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今年は、村国座からまさかの移転開催!行政主導の音楽フェス「OUR FAVORITE THINGS」主催者が語る、楽しくて正しい “お役所仕事” とは。

2014.07.13.Sun | 河川環境楽園(岐阜)
SPECIAL INTERVIEW : 広瀬真一 ( 各務原市役所職員 / OFT実行委員会 )

 

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岐阜県の南部に位置し、県内でも比較的大きな面積を有する、各務原市。自然にも恵まれ、生涯教育を育むべき大きな文化施設や図書館、航空ショーなどでも有名な航空宇宙科学博物館といった様々な施設も充実している。もちろん、郊外エリアではほぼ定番になりつつある映画館付きの大規模ショッピングモールもあったりその反面、しっかりと地域に根ざしたローカルなカフェや雑貨店なども感度よく、ちょうど良く存在していたり。

そんな各務原市で、数年前から始まったOUR FAVARITE THINGS(以下OFT)」という、いわゆる音楽フェスが夏の恒例行事となっている。

おそらく、全国的に見渡しても、この内容で、この規模の、音楽イベントを市(行政)が主導で企画・開催しているのは、レアケースなのではないだろうか。

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OFTのはじまりは、2009年。

国指定の重要有形民俗文化財である農村舞台「村国座」をステージとしたライブイベントとして開催された。

年に一度の村国神社祭礼に氏子が奉納する地芝居のために、明治時代に建設されたこの舞台では、現在も、毎年秋に「子ども歌舞伎」が行われていたり、と伝統的側面もしっかりと残っている場所だ。そんな村国座は、築130年の長い年月の経過とともに、建物の全体が大きく傷み、耐震性の問題もあったことから、3年の歳月をかけ修復工事がなされた。

そして、2009年、無事、リニューアルオープンを遂げ、そのこけら落としとして開催されたのが、OFTなのである。

初年の出演者には、小西康陽擁する「前園直樹グループ」TOKYO No.1 SOUL SET・渡辺俊美によるZOOT16といった大御所から、CUBISMO GRAFICO」「Handsomeboy Techniqueといった面々、さらに、地元岐阜/愛知での活動に軸を置くDJ MOTIVE」「24-TwoFour-などのローカルアクトが脇を固める、というラインナップ。

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冒頭にも触れたとおり、「この内容を行政が、国指定の重要有形民俗文化財でやるのか!?」という驚きがどうしても先行してしまうわけだが、村の祭事に使用されてきた農村舞台 という「村国座」の存在概念の核はしっかりと残っていることが、出演者よりも、出店の方に目を向けるとわかってくる。

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出店には、ローカルに根付いた地元岐阜・愛知のカフェなどが参加。当時のブログを見ると、参加店店主たちの、うれしそうにフライヤー片手に笑顔で告知している姿が微笑ましい。おそらく、彼らの支えなしでは、現代版・村祭りに値する、OFTの存続はされなかっただろうし、第一にこの地域にも受け入れられなかっただろう…。地域の若者達がこぞってこの祭りにつめかけ、そこには良質な音楽とともに、地元商店が軒を連ねるそんな夏の風物詩とも言えるひとつの風景を作り上げたOFTの功績は大きい。

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今回、インタビューさせてもらった、広瀬真一さんは、各務原市役所の一職員。

いわゆるお役所仕事”をこなす公務員…とはちょっと違う、
彼のこれまで貫いてきた仕事に対するこだわりの姿勢と、静かなる熱量を感じさせるインタビューとなりました。

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Text & Edit by TakatoshiTakebe[THISIS(NOT)MAGAZINE , LIVERARY]

Tape rewrite by Taijun Maeda[LIVERARY]

 

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河川環境楽園

 

―多分、これまでOFTに来ていたお客さんたちはみんな気になっていると思うんですが、今回、なぜ「村国座」から「河川環境楽園」へ移転しての開催となったんでしょうか?

