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LIVERARY
FEATURE / 特集記事 Oct 07. 2015 UP
【SPECIAL INTERVIEW】『murmur magazine』編集長・服部みれいが美濃ではじめた、かっこよくて、心地よい、新しい田舎暮らし。

NEW OPEN! エムエム・ブックス みの(岐阜|美濃市)

Interview,Text : Cobo Sato
Photo,Edit : Yoshitaka Kuroda[ON READING , LIVERARY ]

間引いた野菜でサラダを作ったり、そういうのってすごくクリエイティブで本当におもしろいんですよね。

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_「仕事があるのは都会」っていう前提からスタートしているけど、そんなことはないし、しかも都会に行ったらかかるお金が田舎だとかからないよ、と。そういう考え方はどうしたら広がっていくんでしょうか?

一度都会で苦しんでみるといいのかな(笑)企業に入ってボーナスもらってという世界が好きな人はいいんですが、本当に心底幸せでたのしいのかどうか? だけど、今はそれ以外の世界が少ないんですよね。会社に就職するか、そうでなければ、いきなり「自給自足!」みたいな。わたしたちもいきなり山奥には行けなかった。でも美濃だと、いざとなれば1時間くらいで名古屋にも出られる。こういうところで畑やって、周りに知ってる人も結構いて、かつ自分の好きなことやって、という暮らしは、「都市化した生活」から離れる第一歩として、これからの世の中にすごくあってると思うんです。

オススメは、みんなでちょっとずつお金を出しあってシェアハウスみたいなものを田舎に持つこと。「今年はもう働くのやめた」とか、「夏の間だけそこで過ごす」とか、もうちょっとフレキシブルに生活をデザインしようと考えたら、会社も変わってくるんじゃないかな。いまはみんな追われてるから、すごく窮屈だと思うんですよね。籠の中にいるハムスターみたいになっちゃってる。一度落ち着いて考えてみると、実はその流れから外れてもそんなに困らないし、心配ないってことに気づけると思う。食べ物と土地があれば困らないし、田舎にはそれがあるんです。

みんな、会社に勤めることが仕事だって思い過ぎてると思う。発想を変えて、自分の得意なことで毎日ちょっとずつっていう稼ぎ方をすればあんまりストレスないんじゃないでしょうか。たとえば、お弁当を作ってオフィス街で売るとか。ひとつの会社から「毎月25万円もらってボーナスももらうためだから、これは我慢しよう」というのは、一見安定していて安心みたいだけど、はっきり言ってどの会社だっていつ潰れるかわからないです。だいたいそれが本当に自分に合っていて幸福な暮らしなのか? それより、畑を1枚持ってた方が安心だと思う。自分が食べる分くらいなんとかなるはずなんです。畑も、パーマカルチャーをはじめ、新しいアイデアでおもしろくやる方法がどんどん広がってきています。わたしもほんのちょっとずつですけどハーブ作ったりしていて、すごく楽しいんです。結構採れますよ。間引いた野菜でサラダを作ったり、そういうのってすごくクリエイティブで本当におもしろいんですよね。それに、畑がある地域だと、なにかあったときに助けてもらえるんですよ、近所の人たちに。こういう安心のかたちを大勢の人に感じてもらって、閉塞感とか心配、不安からもっと自由になって、クリエイティブにおもしろおかしく暮らしていけたらいいと思うんです。ここはそんな実験の場所でもあります。

_ちょっとしたきっかけさえあれば、若い人の移住も増えそうですね。

わたしたちも、この街に『murmur magazine』で伝えているようなことをわかってくれる人たちが集まってくれるといいなと思っています。いつか、(お店の前の)道でオーガニックのファーマーズマーケットやりたいと思ってるんです。楽しいし、街の人もオーガニックなどの世界観をわかるし、人もたくさん誘致できると思う。そういう、おしゃれでおもしろい場所を作れたらと思っているんです。

_岐阜は、地域ごとにマルシェやフェスなどをやりはじめてますよね。

でも点々としてるんですよね。そういう方たちがたくさん会いに来てくださっています。みんなでなんかしよう、って。機が熟したら、みなさんと一緒に、ワッとなにかできたらいいですね。ただ「田舎で暮らそう」じゃなくて、おもしろくて質が高いっていうのかな、田舎で、かっこよくて、心地いい、第三の価値をみんなで作りたい。都会か田舎かの2択じゃなくて、もっとクリエイティブなあたらしい場所を。

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(店内には、100%オーガニックな食品や、冷え取り用のくつした、COSMIC WONDERの洋服などが並ぶ。もちろんmurmur magazineも。)

甘やかし文化・名古屋

_ちなみに、名古屋についてはどう思いますか?

