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FEATURE / 特集記事 Apr 29. 2016 UP
【SPECIAL INTERVIEW】
テニスコーツという名の冒険に出かけよう。
彼らの音楽はいつだって、そこに在る。

SPECIAL INTERVIEW : Tenniscoats

 

 

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写真は「中庭音楽祭」打ち上げ会場にて、まだまだインタビューは続きます。撮影:武部敬俊

 

ルーツはブルーハーツとガイコツ?

 

植野:正確に言うと、家探ししようとした初日にまず下北行ってみたら、ヒロトが歩いてたっていう。だからここは素敵な良い街に違いないって。しかもその時ね、右手にね、水の入ったペットボトル、左手にフランスパン持って歩いてたんだよ。ヒロトが。

さや:かっこいい!って思ったんでしょ?

植野:うおお!と思って。

ショウタ:確かにフランスパンだけじゃ、喉が……(笑)。口がぱさぱさになるから。

植野:そういうことなの?(笑)。

―もともと、お2人とも東京生まれ、東京育ちなんですか?

さや:全然!

植野:俺九州人、さやは東北人。大学で東京に出てきて、俺は下北に住んで。バンドブームですよ、バンドブーム。

ショウタ:一旗上げようって思ってたんですよね。

植野:そうそうそうそう。

―最初はテニスコーツってバンドだったんですよね?

さや:最初はプカプカブライアンズ。プカプカブライアンズが、私が入ったらドラムもベースもいなくなって、そしたら最終的に私と隆司だけになっちゃって。2人ユニットみたいになって。

植野:そしたら、さやが曲作り出して。

さや:どんどん台頭していったっていうか。そしたら隆司が、プカプカは自分のバンドだから自分の好きなようにしたいじゃないですか。だから、「別のバンド作れば」って言われて、隆司が主導の時はプカプカブライアンズで、テニスコーツの時はさや主導ってことでって。

―じゃあ、最初はバンドやりたかったってことですか?

さや:隆司はバンド思考だよね。だからかわいそうなんですよ。

―どういうことですか?(笑)。

植野:何がかわいそうなんだよ。

さや:ギターをジャーンとかやってるのを見ると、隆司はバンドをやりたかったんだろうなって(笑)。

―今の現実がかわいそうってことですか?(笑)。

植野:ライブ中もかわいそうって思ってる?ひどいなー!お前!!(笑)。

さや:デフ・レパードとか喜んで聞いてるのとか見ると…

ショウタ:植野さんは上京したときは、ロックスターを目指してた?

植野:ロックスター(笑)。もうやめてくれ(笑)。

ショウタ:多分ここすごい大事なところなんで!(笑)。ロックスターからのテニスコーツ…

植野:ロックスター言うなよ(笑)。

さや:途中からなんか…。ジミヘンドリックスとかニルバーナみたいになって。

植野:さやも調子のんなよ(笑)。

ショウタ:いやでも、東京に出て下北来た時は、本当にメジャーデビューを目指してた…?

さや:やってやるぜ!みたいな。(笑)。

ショウタ:そっから這い上がるチャンスができた!みたいな…

植野:なんでお前ら煽ってんだよ(笑)。俺の過去を勝手に作るなよ(笑)。

―まあ、でも、今の植野さんも充分ロックスター感はありますけどね。

ショウタ:やっぱりそこが原点だから。下北のなんか汚いアパートから始めて…

植野:おいおい。何でわかった?(笑)。

ショウタ:汚くないわけがないですよ。

植野:当時、下北は汚いアパートしかなかったよ、きっと。汚い飲み屋と汚いライブハウスと汚い……

さや:でもさ、良い話があって。下北時代に、金髪でバンドやってた時のメンバーから、最近電話がかかってきて。数年前にテニスコーツのYouTubeを見たのかな?「baibaba bimba」とかの。で、「アコースティックギターとか持って、お前あんなことやってて恥ずかしくない?」って言われたんだって。すごくない?(笑)。「お前よくあんなことやるねー」って言われたら、隆司が逆に「そんなの自分だって、何年経ってもずっと同じことを…この年になって、ぎゃんぎゃんやって…」って言ったって。

植野:革ジャン着てね。

―あ、その人はまだやってるんですね?

