SPECIAL INTERVIEW: KEI TANAKA[Hei Tanaka]
2016年2月21日(日)新栄Live&lounge vioにて、元・SAKEROCKの田中馨による音楽ユニット、HeiTanakaがメンバーをほぼ一新して臨む、名古屋初公演が行われる。(イベント詳細についてはコチラ)
田中馨は現在、トクマルシューゴバンド、ショピン、チリンとドロン、YankaNoiといったバンドに参加。そして演劇作品への楽曲提供など、その音楽活動は多岐に渡り、プレイヤー兼コンポーザーとして多忙な日々を送っている。そんな彼が立ち上げた、謎のユニットHeiTanakaは、3年前に一度、別メンバーで起動したがゆるやかに活動を停止。そして、2016年に新メンバーを迎え、再起動することとなった。
新メンバーには、名古屋でも活動してきたミュージシャンが2名参加。アコースティックユニット・小鳥美術館のギタリストで館長を務める、牧野容也(通称:まきおくん)。そして、6EYESやTHE ACT WE ACTといった名古屋屈指のロックバンドでサックスを演奏していた、さとぅー。さらに、片想い、ceroなどに参加していることでも知られる、あだち麗三郎。ブラスロッカーズ・サウンドを掲げるバンド、RIDDIMATESの黒須遊。全員がボーカルをとる混声のフォークスタイルユニット・T.V.not januaryとして、また近年ではイラストレーターとしても活躍する、池田俊彦。つまり、HeiTanakaに参加する全員がそれぞれに所属しているバンドや、ソロでの活動軸を持つアーティストたちの集合体といえる。
そんな個性豊か過ぎる5人を率いて、田中馨はいかにして、HeiTanakaという船の舵を取り、新たな音楽的冒険に出掛けたのだろうか。いまだその地図はないようにも見える、新生HeiTanaka。初ライブ(東京渋谷WWW公演はソールドアウト!大盛況のうちに終了)前の、まだ少し不安げな表情を浮かべる、田中馨に訊いてみた。
SPECIAL INTERVIEW:
KEI TANAKA [Hei Tanaka]
Interview , Text & Photo : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY]
取材場所:LIVERARY office
―今日は、謎のユニットHeiTanakaとは何なのか?っていうところをぐいぐいと訊いていきたいと思っています。ではまず、Hei Tanaka(ヘイタナカ)っていう名前について…。
えっと、まず名前について説明すると、池ちゃん(=池田俊彦:T.V.not january)とシゲル(=シャンソンシゲル:元Gellers。元HeiTanakaメンバーでもある)と、「バンドをやろう」って言った時にまだバンド名がなくて。僕、Twitterのアカウントが@tanakaheiなんですけど、それは、特に意図はなくって。でも、池ちゃんが「tanakaheiって、すげえいいじゃん!」って言ってきて。で、TanakaとHeiを入れ換えて、Hei Tanakaにしちゃおう!みたいな感じで名前が決まりまして。最初は、その3人で始まったわけですが、シゲルが抜けて、唯一生き残った池ちゃんは、フライヤーとかグッズのデザインもしてくれてる重要の存在なので、Hei Tanakaの“H”は、池田俊彦の、彦(Hiko)、のHってことで……。(笑)
前HeiTanaka。写真左から池田俊彦、田中馨、シャンソンシゲル。
―無理矢理ですね(笑)。まあ、それくらい、池田俊彦はHei Tanakaにとって重要な人物ってことですね。
うーん……。
―重要でもない?(笑)
「お前は重要なんだ」と言ったら、彼がどう変わっていくか興味があるんですけど。個人練習に、さらに入るようになるかもしれない(笑)。
―個人練習にもっと入ってくれってことですね?(笑)
とりあえず、彼はドラムのスティックしか持ってないので。今回のためにやっとペダルを買うんです。次はスネアですね。
―(笑)。前HeiTanakaは、池ちゃんとシゲルさんによるツインドラム+馨さんのベースって感じのトリオ編成でしたが、新HeiTanakaは6人編成だし、見た目もだいぶ変わっちゃうじゃないですか?
6人のステージ上の並びは…まあいろいろ考えてます。でも悩んでいて、実際どうなのかなって。
―じゃあ、ちょっとこの紙に、新Hei Tanakaの陣形予定図を書いてみてください。
前のHei Tanakaは、もう単純でしたよ、すぐ描けます。で、今回は、こんな感じ。並びとしては、ほぼ横一列ぐらいがいいなと思ってて。(さらさらさら) こんな感じですね。
―なるほど…(笑)。で、この新生HeiTanakaは、一体どんな音楽がやるために組織されたんでしょうか?
前までのHei Tanakaと近いところとしては、“複雑にデンジャラス”な感じを目指します。
―デンジャラス……(笑)。
実は、デンジャラスな音楽って、聴く側をすごくシンプルな感情に変換させてくれるって思いがあって。
―え、どういうことですか?