名古屋って独自の何かを作り上げてる。それが本当にすごいと思います。うちの読者さんもみんなすごく熱いんですよね。

_住みやすいって言えば住みやすいですよね。

いい・悪いじゃなくて「甘い」感じがすごくするんです。岐阜とか名古屋には、甘いものと卵がすごくたくさんあふれている、というイメージ。

_卵!?

卵使った料理が多いですよね。みんな茶碗蒸し食べてるし(笑)。モーニングとかもある意味、「甘い」文化だと思う。朝から喫茶店って!小倉トースト!?トーストにあんことかつけなくていいじゃん、みたいな。自分に甘いっていうか、甘やかし文化だなって思うんです。その甘やかす感じが、無邪気ですごく強みだと思う。子供のまま、純粋で無邪気。裏表があんまりない。名古屋の人たちは気付いてないと思うけど。東京の人はもっとクールっていうか。 朝から小倉トーストは食べないかも。

_たしかに。名物も、味噌カツとか子供が好きそうなものが多いし。

揚げたりつけたり。ひつまぶしも「何回もおいしくていいね!」みたいな。でもその無邪気さが無敵。あと、家族がすごく近いですよね。

_お母さんと娘さんが一緒に買い物しているシーンを街中ではよく見ますよね。

お母さんと子供がすごいベタベタしてるイメージ。「子ども第一!」みたいな。それが他の地域より強いですよね。子どもの方もいつまでも子どもでいられる強さがあると思う。

_安心感ありますよね。余裕があるっていうか。ずっと守ってもらえるっていう。でもストイックさはないですよね。

そのよさを伸ばすことが大事な気がします。なにも東京の真似をすることはないと思う。名古屋も岐阜もそれぞれ独自のことをやっていけば、もっとおもしろくなるんじゃないかな。

_新鮮な指摘です(笑)

 


エムエム・ブックス みのは、元自転車店だったという古民家を、現代美術作家でCOSMIC WONDERを主宰する前田征紀さんがリノベーション。地元岐阜県在住の木工作家・川合優さんが作ったテーブルに、天然素材の服や食材、冷えとりグッズが並べられた店内は、整然としていながらもどこか温かみのある、とても気持ちの良い風の入る開放的な空間。美濃の街並み観光の入り口にあるため、取材中もたくさんの人が立ち寄り、スタッフとのおしゃべりを楽しんでいるのも印象的でした。ここから、美濃のおもしろいことがたくさん発信されるのも、そう遠くなさそうです。


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エムエム・ブックス みの
岐阜県美濃市俵町2118-19
営業時間:水~金 12:00~17:00、土・日 10:00~17:00
定休日:月・火
問:0575-46-8168
http://murmurmagazine.com

 


 

服部みれい
文筆家、『murmur magazine』編集長、詩人。2008年春に『murmur magazine』を創刊し、2011年12月より発行人に(2015年から夫の福太郎が発行人)。冷えとりグッズと本のレーベル「マーマーなブックス アンド ソックス」主宰。あたらしい時代を生きるための、ホリスティックな知恵、あたらしい意識について発信を続ける。近著に『わたしの中の自然に目覚めて生きるのです』(ちくま書房=刊)。10月末~11月初旬には新刊『わたしのヒント』(大和書房=刊)、『わたしの手帖 2016』(エムエム・ブッブックス)が発売。忍田彩(ex.SGA)とのバンド「mma」では、ベースを担当。メルマガ「服部みれいの超☆私的通信ッ」発行中。岐阜県生まれ。

 

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