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FEATURE / 特集記事 Nov 16. 2023 UP
名古屋城を舞台にした、現代美術展「アートサイト名古屋城2023 想像の復元」開催。
玉山拓郎 + GROUP、寺内曜子、丸山のどか、山城大督が新作を発表。
蓮沼執太がライブを行う特別イベントも!

2023.11.29.Wed - 12.10.Sun|名古屋城(愛知|中区)

 

名古屋城内各所を舞台に展開されるアートプロジェクト「アートサイト名古屋城2023 想像の復元」が 11月29日(水)~ 12月10日(日)の期間開催される。

同プロジェクトは、名古屋城の築城にまつわる歴史や、近世城郭御殿の最高傑作といわれている「本丸御殿」を10年かけて復元した軌跡、日本随一の規模を誇る回遊式大名庭園である「名勝二之丸庭園」の復元に要した調査研究など、名古屋城が長い時間をかけて続けてきた「復元」という創造的な行為からインスピレーションを受けた4組のアーティストが、名古屋城でしか成立しない大胆な屋外アート作品や参加型作品を展開する、というもの。

 

参加アーティストは、玉山拓郎 + GROUP、寺内曜子、丸山のどか、山城大督の4組。


玉山拓郎EAST EAST TOKYOでの展示風景“Static Lights : Tilt and Rotation” 2022(科学技術館, 東京)
Photo : 大町晃平 Photo courtesy : ANOMALY

 

鮮やかな照明や映像、音響を組み合わせたインスタレーションを得意とする玉山拓郎と、気鋭の建築コレクティブ・ GROUPによる玉山拓郎 + GROUP。彼らは、本丸御殿の中庭を掃き掃除する手入れに着想を得て、屋外にて発光する大型インスタレーションを制作する。

 


寺内曜子“パンゲア Red Square Line(場所限定インスタレーション 豊田市美術館)” 2021 豊田市美術館蔵
撮影:ToLoLo Studio

 

「世界は区別のない一つの物」「部分しか見えない」といったコンセプトを一貫して表現してきた寺内曜子。今回は、茶席空間から、「私たちは世界の部分しか見ることができない」という前提のもと、全体像や大きなつながりへの想像を喚起するミニマルな作品群を提示。観覧時間(茶席)は10:00~17:00、土日17:00~19:00には「作品鑑賞ツアー」も開催される。定員:15名(先着順・当日受付)

 


丸山のどか“曖昧な風景(中華料理店 / 雀荘 / ネオンサイン)” 2020 (「アッセンブリッジ・ナゴヤ2020」
旧・名古屋税関港寮, 愛知)撮影:冨田了平 写真提供:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会

 

身の回りにある「言葉」や「もの」「風景」を発想の源にし立体作品を展開してきた丸山のどかは、二之丸庭園にかつてあった営みや情景を時代背景から想像しつつ、写し取った状況を別の素材やかたちに変換する彫刻作品を庭園全体に展示する。

 


“SOUND OF AIR” 2023 ©Daisuke Yamashiro

 

映像の概念をインスタレーション作品に展開した作風で、鑑賞者の体験などを通して「時間」を表現をしてきた映像作家であり美術作家の山城大督。名古屋城築城以前から存在する樹齢約600年といわれている榧の木(かやのき)に注目し、「香り」をテーマにしたプロジェクト型の新作「SOUND OF AIR」を発表する予定だ。

なお、それぞれの作品は城内に点在する形で展開され、散策しながらアート鑑賞を楽しめる仕組みとなっている。世代も表現方法も異なる4者がそれぞれの解釈で、名古屋城の歴史やその当時の景色、人々の記憶などを蘇らせる展示となりそうだ。

 

会期中には展示作家たちと蓮沼執太らゲストによる関連イベントも開催される。

11月29日(水)には浮世絵師・歌川広重も描いた「田毎の月」に着想を得た参加型プロジェクト・寺内曜子「タゴトノツキ 誰毎の月」が開催される。同企画では、ひとりひとつ器を持ち、その水面に実際に月を映し出すというもの。名古屋城内の一角で、静かに月と向き合う時間を味わってみてほしい。

12月9日(土)には音楽家・蓮沼執太をゲストに迎えて開催される、山城大督主催による「かやのき音楽祭」も開催される。第一部では、2012年より「カヤの木」の樹木医である寺本正保山城大督によるトークセッションを行う。第二部では、2018年に制作された「名古屋城本丸御殿完成公開スペシャルムービー」の楽曲を制作した音楽家・蓮沼執太によるライブを企画。ソロ名義での最新アルバム『unpeople』を10月6日にリリースしたばかりの蓮沼執太による『unpeople』のレコードを再生させながらのサウンド・パフォーマンスとなる。音響は、listude。こちらもお楽しみに!