さや:そういうのをまだやってて…「そっちは恥ずかしくないの?」って隆司が言ったら、しーんって(笑)。

―(笑)。

さや:でもね、古い友達とそうやってね、未だに繋がっているからすごいなって。

植野:うん、忘れた頃に連絡来るし。

さや:すごい!すごいなと思う。気にされてるんだよ。

―さやさんも最初はバンドやりかったんです?

さや:私も高校の時にバンドブームになってたけど…。私はやりたかったけどやれなかったから。

―高校時代は、ライブに行ったり、CD買って聞いたりとかそういうことしてました?

さや:うん、ガイコツとか黒いジャケットのCDを集めるみたいなのが、自分の中で流行って…。不協和音との出会いっていうのが高校の時…

一同:(笑)。

さや:え!?面白い!みたいな感覚で。そういう音楽を知らなかったから、すごい変な響きのやつをとにかく探そうと思って。

―だいたいガイコツのジャケットだと不協和音が入ってると(笑)。

さや:入ってることに気付いて。プログレとかそういうの何でもいいから聞いてたけど。でも身近にジッタリン・ジンとかをカバーしてる友達はいたんだけど、やろうとはならなくて。いいなーとは思ってたけどね。

植野:相当、話が外れてきたね。終わんないよ(笑)。

さや:まとめなくて大丈夫ですか?

 

『Music Exsists』=音楽は在る。

 

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―じゃあちょっとアルバムの話に戻ります。なんで「MUSIC EXSISTS」ってタイトルなのか?って聞いていいですか?直訳すると「音楽は存在する」ですよね?

さや:「音楽はある」っていう曲があって…。だから、そのまま日本語で「音楽はある」でいいかなと思ったけど、なんかクールじゃないかな、みたいになって「Music Exists」がいいんじゃないってなって。

植野:英語にしただけじゃん。

さや:そうそう。英語で…なんかテクノ系のアルバムのタイトルみたいだって言われたりもしましたけど。どっちかっていうと、ダサい感じなのかな~と。

ショウタ:そういうトラックも作ればいいんじゃないですか?

さや:そっか。

植野:4つ打ちでさ。ずっとさやが「イグジスツッ!」って言ってるみたいな…

―(笑)。

さや:でも、タイトルについては、誰にも、何も言われない。普通気になるよね?タイトルのこと。

植野:でも、シリーズになるのはちょっとわかってたから、ちょっと大きめな意味にしないとねってのはあったかも。

さや:「きな粉」とかそういうんじゃだめだよね(笑)。

―(笑)。「音楽は存在する」って、確かになんかとてつもなく大きなタイトルですよね。

さや:ちょっと大きく出ましたよね。

植野:でも、「宇宙と私」とかよりは小さいよ。

さや:はは(笑)。いや、どうだろうね…

植野:「産卵」よりも、ちょっとスケール小さいかな。まあ、でも「産卵」くらいの大きさはあるかもね…あ、そういえば、アルバムの話で一つだけで言い忘れたのが、今回マスタリングの宇都宮さんがすごい重要なの。

さや:そうだ、そうだ。

植野:俺らの最大のモチベーションになってる。ある日、ちょっと調べてみたら、すごい人がいるって気づいて。西川くんとか大城くんとかその辺りの(エンジニアをやっている)みんなの師匠的な、凄まじい人が。

―やっぱり全然違うんですか?マスタリングで。

植野:ほんとはね。でも、今までのマスタリングとはもう別物で。

―具体的に何が違うんですか?

