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FEATURE / 特集記事 May 17. 2026 UP
【SPECIAL INTERVIEW:遠山敦】
学校でも家庭でもない、 サードプレイスのような場所を。
子どもと共に創作する場を作ることで、見えてくる景色。

INAXライブミュージアム(愛知|常滑)


LIVING&CULTURE MAGAZINE by INAX MUSEUM #5

 

愛知県常滑市・INAXライブミュージアムが発行する年間誌の最新号「LIVING&CULTURE MAGAZINE by INAX MUSEUM #5」が完成し、2026年3月より各所で配布中(LIVERARYは同誌の編集を担当)。

最新号では、ミュージアム20周年記念号とし「福祉」「アート」「建築」「企画展」という4つのテーマより構成。同館に関係してきたキーパーソンたちを取材し、当事者だからこそ語られる逸話から彼らの最近の動きまでを紹介。過去と現在を繋ぎ、未来へと残したい物語が詰まった内容となっている。

同誌に登場し、表紙絵も担当したのが、イラストレーター/アーティスト・遠山敦。そんな彼がゲスト講師として登場するWS企画、「ミュージアムの窓ガラスに絵を描こう!」がINAXライブミュージアム「土・どろんこ館」にて6月6日(土)に開催される。

 


過去に行われた窓ガラスに絵を描くワークショップの写真より

 

同イベントの告知も兼ね、「LIVING/CULTURE MAGAZINE by INAX MUSEUM #5」に収録されている遠山敦の取材記事をLIVERARYに掲載。こちらのインタビューを読めば、きっとWSに参加したくなるはず。(イベント詳細は記事最下部へ↓)

 

 

SPECIAL INTERVIEW:

遠山敦(りんごアートクラブ)

Interview,Text&Edit:Yusuke Nakamura(Happenings KYOTO)
Edit:Takatoshi Takebe(LIVERARY)
Photo:Mami Nakashima

 

その名は「りんごアートクラブ」。今号の愉快な表紙を描下ろしていただいたイラストレーターの遠山敦さんが神戸市垂水区で運営している絵画教室だ。これまでINAXライブミュージアムを始め、各地で数々のワークショップで講師を務めてきた遠山さん。聞けば「りんごアートクラブ」には堅い理念や教育方針などはないゆるく“アートに特化した学童のような場所”なのだそう。

取材時は子どもたちが、ダンボールでつくった建物で大盛り上がり。あくまでフリースタイルな遊びの延長で、DIYへの発想や未来への想像力を育む環境と日々整えているようだ。「りんごアートクラブ」は? そして遠山さんがイラストレーターとして、子どもたちから受ける影響はどのようなものだろうか?

 


「りんごアートクラブ」では自由に制作させるのがモットー。ドローイングでも粘土でもやりたいことが優先

 

「みんな、やりたいことが違う」。
教えずに、制作意欲を引き出す。

—最初に、INAXライブミュージアムでワークショップを開催されたきっかけを教えてもらえますか?

街をキャンバスとする大ナゴヤ大学というプロジェクトで、2010年頃かな、当時は半田市に住んでいたので知多半島にキャンパスをつくる企画に参加したんです。そこで当時のINAXライブミュージアムの辻(孝二郎)館長から声をかけてもらったんです。

—2012年には計7回に渡って、INAXライブミュージアムの「土とあそぶ館」などで「土と足で遊ぶアート体験」のワークショップを実施されていますね。

大地を踏みしめる足の裏の感受性は実はとても豊か。それを楽しんで欲しかったんです。

—衛生陶器の原料である粘土、砂、石に食品着色剤を混ぜた「INAXライブミュージアムオリジナルの土」の上をぐるっとそれぞれの足に塗って和紙の上を歩き回る。と、次にそれをもうダンボールに貼る、というワークショップでした。当時そのようなワークショップは名古屋で開催されていたでしょうか?

いや、その頃は全然やっていなくて。経験値がまだまだ少なかったですね。だからINAXライブミュージアムでのワークショップは規模が大きかったので緊張したことを覚えています。でも、人を回していくことや、その場でどんなものが生まれてくるのか? それは面白いなと感じましたね。

—2020年に「りんごアートクラブ」を設立されたのはなぜでしょう?

それまで、いろんなところから呼ばれて開催する出張のワークショップばかりだったので、自分の場所で、自分で主催したらどうなるか? 良いかもしれない?。そんなことをぼんやりと考えつつ、なんとなく場所を探し始めたところ、ちょうど良い物件が出てきたんですね。コロナですし、これからどうなるか? 分からない状況だったので不安もありましたけど。

—この教室のスペースはもともと何かのお店でしたか?