 


蓮沼執太

 

<以下、「アートサイト名古屋城2023 想像の復元」コンセプトテキスト>

戦災で消失してしまった名古屋城は、実測図やガラス乾板写真による記録が多数残されていたことで精度の高い復元が実現しました。ただし、記録は完璧ではないでしょうし、資料には多数の漏れや穴があったはずです。その穴を埋めるべく、復元作業を担った人々の想像力が働いていたのではないでしょうか。歴史、あるいは歴史的遺構は、発見・発掘された断片や欠片を専門家たちの知識や想像力で補完し繋ぎ合わされることで描出され、復元されるのでしょう。アートサイト名古屋城は、現在も続く復元作業に着想を得ています。例えば、本丸御殿は表書院や対面所など主要部分は江戸初期の創建時の様子を復元していますが、上洛殿や湯殿書院などは三代将軍が来訪した際に増築されたため、その状態を再現しています。ひとつの建築内で、複数の時代の様相が交わること自体、復元ならではの面白さだと思います。本プロジェクトでは、二之丸庭園も作品を展開する会場となります。17世紀初頭の作庭以降、19世紀初頭の文化・文政期には大改修を経験し、その後も陸軍に所管が移ると二之丸御殿が撤去され、庭園も一部が破壊されました。現存しない南御池周辺は文化・文政期の改修後の状態をモデルに復元が試みられており、様々な時代の状態が複合するかたちで復元が進んでいるようです。復元におけるズレや矛盾は、実は人間の想像/創造力が凝集されたアート(技芸)のあらわれとも言えるでしょう。参加作家の寺内曜子は、「私たちは世界の部分しか見ることができない」ということを茶室に展開するミニマルな作品群を通じて伝えます。丸山のどかは、二之丸庭園のかつての様子を想像しつつ写し取った状況を別の素材やかたちに変換する彫刻作品を展開します。玉山拓郎+GROUPは、本丸御殿の中庭を掃き掃除する手入れに着想を得て、光による異世界を立ち上げます。そして、山城大督は名古屋城築城以前から存在する榧の木(かやのき)からはじまる独自の物語を組み上げます。各作家は復元が続く名古屋城の現状に刺激を受け、なにかしらの欠片を拾い、想像力を働かせることで作品を立ち上げ、名古屋城をアートサイトへと変容させていきます。

Text by 服部浩之(本プロジェクト キュレーター)

イベント情報

2023年 11月29日(水)~ 12月10日(日)
アートサイト名古屋城2023 想像の復元
会場:名古屋城内の各所(本丸御殿南側、二之丸庭園、茶席、カヤの木ほか)
入場時間:9:00~19:30(閉門20:00)
※作品観覧時間:10:00~19:30・17:00以降一部観覧できない作品がございます。
※本丸御殿への入場は9:00より19:00(閉門の1時間前)まで
※西の丸御蔵城宝館、乃木倉庫への入館は9:00より16:00まで
※天守閣には現在入場できません
入場料:
大人500円/中学生以下無料
名古屋市内高齢者(敬老手帳持参の方)100円
障害者手帳をご提示の方 無料(付き添い2名まで)
※名古屋城内への入場料で「史跡・文化財の特別公開」「アートサイト名古屋城」を併せてご覧いただけます
出展:玉山拓郎+GROUP、寺内曜子、丸山のどか、山城大督
キュレーター:服部浩之
企画・制作:Twelve Inc.
主催:名古屋市
問:名古屋城総合事務所 TEL 052-231-1700
公式サイト:https://nagoyajo.art/

<関連イベント>

2023年11月29日(水)
寺内曜子「タゴトノツキ 誰毎の月」
会場:二之丸広場
時間:21:00~22:00
雨天中止
定員:20名
料金:参加料500円(要事前申込・先着順)

2023年12月2日(土)3日(日)9日(土)10日(日)
寺内曜子作品鑑賞ツアー
集合場所:西之丸メイン看板前

時間:17:00〜19:00
定員:15名(先着順・当日受付)
参加方法:開始時間に集合場所にお集まりください
※茶席エリアの夜間ライトアップはありません
※作家本人の同行はありません。あらかじめご了承ください

2023年12月9日(土)
山城大督「かやのき音楽祭」
会場:西之丸エリア
時間:15:00-17:00 
第一部 15:00-16:00
トーク・セッション「樹木医から診る名古屋城のカヤの木」
出演:山城大督、寺本正保(岩間造園株式会社 取締役 営業部長、樹木医)
第二部 16:00-17:00
スペシャル・ライブ「Shuta Hasunuma “unpeople + 1 people #06″」
出演:蓮沼執太(音楽家)
音響:listude
※天候によって、イベント内容が変更になる場合がございます。公式サイト・SNSをご確認ください。
※屋外のイベントですので、暖かくしてお出かけください。

 

