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FEATURE / 特集記事 Nov 21. 2017 UP
【SPECIAL INTERVIEW】
歴史文化×まちの祭典「やっとかめ文化祭」と
本×まちイベント「ブックマークナゴヤ」。
名古屋のまちを舞台とする2大イベント主催チームが対談。

FEATURE:やっとかめ文化祭 × ブックマークナゴヤ

名古屋で開催される、秋の一大カルチャーイベント「やっとかめ文化祭」「ブックマークナゴヤ」。この2つのイベントは、「歴史・文化」と「本」とそれぞれにメインとなるキーワードは違うものの、名古屋というまちを舞台に県内外から好評を博してきた(「ブックマークナゴヤ」は残念ながら今年10年目の節目で終了となった)。

今回、LIVERARYでは両イベント主催者による対談を企画。「やっとかめ文化祭」主催チームとして、コミュニケーション・デザインを得意とする名古屋・大須のデザイン会社「クーグート」の高橋佳介さん、「ナゴヤをおもしろがる人を増やす」を合言葉に街中をキャンパスにしてきた「大ナゴヤ大学」学長・山田卓哉さん、そして「やっとかめ文化祭」に無くてはならない存在の事務局・吉田祐治さんが登場。一方、「ブックマークナゴヤ」主催チームは、ブックショップ&ギャラリー「ON READING」店主であり、「LIVERARY」編集部としても活動する、黒田義隆・杏子夫妻という計5名が集まった。

両者それぞれにどのような思いを持って企画してきたのか? 続けていくなかで、名古屋だからこそ見えてきたこととは? そして今後につなげていくべきこととは?など、話のフォーカスは自ずと名古屋というまちへと絞られていった。

 

SPECIAL INTERVIEW:

「やっとかめ文化祭」×「ブックマークナゴヤ」

Interview & Text : TakatoshiTakebe [THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY]
Photo:Sara Hashimoto [LIVERARY]

 


写真左から順に、高橋佳介さん、山田卓哉さん、吉田祐治さん、黒田杏子さん、黒田義隆さん

 

ー今年で「やっとかめ文化祭」って何回目だったんですか?

高橋(以下、高):実はまだ5回目で。「ブックマークナゴヤ」の10回に比べたらまだまだ半分です(笑)。

ー今年はこれまでに比べて、どこがどう違ったんでしょうか?

吉田(以下、吉):基本的には変わってないです(笑)。ただ、外部の方との連携企画みたいなのが増えています。ありがたいことに「一緒に何かやりたい!」って言ってくれる方々が増えてきたんです。それは5年続けてきた甲斐があったな〜と思えるところですね。取り上げているネタが、「歴史」とか「文化」ですので、とっつきにくいところもあると思うんです。でも、それを少しずつ噛み砕いたり、いろんな人と関係を作っていくうちになんとなく「やっとかめ文化祭」を気にしてくれる人が増えていって、参加してくれる人も増えてきて。「やっとかめ文化祭」自体が大きくなったわけでも、今年から突然何かを変えたとかもないんです。相変わらず、このまちにある文化や伝統だったりをみんなで楽しめるプログラムを組んでいった感じですね。

 


「やっとかめ文化祭」事務局・吉田祐治さん

 

ー今回の「やっとかめ文化祭」ってメインビジュアルの撮影場所が、最近開発が進んでいる名駅エリア周辺のささしまなんですよね。最初見た時、かなり違和感がありました。以前は有松とか、風情あるまち並みで撮影されていたのに。こういう場所をあえて背景にしたんでしょうか?

高:ささしまは意識的に起用しましたね。今まで名古屋の人たちが見たことない風景だよねっていう場所にしたかったというか。

 


今年の「やっとかめ文化祭」メインビジュアル

 

黒田杏子(以下、杏):かなり不思議な感じのビジュアルになっていて、面白いですね。

:ささしま周辺って突然できたまちだと思われがちなんですが、実は歴史があって、もともと名古屋駅はささしまにあったし、レジャックのところに大きな橋が架かっていて、みんな中村遊郭に遊びにいくときはその橋を渡って行ってたたなんて話もあります。今回、まち歩きコースの一つにもその周辺エリアである「柳街道」が組み込まれていて。この道、面白いんですよ。昔からある道なんですけど。納屋橋から繋がっていて。今では、道しかないんですけど。特に何もないけど好きな道なんです。昔の街道の面影を感じることができる。

ーなるほど…。ちなみに、山田くんは今回も大ナゴヤ大学として「やっとかめ文化祭」をお手伝いされていますが、まだかなり若いと思うんですけど、おいくつですっけ?

