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LIVERARY
FEATURE / 特集記事 Oct 07. 2015 UP
【SPECIAL INTERVIEW】『murmur magazine』編集長・服部みれいが美濃ではじめた、かっこよくて、心地よい、新しい田舎暮らし。

NEW OPEN! エムエム・ブックス みの(岐阜|美濃市)

Interview,Text : Cobo Sato
Photo,Edit : Yoshitaka Kuroda[ON READING , LIVERARY ]

近所のおばあちゃんにもらったかぼちゃを教わったレシピで煮る、わたしにとってはファンタジーですね。

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(取材中、近所の方が次々とみれいさんに挨拶したり話しかけたり。)

_東京と美濃の違いはどんなところですか?

一番違うのは人と人との距離感ですね。これって人口と関係あるのかな? 東京は一千万人の都市で、美濃は約2万人。500分の1ですからね、全然違います。東京では裏原宿に住んでいて都会のど真ん中にいたんですが、顔見知りがいっぱいいて、そこはそこで村みたいだった。近所のお店やさんに行けば友達がたくさんいて「どうしてる?」とか言い合ったり、みんな仲良くてやさしくて、すごく住みやすかった。でも、美濃とはなにか決定的な違いがありますね。美濃の人たちとの距離感をなんて名付けていいのかわからないんですけど・・・。近い。人と人とがすごく近い。ここは、流れている時間が東京と20〜30年くらい違う感じがするんです。どっちがいいとか悪いとかじゃないし、どっちが普通でどっちが特殊かもわからないけど、何かタイムスリップしてるみたい。あと、年齢の構成が全然違いますね。原宿にいると若い人たちとしか会わないけど、こっちはちっちゃな赤ちゃんから中高生、おばあちゃんおじいちゃんがたくさん。むしろ20〜30歳代の若い人にあんまり会わない。それが本当に新鮮です。

_そういう年齢構成だと、人との距離感も変わってきますよね。

年齢構成も理由かもしれないし、人口の密度、量の違いでこうなるのかもしれないな、と思います。あとは、地域性もあるのかな?

_その距離感の違いには、すんなり溶け込めたんですか?

まだ東京と美濃を行ったり来たりして打ち合わせをしていた時期は、最初びっくりしました。岐阜の人との打ち合わせで、話の本題に入るのに2時間半くらい別の話してて、ぜんぜん本題に入らない。ちょっと東京じゃありえないな、と。でも、いまはすっかり慣れました。困るとか苦労してることもまったくないです。

先日、東京から来た友人がびっくりしてましたよ。わたしたちが町中でいろんな人と喋ってるから。東京じゃ、こんな風に道端で延々立ち話をしてるなんてありえないけど、ここでは近所のお店やさんへ行って30分帰ってこないとか、しょっちゅうです。東京にいたころだったら、さっき訪ねてきた親戚(注:取材当日、遠方からみれいさんのご親戚が訪ねてこられていました)にも「ごめんちょっと待ってて、いま取材受けてるから」って取材を優先させていたかもしれない。でも、(取材を止めて)親戚と話すのを優先してるのがこっちっぽい。合理的じゃなくなりましたね。それが自分にとってすごく新鮮。この間合いの取り方とか時間の使い方がおもしろいなあと思います。

_それは自然にというか、気づいたらそうなっていたという感じでしょうか?

意識的にそうした部分はあります。自分の中でチャンネル変えたっていうか。この間、編集部の近所に住んでいる90歳くらいのおばあちゃんが「ちょっと、こっちにおんせい(おいで)」と呼ぶから行ってみたら、おばあちゃんが育てたかぼちゃをくれたんです。それで、かぼちゃの煮方を教えてくれる。「お父さんに煮てやりなさい」って。それでおばあちゃんの言う通りに煮たら、本当に、それはおいしくできたんです。そういうことがなんだか夢の世界にいるみたいで、わたしにとってはファンタジーみたいなんです。東京じゃ絶対なかったことです。こういうやりとりにあまりにも遠ざかっていて、飢えてたんだと思います。都市化した世の中って、ある意味(人との関わりみたいなことが)徹底的に排除された世の中だと思うんです。みんなどこか人との関り合いが”うざい”んですよね。めんどうなことを切り捨てて切り捨てて、おしゃれなところに住んで、好きなものに囲まれて、好きな人とのコミュニケーションだけで生きてる。わたしはそういった世界もきらいじゃなかった。むしろ好きな部分もあったけれど、でも本質的にはどこか飽きてしまったのだと思います。

