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FEATURE / 特集記事 Sep 06. 2018 UP
【FEATURE:蓮沼執太|後編|TALK SESSION REPORT 】
蓮沼執太フィル愛知公演直前企画。
蓮沼執太×津田大介による特別対談のレポートをUP!

2018年9月16日(日) 蓮沼執太フィル「アントロポセン-Extinguishers 愛知全方位型」| 会場:ナディアパークデザインホール(愛知|栄)

9月16日(日)、蓮沼執太フィルが単独公演としては3度目となる名古屋公演を、ナディアパークデザインホールにて行う。今回の公演タイトルは「アントロポセン-Extinguishers 愛知全方位型」。演奏者を中心に置いてその周りをぐるりと観客が囲むスタイルの文字通り360度全方位型の公演となる。

蓮沼執太フィルは、蓮沼執太がコンダクトする、総勢16名が奏でる現代版フィルハーモニック・ポップ・オーケストラ。メンバー構成は、蓮沼執太(conduct, compose, keyboards, vocal)、石塚周太(Bass, Guitar)、イトケン(Drums, Synthesizer)、大谷能生(Saxophone)、葛西敏彦(PA)、木下美紗都(Chorus)、K-Ta(Marimba)、小林うてな(Steelpan)、ゴンドウトモヒコ(Euphonium)、斉藤亮輔(Guitar)、Jimanica(Drums)、環ROY(Rap)、千葉広樹(Violin, Bass)、手島絵里子(Viola)、宮地夏海(Flute)、三浦千明(Flugelhorn, Glockenspiel)から成る。

 

 

この公演のプレイベントとして、急遽決まった対談企画が819日(日)に開催されたのが、蓮沼執太×津田大介という組み合わせのトークイベントだった。

音楽だけでなく現代アートの領域にも踏み込んだ活動をしてきた蓮沼執太と、来年開催の「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督も務めるジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介。互いにボーダーなど気にしないスタンスで同時代的で多角的な活動を経てきた彼ら。一体どんなクロストークを繰り広げたのか? 

アートファンも音楽ファンも、津田ファンも蓮沼ファンも、興味津々であったろう今回の貴重なトーク内容を「LIVERARY」にて掲載させてもらいました。

特集前半では、蓮沼執太への10のQ&Aも掲載。そちらもあわせて読んでみて。(http://liverary-mag.com/feature/70468.html)

 


津田蓮沼対談が開催されたのは「あいちトリエンナーレ」を機に生まれた施設「アートラボあいち」。

 

TALK SESSION REPORT:

津田大介 × 蓮沼執太
Daisuke Tsuda with Shuta Hasunuma

Text & Edit:Takatoshi Takebe [THISIS(NOT)MAGAZINE,LIVERARY]
Tape rewrite:Kensuke Ido [LIVERARY]

 

津田:蓮沼執太さんと僕は、人間関係的にはすごく近いところにいて、共通の知人もたくさんいるんですよね。もちろんミュージシャンとして、もともと存在は知っていたんですが、実際に会えたのは割と最近なんです。タブラ奏者のU-zhaanさんと僕が、ポッドキャストっぽいラジオ番組をやっていて、その収録中に「蓮沼執太くん、近くにいるみたいだから多分呼んだら来てくれるよ」っていう話になり、本当に「どうも初めまして」って言って来てくれた。到着から5分でその番組にも出演してくれましたね。できたてホヤホヤの友達です。そんな彼の音楽プロジェクト「蓮沼執太フィル」が、9月16日(日)に名古屋栄のナディアパークでライブをやります。ということで、今日のトークショウはその宣伝を兼ねているっていうわけですね。では、まずこの会場のお客さんの中には、執太くんやフィルのことを知らない方もいると思いますので、自己紹介からお願いします。

蓮沼:僕は色んな音楽を作ってて、「蓮沼執太フィル」はジャズやクラシックやロックなど色んなジャンルのミュージシャンを集めて、僕が作った曲を演奏してもらうプロジェクトです。昨日も東京で16人のメンバーと演奏会をやってきました。

津田:「蓮沼執太フィル」を始めたのはいつ頃ですか?