植野:音がものすごく良いのと、技術がものすごい高い。発想もものすごい。毎回すごい。だから今回のアルバムは音が本当にいいよ。

さや:これは頼んでもいいかな〜みたいなのも頼んでみたら、100倍くらいになって返ってくるから。思い通りになるように、頼むんじゃなくて、違うことになるんじゃないか!みたいな期待をこめて頼んでる部分があるかな。

―マスタリングってあんまり意味ないって言われるじゃないですか?だいたいミックスで決まっちゃうみたいな話も聞いたことがあるんですけど。

植野:それはパソコンで作ってる音源は、そうかも。一番の違いは音の良い悪いっていうより、みんながミックスしてそのままだと、一番小さい音と大きい音の差がある。例えば1枚のアルバムで小さいとこと、そこだけ大きいのがあれば。基本的に大きいのに合わせていれるから。いかに音をいい感じのまま狭くして音量を上げられるかっていうことはマスタリングのみんながやるひとつであり…。そのままだとどうしても一番 ピークのときに…普段他のCD聞くと小さく感じるんだよねCD-R作品とプレッサー作品の違いはそこ。

さや:まあそこまでいってもね、なんでそれが重要なのかは…。

―マスタリング前のを聞いてたら、よりわかるかもしれないですね。宇都宮さんって、ちなみにどんな人なんですか?やっぱり、職人っぽい感じでしょうか?

植野:まあ、職人っぽいっちゃ職人っぽい。究極の職人でもあり…。

さや:でもなんかワクワクしてる感じ。

植野:宇都宮さんがべアーズに出演したことがあって。内容は忘れたんだけど、前の日に一日かけて、ベアーズのPAとスピーカーを宇都宮さんがチューニングしたら、ベアーズの音がものすごい良くなっちゃってそれで1年に1回ライブやって欲しいって言われたって。

―(笑)。エンジニアって重要なんですね。

さや:重要だと思いますよ。もちろん、カセットで録った音源だとすごいテレコで録った感じとか、そういうのも大好きだけど。ただ、それとは別に、そういう偶然じゃない音の作り方を追求してる人っていて。科学的に。そういう人が狙って、その音が出せるっていうのは大事にしたほうがいいなと思います。それを理解して、実現力として、色々可能になることって、音の冒険だから。それですごい世界があるんだなって知ったから。で、やっぱ音楽そのものとか曲も頑張らないと、演奏も、その人の作る音の良さに負けちゃう。だから、あ~がんばらなきゃって思うから。がんばり合いみたいなところがあって。ローファイも好きなんだけど。

―ローファイな音のイメージありますけどね、テニスコーツって。1枚目のテニスコ―ツのテーマとか入ってるアルバムすごく好きで。あの、こもった音も。

さや:あれは、テープのヒスノイズがそのまま入ってます。でも、その時しかできない環境の空気が入ってる。ただ、やる側がそういう質感にこだわっちゃうと、あんまりそういう風になると、よくない気がする。

―なるほど。あ、では、disc1、2の違いというか、ココがいい!ってのありますか?

さや:2は、思ったよりすごい良いのになった。

―1よりも2がいい?

さや:うん。

植野:1よりいい。

―じゃあ1はあんまり……?

さや:あはは(笑)。

植野:1は良いけど、2はもっと良い。

さや:2が新作なのに、1より良くなかったらやばくない?

―まあ、1は1で良さがあるとかじゃなくて、1より良くなっちゃった(笑)。じゃあ、1は出さなくてもよかったぐらいってことですか?

さや:いや、1があったから2が…。

―1があったからこその2?

さや:そう。次の作品への踏み台(笑)。

 

平和と冒険とテニスコーツ。

 

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撮影:成田舞

 

―前から聞きたかったんですが、「何のためにテニスコーツやってますか?」って聞かれたら、何て答えます?

さや:確かに!何て答えるんだろう。何のためにやってる?

植野:世界平和だよ…。

さや:じゃあ、隆司はそれね。

植野:清志郎は「何で音楽やってるの?」って質問に対して、「世界平和のためです」って答えてた。

さや:隆司も、世界平和のためってことで。

植野:じゃあ、俺は日本平和の為。

―(笑)。

植野:最近その辺の大切なこと日記帳に書いたんだよな…。

―え!日記、書いてるんですか?

植野:書いてますよ。小学校の時からずっと書いてる。

さや:へ~すごい。

―それ本にして出したらおもしろそうですね。

植野:いや出さない、出さない。

さや:出せばいいじゃん!自費出版で(笑)。新宿とかで売ったら?