ピザ屋さんですね。その後は学習塾になったみたいですけど。多分、窯を置いていたキッチンからフロアが見えるガラスの窓は、ピザ屋さんの名残だと思いますね。

—イラストレーターの方が自分の教室を持つことはなかなか珍しいかもしれませんね。新しい決意とか?

とりあえず、自分の場を持つことを一度やってみたくて。もしダメなら辞めようと思って。そこまで深くは考えてなかったですね。

—教室で展示されたり、バックヤードは遠山さんのアトリエでもあります。これ以前はどこで制作されていましたか?

仕事場は旧グッゲンハイム邸(塩屋にあるイベントスペース/シェアハウス)に借りていました。シェアスペースの机ひとつだけですけどね。

—では「りんごアートクラブ」はどんな絵画教室でしょうか? 毎回テーマを決めてみんなで描くというわけではないんですよね?

当初は、今日はガラスに絵を描こうとか、粘土をやろうとか、子どもたちにテーマを与えていたんです。けれど、しばらくして、みんな慣れてくると、やりたいことが違うと分かってきたんですね。

—それぞれの創作意欲が活きるものを、と?

そうですね。絵を描きたい子もいるし、粘土でつくりたい子もいる。だから自由というか。こちらで画材などはある程度、用意はしていますが、持参する子もいますね。逆に、テーマを与えられたほうがいい子は、今日はこれをやろう、と指示しています。

 

取材時、「りんごアートクラブ」が終了するとカードゲーム大会がスタート。地域の子どもたちの交流の場でもある

 

—教える、というより子どもたちが制作に夢中になれる環境を?

僕自身、学校でデッサンや絵の勉強をしてきたわけではないので、親御さんには技術的なことは教えられませんよ、と事前に話しています。もちろん、聞かれたら可能な範囲では教えます。だから、アートに特化した学童のような場所と捉えてもらえたら。

—スキルアップのための講座ではなく?

そうですね。これをこんな風に描け! というのも嫌だし。やる気がない子には促しますけど、無理にやらなくてもいいし。自分が好きなこと、やりたいことをやるように、とは話しています。

—「りんごアートクラブ」には何歳くらいの子どもたちが通われていますか?

小学校の低学年が一番多いですね。教室は1回1時間で5人のときもあれば、少ないときは2、3人のときもあります。

—子どもたちは地域のいろんな学校から集まってるんですよね。違う学校の友達に会いにくるような楽しさもあるのかなと。

それも醍醐味かもしれませんね。多分、同じ学校の友達や親には話せないことも、話せる場になっていると思います。隣にそういう場面もよく見かけますし。

—家でも学校でもないサードプレイスならではの小さなコミュニティですね。

そうかもしれませんね。子どもたちのそんな会話が聞こえてくると、なるべく自分は加わらないようにしています。友達とのおしゃべりも含めて、ここでの時間を楽しんでもらえたら、と考えています。

—自由、とはいえ最後はお片付けの時間もありますよね。

一応、しっかりとして。みんなで一斉に片付けます。

—今日はお片付けが終わってから、カードゲームが始まりましたしね。みんな、なかなか帰らない(笑)。お迎えに来た親御さんもゲームに巻き込まれてましたね。

そんなこともよくあります(笑)。僕は子どもたちと一緒にいることが好きで、苦じゃない。子どもが好き、と言ったら、ちょっと誤解を生んでしまいそうですが、いろんな子どもに対応できると自分では思っています。

—ちなみに「りんごアートクラブ」と命名されたのはなぜでしょう?

特に深い意味はなく。アートクラブっていうのは最初から決めていたんですが、頭に三文字を付けたかったんですね。「きのこアートクラブ」とか「しらすアートクラブ」とか。でも「りんご」の響きがいいな、と。それに、子どもたちの家のカレンダーに「りんごマークが描かれたら面白いなと想像した」。

—子どもたちに、この教室のことをなんて呼んでいますか?

「りんごさん」と呼ぶ子が多いですね。

—「塾」でも「教室」でもなく「りんごさん」。それがここではのユニークさを表しているようです。遠山さんがイラストレーターとして、子どもたちから影響を受けることもあるのですか?

