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FEATURE / 特集記事 Nov 05. 2016 UP
【SPECIAL REPORT】
歴史文化と現代社会がスクランブル。
「やっとかめ文化祭」が眠れる名古屋を揺り起こす…
迫力の舞台、まち歩き、対談企画まで徹底レポート!

10.29 Sat - 11.20 Sun |やっとかめ文化祭2016

 

失われたナゴヤの面影を探して。
対談:岡井隆&松岡正剛。
円空仏にみる「根源」と「変化」とは?

Report Text : Yoshimi Ishiguro [ LIVERARY ]
Edit : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY ]

Photo : Sara Hashimoto [ LIVERARY ]

 

10月30日(日)に中川区の荒子観音寺で開催された「ナゴヤ面影座」。名古屋市出身で、前衛短歌運動のさきがけとして知られる歌人の岡井隆氏。そして日本文化・芸術・生命哲学・システム工学など多方面にわたる施策を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立した松岡正剛氏。日本文化研究の第一人者ともいえる両名が会するということで、こちらのイベントは即ソールドアウト!

 

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「今回の「やっとかめ文化祭」では、出会い直した文化を再編集して新しい価値を生み出していけるような『座』を作りたいと考えました。」と、ナゴヤ面影座を企画した名古屋市文化振興室・吉田祐治さん。

「地域文化の中に新しい価値を見出し、創造し、継承するクリエイティブな〈参加型の学びの場〉を作りたい」として構想されたのが「ナゴヤ面影座」だ。

 

舞台は荒子観音。
円空仏から文化の諸相を読み解く。

「座」とは中世の時代に、地域の神様をまつる集まりが、商工業や芸能、そして祭りを連動させていく動きを生み出した仕組み。当時の人々は枝垂れ桜のもとに貴賤を問わず集い、歌を詠み、一座を建立した。ナゴヤ面影座は、何度も戦乱に焼かれながらもそのたびに再建され、名古屋の人々に支えられてきた荒子観音寺を第一回の舞台とした。

荒子観音には、江戸時代に日本各地を旅しながら生涯で12万体もの仏像を彫ったことで知られる修行僧・円空による円空仏が1200体あまり納められている。他に類を見ない独特の作風で知られるこの円空仏にひそむ文化と歴史の諸相を、岡井隆・松岡正剛の両氏が語り下ろす。

 

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「連歌」に見立てた八回の連続講座
岡井隆の名歌「ウアナゴヤ」を発句に。

「ナゴヤ面影座」は講座自体を連歌(ひとつの和歌に、別の人が次々に句をつなげていく詩作の方法)に見立てた全八回の連続講座となっている。

連歌の最初の一句として選ばれたのが、名古屋市出身の歌人・岡井隆氏の「ウアナゴヤ」だ。「ウア(Ur)」とはドイツ語で「古い」という意味を持つ言葉。岡井氏が、幼少期を過ごした戦前・戦中の名古屋を描いた詩である。「ナゴヤ面影座」は、笙の演奏をバックに氏自らが朗読する「ウアナゴヤ」で幕を開けた。

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岡井隆

 

小学生の頃、友達の家に遊びに行くとお茶を立ててもてなされたという岡井氏。「父も三味線を習っていましたが、当時は珍しいことではありませんでした」まさに芸どころ名古屋らしいエピソードだ。
「同時に、お茶のいただき方が分からなくても『好きに飲めばいいのよ』と言ってくれるようなおおらかさもあった。芸どころだけれど、型式にとらわれないところもあった」とも。

「ウアナゴヤ」では、お白粉の香りの漂う旧い名古屋のまちと、それが戦火に焼かれ、戦後に変貌を遂げていく姿の両方が描かれる。大きくその姿を変えた名古屋だが、岡井氏は今もなお記憶の中にある「ウアナゴヤ」に「わだかまる」と言う。

 

変化と根源を同時に表わす、
円空仏がもたらす面影。

これを受けて松岡氏は「得たものよりも、失ったものを明示することが肝要」と語る。それこそが「ウアナゴヤ」が、私達に問いかけるものではないか、と。

そして、円空仏の魅力を「変化と根源を同時に描いているもの」と提唱。木彫りの円空仏からは、一刀ずつ刃を入れる円空の作業(変化)が見えてくる。さらにその変化を見ていると、材料となった原木、つまり根源も見えてくる。円空仏からは朽ちた木も切り出したばかりの木も、その姿をそのまま生かして彫刻されていることがうかがえる。

 

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松岡正剛

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「面影座」の「面影」とは、「おも(表)=何かを表現するもの」が「かげ」を伴って現れてくるもの、と松岡氏。単なる記憶や知識ではなく「イメージの根源に近いもの」だという。円空仏が見る人に「根源」を思い起こさせるように。

3時間にわたって繰り広げられた「面影座」。変化と根源、前衛と素朴の混ざり合う場所に、文化や芸術の価値を見出していく。その営みは、現代のまちに伝統文化を出現させ、新たな価値を創造していこうとする「やっとかめ文化祭」の進むべき道を指し示す「座」であった。

 

名古屋について改めて考え、交流し、実行に向けて進んでいくこと。それこそが新しい名古屋を築いていくのではないだろうか。「やっとかめ文化祭」は今後も約1ヶ月間に渡って、眠れる名古屋を揺り動かす。あとはあなたがそこに赴き、耳を傾け、都市の声を聴くことが重要なのだ。

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イベント情報

2016年10月29日(土)~11月20日(日)
やっとかめ文化祭2016
会場:名古屋市内一円
料金:イベントによる ※無料のものもあり
主催:やっとかめ文化祭実行委員会(名古屋市(文化振興室・観光推進室・歴史まちづくり推進室)、(公財)名古屋市文化振興事業団、(公財)名古屋観光コンベンションビューロー、中日新聞社、名古屋観光ブランド協会、NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティ・ネットワーク
問:
やっとかめ文化祭実行委員会事務局(担当)藤井、吉田
〒460-0008 名古屋市中区三の丸三丁目1番1号
名古屋市観光文化交流局文化歴史まちづくり部文化振興室内
TEL 052-972-3172 FAX 052-972-4128
y.yoshida.10@city.nagoya.lg.jp
NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティ・ネットワーク(担当)大野、小林
〒460-0011 名古屋市中区大須3-42-30 ALA大須ビル201
TEL 052-262-2580 FAX 052-262-6658
info@yattokame.jp
詳細:http://yattokame.jp/

やっとかめ文化祭

なじみのまちの、いつもの景色。
耳を澄ませば、時の彼方から微かな詩が聴こえてきます。
江戸時代、尾張徳川家に育まれてきた狂言をはじめ、
名古屋のまちを賑わしてきた伝統芸能、歴史文化が、現代のストリートへ。
ひそやかに息づく記憶のかけらたちが、
このまちの過去と未来を鮮やかにつなぎます。

さぁ、今年もやってきました、やっとかめ文化祭。
耳を澄ませて、見ておくりゃれ。
路地裏に輝くささやかな物語を。あなたのまちの知られざる素顔を。
いざ、いざ、一期一会の出会いを訪ねて、
まちじゅうが舞台の、「芸どころ・旅どころ・なごや」の祭典へ。
小さな路傍の詩(うた)をさがして、今年も旅が始まります。

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