10.29 Sat - 11.20 Sun |やっとかめ文化祭2016
初日のオープニングステージが行われていた栄から、少し北へ行ったところにある「名古屋城」。こちらでは、ZIP FMなどのラジオDJ/タレントとして活躍中のクリス・グレンさんによる、まち歩きガイドならぬ、城歩きガイド!?が行われました。
はっきり言って、全く名古屋城への興味がなく、かつて他県から来た知人に名古屋城をおすすめしたことは一度もなかった筆者が、クリスさんの渋過ぎる美声による贅沢なレクチャーを受けてきました。今すぐ人に話したくなるほどの名古屋城の知られざる魅力の数々に圧倒されっぱなしの内容に。
まち歩きなごやレポートその②
名古屋城のガイド役はクリス・グレンさん人気もあり、すぐさま定員が埋まってしまったのだそう。実は、クリスさんは「歴史好き且つ名古屋好き!」として知られており、まさに今回の企画にバッチリはまるキーパーソン。法被姿もお似合いのクリスさんから、参加者へ簡単なご挨拶からガイドはスタートしました。
クリス:僕は、名古屋に住みはじめてすでに23年が経ちました。その23年の中で僕は、名古屋城に500回以上も通っているんです。だから、ここは僕の別荘と言っても過言ではないんです(笑)。
実はすでに日本全国の城を400箇所以上見て回ったというクリスさん。そんな彼が一番オススメしたい城が名古屋城だ、というから驚きです。「エレベーターがついてる」「コンクリートで出来たレプリカだ」そんな悪いイメージしかない名古屋城に500回も通うほどの魅力がどこにあるのか?
クリス:みなさん、僕はオタクです。オタク過ぎる!と思ったら「おい!」ってツッコミを入れてくださいね(笑)。
正真正銘の歴史オタクのクリスさんによる「名古屋城ガイド」への期待が高まります。
ぞろぞろとクリスさん先導で城内を歩いていく一行。
立ち止まって参加者のみなさんに呼びかけます。
クリス:まず、ここがどこかわかりますか?ここも「城」なんです。みなさんが「城」と聞いて、天守のことをイメージすると思いますが、「城」というのはお堀からその中の敷地すべてを指すんです。名古屋城は外堀、中堀、さらに内堀と三段階ものお堀があり、国内でも有数の大きさを誇るお城なんです。
1610〜1612年に築城されたと言われる名古屋城。この広大な城は、関ヶ原の戦いを制した家康が、外様大名20名を集め天下普請で築城させました。※天下普請=江戸幕府が全国の諸大名に命令し、行わせた土木工事のこと。
クリス:なぜ、家康は天下普請で名古屋城を築城したのか?そんなことをしたら、城の設計図もバレてしまい、攻撃されやすくなってしまうのではないか? しかしそれは逆なんです。大きな天守は権力の象徴であり、徳川家と他の大名との圧倒的な差を見せつけるもの。加えて名古屋城の最強の縄張りを目の当たりにして、これでは絶対に攻め落とすことができない、と外様大名たちは思い知らされたわけです。さらに、彼らの財力や兵を駆使して工事させたことで、城を作り終える頃には経済的にも人員的にも疲弊し、力がほとんど残っていない状態になってしまったのです。つまり、それは戦がもう起きないようにしたということになります。その意味では、名古屋城は結果として戦乱の世に平和をもたらした城とも言えますよね!
「なるほど〜!」「へ〜!」という声が参加者から上がる。さらにクリスさんの話は名古屋城に散りばめられた先人たちの技術力や知恵について広がっていきます。
名古屋城は石垣を見るべし!?
コンクリート造で再建された天守だけでなく、クリスさんは石垣に注目してほしいと語ります。
クリス:この大きな石、すごくないですか? 表ニ之門を入ってすぐ目の前に位置する場所に、こんなに大きな石をわざと配置しているんです。これは門をくぐって来訪した客人に対する家康の「権力アピール」なんです。権力の大きさ=石の大きさだったというわけです。ちなみに、名古屋城最大の石は「清正石」です。この石より、実はもっと大きな石でこれは後ほど説明しますね。(清正石は旧二之丸東二之門側から入ったすぐ正面にある)
みなさん360度まわりを見回してみてください。石垣に囲まれてしまっていますよね? 実はこの表ニ之門をくぐると、四方を石垣で囲われた状態になるように設計されています。かつては、その石垣の上には櫓や城門が建っていて、万が一、敵が門をくぐって侵入できたとしても、四方を敵に囲まれてしまう致命的な状況にいきなり自らを追いやってしまう罠のような仕掛けになっているわけです。これは「枡形」と言います。英語にしたら、Death Box(デス・ボックス)でしょうね! はい、この角度見て下さい!
さらに話は石垣の構造について広がっていきます…(オタクっぽくなってきました)
クリス:これは、西洋のレンガでつくった塀とは明らかに、石の組み方が違います。実はこれ、地震が多かった日本ならではのアイデアなんです。このような石の組み方をすることで、地震による揺れが起きた時、石と石が内側へ内側へと食い込もうとする動きをします。すると、この石垣はより強度を増していくので、崩落しにくいつくりになっているというわけです。昔の人たちの知恵がこの石垣に詰まっているんです!