蓮沼:2010年から、なのでもう8年経ちましたね。2014年にファーストアルバムを出して、それ以降しばらく活動してなかったんですが、2年くらい前からまた再活動するようになりました。

津田:もともとは、アルバムを一枚出したら終わりというか、一回きりのプロジェクトのつもりだったんですか?

蓮沼:もともと自分が今のようなアンサンブルを作りたいと思ってたんじゃなくて、始まりは人から頼まれたところからなんです。僕、「HEADZ」という音楽レーベルからCDを出しているんですけど、そのレーベルオーナーであり、批評家の佐々木敦さんという方がいまして。彼から「蓮沼楽団を作ってくれ」って言われて。ドイツのOVALっていう電子音楽家がいるんですけど、HEADZ主催のOVAL来日公演に「日本のミュージシャンとして出てくれ」と言われたのがきっかけでした。それまではバンドとか組んだことがなくて。スケジューリングや練習の仕方とかすらわかっていなくて、例えばどれくらいの大きさのスタジオを取ればいいかも。それで、結局初ライブまでに一度も全員リハをすることができず本番を迎えて……大失敗したんですよね(笑)。

津田:佐々木さんが、蓮沼さんの音楽的才能があればうまくやってくれるんじゃないか? みたいな漠然とした期待を寄せていたことがわかりますね。

 


津田大介

 

蓮沼:公演後、佐々木さんは「面白かった」って言ってくれたんですけど、僕的には悔しい内容になってしまいました。

津田:やりきれなかった感が強かったと。

蓮沼:そうそう。僕の性格的な理由もあると思うんですが、制作動機の根源って失敗があるからこそ、それをより良いものにしたいっていう気持ちが強いと思うんですよ。

津田:蓮沼さんがこれまで作ってきた音楽が、アルバムごとに音楽性が変わったりすることにも通じていそうですね。ある程度満足してしまうと、違うことに挑戦したくなるんでしょうか。

蓮沼:何かが終わる頃には、もう違うところに興味がいってる感はあります。

津田:常に気が散っている、と。

会場:(笑)

蓮沼:恥ずかしながら。

津田:ミュージシャンにとってそれ、大事だと思います。しかしそういった挫折があったからこそ、一回だけのスペシャルな企画モノから、ずっと続く自身のプロジェクトにしていったわけですね。

蓮沼:そう。だからこれは、いわばライブで演奏するためのプロジェクトなんですよ。一緒にレコーディングしてレコード作って売れよう!とかっていう動機じゃなくて。人数も多いので年に数回しか集まれないんですが、2、3回集まって、新曲作って、ライブ、という感じです。

津田:バンド経験もなく、ひとりで音楽を作っていたわけですよね。つまり、自分の頭の中だけで曲が完結して、機械(PC)に演奏させていた。それがひとりから16人に増えて、生楽器はPCと違ってチューニングもありますし、真逆なことをやっているように感じます。

蓮沼:その通りですね。なので、最初は全く勝手がわかっていなかったんですよね。しかも、フィルメンバーはそれぞれ音楽の出身が違うんですよ。バイオリンの千葉広樹さんは大学で弦楽などを勉強してるけど主にジャズのベーシストとして活躍してる方で、ヴィオラの手島絵里子さんは大学でずっとクラシックをやっていた。見た目は似ている楽器ですけど同じ弦楽器でも音楽の畑が違うから、音に対するアプローチが全然違うんですよ。そういう人たちが一緒に組むと合わせるのが大変なんですね。まあ、僕がそういうコンセプトでメンバーを敢えて集めてしまったわけなんですけど。

津田:それは意図的に、色んなバックグランドを持っている人をミックスさせようと思っていたんですか?