OFTは、ありがたいことに、チケットもソールドアウトするようになってきて、どんどんとお客さんも増えてきました。ですが、その反面、地元へのフォローが足りなかった部分もあって、そういう近隣住民の方のことを考慮しての移転というのも事実なんですけど、そもそもOFTって、発端としては「村国座」という場所を広く知ってもらうために始めたイベントでした。でも、もうOFTというイベントそのものが、大きく成長してきて。行政的な見解を述べると、「もう村国座は十分知ってもらえたから、次は村国座じゃなくて、また別の各務原を知ってもらう仕掛けづくりに切り替えたらどうか?」っていう動きへ。現在の市長さんも、「せっかくここまで成長してきたOFTを、次はじゃあもっと大きな場所で挑戦してみようよ」と言ってくれて。それが、今回、新たな場所で開催される新生OFTに結び付いたというところがありますね。

ーなるほど。村国座の次の会場探しは苦労したんじゃないですか?

市内のいろんなところを見て回ったりしたんですけど。他のところでやるっていうときに受け皿としていいものが見つからなかったんですけど、河川環境楽園の一番奥のエリアにバーっと芝生が広がっていて、そこを見たときにイメージに合ったというか、「ここだったらできるかも!」ってことで、今までよりもたくさんの人に来てもらえるスペースは確保できたかなって。あと、なんといってもアクセスもいい場所なんですよね。駐車場の心配もしなくていいし。そういったハード面がしっかりしていたのも開催の決め手でした。

 

―さすがその辺、かっちりしてますね!…でも、イベントタイトルを初回から「村国座◯◯フェス」…とかにしなくて良かったですね。まるでこうなることを予定していたかのよう、というか…。「OUR FAVORITE THINGS」って名前って、直訳すれば、”私たちが好きなもの”っていうタイトルですが、出演者や出店はもちろんその“FAVORITE THINGS”に含まれると思いますが、そもそも開催会場である、各務原市もそのコンテンツの大きなひとつで、その中で「村国座」や「河川環境楽園」といったスポットが、”私たちの好きなもの”のひとつに捉えられているように感じられます。

 

そうですね。やっぱり、私たちの各務原を知ってもらうきっかけとしての要因が大きいイベントで…。だから、今回からOFTに来てもらう方も、これをきっかけに前会場の「村国座」とか、その他にも「航空宇宙科学博物館」があるんだ…とか、気づいてもらえたら、それがまた各務原に訪れるきっかけにつながるかもしれないというのはあります。

―ちなみに、ほとんどのアーティストが「村国座」には初めて訪れたんだと思うんですが。出演者たちの反応はどんな感じだったんですか?

例えば、初回に出てもらっている、小西康陽さんはもう場所を見た瞬間に「ここでやりたい!」って言ってくれたみたいで。最近だとPUNPEE君とか自分のブログで印象に残ったイベント、として挙げてくれたり。あと、シャムキャッツとか、今回出演してもらう、アルフレッドビーチサンダルもそうですけど、皆さんすごい喜んでくれて。あと、neco眠る(今回も出演)は、やっぱりなんか舞台の後方にある金の壁面とそこに描かれている松の木とか、まさに彼らの音楽のイメージである”縁側でダンスホール”な感じにぴったりハマっていた気がします。そもそも「村国座」とかって普通にライブとかで使用できる場所ではやはりないので、そういう意味では、演者さんにとってもかなり貴重な経験をしてもらえたのでは…と思っています。

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ーですよね。国の文化財にも指定された舞台でライブって…むしろ、恐れ多いという感じもあります。

あ、ちなみに、舞台上は、土足は厳禁ということでちゃんと靴脱いでもらっていましたよ(笑)。ちなみに、「村国座」は昔から続く歌舞伎の舞台だったんですよね。明治の頃から続いた、地域の伝統的な文化施設だったわけですけど、もう地域レベルでは管理できなくなってしまって、どうしようもなくなって行政に渡されて、すごいお金かけて修復して。秋にはちゃんと歌舞伎の公演もやるんですけど、それ以外の時ってあんまり使うことがなかったんです。でも、せっかくお金かけて修復工事したのにもったいない!ってなって…。