実際に名古屋城はお堀や門や石垣、もちろん天守などの建物含め、なんとわずか半年で作られたのだそう。昔の人の知恵も技術もパワーも、すべてが計り知れないものだということが見えてきます。
クリス:なぜ、この最大規模且つ最強の名古屋城が評価されていないのか? 天守については国宝であり、世界遺産の姫路城の3倍もあり、日本最大です。かつては二条城の御殿同様の素晴らしい御殿もあり、縄張りも含め最強の城でもあります。残念ながら第二次世界大戦時に、空襲でほとんど焼けてしまった。それさえなければ、確実にこの城は国宝や世界遺産に認定されていたのではないでしょうか。加えて、地元名古屋の人たち自身がこの城の凄さを知らないがために正しい評価をできていないこと。これが大きな理由のひとつと言えるでしょう。
ガイドを終えたクリスさんに最後に少し質問をしてみました。
―クリスさん、名古屋の人たちにとって名古屋城とは何だと思われますか?
クリス:名古屋城は単なる観光地でもなく、まちのシンボルでもない。名古屋に住むひとにとっての大きな誇りですよ。そして、このまちのルーツと言ってもいいと思います。名古屋城ができて、そこに職人や武士、たくさんの人々が集まり、城下町ができて、そこに多くの人々が住まい、このエリアにまちのベースができていったわけです。もし、名古屋城ができてなかったら、今、わたしたちがいる名古屋市は存在してなかったかもしれない。
さらに言えば、愛知出身の豊臣秀吉は、大阪を発展させました。徳川家康は、何もなかった江戸の町をつくり発展させました。同様に、前田利家は金沢、そして加藤清正は熊本に城をつくり、町をつくり発展させました。城の周りには、職人を始めさまざまな人々が集まり、町ができ、文化が形成され、ビジネスも生まれ、発展していくものです。それが、名古屋をはじめさまざまな町のルーツです。
ですから、多数の武将が生まれた愛知から全国に散らばりそれぞれがそれぞれに町をつくり、発展させたと言えます。そんな名古屋は〈日本のふるさと〉と言っても過言ではないと思うんです。
歴史が好き、城が好き、そんな次元を越えて、名古屋城=名古屋人の誇りという話にまで発展した熱い思いを持って今回のガイドに臨んだクリスさん。終わってみれば、結局のところ、城歩き=まち歩きだったことに気付かされる。名古屋の人々がこのまちの歴史の根幹でもある、この城の魅力についてなんでもっと外へアピールしないのか? 名古屋城について、名古屋の人たちが多く語らないことが疑問だというクリスさん。もちろん、知らない人が多いというのが原因であることを踏まえ、彼はこんな冗談でシメてくれました。
クリス:名古屋の人たちはきっと他に言いたくないんですよ。だって、他県から人がたくさん来すぎちゃったら、ちょうどよく、暮らしやすい名古屋じゃなくなっちゃうでしょ(笑)。
2016年10月29日(土)~11月20日(日)
やっとかめ文化祭2016
会場:名古屋市内一円
料金:イベントによる ※無料のものもあり
主催:やっとかめ文化祭実行委員会(名古屋市(文化振興室・観光推進室・歴史まちづくり推進室)、(公財)名古屋市文化振興事業団、(公財)名古屋観光コンベンションビューロー、中日新聞社、名古屋観光ブランド協会、NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティ・ネットワーク
問:
やっとかめ文化祭実行委員会事務局(担当)藤井、吉田
〒460-0008 名古屋市中区三の丸三丁目1番1号
名古屋市観光文化交流局文化歴史まちづくり部文化振興室内
TEL 052-972-3172 FAX 052-972-4128
y.yoshida.10@city.nagoya.lg.jp
NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティ・ネットワーク(担当)大野、小林
〒460-0011 名古屋市中区大須3-42-30 ALA大須ビル201
TEL 052-262-2580 FAX 052-262-6658
info@yattokame.jp
詳細:http://yattokame.jp/
やっとかめ文化祭
なじみのまちの、いつもの景色。
耳を澄ませば、時の彼方から微かな詩が聴こえてきます。
江戸時代、尾張徳川家に育まれてきた狂言をはじめ、
名古屋のまちを賑わしてきた伝統芸能、歴史文化が、現代のストリートへ。
ひそやかに息づく記憶のかけらたちが、
このまちの過去と未来を鮮やかにつなぎます。
さぁ、今年もやってきました、やっとかめ文化祭。
耳を澄ませて、見ておくりゃれ。
路地裏に輝くささやかな物語を。あなたのまちの知られざる素顔を。
いざ、いざ、一期一会の出会いを訪ねて、
まちじゅうが舞台の、「芸どころ・旅どころ・なごや」の祭典へ。
小さな路傍の詩(うた)をさがして、今年も旅が始まります。