―(笑)。で、さやさんは「なんでテニスコーツやってるんですか?」の答えは?

さや:冒険かな。

―冒険?

さや:冒険のため。本当はね、いかだに乗って冒険したいの。

―歌わなくてもいい?(笑)。

さや:でもね、それやっても溺れて死んじゃうだけだから。

―じゃあ、こう作品とかを作っていく過程が冒険みたいな感じ?

植野:とりあえず今回のは、4部作…。でも下手したら5になるかも。

さや:もうそういうこと言うのやめようよ!5になるかもって言っちゃったら、ならなかった時に、志半ばで挫折するみたいになっちゃう。

―冒険を挫折したみたいに?

さや:でも、さあ、よく登山家とか冒険家がなんで冒険するんですか?って質問に対して…

―「そこに山があるから」ってやつですか?

さや:そうそうそう。

―「そこに音楽があるから」、そういうことですか?

さや:あ、うまーい!!やばーい!!

―それでいいです?

さや:それでいいです。

―(笑)。

さや:偶然(笑)。でも思うのは、「音楽は在る」って言ったところで、じゃあどこにあるんだろうとか、何が音楽なのか?ってところをやっぱり知りたいんじゃないですか。

―あ、じゃあその為の冒険でもある、みたいな。でも、植野さんは平和のために音楽をやっている。

さや:あはははは。嘘くさい(笑)。めちゃくちゃ面白かったよ、今の!(笑)。もう一回言ってください!

―さやさんは冒険のために音楽をやっていて、植野さんは平和のためにやってる(笑)。

さや:あはははは(笑)。

―平和と冒険とテニスコーツ。いい響きですね。

植野:でも、平和と冒険って一致しないかもね。

―そうですね。でもツッコミとボケみたいに、冒険と平和って役割分担されてるとか?

さや:そうかも!隆司は、なるべく冒険したくないんだもん。

―あ、意外ですね。

さや:そう。だって、もう間に合わない~って時に、空港で飛行機のゲートを探すの諦めてタバコ一服してたりするし!

―平和だ(笑)。

植野:行かないという選択。

さや:行かないってなって、むしろほっとした、みたいな。

―(笑)。冒険をやめよう、と思った時とかないんですか?

さや:冒険…まあ、確かに身体とか疲れてしまったら、ねえ。

―でも、やめられない?

さや:それもある。

―でも冒険って、ゴールがないと行かないと思うんですけど。

さや:あ~~目的がないとね!?なるほど!

―ラスボスが待ち構えている城、みたいなそういう目的がどこかにあるのが冒険なのかなって…。

さや:目的をつくるってことがすごい苦手。多分、目的を設定したら、途端に逃げたくなる。やめたくなるんですよ。

―あ〜…だからっていうわけじゃないですけど、今回のアルバムの作り方とかも特殊っていうか、録り貯めていって、一回そこで切って出そうっていうやり方ですけど…。普通は10曲入れる!って感じでアルバム作りますよね。

さや:disc3とdisc4の内容がまだ全然見えてないので…

―曲がまだ達してない?

さや:まあ、たぶん足りるけど、なきゃないで、中断してもいいと思ってる。本当にがんばってたら、途中で力尽きてもいい。それはそれで。

―記録みたいな感じですか?

さや:でも目標が決まってたら、冒険じゃなくない?例えばツアーに行って、空き時間とか空き日とかができるじゃないですか。例えば、せっかくローマまで来たんだから、じゃあ美術館に行くだとか、○○を見に行ってみよう!だとか、いろいろ時間の使い方ってあると思うんですけど、だいたい私たち、時間が空いたらずっとカフェにいます。

―(笑)。ゆっくりしちゃうってことですか?

さや:ずっと喋って、その辺にいる人とかを見ながら、暇してる。とにかく予定を立てない。予定を立てると、朝からこう行ってこうしてこうしないと間に合わないとか、焦ってきちゃう。するとあんまり冒険にならないから、基本暇にしておいて、誘われたら行く!みたいな。まあもちろんね、その行き先には絶対何かしらの修行は一個はある、ライブとかね。

―だいたい予定は一つだけって感じですか?