ーそこまではよくある話ですよね。”箱物行政”っていうか、いろいろと直したり、作ったりするものの、結局その利用価値を見出せないまま…みたいな話。

そうですね〜。でも、「村国座」においては、せっかくだったら若い人に文化財を知ってもらうための企画を若手職員から出させようっていうことになったんです。で、僕は今はやっていないですけど、昔、DJをずっとやっていた経緯があって(※広瀬君は、名古屋で人気のクラブイベントGOLD EXPERIENCE立ち上げ人でもある)。それはうちの役所の人とかも知っていたので、なんかこの子が言ってたやつは現実味ありそうっていうところがあったのかどうなのか、それはわからないけれどありがたいことに採用されて…。現実味があったからなのか、ラッキーだったのかわかりませんが、僕の提案した音楽イベントが選ばれて。各務原市としても、かなり挑戦的だったなとは思います(笑)。

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小西康陽擁する「前園直樹グループ」(第1回目のOFTに出演)

 

―でも、そこで、小西さんとかの出演が決まっていったりするのもすごいな、と思います。田舎町とか、特に行政主導のイベントって、よくわかんない演歌歌手とか変な合唱団とか出てきちゃったりするイメージで…。OFTは内容がおもしろいだけじゃなくて、ちゃんと集客にもつなげて良い結果を残している。OFTみたいなイベントに挑戦してみようっていう、各務原市役所内の風通しの良さを感じます。

各務原市は、名古屋、岐阜のベッドタウンという位置づけもあって、だとしたら、人が集まってくれやすいんじゃないかなっていう、立地条件の良さというのは、勝算のひとつとして、なんとなくありましたけどね。でも、まあ初めのうちは、知ってもらうためにはすごい頑張らないといけなかったので、いろんなところにフライヤーを持っていったりいろんな人に会いに行ったり。それがあって今があるんですけど。今回、場所を変えるってことで、会場規模も広がっちゃっているし、OFT一年目を思い出しますね。屋号だけはそのまま残るんですが、かなりゼロからのスタートに近い気持ちです。

 

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 「今年のOFTの会場となります「河川環境楽園」の公演エリア内にある木曽川水園では、木舟遊覧(有料)ができ、木舟からLIVEを鑑賞することもできますので、よろしければ是非!」とのこと…

 

―広瀬君は、やりがいをもって仕事と、好きなことを結びつけてやれているように思えますが、忙しいかもしれないけれど、何だか楽しそうでちょっとうらやましいです…。

 

もともと、市役所に勤め出した頃は、普通にもっといわゆる市役所っぽい仕事をやっていましたよ。でも、今のような好きに直結した内容の仕事じゃなくても、市役所(公務員)の仕事って、一般企業に比べると、それなりに予算が使えてしまう仕事じゃないですか。だから、あんまりいい話じゃないけれど、やりかた次第では手を抜くこともできてしまうわけで…。逆に、こだわろうと思えば、とことんこだわることもできる。どうせ同じだけの予算を使うのであれば、有意義なお金の使い方をしたいなってのは、以前から思っていたので。今の業務に就く前も、何か印刷物を作るってなったら、じゃあ少しでも手にとってもらった人が読みやすくなるように考えたり…規模の小さな話ではありますけど、割とそういうところにこだわってどんな仕事もしてきました。OFTをやるのも、他の仕事をやるのも、こだわれるところはこだわる、という考え方としては、同じかもしれないです。

—なるほど…。ちなみに、予算があるとはいえ、出演者のブッキングもOFTなりのこだわりが見て取れるんですが、いつもどうやって決めてるんですか?

基本的に出演者のセレクトは僕自身ががいいなって思えた人じゃないと、来てくれるお客さん含め、他の人に「これいいよ!」なんて言えないから、そこは徹しています。あとは、うちのお嫁さんは特に音楽が好きとかないんですけど、嫁に意見を求めたりもしますね。音楽好きとかじゃない分、フラットな視点で意見を言ってくれるんで、それってすごく大事かな~って……でも、まあ、最終的に、自分の意見を通しちゃうんですが(笑)。

 

 

―ちなみに…年に1度のOFT以外にも日々の業務はあると思うんですけど、どんなことしてるんですか?

