instagram
twitter
facebook
FEATURE / 特集記事 Oct 21. 2016 UP
【SPECIAL REVIEW】
単なる遊びか、愚行か、芸術か?
前代未聞のアート・プロジェクトを企てた、
前衛集団・ヒスロムの正体。

Assembridge Nagoya 2016

 

現在、港まちを舞台に開催中の「アッセンブリッジ・ナゴヤ2016」。多様な現代アーティストらが実際に港まちに訪れ、リサーチをし、このまちに展示する意味のある作品を制作/発表するというこの企画展。中でも最も大掛かりな制作を行った、関西を拠点にさまざまな“フィールド”で“プレイ”し続ける集団・ヒスロム。彼らは今回、岐阜県で切り出した丸太を庄内川に沿って港まちのある愛知まで6日間かけて運んだ。しかも、丸太と遊びながら…だ。その制作過程を映像化し、現在、展示会場にて上映している。制作過程については、すでに3回に渡ってLIVERARYで特集してきた。未読の方は下記リンクへ。

▶初日を追ったレポート記事 http://liverary-mag.com/feature/51473.html
▶2日目〜4日目 http://liverary-mag.com/feature/51751.html
▶5日目、そして最終日 http://liverary-mag.com/feature/52492.html

ヒスロムを特集し続けたレポートの最終章として「アッセンブリッジ・ナゴヤ2016」「あいちトリエンナーレ2016」のキュレーターのひとりである服部浩之ヒスロムとのクロストークでの言葉を拾いながら、果たして彼らは何を考え、どのような姿勢でこの作品に臨んだのか?もしくは、何も考えず、ただただ自然と戯れたかった無謀な集団なのか?どこからどこまでがアートなのか?そんなことをぐるぐると考えさせられながら、ここにまとめてみた。

果たして、彼らがやったことは、単なる遊びか、愚行か、芸術か?

 

 

SPECIAL REVIEW: 

Talk Session | Hyslom × Hiroyuki Hattori 

Text&Edit Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY ] 

 

img_1326
トークセッションの様子。写真中央が、服部浩之。右3人がヒスロム。

 

なぜこのプロジェクトを思いついたのか?意外なその経緯。

今回のプロジェクト、実は「美整物ー<例えば>を巡る」という名のプロジェクトにも接続しているらしい。ということで、まずはトーク冒頭その映像作品を見ることに。内容としては、友人宅の使用していなかったはなれを彼らが解体していくモノクロの映像。しかし、ただ解体するだけでなく、遊びながら手作業で解体していく。屋根瓦を一枚一枚手作業で外し、そして、瓦を接着していた土を丸め、泥団子にして屋根から屋内へと投げ込む…ゲホゲホとむせながらも、上から落下してくる泥団子をキャッチし合う彼らの姿はまるでコントのようで会場には笑いが起こった。

 


《美整物ー<例えば>を巡る》(2014)ビデオ

 

そして、この解体した友人宅のはなれはこれからまた彼らの手によって、復元される予定なのだという。今回の「アッセンブリッジ・ナゴヤ2016」での展示のために運ばれてきた丸太は、このはなれの中心に位置する梁(はり)に使用するためのもの。梁を求めていた彼らがたどり着いたのが、岐阜で切り出された1本の丸太だったというわけだ。

「もともと今回どんな作品をつくろうか?ということで考えているとき、以前に大阪・道頓堀で行った川でのパフォーマンスが頭の片隅にあって、最初は港に注いでいる川で遊びたいな〜って思ったんです。一方で、解体してそのままになっている家のことも思い出したわけです。」(ヒスロム)

そんなことを漠然と考えながら、庄内川の上流へとリサーチを続けていた彼らは、いつの間にか岐阜の山奥にまでたどり着いた。そこで、偶然にもとある採石場を発見する。山が切り崩されていく現場を眺めながら「切り崩されていく中で、倒されたこの木はどうなるんだろう?」と考えていたときに、現場で働いていた気さくな人物(洋平さん)と出会い、切り倒した丸太を一本譲ってもらう約束を交わしたという。幸運にもひとつの思いつきに偶然が重なり、事態が動き始めたわけだ。

 

th_6y4a2226

 

彼らが人を引きつける魅力と鈍速力。

採石場で切り出された木を降ろす際、洋平さんが手助けしてくれただけではなく、今回のプロジェクトにおいてかなりの人を巻き込んだ、という点においても彼らの思いつきは多くの人を惹きつけている。3人にプラスして、高山の建設学校で知り合った、現・早稲田大学院生の助っ人2人、そして、港まちづくり協議会スタッフも、最初から最後まで彼らともに丸太を運んだ。また、そもそもこのプロジェクトをより安全に、確実にゴールに導くために、法的なところでの申請などは名古屋市が行っていたり…。