東京の普通が日本の普通だと思ったら大間違い

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美濃に帰ってきて一番強く感じたのは、「(わたしは)本当に日本のこと知らなかった」ということなんです。自分が東京の目線で東京の人たちを眺めて、「これが日本だ」って思い過ぎていた。日本ってもっと多様で、いろいろな人たちが住んでいて、いろいろな価値観がある。日本のあちこちに美濃のようなローカルな世界があって、それぞれのリアルな世界を生きている。それが本当に驚愕の事実でした。わたしは25年間まるで違う世界に住んでたから。わたしが思っていた”普通”は”東京の普通”だった。東京の普通が日本の普通だと思ったら大間違いですよね。 

_アウトプットの中身に変化はありそうですか?

クオリティは変わると思います。集中力が増してると思う。ここは空気と水がとっても綺麗だから、まず体が楽なんです。都会はノイズがあるんですよね。でも美濃に帰ってくると、シーンとして、とても静かです。東京だと、ちょっと青山の街に立つだけですごくたくさんのファッションの種類が目に飛び込んできて、情報量が本当に多いのですが、美濃だと人自体少ないし、情報が飛び交っていない。それが体にとってすごく楽。食べ物もおいしいし、リラックスできている。そういう状態で今までと同じ量の仕事を集中してやれば、パッと見てわかる変化はないかもしれないけど、すごく楽に今までと同じ量ができるようになるかもしれないし、ひょっとしたらアイデアも良くなるかもしれない。ものを書いたり何かを制作したりする人にとって、自然に近いところに暮らすことは恩恵が多いと思います。

_手に入れたい、もしくは予期せぬ情報が溢れかえっている東京に住んでいた時と比べ、ここだと圧倒的に情報が少ないと思いますが、インプットが足りないなと感じることはありませんか?

インプットについては、ある程度の勘所があって、どこに行けばどんな情報が手に入るかがわかっていて、それで充分といえば充分なんですよね。例えば名古屋のオンリーディングに行けばアートの情報がある、とか。それはたまにお店に行けば手に入ることだし、インターネットでも見ることができるし。本を書いたり詩を書いたり音楽を作ったりすることって、インプットよりも重要なことってたくさんある。本当に自分になって取り組むことが必要なときには、情報が多いところよりも静かなところにいた方がいいと思います。ほんとのこというと、もっと山奥行きたいと思ってるくらいで・・・・・・。

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エムエム・ブックス みの
岐阜県美濃市俵町2118-19
営業時間:水~金 12:00~17:00、土・日 10:00~17:00
定休日:月・火
問:0575-46-8168
http://murmurmagazine.com

 


 

服部みれい
文筆家、『murmur magazine』編集長、詩人。2008年春に『murmur magazine』を創刊し、2011年12月より発行人に(2015年から夫の福太郎が発行人)。冷えとりグッズと本のレーベル「マーマーなブックス アンド ソックス」主宰。あたらしい時代を生きるための、ホリスティックな知恵、あたらしい意識について発信を続ける。近著に『わたしの中の自然に目覚めて生きるのです』(ちくま書房=刊)。10月末~11月初旬には新刊『わたしのヒント』(大和書房=刊)、『わたしの手帖 2016』(エムエム・ブッブックス)が発売。忍田彩(ex.SGA)とのバンド「mma」では、ベースを担当。メルマガ「服部みれいの超☆私的通信ッ」発行中。岐阜県生まれ。

 

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