ありますね。例えば、ダンボールを組み合わせて、オブジェをつくるときなど、表面を一度、紙やすりで削って、白に塗って、それから色付けをするんです。そのほうが発色も良いので。でも、たまに面倒くさいのか、工程を無視して、いきなり色を塗っちゃう子がいるんですよ。あー……とは思うんですが、そのほうが味が出て、結果的に良くなることもあるんですよね。

—固定観念や決まった手順が絶対、というわけではないと教えられる?

そうですね。あとは、言葉で説明しづらいんですが、子どもしか描けないような絵のニュアンスだったり。そこに刺激を受けることもあります。

 

「電話しながらサラッと描く感覚。
ずっとそこを追い求めている感じ」。

遠山敦 TOYAMA ATSUSHI
イラストレーター。1970年生まれ。岐阜県出身。デザイン事務所に勤務したのち、絵を描き始める。2013年に神戸に移住し現在は垂水区在住。自身の作品集『BirdBook』『Colored Bird Book』を刊行。「りんごアートクラブ」主宰。

 

—では、自身で考えるイラストレーターとしての信条みたいなものは?

うーん、何もないかも(笑)。

—例えば、フリーハンドの味わいや、一筆描きの偶然性、ファーストテイクの新鮮さなど、アマチュアリズムを大切にされているのかなと。

そうですね。まず、線画が好きというか。言葉では説明しづらいんですが。タッチとしては、電話しながらサラッと描く感覚というか。そんな絵が好みで。ずっとそこを追い求めてる感じですかね。

—描く行為に集中し過ぎず、気持ちを入れ過ぎず、と。

だから、すぐ描けるときもあるし、同じ絵を何回も描くこともあります。個人が見たら同じ絵をずっと描いてるだけのように見えると思います。まずラフ、下書きを描くんですが、その後、何回描いても最初のラフを越えられないこともありますね。

—初期衝動ならではの良さを越えられない?

一年後に見て、やっぱり別の絵のほうが良かったな、と思い直すこともあります。自分的にはいまいちな作品の反応が良かったりすることもあるので。今はとりあえず、今作りたいものが良い気がしています。

—遠山さんといえば鳥をモチーフにされている印象もあります。過去には鳥を描いた作品集も刊行されています。

最近はあまり描いてないんですが、当時は何かテーマ的なものがあったほうが良いかなと考えて。特別に鳥に思い入れがあって、というわけではないですね。

—たしかに、思い入れとは真逆の印象も受けますね。

音楽で言うと、演奏するのは大好きだけど、歌詞が付けられないというか。歌うことやメッセージが見つけられない。ポリシーがない(笑)。

—むしろそんな余白こそが魅力でもあると思います。アトリエで見せてもらった作品で、こんな犬の絵も描かれていましたね。モチーフも描き方もさまざま。

飼ってた犬が亡くなったみたいなんです。それがきっかけで。描いててみたんですが、自分でひくくらい本気が描けるんだなって新鮮で。自分じゃないみたい。作風でいうと、線画も好きだけど、その逆というか、形だけを摂取して描くのが好きですね。

—遠山さんのキャリアは決して長くはないですが、作風を固めず、次々と試してみる。そんなチャレンジ精神は遠山さんらしいフットワークですね。

いつも、いろんなことに挑戦する気持ちがあります。展示でもお仕事でも、今は、すごく予算のある仕事がしてみたい。すごい額の。もう体が縮み上がってしまうような(笑)。

—それはなぜでしょう?

そんな状況に置かれると、新しい自分が出てくるかもしれない。一昨年かな、インターナショナルスクールのかなり大きなガラスにロゴや絵を描くことがあって。一発勝負ですごく体が縮み上がりました。描いてるときに、いろんな人が見てるし。

—今後も新しい自分や作品に出会うための活動を?

そうですね。今後もいろいろ挑戦してみたいですね。音楽で言うと、ライブハウスもいいけど、たまには東京ドームのステージに立ってみたい(笑)。

 

SHOP INFO:
りんごアートクラブ
住所:兵庫県神戸市垂水区星陵台1-7-1
営業時間:火木木金 15:30〜16:30、17:00〜18:00、木土19:00〜20:00

定休日:月曜

Instagram:@ringoartclub

 

イベント情報

2026年6月6日(土)

ミュージアムの窓ガラスに絵を描こう!

会場:INAXライブミュージアム「土・どろんこ館」

料金:500円(税込)

講師:遠山敦

チケット:5月11日(月)受付開始 ※予約フォームより受付

主催・問い合わせ先:INAXライブミュージアム

詳細:https://livingculture.lixil.com/ilm/

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