例えば、どうやってのればいいかわからない変なリズムを聞くと、人は一番シンプルに1で音を取るようになったり、西洋音楽の12音階の中で考えても、音がデンジャラスになってくるとそんなのどうでもいいやみたいになってくる。何が鳴ってても正解みたいになる瞬間がある気がするんですよ。それをやりたい。これまでのHei Tanakaも、今度のHei Tanakaも、やりたいことの1つとしては同じで。シンプルになりたいから、謎だと言われたり、超絶だと言われたり、変てこだって言われるようなことをする、っていうのがあって。それが、いいバランスで人に伝わって、おもしろかったり、楽しんでくれたらいいなって。
―じゃあ、HeiTanakaのゴール地点は、「楽しい」とか「面白い」って思われる音楽?
そうかもしれないです。この間、YourSongIsGoodとトクマルシューゴ(田中馨はベースで参加)で、対バンして、ユアソンのJJさんと話してたけど、「Hei Tanakaもユアソンも根本は一緒だけど、聴いてきた音楽だったり、バンドとしての方法が違うだけなんだよね〜」って話になって。難しいことをしたい!とか、自分の音楽を人に見せつけたい!とかではなくて。人前で演奏した時点で、その音楽はもう聴いてる人のモノでいいって思ってるから。つまんなかった以外の感想を持ち帰って欲しいとは思ってるくらいで。
―HeiTanakaってバンドは、馨さんの作る曲を、他のメンバーが具現化するっていう一種のプロジェクト的なバンドだと思うんですけど、かなりプログレな、複雑怪奇な音楽だ、ってメンバーのまきお君(小鳥美術館)から聞いたんですが、複雑な曲をやったら、やっぱり聞いてる側も難しい感じの音楽って受け止めちゃうんじゃないか?と単純に思うんですが。
そこが、挑戦したいところなんです。演奏側は自分の弾いてる“音”を聴かせる演奏じゃなくて、“様”を見せる演奏というか…。だから最悪、音聞いてなくてもいいから、見ててほしい(笑)。
―(笑)。それって、馨さんの中でバンドメンバーは、メンバーでもあるし、舞台装置でもあるぐらいの感覚ですか?ビジュアルも含め、Hei Tanakaだ、と。
まあ、そうっすね。僕が舵をとって、6人全員を1つの方向に向かせたいとは思ってないんですけど、6人がそれぞれ何か面白みを感じながらHei Tanakaに、前のめりになったり、歯向かってる様が見せれたらなと思っています。むしろ自分自身でも舵が取れないような曲を作ってしまったというか。
―楽器の全パートを馨さんがまず考える作り方なんですか?
そうそう。それをメンバーに渡して、それぞれに噛み砕いてもらったりして。一応この6人だったらこんなバランスでできたらいいなあ〜とかは考えながら作った曲だったけど、それを6人でリハした時にまた違うものになったらいいなっていう気持ちもあって。
―初めてみんなでリハしたとき、実際に音出ししてみてどうでした?
ずっと笑ってました、僕(笑)
―こう来たかー!みたいな?(笑)
もう演奏しながら、ずっとニコニコしちゃってました。池ちゃんの顔とかヤバいですよ…(笑)。
田中馨
得意なのはコントラバスとエレキベースと曲作り。 2011年まで、SAKEROCKのベーシストとして活躍。2012年から自身のプロジェクト「Hei Tanaka」を結成。そしてそっと休止。2016年メンバーを改たに本格的に再始動。
Eテレ みんなのうたや、おじゃる丸エンディングテーマなど、幅広い層に人気のアコースティック・デタラメ・うたものユニット、ショピン。赤ちゃんと楽しむ世界の遊び歌、わらべ歌を演奏する、チリンとドロン。子供も大人も遊びの発明家 小学生からのワークショップを主宰する、ロバートバーロー。マルチインストゥルプレーヤー・yumiko率いる コーラスシンフォニックバンド、Yankanoi。トクマルシューゴバンドでは長年ベーシストとして数多くのフェスや海外ツアーに帯同。その他にもOorutaichi Loves The Acustico Paz Nova Band、川村亘平斎をはじめ、多くの録音やサポート等、素敵な音楽家達に誘って頂いたりしている昨今。舞台の音楽を担当を担当することも多く、ペンギンプルペイルパイルズ主催の倉持裕の作品や、劇団はえぎわ主催のノゾエ征爾の作品に多く関わる。2015年、SAKEROCKの解散ライブを両国国技館で盛大におこない、2016年1月には自身のバンドHei Tanaka主催の初企画で渋谷WWWをSoldout!今後のHei Tanakaの活動も見逃せない。
ライブハウスや各地のフェス、舞台作品、現代美術、こども達。数多くの面白そうな現場に節操なく現れて、かすかな波紋を呼んでは消えていく、少し頭がおかしい部分もある様子。そんなちょっと不思議な田中印の活動は今の日本の中でとても貴重で稀有だと評価する人もいるとかいないとか。