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FEATURE / 特集記事 Nov 26. 2018 UP
【SPECIAL INTERVIEW|L PACK. & 青田真也】
名古屋の港まちで開催中の「アッセンブリッジ・ナゴヤ」。
旧・寿司店を改装したスペース「UCO」が迎えた最後の日、
この場所がまちの未来に残したものは何か。

FEATURE: Assembridge NAGOYA 2018|2018.10.06.Sat - 12.02.Sun | 名古屋港~築地口エリア一帯(愛知|築地口)

 

名古屋の港まちを舞台とする音楽と現代美術のフェスティバル『アッセンブリッジ・ナゴヤ』。今年も12月2日(日)まで開催中だ。

2016年より始動した同フェスティバルはまちなかのいたるところで音楽のコンサートや、現代アートの展示・パフォーマンスが行われ、日常と地続きでそれらを楽しめる。今年もさまざまな場所で多様な企画が日々開催されているなかで、会場の一区画にある建物が取り壊しとなることが告げられた。

 


UCO


ボタンギャラリー

つむぎ

 

いずれももともとは寿司屋、ボタン屋、染物屋だった場所で長屋でひとつづきとなっている「UCO」「ボタンギャラリー」「つむぎ」使われなくなって長年そのままになっていたこの長屋は「港まちづくり協議会」と港まちでアートプログラムを展開する「Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]」「アッセンブリッジ・ナゴヤ」、そしてアーティストやプロジェクトに参加した人たちによって再生され、ギャラリーや多目的スペースに変化し息を吹き返した。

3つのスペースは展示やイベントを開催するなど、使われなくなってしまった建物を再び人々が集う場所としての役割を全うしてきた。今回の取り壊しは残念なニュースではあるが、LIVERARY編集部は「UCO」の最後の日を取材するためひとまず港まちへ向かった。

 

解体が決まった「UCO」の最後の日、10月28日(日)。


この日も、さまざまな人たちがそれぞれの目的でこの場所に集まっていた。

 

10月26日から28日は、「UCO最後の3日間」と題されさまざまな企画が毎日組まれていた。特に最終日10月28日は、「UCO」や「ボタンギャラリー」「つむぎ」一帯は朝から晩まで多数のイベントが、その裏庭までをも使って行われた。

朝は、「UCO」にてL PACK.によるモーニング企画「たとえば、いつもより早く起きて港街でモーニングを食べてみるとする。」。朝早くからモーニングをみんなで食べる、というこのイベントにどのような意図があるのか?は記事後半のインタビューで明らかになる)

 

 

昼はデザイナー・川村格夫をリーダーに迎えた「UCO」を拠点にZINE(小冊子)を制作する「Chap Books Club」ワークショップ「UCO」2Fスペースを使って行われた「C」の付く単語をキーワードにしたZINEづくりは子供から大人まで夢中になって参加していた。

 

 

 

「UCO」のお隣「つむぎ」ではグラフィックデザイナーのフクナガコウジによるシルクスクリーンワークショップも。毎年、デザインを更新してきた「UCO」ロゴをTシャツやトートバッグ、参加者が持参したものなどに刷っていく。

 


3年目となる今回は、夕暮れ時をイメージした赤、黄、オレンジといったボディに、満潮をデザインに落とし込んだロゴとなっている。

 

最後は、角銅真実横手ありさによる音のパフォーマンス「こんにちはのうしお」(空間構成は山城大督)。ライブは「UCO」2Fから1F、ラストは裏庭も使用されこの建物全体が音楽とひとつになった。港まちとここで出会った人たちの言葉から生まれた角銅真実作曲作詞によるオリジナルソングも披露された。

 

 

果たして「UCO」とは何だったのだろう。

かつては寿司店であった「潮寿司」は閉店してから20年が経ち、2015年に「UCO」という洒落のきいたネーミングとともに再生を遂げた。そして、モーニング、ワークショップ、アート、音楽、さまざまなきっかけと縁でこの場にさまざまな人々が再び集う場となったわけだが、残念ながらこの日を最後に再び閉じることとなった。

同スペースを開いた中心人物である、アーティストユニット・L PACK.と、「アッセンブリッジ・ナゴヤ」や「Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya]」共同ディレクターであり、自身も美術作家である青田真也に話を伺うことに。

彼らが「アッセンブリッジ・ナゴヤ」というきっかけを介し、このまちと関わりを持ったことで生まれた「UCO」というスペースが3年という短い期間で終わってしまった事実も踏まえ、果たして「UCO」とは何だったのか?を探った。

 

 

SPECIAL INTERVIEW:

L PACK.  
with
SHINYA AOTA

Interview , Text & Edit:Takatoshi Takebe [ LIVERARY, THISIS(NOT)MAGAZINE ]
Photo:Peso, Tomoya Miura

 

いつも気さくで程よい距離感が素敵なL.PACKのおふたり。小田桐奨(左)と中嶋哲矢(右)。

 

―今日は「UCO最後の日」ということで取材に来ました。この場所で今回のようなプロジェクトをやるってことは、はじめから決まっていたんですか?