さや:うん。予定空けとかないと、誘われた時にそこについていけないじゃないですか。面白そうなことがあった時に。

―なるほど、なるほど。

さや:でもまあ、例え2人でいて、1人はこっち行きたい、1人はこっち行きたい、別のことをやりたいとするじゃないですか、それぞれが。そういうとき、私は私でまた決めたいというか、あっ、そっちが面白そうだなと思ったらきゅって方向変えるし、無理に最初から合わせようとはしない。

―そういう考え方だと、さっきの話じゃないですけど、バンドとかはやっていくの無理そうですよね?人数が増えれば増えるほど意見をまとめにくくなるじゃないですか?

さや:ははは、確かに(笑)。冒険になりやすいのは2人ですね。1人だと、ちょっと慎重にならざるをえない。体力の限界も、荷物の限界もあるし。それは無理だなっていう判断ができるけど。私がもう本当にダメな時に、隆司がついて行きたくなっちゃって、誘われて「大丈夫、大丈夫行けるよ!」って言われたら、私は本当に疲れてて、本当に行きたくないのに、1人で残るのもちょっと嫌だし心配だから、「まあついて行こうか」みたいにはなります。その道中は、めちゃめちゃ不安なんです。誘拐だったらどうするんだよと思って。

―海外でってことですか?

さや:そう。以前に、フランスに行った時、知らないフランス人が話しかけてきたことがあって。「とあるビルでパーティーをやるから、そこでライブしてほしい」みたいに言われて。ライブした直後だったところで、別のイベントでもう1回ライブやってくれって言うわけ。その日もめちゃくちゃお腹壊してて、声もちょうどツアーの半ばで疲れも溜まってて…。もうね、私は「無理無理無理!ないないない!」って言っていたら、隆司が「でも俺らの友だちの知り合いだってこの人は言ってるよ?」って。一緒にいたTape(スウェーデンのバンド。テニスコーツと共作をリリースし、日本でもツアーを行っている)にも「なんで行くの?」って言われたんですけど、結局ついていって。その誘われたビルの会場のドアを開けるまで「絶対、パーティーなんて嘘だ、私たちは騙されてるよ〜」って思ってたんだけど、ドア開けたら本当にパーティーやってて…。

―で、ライブをもう1本やったんです?

さや:でも、会場にマイクはちゃんとあるっていうお話だったのに、「マイクいるか?」って言われて。200人も300人もいるパーティーで、みんな喋ってるんだよ。「マイク絶対いる!」って言って、そしたら「ある」って言ったのに「どうしても見つからないから、メガホンでいいか?」って言われて(笑)。結局、生声でライブして。必死で2曲くらいやって。そしたら、後ろの方の人が喋り出したりするでしょ、ライブが見えないから。そしたら、他のお客さんたち皆が「シー」って言い合ったりして生声でも聞こえるような環境を作ってくれて。やる前はすごい文句ぶーぶーだったのに、やったら…なんかすごい楽しかった。わけわかんない注文だったけど、面白かったね!みたいな。

―なるほど。その時はどっちかっていうと、さやさんが<冒険>ですよね?

さや:そう。でも、隆司も冒険家なところありますよ。隆司は、すごいよく変な人につかまる。地元の酔っぱらいのおじちゃんとか。がんがん話しかけられて、で、隆司も立ち止まって話聞いてあげるもんだから。あれ、いないと思ったてたら、結局その人と2時間くらい話し込んじゃって…。その人の人生論を聞いてたりとかする。

 

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撮影:成田舞

 

植野:水戸に「ワシントン跡地」っていうところがあって。

さや:ただのね、野原みたいなね、家を解体した跡地なんだけど、そこで真冬にライブをして。そこで、「変なインターネット番組みたいなのに来てくれ」って言われて行ったら、その人の地元の仲間がいっぱいいて…。で、法的な理由で「解体しろ」って言われて、一人で半年かけて解体して。そのプロセスを全部記録に撮りながら1人でやったんだって。そしたら今度は「もうちょっと建ててもいい」って言われたらしくて。いい感じに跡地っぽさが出るくらい元に建て直して。なんだか今は焼け跡みたいな。やばいよね。