蓮沼:そこまで意識もしていなかったです。後から、気付いたって感じです。何でなんだろう?と思って、やっぱり自分はアンサンブルを作るときに決めつけがなかったんです。フルオーケストラをやったことない人たちでやってみようとか、それだけで意味付けされるじゃないですか。いろんなジャンルのプレイヤーを集めることで「匿名性」とまでは言わないですけど、それに近いことをしたかったのかな。

 


蓮沼執太

 

津田:フィルをやってみて最初は挫折して、それでもプロジェクトとして続けようと決意してから、どういった改善をしていったんですか?

蓮沼:僕だけの話じゃなくて、作曲家と演奏家の関係性でよくあるんですけど、譜面を書いて渡すと「こんなの演奏できないよ~」って、嫌な顔されるんです()。機械はできることがやはり無限なんですよね。機械で曲を作っても、対人間が演奏するとなると、当たり前ですがそこは有限なんですよね。

津田:蓮沼さんが、人間の心を理解するようになっていったと。

蓮沼:これまでは人と音楽をやるってことが無かったので。

津田:嫌な顔をされた場合、どうやって乗り切ったんですか?

蓮沼:僕が全てコントロールしない状態にしたんです。奏者に任せることにしたんです。僕が枠組だけ作って、あとはお任せしますと。それでうまくいったんです。

津田:管楽器や弦楽器の魅力や特徴、あるいは、ここはこういうパターンがいいなとかいう自分の好みがわかってくると、そっちに引きずられて新鮮なものができないっていうジレンマもあったのでは。

蓮沼:任せていくことを経て、それぞれの生楽器の特性も知ってきました。楽器って音が出る音域って決まっているし、さらにそこに演奏者の手グセも加わったり。楽器だけでなく、メンバーの個性もだんだんわかっていきました。ジャンルを超えて、パーソナリティーが出てきて、そこから今度は曲を作ろと。任すだけではなく。メンバーも固定なので。

津田:作曲スタイルのバリエーションが、一気に増えたような感じでしょうか。

蓮沼:そんな感じかもしれません。

津田:でも、全くコントロールしないとバラバラになってしまうこともあり得ますよね。それを作曲者として、また指揮者として、どのように調和させていったんですか?

蓮沼:調和させる方法論か……

津田:ファクト・ベースで大丈夫ですよ。

蓮沼:最初は怒られながらやっていて先輩から「おい若造、教えてやるよ」みたいな感じですよ。僕は「なるほど、はい、そうですね」って感じです。単純に怒るだけではなく、いい音楽をやりたいっていう愛情から叱咤激励を受けてました。

津田:ちなみに、メンバー間のスケジュール調整ってどうしたんですか?

蓮沼:忘年会の日程とかを決める「調整さん」ですね。

津田:(笑)。

蓮沼:便利ですよね。ヘビーユーザーです。

 

 

津田:音楽的な話に戻しますけど、「蓮沼執太フィル」をやったことで個人の音楽家・蓮沼執太へのフィードバックは何かありましたか。

蓮沼:歌詞や歌についての発見かな。もともとは環境音を録音したりして、音を作ることがベースだったので。

津田:歌詞を作って自分で歌う、シンガーソングライター的な音楽制作をやろうと思ったことってあったんですか?

蓮沼:全くないです。

津田:それなのに歌うことにしたきっかけは、どこにあったんですか?

蓮沼:ずっと電子音楽だったんで、生の音を取り入れたかった、自分の体の音を使いたいと思って。その構造なら、もっとポップスみたいなのを作れるんじゃないかとなり、さらに歌詞も作ろうと。

津田:歌詞を作るのは大変でしたか?