青田:もともと「港まちづくり協議会」がこのまちでアートプログラム始めるタイミングと、「港まちポットラックビル」が一般にオープンするタイミングが同じだったので、その時に「L PACK.と一緒にモーニングをやろう」ということになりました。「港まちポットラックビル」と「キャビン」という旧喫茶店でモーニングの企画をそれぞれ3回やりました。L PACK.の活動が、美術にとどまらない領域で展開していることと、モーニングという切り口だったら、アートが好きな人に限らず、違う視点を持って参加できる人たちが沢山いるんじゃないかと考えました。それで開催したモーニングがL PACK.の2人と港まちで一番最初にやった企画ですね。

―今日僕もUCOで「最後のモーニング」を体験しました。今、青田さんがおっしゃったようにLPACK.ってどこが美術的なのか、正直疑問でもあります。例えば、この「モーニング」を企画として見た時、どういう視点で見ればアートとして解釈できると思っていらっしゃるのでしょうか?

中嶋(L PACK.):自分たちもアートだと思ってモーニングを始めたわけじゃなくて。簡単な方法で世界が変わる術のひとつだと思っていて。

―と、言いますと?

中嶋(L PACK.):最初にモーニングをイベントとしてやった年が2011年なんですけど、ちょうど震災があった年というのもあって、ささやかな変化をつくるなにかをやりたいなと考えていました。自分たちの活動は、これは美術作品だとか、アートだとか、という意識をそんなに持ってはいなくて、モーニングに関しても、朝、少し早く起きていつもと違う場所で、違う風景のなかで、ご飯を食べる行為=モーニングであって、それ日常だけど非日常でもあるというおもしろさがあるんじゃないか。そういった想いが根底にあります。

 

 

中嶋(L PACK.):モーニングを美的な視点で言うと、朝の光の綺麗さですね。これは誰かと共有したいなと思いました。

―じゃあ最初は深く考えずに始めて、やっていくうちにこれはアートって言えるんじゃないか?って思えてきたってことですか?

小田桐(L PACK.):紐付けてくれるのは外側の人ですけどね。僕らはあくまでもやっているだけで。その場を提供しているだけです。

中嶋(L PACK.):アートなのかどうか、わからなくなってきますよね。

―「いつもの日常の視点を変える」って現代アートのおもしろさのひとつでもあって、そこがモーニングにも共通して言えるってことですよね。L PACK.さんって肩書きとしてはアーティストであるわけですが、活動の主軸は、コーヒーのある風景というポイントに軸があるんですよね?

小田桐(L PACK.):そうですね。大学の専攻は「建築デザイン」でしたが、いわゆる建物を建てることだけが建築ではないと思っています具体的には、ここのように使われていない建物に色んな時間を作ってみたりすることも「建築」であると考えています。そこで夜にライブをやったり、昼にマーケットをやったり、例えばコーヒーを飲むという行為そのものが建築の最小単位なのではないか?という考え方です。

 

 

 

なるほど。港まちの活動の中でこの「UCO」が一番ポップな立ち位置だったな〜と個人的には思っていました。現代アートのプロジェクトとしてスペースをつくった、というよりも、普通の人からしたら新しくカフェがOPENした!くらいのことだと思いますし、それくらいの間口の広さで誰でも入りやすい雰囲気があったと思います。「アッセンブリッジ・ナゴヤ」というクラシック音楽と現代アートというやや敷居の高いジャンルを扱うフェスティバルにおいて開けた場所がなくなってしまったという意味でも残念だな〜と。

小田桐(L PACK.):残念です。

青田:ここの建物の賃貸契約が一年ごとだったんですが、大家さんから「契約は今月で終わりにしたい」と今年の3月に連絡がありました交渉を重ねて、何とか10月末までということに延長できましたが、特別な契約だったこともあり、今年中に更地になることが決まりました。

―2016年にも「UCO」でL PACK.の取材を一度させていただきました。そのとき聞いた話で印象的だったのは、近所の人が要らなくなったレコードプレーヤーを「使うか?」って持ってきてくれたり、ここを開いてみたらどんどんいろんなものが集まってきたっていう話でした。まちの人とこの場所がシンクロしていたことはすごくポジティブでいい話だな〜って。建物の取り壊しが決まって、まちの人たちからの反応はどうですか?