植野:うん。建てて壊してまた建てるみたいな。

さや:それで、「テニスコーツライブ」みたいな文字書いてその日のポスターに。これ、むしろ人を遠ざけるでしょ、みたいなポスターで。最初、そこを運営している矢口くんと話したとき、別に普通だったんですよ、最初の印象としては。でも、次に会ったら、全然違う感じになってた。

―何があったんですか?(笑)

さや:その人、女装してて。

―(笑)。

さや:あと、「ホワイトハウス」って自分で呼んでるショップがあって。

植野:その隣の小料理屋のアンコウ鍋がすごくて。

さや:名物なんだって。みんな食べるんだって。で、そこには、おばあちゃんが泊まりこんでて。ずっとコタツから出ないおばあちゃんで。編み物が得意で。

植野:それで俺らに話しかけてきて、「へ~、テニスコーツね~」とか言いながら。そしたら、俺らが鍋食い終わる頃に毛糸で編んだ「テニスコーツ」って書いてある手作りの水筒ケースをくれて。しかも、俺とさやの分と、あと一緒にいた4人分のを作ってて。

―(笑)。なんかそういう不思議な縁をどんどん引き寄せるんでしょうね。

 

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打ち上げはまだ続く。撮影:武部敬俊

 

―じゃあ、最後、ちょっと全然違う質問してみたいと思います。最近の悩みってありますか?

さや:悩み?!やっぱりライブが…

―ライブが?

さや:録音(作品)が生きてくると、今度はライブ(演奏)が死にそうになってる。

―作品だけでいいんじゃないのか、って?

さや:うん。

―そういう人もいますもんね。あんまりライブやらずに作品だけを黙々と作る…

さや:なんかそう思いかけたりするんだけど、やっぱりライブが、作る場なんだなって思って。

―「最近悩みありますか?」っていう質問をしたら、意外と音楽と関係ない話がくるかな、と思ったら、さやさん意外と音楽のことしか考えてないんですね(笑)。

さや:あー!確かに…。今、音楽のことしか考えてないかも。趣味もないし。

―前に話しした時は「夢のなかに出てくるくらい、車が欲しい~」とか言って車の話ばっかしてたじゃないですか?

さや:あれも音楽の為に諦めたんですよ。

―(笑)え?どういうことですか?

さや:車なんか乗ってたら、音楽できなくなるかなって。

―(笑)

さや:前に、インドネシアに行った時、一緒にいた男の子が「趣味は何?」って聞いてきたから、「え?趣味?…ない!」って答えて。21、22の子だったかな、その子が「じゃあ、よっぽどフォーカスしているものがあるんだね」って、感心されちゃって。「なんかそんな大切なものに出会っていて羨ましい」って言われて。まだ彼は何になろうか?って悩んでいるんだって話をされて。

―なるほど。いい話ですね。じゃあ、植野さんの悩みは?って聞いたら、何って言うと思います?

さや:ギターのせいで、腕が痛いとか、かな。

―(笑)。

さや:あ、隆司が全然違うこと言う可能性あるよね。多分…

それで植野さんもさやさんと同じく「音楽のことで悩んでる」って話になったらすごいですよね。

さや:あー。隆司はね…。3つ候補を挙げてもいいのなら、まず①は「ない」。②は、最近絵のほうをやってるから、絵のこと…。③は、多分、女の子関係のこと。

―女性関係!(笑)。

さや:じゃあ聞いてみよう!

 

<植野さんが席に戻って来る>

 

―植野さん、最後に質問なんですが、最近の悩みごとは何ですか?

