてきました。「灰皿が使える」って、なんてことない話かもしれないけど、それを使った瞬間だけ、時間の積層に触れられるんじゃないかなと考えています。そういったものもあれば、「公園で素振りしてる少年がいる」とか「女の子がハムスターを見せてくれる」とかって実際に見に行かなくても「シーン」としてパッ!と想像できるものも「約束」に入れました。常時いつでも体験できるものがあったり、会期中一回だけのもあったりするから、27の約束を全て体験することは正直難しいとは思います。僕が2つ買った腕時計のエピソードと同様に、自分が見えない別のところでちゃんともう一方の腕時計が鳴っているという「シーン」がイメージできることがおもしろいわけで。見えない「時間」や「シーン」をイメージしながら、その一部分を今、目の前で体験しているんだという感覚は、目や耳で感じる映像の感覚を越えた、新しい感動になるんじゃないかなって考えています。

 

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イベント情報

2017年10月14日(土)〜12月10日(日)※会期中の木曜、金曜、土曜、日曜開催
Assembridge NAGOYA 2017
会場:名古屋港〜築地口エリア一帯
主催:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会
構成団体:名古屋市、港まちづくり協議会、名古屋港管理組合、(公財)名古屋フィルハーモニー交響楽団、(公財)名古屋市文化振興事業団
問:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会事務局(名古屋市港区名港1-19-18 3F)
TEL:052-652-2511(受付11:00〜19:00)/メール:contact@assembridge.nagoya
http://www.assembridge.nagoya

山城大督

美術家|映像ディレクター|ドキュメント・コーディネーター|Nadegata Instant Party|山城美術|1983年大阪生まれ|IAMAS修了、京都造形芸術大学卒業、山口情報芸術センター[YCAM]エデュケーター経て東京藝術大学映像研究科博士後期課程|京都造形芸術大学・明治学院大学・愛知大非常勤講師|名古屋在住

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