青田:なくなることをお伝えするとよく来てくれていて「これから行く場所がなくなってしまう」と残念がる人もいれば、せっかく始めたのに取り壊しになってしまったことに対してお叱りを受けることもありましたね。

小田桐(L PACK.):でも、もしこの「UCO」ができていなかったら、この建物は単純に壊されて更地になって役目を終えていた。その前にこういうプロジェクトができて、みんなにこの建物があったということや、短い期間であったにしても多くの人に使ってもらって、最後をいい終わり方迎えられたということは建物にとって、よかったんじゃないかなと僕たちとしては考えています。みんな建物の前で集まって楽しそうにおしゃべりしてる姿とかを見ているとそんなに悲観的でもないですね。この建物自体ももちろん重要で、なくなるのは残念ですが、むしろ建物以外が、とても重要だと考えているからです。UCO」という場所がなくなってもここに集まっていた人たちや、この場所で生まれたコミュニティはまた次の場所へ移動していけばいいわけですし、残念だという声があがっているのであれば、それを次にどう繋げるかが課題ですね。

青田:「アッセンブリッジ・ナゴヤ」としてコミュニティやここで生まれたさまざまな活動を重要に考えています。美術がまちづくりのために利用されるのは違うと思いますが、アーティストがこのまちでやりたいことをやってもらうことで、何かしらまちが変化するきっかけになるんじゃないかいう期待があります。L PACK.というアーティストと何か面白いことをできたらそのうちまちの風景も変わるんじゃないかと思っています

―なるほど。では「アッセンブリッジ・ナゴヤ」に話を戻して、これまでやってきて街の変化や気づいたことって何かありますか?

中嶋(L PACK.):年に数回のペースでこのまちに来てますが、ここに来るたびにお店がどんどん無くなっていってますよね「味幸」さんとかも無くなっちゃったし。

青田:「味幸」さんだけじゃなくて、むちゃくちゃいいお店だな〜と思っていたところが次々と閉店していますね……。

―「味幸」さん、美味しかったのに悲しいです。

青田:「アッセンブリッジ・ナゴヤ」は今年で3年継続して開催していますが、そのなかでまちの風景はどんどん変わっていると実感しています。今回、L PACK.とともにつくって継続してきた場所が終わってしまうこともリンクして、そのことについてより考えてプロジェクトに反映する機会になりました。ただ、お店がなくなっていっていることなど否定的な側面だけを見るのではなく、じゃあまちの移ろいのなかで自分たちはどんなことができるのか?ということを観察し考えながら、実践することが重要だと思っていますね。特に最近は、このまちに外からたくさん人が来ることだけなく、大きくなくても継続的なコミュニティや活動のきっかけをどうやってこの場所でつくっていけるのかを考えています。

―新しいお店がバンバンできていくことが本当に果たしてそのまちにとって良いことなのか?とも思いますし、惜しまれつつ閉店していくくらいのほうが、そのお店にとっては美しい最後なのかもしれないですよね。ここで生まれたコミュニティや関係性が今後どのように展開されていくかも気になります。今、L PACK.さんは横浜で「DAILY SUPPLY SSS」というショップをやっていたり、これまでも多数の場所を開いてきたと思うんですが、「UCO」のように惜しくもなくなってしまった場所ってありますか?

中嶋(L PACK.):これまで活動してきた場所ほとんど全部ですね。

小田桐(L PACK.):一番最初は「竜宮美術旅館」。横浜で2010年の秋から2012年3月までやっていたスペースです。古い旅館を借りて、自分たちで改装しました。

―最初からその期間限定でやるって決まっていたんですか?

小田桐(L PACK.):オープンしてすぐに取り壊しが決まってしまったんです。取り壊し前に青田君を含めて合計13組の作家のグループ展『RYUGU IS OVER!!竜宮美術旅館は終わります』を最後にやって終わりました。

―そこは建物自体もう無いんですか?