蓮沼:僕の中では歌詞の作り方が変化していっています。最初は抽象的な声を素材として使う感じでした。フィルの場合は、そこからメンバーであるラッパーのROYと歌詞を作り始めたりして。彼は歌詞に対してとてもシビアでもあり、ユーモアもありますそういった共同制作から影響を受けていきますよね。より具体的な歌詞になっていきました。最近は、そこを乗り越えて、またさらに抽象的になってきています。ノートに散文を書いて、それをそのまま歌詞にしちゃうとか。

津田:シンガーソングライターって、メロディーと同時に歌詞も浮かんでくる人が多いみたいですね。

蓮沼:僕は全く違うんです。音と言葉が切り離れているから。まず、メロディーがあって、そこに言葉を乗っけっていくやり方をしています。

 

 

津田:曲が先行するんですね。ところで、16名の「蓮沼執太フィル」から、さらに大編成の「フルフィル」になっていく過程で、大変なことも増えていったんじゃないですか? なぜ「フルフィル」をやろうと思ったか聞かせてください。

蓮沼:フィルの活動が2年くらいやってなかった間に、やってみようかなと思いつきました。

津田:メンバーはどうやって探したんですか?

蓮沼:もともとのフィルメンバーは、人を介して知り合っていったのがほとんどですね。フルフィルでは10名増えましたが、それはインターネットの公募でした。

津田:今っぽい!

蓮沼:楽器を演奏している5分間の動画を送ってください、というやり方で。そもそもある特定の楽器がほしいとかじゃなくて、やりたいと言ってくれた人を受け入れようと思っていました。年齢とか性別とか国籍とか関係なく。

津田:僕も送っていたら、フルフィルに入れた可能性があるってことですか?

蓮沼:入れちゃうんじゃないですか。

会場:(笑)。

津田:僕も先日フルフィルの公開リハーサルを見せてもらったんですが、あれはどういった理由で始めたんですか?

蓮沼:僕は作品のプロセスを知ってもらった方がいいと思っています。多くのミュージシャンは練習を見られるのを嫌いますが。パフォーミングアーツとか、演劇とか、オーケストラはオープンリハーサルをやっていたりするんですよね。演劇は完成していない状態を上映して、お客さんの意見を聞いたりするんですよ。それを作品に取り入れたり。公開リハーサルは面白いなと思っています。

津田:緊張してるのかピリピリしてるのか。リハーサルは独特な雰囲気がありましたね。

蓮沼:そうですね。津田さんに見てもらったときのリハは、フィルメンバーとフルフィルの公募から決まった追加メンバーとが初対面で初音合わせだったんですよね。初めてだし、即興しましょうか? って振ったんですが、フィルの人たちは一音も出さなくて。フルフィルの新メンバーたちしか音を出さないという関係性で。どうしようと思いました。

津田:シビレますね。フルフィルは今後さらに大きくしていくんですか?

蓮沼:いや〜、考えてないですね。今の状態がすごくいいんですよ。演奏も関係性も。

津田:その状況で異物をまた入れると、そこが壊れてしまうリスクはありますよね。

蓮沼:そこが壊れずにいいものが作れたので。

津田:フルフィルメンバーから、この人いいなってことで、フィルのレギュラーメンバーに入れる、みたいなことはないですか?

 

 

沼:それをすると、選ばれなかった人が可哀想ですよね。

津田:難しいですよね。

蓮沼:ヒエラルキーを作るのが嫌なんですよ。みんなフラットでいきたい。

津田:それではこれまで通り、一年に数回はフルフィルでやるって感じですか?

蓮沼:そうなればいいなって、昨日コンサートやって思いました。

津田:今後、蓮沼執太個人としての活動はどうするつもりなんでしょう。

蓮沼:普段、僕はNYに住んでるんです。今はずっと日本に一時的に帰国しているんですけど。秋にはまたNYに帰ろうかなと。

津田:NYでの生活は、音楽を作る上で全然違いますか?

蓮沼:そうですね。芸術全般に触れ合う頻度が日本にいるときと全然違います。だから、インプットは絶えず、多いと思います。

津田:蓮沼さんは個人の音楽制作から発展し、フィルを作るかたわらで、現代美術の作品を作ったりもされています。現代美術については、誰かに頼まれて始めたんですか?