僕は主務が生涯学習なんですよ。だから、基本的には、ご老人の方、年配の方がメインのお客さんであって。でも、一般的には生涯学習って社会教育って言われているんですけど、学校教育以外の全てが社会教育に値するから、OFTもその一環に少なからずなってほしいし、今年は秋くらいに図書館をつかったブックフェスティバルの企画も組んでいるんですけど、そちらも楽しんで学んでもらえれば…。なんかよくインタビュー受けると「町興しがしたかったんですか?」みたいなことを訊かれるんですけど、全然そうじゃなくて。たまたまそうなったみたいな感覚なんです。当初、OFTは1回きりで終わっちゃうかもなんて思ってたんですよ。やっぱり、「各務原で、この内容でイベントやって、お客さん入るの?」みたいな疑問は上の人たちも内心抱いていたと思うんです。だからこそ、というか、「これは絶対成り立たせなきゃ!」という意地みたいなところもありましたね。でも結果、成功して…まさか、本当に続けていけるなんて思ってもいなかったんです。

 

ーでは最後に、今後の目標について教えて下さい。

 

目標としては、やはりこのイベントを続けていくことです。実は、今回から、完全な市主体ではなくなったんですよ。実行委員会形式にして、市が一番お金出しているんですが、民間も交えてやっていく方針になりました。実行委員長はうちの市長、僕は企画担当として、実行委員会のプロジェクトチームを立ち上げて運営していきます。やっぱ、最終的に行政って予算ありきで…例えば、市の財政的に予算が捻出できなかったりしたときに、じゃあもうこのイベントおしまいね!ってことにはしたくないので。今までより、収支面をしっかり成り立たせなきゃいけないのですが、OFTのことをおもしろいなって思ってくれる民間企業さんにも協力を仰いだりして続けていきます。あと、もうひとつの個人的な目標というか、希望としては、このイベントをきっかけに、「各務原市の仕事に関わりたいな~」って思ってくれるような後輩が出てきたら、うれしいですね!

 

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夕暮れ時も美しい、河川環境楽園。今年、OFTの新たな景色が生まれる。

 

ーーーー

今年のラインナップもかなり熱い!これまで出演した、OFT縁のアーティストから、新たな顔ぶれも…!

なお、チケットに関しては、既にSOLDOUT間近(e+販売分は完売!)ですが、まだ店頭販売している協力店さんの方に少し残っているかも!?だそうです!詳しくは、オフィシャルホームページでご確認ください!!

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<OFT 2014 出演ラインナップ&タイムテーブルはコチラ> 

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写真素材提供:各務原市役所

イベント情報

OUR FAVORITE THINGS


開催日/2014年7月13日日曜日
開催時間/12:30から20:30(当日配るリストバンド提示で出入自由)
会場/河川環境楽園 
住所/各務原市川島笠田町


■出演

砂原良徳

http://y-sunahara.com/

PSG
http://www.summit2011.net/

曽我部恵一
http://www.sokabekeiichi.com/

(((さらうんど)))
 
http://sssurrounddd.com

neco眠る

http://www.neconemuru.net/

HALFBY
http://www.halfby.com/

Orland
http://weareorland.blogspot.jp/

DJ MOTIVE & deadbundy

http://www.mohawks-records.com/

Alfred Beach Sandal

http://alfredbeachsandal.com/


■DJ
NOIRI from BANG THE DRUM
http://blog.livedoor.jp/bangthedrum/
YOHEY from WahWah/ORANGE
http://orange2003.exblog.jp/
AKIRA from GOLD EXPERIENCE

http://goldex758.exblog.jp/


dj inazuma from TABIBITO
nutsman from WahWah/ORANGE
http://orange2003.exblog.jp/


■TICKET

前売り料金/3000円
当日料金/4000円

e+(イープラス)で200名分、店頭販売で100名分は、先着でノベルティプレゼント付きのチケットになります。

※小学生以上はチケットが必要となります。

※前売りチケットがソールドアウトした場合は、当日券の発行は行わない場合があります。

※その他、岐阜、愛知のチケット販売協力店舗にて販売中!残数僅少!

 

●OUR FAVORITE THINGS」OFFICIAL WEB
http://www.ourfavoritethings.jp 

広瀬真一

1985年2月2日生まれ。岐阜県各務原市在住。各務原市役所勤務。正式な肩書きは、「産業活力部いきいき楽習課兼ブランド創造課兼教育委員会事務局中央図書館主事」。OUR FAVORITE THINGSや、ブックフェスの企画を担当したりしています。

posted by LIVERARY

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