小田桐(L PACK.):今では、タワーマンションが建っています。京浜・日ノ出町駅前にあった戦後にできた旅館で、外観が和洋折衷なつくりになっていて竜宮城みたいでした。人が泊まる場所ではなくて、アート作品が泊まる街のシンボルとなる場所ということにしました。「竜宮美術旅館」も「UCO」に似たような最後を迎えました。だから、「UCO」も「どういう風に終われるかな」とは考えていました。改修を始める時も、そもそも20年もの間閉まっていた場所で、ボロボロの状態だったので、お金をかけて綺麗にするのも違うなと思っていました。崩れたところは、そのままの状態を閉じ込めて見せるようにアクリル板を貼ったりしました。だから、いわゆるリノベーションしたというよりは、延命させたという感じですね。

 

 

―なるほど。で、今日がUCO最後の日だってことで、みんながお見舞いに来たって感じですか?

中嶋(L PACK.):「ごめんね」って感じで、生命維持装置をパコって取るみたいな、ね。

小田桐(L PACK.):「竜宮美術旅館」の時は、最後の展覧会に2千人くらい来ました。物を全部出して退去したその2日後に壁が崩れて。

青田:この場所も、今日気づいたんですけど、修復したはずの壁が剥がれかけているんですよね。ほら、あそこ(崩れた壁板を指差す)。

―うわ!本当だ。最後の日を逆算してちょうど壊れていくように修復していたとしたら、すごいですね。

中嶋(L PACK.):そう!計算です!(笑)

―(笑)。無くなっていく風景は悲観的な側面だけではないってお話がありましたが、それについてはL PACK.さんはどう思いますか?

小田桐(L PACK.):仮にこの場所を今後続けられたとしても、どんな頑丈な建物だって、人が作ったものだから、永遠というのはなくて、いつか壊れてしまいますよね。ですが建物がなくなっても「UCO」という名前も記憶の中に残りますよね。何年か後に、この場所に来たことある人はここに「UCO」という場所があって、こんなことがあって、あんなことがあって……いう思い出話ができると思います。建物自体が無くなっても、物質以外は残る。

中嶋(L PACK.):この場所で色んな人と出会いましたし、色んな思い出がありますけど、例えここが無くなってもそういう思い出や、人と人の繋がりはこれからも残っていくと思います。ここがあったから生まれた関係性とか。そんな風ないい風景が作れたのかな、と思います。「景色」と「風景」という言葉、似てますけど、僕らは「風景」の方を作りたいと思っていて。

―その「景色」と「風景」の違いというのは?

中嶋(L PACK.):「景色」というのは時間軸でいうと眼の前にある「今」だけなんですよね。「風景」は、過去の記憶の風景だったり、今だけでなく、過去や未来を指すときにも使いますよね。だから、時間軸をまたぐような「風景」をつくりたいと思っています。「UCO」も記憶の風景になっていくと思います。

―今後も「UCO」で生まれたコミュニティや活動の風景は、どこかしらで続いていくんでしょうね。

青田:ここで生まれたコミュニティやつながりといった風景は、何かしらの形でこのまちに残るようにできるだけ活動を続けていこうと考えています。また皆さんの前に「UCO」が現れる日を少しだけ待っていただけたらと思います。

 

イベント情報

2018年10月6日(土)〜12月2日(日)
アッセンブリッジ・ナゴヤ2018
会場:名古屋港~築地口エリア一帯
主催:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会
構成団体:名古屋市、港まちづくり協議会、名古屋港管理組合、(公財)名古屋フィルハーモニー交響楽団、(公財)名古屋市文化振興事業団
問:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会事務局(名古屋市港区名港1-19-18 3F)
TEL:052-652-2511
http://www.assembridge.nagoya

L PACK.
小田桐奨と中嶋哲矢によるユニット。
共に1984年生まれ、静岡文化芸術大学空間造形学科卒。アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をきっかけに、まちの要素の一部となることを目指す。
2007年より活動スタート。主な活動に廃旅館をまちのシンボルにコンバージョンする「竜宮美術旅館」(横浜/2010-2012)や、室内の公共空間を公園に変えるプロジェクト「L AND PARK」(東京/2011-2012)、みんなのアトリエ兼セカンドハウス「きたもとアトリエハウス」(埼玉/2012-)、ビジターによるビジターのためのスペース「VISITOR CENTER AND STAND CAFE」(名古屋/2013)などを展開。また、各地のプロジェクトやレジデンスプログラム、エキシビションにも参加。

青田真也
アーティスト。身近な既製品や大量生産品、空間の表面やカタチをヤスリで削り落とし、見慣れた表層や情報を奪い去ることで、それらの本質や価値を問い直す作品を制作している。 主な展示に、「あいちトリエンナーレ2010」「個展」(青山|目黒)、 2014年「日常/オフレコ」(神奈川芸術劇場)、「MOTアニュアル2014」(東京都現代美術館) などがある。 

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