玉山拓郎(たまやま たくろう)
1990年、岐阜県生まれ。東京都在住。愛知県立芸術大学を経て、2015年に東京藝術大学大学院修了。身近にあるイメージを参照し生み出された家具や日用品のようなオブジェクト、室内空間をモチーフに、鮮やかな照明や映像、音響を組み合わせたインスタレーションを制作。空間に対し作品を大胆に介入させることによって、鑑賞者の身体感覚や知覚へと揺さぶりをかける。近年の主な展覧会に、「Something Black」ANOMALY(2023、東京)、「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」森美術館(2022-2023、東京)、「NACT View 01:玉山拓郎」国立新美術館(2022、東京)、「Anything will slip off / If cut diagonally」ANOMALY(2021)、「開館25周年記念コレクション展 VISION Part 1 光について / 光をともして」豊田市美術館(2020、愛知)など。

GROUP(グループ)
2021年結成。井上岳、大村高広、 齋藤直紀、棗田久美子、赤塚健による建築コレクティブ。建築プロジェクトを異なる専門性をもつ人々が仮設的かつ継続的に共同する場として位置づけ、建築/美術/政治/労働/都市史の相互的な関係性に焦点を当てた活動を展開している。主な活動として、設計・施工「新宿ホワイトハウスの庭」(2021、東京)、設計・運営「海老名芸術高速」(2021、神奈川)、企画・編集「ノーツ 第一号 庭」NOTESEDITION(2021)、設計・施工「水屋根」(屋外美術展「のけもの」会場構成)、個展「手入れ/Repair」WHITEHOUSE(2021、東京)など。「EAST EAST_Tokyo」(2023、東京)では玉山拓郎会場の展示構成を担当した。

寺内曜子(てらうちようこ)
1954年東京都生まれ。1981年セント・マーティンズ美術大学彫刻アドバンストコース修了。1979-98年ロンドンで活動後、1998年に帰国し東京・愛知にて作家活動。現在、愛知県立芸術大学名誉教授。「世界は区別のない一つの物」とのコンセプトのもと、表裏、内外など、当たり前と見なされている対立項の解消を素材から必然的に成る形の彫刻で実証したり、人間の知識や見ることの限界を、展示空間自体を巨大な全体の一部とみなした「部分しか見えない」状況のインスタレーションで提示し続けている。主な個展に、「寺内曜子 パンゲア」豊田市美術館(2021、愛知)、「スタンディング・ポイント1 寺内曜子」慶應義塾大学アートセンター(2017、東京)、「Yoko Terauchi Air Castle」チゼンヘール・ギャラリー(1994、ロンドン、英国)、「寺内曜子 空中楼閣」かんらん舎(1991、東京)。パブリックコレクションに東京都現代美術館、豊田市美術館、ヘンリー・ムーア・インスティチュート(英国)など、国内外多数。

丸山のどか(まるやま のどか)
1992年、新潟県生まれ。愛知県在住。2018年に愛知県立芸術大学大学院美術研究科美術専攻彫刻領域修了。身の回りにある「言葉」や「もの」「風景」を発想の源にし、ベニヤや角材などホームセンターで入手可能な規格サイズの木材を用いて立体化する作品を制作。店の看板や内装、ソーラーパネルの立ち並ぶ山間部と道路などの風景は、精巧に立体化されるが、素材となる木材は製材された形をほぼ変えることなく組み合わせれ、淡い色彩で平坦に着色されることで抽象化する。現実と虚構が入り混じり、次元の境界が曖昧となる作品によって、みるものと風景との距離感を否応なしに意識させられる。近年の主な展覧会に、「資材館」YEBIS ART LABO(2022、愛知)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ2020」旧・名古屋税関港寮(2020、愛知)、ファン・デ・ナゴヤ2019「風景をみる/風景にみる」市民ギャラリー矢田(2019、愛知)など。

山城大督(やましろ だいすけ)
1983年、大阪府生まれ。京都府在住。 岐阜県立情報科学芸術アカデミー [IAMAS] (現情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] ) を経て、2006年 京都造形芸術大学(現京都芸術大学)芸術学部 卒業。アーティストコレクティヴ Nadegata Instant Partyメンバー。京都芸術大学専任講師。映像の時間概念を空間やプロジェクトへ応用し、その場でしか体験できない〈時間〉を作品として展開する。近年は映像や音、光、家具を配置する上演型インスタレーションを制作している。近年の主な展覧会に、「Homō loquēns 『しゃべるヒト』――ことばの不思議を科学する」国立民族学博物館(2022、大阪)、山城大督展「パラレル・トラベル」高鍋町美術館(2019、宮崎)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ2017」名古屋港~築地口エリア一帯(2017、愛知)など。

服部浩之 (はっとり ひろゆき)
1978年、愛知県生まれ。愛知県在住。建築を学んだのちにアートセンターに勤務し、約10年アーティスト・イン・レジデンスに携わる。その傍らで、アートスペースを運営したり、アートプロジェクトや芸術祭・国際展の企画に参加。国内外の複数の土地に暮らした経験から公共性・コモンズ・横断性などのキーワードに関心をもち、アジア地域の表現活動を研究し様々な表現者との協働プロジェクトを展開。現在、東京藝術大学大学院准教授。近年の企画に、「ARTS&ROUTES あわいをたどる旅」秋田県立近代美術館(2020)、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」(2019、イタリア)がある。

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