植野:悩み事か…思いつかない!うーん…ないんじゃないかな。

―あ、当たった!(笑)

さや:ピンポーン!(笑)。面白かったね〜。

 


 

ということで、脱線しまくりのインタビューとなりましたが、次回作への期待も高まる中、AFTER HOURSから4月20日にアナログリリースされた「disc1」を聞きつつ、CDでmajikickから発売されている「disc2」も聞きつつ、次なるステップの「disc3」(5月26日発売)、そして、このインタビュー中では果たして出るのか?と言われている「disc4」も気になるところ…。伸びやかに駆け上がっていく、テニスコーツの冒険の行末をじっくりと見守っていきたいと思います。平和な世の中が続く限り、彼らの音楽はそこに在るはず。

 

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打ち上げ&インタビュー終了。お疲れ様でした。撮影:武部敬俊

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イベント情報

2016年5月13日(金) 〜15日(日)
森、道、市場2016
日時:前夜祭15:00~22:00、14日(土) 10:00~22:00、15日(日) 10:00~20:00
会場:大塚海浜緑地(愛知県蒲郡市海陽町2丁目39番)
料金:前夜祭入場券¥800~、1日入場券¥1,700~ ※お得な早割チケット・通し券あり
出演:
5月13日(金)

大橋トリオ / Nabowa / やけのはら / 笹倉慎介

5月14日(土)
スチャダラパー / 大森靖子 / キセル / ペトロールズ / 水曜日のカンパネラ / 天才バンド /
Czecho No Republic / DJ JIMIHENDRIXXX (a.k.a Keiichiro Shibuya) / JAZZ DOMMUNISTERS /
蓮沼執太 / Yogee New Waves / 水中、それは苦しい / John John Festival / Licaxxx / 次松大助 /
笹倉慎介 / とんちピクルス / butaji / 鎮座DOPENESS / 呂布カルマ / CAMPANELLA / STUTS / 小鳥美術館
■LIVERARY LIVE”RAP”Y(フリースタイルMCバトル・トーナメントショウ)
鎮座DOPENESS / トリプルファイヤー吉田 / 呂布カルマ / CAMPANELLA / STUTS / ChemiCal Cookers  / あっこゴリラ/(司会:デンジャラスハーブ)、他挑戦者
■EATBEAT!
pug27 / ChemiCal Cookers

5月15日(日)
Chara×韻シストBAND / SPECIAL OTHERS / トクマルシューゴ / モーモールルギャバン / 堀込泰行 / 空気公団 /
DJみそしるとMCごはん / neco眠る / MOODMAN / シャムキャッツ / tofubeats / okadada / dancinthruthenights /
DJ JET BARON / 中山うり / Yasei Collective / NRQ  / テニスコーツ /ICHI / 真黒毛ぼっくす /
リュクサンブール公園 / 小鳥美術館(田中馨 参加 Ver.)
■蓮沼執太のメロディーズ・ツアープロジェクト
Ett & 蓮沼執太
■Irish Music Party
john* / annie / トシバウロン / 野口明生 / 須貝知世 / 田嶋ともすけ / 他

主催:森、道、市場実行委員会(http://mori-michi-ichiba.info
協力:jellyfish (http://www.jelly-fish.org
問:morimichi@tsuitachi.jp
詳細:http://mori-michi-ichiba.info

テニスコーツ
1996年頃に結成。主要メンバーはさやと植野隆司、しばしば他のミュージシャン、アーティストなどと共同制作、ライブ共演を行うためメンバー編成は流動的。1999年に『テニスコーツのテーマ』を自主レーベル『majikick』よりリリースして以降は、『エンディングテーマ』(02/noble)、1stアルバム『ぼくたちみんなだね』(04/ROVER・majikick)、2011年には実質的な2ndアルバム『ときのうた』(majikick)を発表。そのほかにも現在までに10枚のオリジナル作品を国内外でリリース。また、共作アルバムを国境やレーベルにかかわりなく多数リリースしておりスウェーデンのバンドTapeとの『タンタン・テラピー』(07/WEATHER)、ザ・パステルズとの『トゥー・サンセッツ』(09/domino)、他にもジャド・フェア、下山やパスタカスなど枚挙にいとまがない。植野隆司は不定形ユニット「プカプカブライアンズ」、ソロ活動や数々の客演、さやは二階堂和美とのユニット「にかスープ&さやソース」やディアフーフのサトミ・マツザキとのユニット「わんわん」(oneone) などでも活動している。

 

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