山田(以下、山):27歳です。

 


「大ナゴヤ大学」学長・山田卓哉さん

 

ー若っ!そんな若者から見ての「やっとかめ文化祭」ってどうなんだろう?って気になります。

:僕からの感想としては、知っておくと何だか大人になれる気がしてくるっていうか。先人たちの知恵を「やっとかめ文化祭」から学べるってのが大きいんじゃないかって思います。関わり始めた当時は、自分は社会人とはいえ子供だな〜って思っていたので。そんな自分が、名古屋の歴史や文化を知ることで、そういう話を大人と話すことができるようになった。あと、名古屋のことを勉強をしているはずなのに、歴史文化って、全国各地の地域とも繋がっでいて。色んな物事とリンクしていくのがおもしろいな〜って。そういうおもしろさがより多くの人に伝わればいいな〜と思っています。

ー同世代の友だちとかって、きっとみんな歴史とか文化とかってものになかなか興味を持てない年齢だと思うんです。そういう友だちとかお知り合いを「やっとかめ文化祭」に誘う時って、どうやって説明するのかな〜って。

:やっぱりパッと見てわかりやすくて、キャッチーな「ストリート歌舞伎」とか「芸どころまちなか披露」に該当するまちなかでの上演企画を紹介しますね。単純に観覧フリーでお金がいらないし、気軽に見れるんで。それをまず見に来てもらって、さらに興味を持ってくれるような人なら「まちなか寺子屋」とか座学系のイベントに誘ったりして、徐々にこっち側に引き込んでいく感じです。

ーなるほど。では、吉田さんに聞きたいんですが、「やっとかめ文化祭」って歴史・文化を学んで、その先にあるのはやっぱり自分たちのまちにもっと興味を持ってもらうことが目的なんですかね?

:そうですね。文化祭に参加した人と、まちとの関わりが生まれることを大切にしたいと思っています。まちとどう関わり、どうやって暮らしていくのかということの先に、まちの文化だったり、観光に繋がっていくと思うので。まち歩きのガイドの方々なんて、本当に自分が住んでいるまちが大好きな方たちなんですよね。

ーまち歩き取材同行をしたときもガイドのおじいさんたちが意気揚々とガイドされていて、その姿は微笑ましかったです。

 


やっとかめ文化祭2016:なごやまち歩きのレポート記事はコチラ。(http://liverary-mag.com/feature/54386.html/3

 

:「やっとかめ文化祭」ってコンテンツが違うだけで僕らがやってきた「ブックマークナゴヤ」と根底にあるメッセージは一緒だと思っていて。「名古屋は魅力がないまち」とか言われてるけど、本当に「魅力がないまち」なんてあるのかなって。それに気づく人が少ないだけの話だって思うんです。結局、住んでる人が色んなことを面白がることができたらそれがまちの面白さになる。名古屋がつまらないって言われてるってことは、イコール住んでいる人がつまらないって言われてるのと一緒なんですよね。聞いてみると「観光名所がない」ってだけで終わっちゃうけど、まちの魅力ってそこだけじゃないでしょって。実際、コンテンツ自体はあちこちにあるわけで、そこに積極的に参加することでまちを盛り上げることだってできる。まちに住んでいる人が、まちのおもしろさを知って、積極的にいろんなイベントに参加したり、いろんなお店を楽しむようになれば、まちなんてあっという間に面白くなるのになっていつも思います。

 


「ON READING」店主・黒田義隆さん

 