蓮沼:サウンドをつくってレコーディングをするだけっていう制作スタイルに限界を感じていて。もっと出来るだろうと思って。音ではない音楽の表現方法があるんじゃないか?と探していたら、それが現代美術にあった、という感じです。

津田:大友良英さんのスタンスはどう思われますか? あの人はプレイヤーですけど、ある程度共通点があるように思えます。

蓮沼:別府の国際芸術祭「混浴温泉世界」で大友さんとはご一緒しました。壊れた家電を集めて、劇場型の作品を発表されていました。強い作家性を感じました。

津田:蓮沼さんは、自分が作家性が強いのか、それともプロデューサー気質なのか、ご自身をどう捉えてらっしゃいますか?

蓮沼:音楽と人間とか、音と人間とか、そういったところにフォーカスを当てて音楽を作っているので。人間を扱うってなるとフィルもそうだけどある程度まとめないとダメなので。そういう意味ではプロデューサーだし、でもプレイヤーでもあると思います。言い切れないのが、僕っぽいです。

津田:根本的な質問になりますけど、人付き合いは好きですか?

蓮沼:僕はあんまり好きじゃないかもです。友達がいないわけじゃないですけど。

津田:音楽とかフィルみたいな枠があるからこそ、人とコミュニケーションができる感じでしょうか。

蓮沼:それはそうかもです。ミュージシャンとは特に。

津田:フィールドレコーディングの話が何度か出てきましたけど、環境音を録って、家で聴く。それの何が楽しいんですか?

 

 

蓮沼:何が楽しいんでしょうね。始めた理由は、大学の時にフィールドワークをやっていて、レコーダーを買って、環境音を録りはじめました。うーん、何が楽しいのか? ですね。音って目に見えないんですけど、目に見えないものを可視化するっていうのは美術がやってきた。例えば、低音は風を生むんですね。空気振動なので。それで場が揺れると。あと、普段聴いている音も、振動を意識して聴くと意外なリズムを感じたり。こんな風に聴いてなかったわってのがあるんです。機械がキャッチできる音と、人間がキャッチする音って違うので、そういったところで生まれる音の発見が楽しいんですね、きっと。自分の視野というか、意識も広くなるし。

津田:蓮沼さんはさっき「友達がいないわけじゃない」っておっしゃってましたけど、ずっと趣味でそういう野外の音を録ってきて、家で聴いて、「いい」ってやってるわけですよね。それは、あんまり友達ができないように思えるんですけど(笑)。

会場:(笑)。

津田:常に前進したい人なんでしょうね。自分が気づかないことに、気づいて、人にも伝えたいみたいな。

蓮沼:作品を作る上で、基本的にはそうかも。

津田:創作の苦しみとか、マンネリとは無縁に見えるんですけど、実際いかがですか?

蓮沼:スランプはない人間です。例えば画家は毎日描く行為が大切で。音楽も毎日作曲することが大切。作ることにはスランプはないんです。でも、去年NYに長期滞在する際に何もできなかったですね。初めての経験でした。

津田:その状態はどうやって乗り越えたんですか?

蓮沼:引っ越しましたね。

津田:それは……霊的な何かですかね(笑)。全然話は別ですが、蓮沼さんは自分のこと、職業は何って言ってるんですか?

蓮沼:音楽家ですね。

津田:でも、美術家でもありますよね。

蓮沼:けど、音楽をやっていて、アートをやっている人は、海外には結構たくさんいるんですよ。日本はすごく少ないと思います。

津田:僕も芸術監督として、来年の夏に開催される「あいちトリエンナーレ2019」の出展作家を今選んでるんですけど、海外だと、アーティストであり、ジャーナリストでもある人が普通にいるんですよね。日本にはそんな人、一人もいないなと思って。

蓮沼:現代美術の文脈、アートのジャンル自体がすごく広がってきていますよね。

津田:ボーダーを超えていくのかな。蓮沼さんの場合も、自分の中の境界とか限界といった意識がすごく希薄なのかもしれないですね。

蓮沼:そうですね。ボーダーが作られていることに、フラストレーションがあるかもですね。

津田:音楽家が美術活動をする時に、反発とかってあるんですか?

