10.29 Sat - 11.20 Sun |やっとかめ文化祭2016
ラジオDJも、狂言師も…。
名古屋が大好きな人たちが誇らしげに語る、
アナタの知らない名古屋の魅力。
Text, Edit & Photo : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY ]
Photo : Sara Hashimoto [ LIVERARY ]
やっとかめ文化祭の人気イベントのひとつ、「まち歩きなごや」。さまざまなまちの達人たちがガイドとなってツアーを組み、誇らしげに語るこの企画。全47コース!ガイドさんの中にはもちろん一般人の方も多数参加している点も魅力的ではありますが、今回参加させてもらったのは、街頭で上演する「辻狂言」にも出演している狂言方・野村又三郎さんがガイドを務めるこちら。
まち歩きなごやレポートその①
笑顔が素敵な男性(写真左)が野村又三郎さん。右は「やっとかめ文化祭2016」運営も務める、「大なごや大学」学長・加藤幹泰さん。
野村さんが案内するのは、彼が小中学生時代を過ごしたという、いりなかエリア。「いりなか」と聞いてパッと何も出てこないのがおそらく正解であるが、ここでどんな街の魅力を掘り起こしてくれるのか?
まず最初は野村さんも使用しているという稽古場へ。
このような立派な稽古場が、いりなか駅すぐ裏のビルの一室にあること自体に驚きだ。歌の読み合わせでは実際に使用されていた台本が参加者のみ限定で公開された。さらには流派によっても違う狂言ならではの発声法、舞いにあわせての台詞読み合わせなど、「まち歩き」はいつの間にか贅沢過ぎる、狂言入門編ワークショップとなっていた。
野村さんならではの自己紹介とも言える狂言体験を経て、まちへと繰り出します。
向かった先は、南山教会。
野村:中学高校と僕は南山に通っていました。この教会も思い出の場所なんです。
狂言方とキリスト教教会というミスマッチ感も否めないが、彼のルーツの一部であることは間違いなさそう。一行は、最終目的地、喫茶マウンテンへと向かう。その途中…
野村:この近くに当時、僕がまだ高校生だった頃に通っていた稽古場があるんでちょっと寄ってみましょうか。
こちらがその稽古場が入っている建物。
野村:昔から芸ごとが盛んだった名古屋ならではなのかもしれませんが、当時の比較的裕福なお家はみんな習い事をするために今みたいにスクールに通うのではなくて、自分の家に先生を招いていたんです。だから、稽古場も家の中に作ってしまったりするわけです。
そして、この稽古場からの帰り道、野村少年は当時よくこの「喫茶マウンテン」にも立ち寄っていたのだそう。この日は、順番待ちの行列ができるほどの人気ぶり。
料理メニューは実に個性豊かで気になるメニューだらけ。まさにマウンテン(山盛り)と言える、強靭なオリジナル料理をみなさんでいただきました。
こちらがマウンテン名物・小倉抹茶スパ…。
小倉抹茶スパと格闘する、野村さん。楽しそうです。
大人のお子様ランチなるものも、ボリューム満点!
シメにピリリと辛い、サボテンスパゲティ。あれ、そういえば、駐車場あたりにサボテンが生えていたっけ…。
こちらのサボテンが使用されているかどうか?は不明ですが、ピリ辛のサボテンスパと、甘〜い小倉抹茶スパを交互に食べるのが正解のようでした。
最後に、野村さんにちょっと質問をしてみました。
我々にとって、舞台に立ったり、芸事の指導を務めるところまでは通常の「業務」ですので問題無いのですが、今回は散策のガイド役ということで…。しかも私の生まれ育った街ということで、普段とは違った緊張感や使命感が交錯し、さらにプランナー兼プロデューサーの「大ナゴヤ大学」加藤氏からの過剰な注文・要求の嵐でしたが(笑)。
自分自身も、幼少期に見聞きし感じたモノが中年になって現場に赴いて見つめ直すことができ、それによって全く違う景色にも感じたことは、一種の感動…ともいえるものでした。参加いただいた皆さんが満足していただければ、幸いです。
野村:最近、名古屋が「人気の都市ワーストワン」になってしまったことが話題になっていますが…。個人的な思いとしては、別に無理に首都や古都を肩を並べるようなことを目的にする必要もなく、わざわざ新規の名物や名所を作らなくても、歴史に裏付けられた揺るぎない「地元文化」があることを存分に自慢し、自信にすれば良いと常々思っています。
しかしながら、現実は現実として受け止め、伝承者であり伝道者である我々はこの現状を危機に感じているのも事実です。私自身は今、逆に「チャンス」だと捉えて活動をしています。
―では、「やっとかめ文化祭」についての総評をいただけますか?
野村:この「やっとかめ文化祭」は良い意味での“名古屋らしい泥臭さ”があるものの、我々の発想にはない斬新な企画構成になっていると思います。自身も発見がありその点企画者には感謝をしていますし、可能な限りお手伝いをさせていただきたいと思って参加しています。
今後は、これが単なる「年に一度のイベント」という位置付けで終わることなく、特別ではない当たり前の姿として定着していってほしいですね。ここから新しい歴史を紡ぎ、築いていけるような心豊かな「泥臭い名古屋」であってほしいと願っています。
2016年10月29日(土)~11月20日(日)
やっとかめ文化祭2016
会場:名古屋市内一円
料金:イベントによる ※無料のものもあり
主催:やっとかめ文化祭実行委員会(名古屋市(文化振興室・観光推進室・歴史まちづくり推進室)、(公財)名古屋市文化振興事業団、(公財)名古屋観光コンベンションビューロー、中日新聞社、名古屋観光ブランド協会、NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティ・ネットワーク
問:
やっとかめ文化祭実行委員会事務局(担当)藤井、吉田
〒460-0008 名古屋市中区三の丸三丁目1番1号
名古屋市観光文化交流局文化歴史まちづくり部文化振興室内
TEL 052-972-3172 FAX 052-972-4128
y.yoshida.10@city.nagoya.lg.jp
NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティ・ネットワーク(担当)大野、小林
〒460-0011 名古屋市中区大須3-42-30 ALA大須ビル201
TEL 052-262-2580 FAX 052-262-6658
info@yattokame.jp
詳細:http://yattokame.jp/
やっとかめ文化祭
なじみのまちの、いつもの景色。
耳を澄ませば、時の彼方から微かな詩が聴こえてきます。
江戸時代、尾張徳川家に育まれてきた狂言をはじめ、
名古屋のまちを賑わしてきた伝統芸能、歴史文化が、現代のストリートへ。
ひそやかに息づく記憶のかけらたちが、
このまちの過去と未来を鮮やかにつなぎます。
さぁ、今年もやってきました、やっとかめ文化祭。
耳を澄ませて、見ておくりゃれ。
路地裏に輝くささやかな物語を。あなたのまちの知られざる素顔を。
いざ、いざ、一期一会の出会いを訪ねて、
まちじゅうが舞台の、「芸どころ・旅どころ・なごや」の祭典へ。
小さな路傍の詩(うた)をさがして、今年も旅が始まります。