:私も「やっとかめ文化祭」にはシンパシーを感じていて。「ブックマークナゴヤ」って、主催側である私たちが企画をたてるだけでなく、何かをやりたい人のために機会を設けたいという思いがあって10年続けてきたんです。「やっとかめ文化祭」も歴史文化をテーマに据えた枠組みであって、その枠の中で「私ならこんなことをやりたい!」って、いろんな人が関わってきているわけで。つまり、まちの中に潜在しているプレーヤーを育てようとしている。

ー「やっとかめって文化祭」って「祭」ですもんね。「祭」ってもともと、みんなで役割を分担しながら、大勢でわいわい作り上げていくものだったと思います。

:みんなで作り上げていく感は関わっているこちらとして達成感があるし、単純に楽しいですね。

:そうですよね。でも、「ブックマークナゴヤ」をやる意図としては、そのいわゆる祭的な、一定期間だけ盛り上がるのが目的じゃなくて。イベントをきっかけにまち歩きをしてお店を巡って、そこで新たにお気に入りのお店を見つけてもらって、「ブックマークナゴヤ」が終わったあとでも足を運んでもらえたらいいな〜というのが真の狙いでもあるんです。

:「やっとかめ文化祭」もそれは同じ気持ちで。さっき山田くんが、「ストリート歌舞伎」を入り口にそこから他の企画にも興味を持っていってくれたらいいって話をしてくれましたが、どこかに興味を持ってくれたら、きっとその隣やまわりのことが気になるはずだし。だから、いろんな層の人に楽しんでもらえるプログラムを作りたいなと思っています。

:「やっとかめ文化祭」ってイベント数がめちゃめちゃ多いですもんね。あ〜私も土日休みのOLさんだったら、もっとたくさん参加できるのにな。

一同:(笑)。

:イベントの数が多いのは、やっぱり名古屋には素敵なもの、面白いものがいっぱいありますし、なるべくなら入り口をたくさんつくっていきたいという思いもあります。

ーでも、入り口をたくさん増やしていったとしても、コンテンツ自体が地味だと、メディア的には取り上げにくいから広まりにくいかもしれないですね。TVや新聞でフィーチャーされるのは、見た目的な派手なわかりやすいイベントが多い気がします。毎年「しゃちほこチャレンジプロジェクト」が取り上げられているイメージです。

 

 

:でもそれって、メディア側がマスっていうものを決めつけちゃってて、とってもつまんないことだと思うんですよね。それでメディアとしてちゃんと役割果たしているのかなって。届きづらい情報を届くようにするのが本来、メディアがやるべき仕事だと思うので。

マスメディアだと、たくさん流通して消費されるものが優先的に情報として流される傾向にある。そういう意味でも、一気に宣伝して人がどっと来るイベントよりか、じわじわと広がっていく方が健全で、良いイベントなんだと思います。

:集客においては地元の人の割合が多いんですが、回を重ねるごとに県外の人たちの数も増えています。あと、参加者の年齢層も少しずつ下がってきました。

:僕はデザイン会社「クーグート」として、「NAMO」という「やっとかめ文化祭」の前身的なプロジェクトから関わらせてもらっていて。「いかにこのイベントを継続させていこうか?」というところで尽力させてもらっています。僕自身、いろいろ知識を得ていってるところで。企画云々の部分は、皆さんにお任せして、僕はどっちかと言うとどうやってコミュニケーション取ればいいかを考える。これからの名古屋のことを考えると、名古屋の人たち自身が、今後どうこのまちという舞台で表現していくか、だと思っています。

 


株式会社「クーグート」・高橋佳介さん

 

ー「やっとかめ文化祭」がやっていない時の、日常へのフィードバックをどうやってつなげていくか?ってことにもつながりそうですね。

:そうですね。「やっとかめ文化祭」から派生して、今年「もーやぁこMAGAZINE」というオウンドメディアを立ち上げました。そこでマスメディアが拾いきれないような小さな動きとかもフォローしてあげて紹介していけたらと思っています。あとは、名古屋にもともとある文化をパッケージした新しいお土産ショップ「なんでゃーも商店」という動きも今後も展開していきたいですね。第一弾として「きしめん」と「コーヒー」をリリースしたんです。「やっとかめ文化祭」も俯瞰して見れば、一つのコミュニティだと言えると思っていて、そのコミュニティだから成り立つ文化や商品がここから生まれてくるといいな〜と思います。