蓮沼:この表現があってるかわからないですけど、ずっと絵画を描いていた人にとっては、僕みたいに音楽も美術もやってる人って胡散臭く見られるというか。

津田:わかりますよ。僕も散々言われてきましたからね。「何だよメディア・アクティビストって」って。僕が作った造語ではなく、それなりに文脈があったりするんですが。

蓮沼:僕の場合、何でもやってみたいから、何でもやってるってわけじゃなくて。自分のコンセプトや目的があって、根源はそんなにたくさんの理由があるわけじゃないんです。音楽の現場行くと、アートっぽいやつ来たとか言われるし、アートの現場行くとあなた音楽の人でしょって言われるんです(笑)。

津田:僕は音楽業界のことも美術業界のこともそれなりによく知っているつもりですが、体質が全然違いますよね。誤解を恐れずに言えば、音楽業界はカラっとしてて、美術業界はジメッとしてる。蓮沼さんは両方に精通した立場としてどう思いますか。

蓮沼:わからないですけど、声をかけていただける人がいるのでその人を信用するし、信じるしかないです。だから僕は人に恵まれてると思っています。

津田:政治的に正しい答え、ありがとうございます(笑)。保身のためにさっきの発言を違った言葉で表現すると、音楽業界って適当に見えてちゃんとしていて、美術業界はちゃんとして見えて実はめっちゃ適当っていうか。それは感じますね。

蓮沼:日本の場合ですが、音楽業界はCDが昔たくさん売れた時代があったからお金の回り方がしっかりしている。それに比べると美術業界はマーケットがしっかりしていないようには思えます。

津田:終わり際にとても刺激的なお話になってきたと同時に、やや不穏な空気が漂ってきたので、この辺でおひらきとしましょうか(笑)。みなさん今日はどうもありがとうございました。

 

 

 
いよいよ9月16日(日)に迫った4年ぶりとなる蓮沼執太フィル名古屋公演。あなたもぜひ足を運んでみてはいかがだろう。
 
 
 
 
 
特集前半では、蓮沼執太への10のQ&Aも掲載。そちらもあわせて読んでみて。(http://liverary-mag.com/feature/70468.html)
 
イベント情報

2018916日(日)
蓮沼執太フィル「アントロポセン-Extinguishers 愛知全方位型」
会場:ナディアパークデザインホール
時間:開場 16:30 / 開演 17:00
料金:全自由席 4,500円 当日5.000円 学生割引3,000(Peatix申込は、学生証提示でキャッシュバック) 未就学児入場可
出演:蓮沼執太フィル
主催:のわ蓮沼執太/ VINYLSOYUZ
企画制作:蓮沼執太/ VINYLSOYUZ
特別協力:ユネスコ・デザイン都市なごや推進事業実行委員会
問合せ:のわ(担当:新見)canolfan@mac.com

蓮沼執太
1983年、東京都生まれ。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィルを組織して国内外でのコンサート公演をはじめ、映画、演劇、ダンス、音楽プロデュースなどでの制作 多数。近年では、作曲という手法を様々なメディアに応用し、映像、 サウンド、立体、インスタレーションを発表し、個展形式での展覧会やプロジェクトを活発に行っている。

津田大介
1973年生まれ。東京都出身。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。インターネットメディア「ポリタス」編集長。(一社)インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。早稲田大学文学学術院教授。早稲田大学社会科学部卒業。大学在学中よりIT関連のライターとして執筆活動を、2003年からはジャーナリスト活動を開始。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。第17回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞受賞(2013年)。あいちトリエンナーレ2019芸術監督。

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