 


「もーやぁこMAGAZINE」http://yattokame.jp/moyako

 

:もともと文化ってコミュニティから生まれるものですからね。

:今の時代って、地域コミュニティが希薄になってきているので、地域の文化を維持していくのってますます難しくなってきていると感じます。

ーまちのなかにひっそりと佇むお地蔵さんの世話をするような、そういう町内的なコミュニティがないと、知らないうちに消えていってしまうものってたくさんあるでしょうね。そういう意味でも「やっとかめ文化祭」や「ブックマークナゴヤ」がまちの文化を知ってもらって、それらを守るためのコミュニティを作ろうしているとも捉えられますね。

:「ブックマークナゴヤ」も終わってしまうのは寂しいですが、「やっとかめ文化祭」に何かしら受け継いでいけたらいいですね。

 

 

 

ー今年も「ON READING」さんは、「やっとかめ文化祭」との連携企画をやっていましたが、こちらの展示について教えて下さい。

 


「ON READING」黒田杏子さん

 

:今回は「熊彫」の展示企画で。トークイベントも組みました。

ー「熊彫」って、あの鮭をくわえてる木彫りの熊の置物のことですか?

:一般的に知られている北海道の木彫り熊はそうですよね。今回紹介している、八雲の木彫り熊はちょっと違います。北海道土産の木彫り熊って実はそのルーツに、尾張徳川家の「熊狩りの殿様」こと徳川義親さんが重要なキーパーソンなんです。義親さんが北海道・八雲の農民のためにスイスから持ち帰った工芸品の中に木彫り熊があって、それを手本に農閑期に工芸品を作ることを推奨したのが始まりだったんです。もともとは栄にある、古道具や古着を扱っているお店の「COMPASS」さんが木彫り熊をコレクションしていて、それを見せてもらったのがきっかけですごく気になる存在になって……で、今回の企画へと発展しました。今回展示しているのも、COMPASSさんと、東京のコレクターの方の木彫り熊をお借りしています。

:あと、上原敏さん(名古屋を掘り起こすカルチャーフリーマガジン『SCHOP』(現在は休刊中)や雑誌『VU』の制作などをしてきた編集人)と一緒に北海道の八雲町に行って取材して図録も作りました。

 

『熊彫 〜義親さんと木彫りの熊〜』1,500円(税抜) 詳細:https://artlabo.ocnk.net/product/5966

 

:今回の展示のイメージビジュアルにも起用したパッと見て熊だとわからないような熊彫をつくっているのが柴崎重行さんという方で。そのご子息の方や柴崎重行さんを応援する会の方たちと会って話を聞いたりしてきました。吉田さんと前話してた時に、明治以降の徳川家のことはとりあげられることが少ないて言ってましたよね。

 

 

:あまり知られていないですよね。

:その八雲町では徳川義親さんの銅像が立ってるくらいなんです。「徳川さん」という愛称で呼ばれてて、冬、寒い時に手編みのニットの帽子をかけてあげる方もいたみたいで。「徳川さん」は現地の人たちの中には浸透しているんです。徳川義親さんは、徳川美術館の創設者で徳川家が持っていた色んな宝物の保存、公開をした方なんです。

:公的な自治体の美術館ができたのって戦後の話ですもんね。それに先駆けて美術館という場をつくった徳川さんはかなり先見の明がある方だと思います。

ーへ〜……てか、木彫りの熊と名古屋にゆかりがあることも知らなかったですし、あの熊ができるまでの裏側にそんな物語があったんですね。

:そうそう。だから、名古屋にまつわる歴史文化、っていうひとつのキーワードから縦にも横にも広げていけるんです。

:何でもそうですよね。色んな視点をたくさんを持つことができたら、まち中にフックが見えてくる。

:どのレイヤーで物事を見るかってことですよね。色んなレイヤー持って見れば、まちは全然違う見え方をしてくるんだと思います。


 

やっとかめ文化祭
http://yattokame.jp/

 



ブックマークナゴヤ
http://bookmark-ngy.com/

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