ある種危険をともなう試みであるがゆえに、延べ6日間かけて丸太を運んだ彼らの活動について、服部からこんな指摘が飛び出した。

「ヒスロムの作品制作における過程で私たちが見いだすことができるのは、見えないルールですよね。」(服部)

丸太を川に沿って、港まで運ぶなんてことは、普通に考えて誰もやらないことであることは明らかだ。しかしながら、いざそれをやってみようとしたときには、見えない法的なルールが浮き彫りになる。その点を解消しないことにはこの大掛かりな〈フィールド・プレイ〉はできなかったのだという。誰かを傷つけるような犯罪行為でもないことが、日本においては「やってはいけないこと」に該当していた。そんな〈見えないルール〉が見えてくる、という点はヒスロムの活動のおもしろさのひとつだ。

そして、これは密着取材を行った際に筆者も感じたことだが、彼らの進行はとにかく遅く、行き当たりばったりで非効率的だ。そもそも「丸太を切り出し、川に沿って運ぶ」必要すらない。そして、「家の解体を手作業で行う」という先に触れた映像も同様に、効率性は無視している。無視しているというよりは、むしろそこに対して抗っているようにも映るだろう。彼らは、この非効率的な遅さを自らの言葉でネーミングしている。

「僕らは〈鈍速力〉と呼んでいます。」(ヒスロム)

つまり、ヒスロムは非効率的な過程を経ることを意識的に行っていたわけだ。メンバーの中には、2人建築科を卒業した者もいるという。現代建築においても、社会そのものに話を広げても、おそらく彼らの言う〈鈍速力〉は全く不必要なものであろう。ヒスロムの活動に興味を持った早稲田大学の2人の助っ人も「彼らの面倒くさいことをあえてやっていく姿勢には驚いた」と笑いながら話した。

 

結局、彼らがやっていることはアートなのか?

ここまで来て、思うことはひとつ。ヒスロムがつくり出したものが果たしてアートであるかどうか?彼らがやっていることは、まずそのアイデアのユニークさ、それを実行してしまうところのおもしろさが際立っている。しかしながら奇をてらっただけの行為ではないことは、彼らが創作した映像作品というアウトプットを見てもらえばわかるはず。これがアートなのか?の答えは作品の中で解決するだろう。

 

th_dsc01010
今回、上映されている映像の一コマ

 

意外にも感じたのは、モノクロ映像の凄みだった。白と黒で映し出された丸太や水しぶき、取材時に目の前で見たなんてことはない川の水面も、水中で戯れる彼らの姿も、生々しく、肉体的に映し出されている。そして、彼らのどの作品においても共通していること。それは、刻み込まれたフィジカルと非効率的なタイムライン、それらが宿ったヒスロムの作品は見たことのない何かをあなたに見せてくれるはずだ。

10月22日(土)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ2016」最終日前夜に展示会場にて、ヒスロムがパフォーマンスも行うという。おそらく、このパフォーマンスを持ってして、彼らの今作はより強度を持つことになるのではないだろうか。

果たして、彼らがやったことは、単なる遊びか、愚行か、芸術か?その答え、そして彼らの正体については自らの目で確かめてみてほしい。

 

 

th_6-25今回、上映されている映像の一コマ

 

イベント情報

2016年9月22日(木)〜10月23日(日)
Assembridge NAGOYA 2016
会場:名古屋港〜築地口エリア一帯
休館日:9月26日(月)、10月3日(月)、10月11日(火)、10月17日(月)
※名古屋港ポートビル展示室は10月17日(月)のみ休館
主催:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会
構成団体:名古屋市、港まちづくり協議会、名古屋港管理組合、(公財)名古屋フィルハーモニー交響楽団、(公財)名古屋市文化振興事業団
問:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会事務局
名古屋市港区名港1-19-23 港まちポットラックビル
TEL 052-654-7039(受付11:00〜19:00)
http://www.assembridge.nagoya

【アート部門】
2016年9月22日(木)〜10月23日(日)
パノラマ庭園─動的生態系にしるす─
会場:港まちポットラックビル、旧・名古屋税関港寮、名古屋港ポートビル、ボタンギャラリー、旧・潮寿司 ほか
時間:11:00〜19:00
パスポート料金:700円(「あいちトリエンナーレ2016」のチケット提示で600円)
※名古屋港ポートビル展示場入場券を含む
※中学生以下は無料(名古屋港ポートビル展示室はのぞく)
※パスポートは、ご本人に限り会期中何度でも入場可(名古屋港ポートビル展示室は1回のみ)
参加アーティスト:碓井ゆい、臼井良平、L PACK.、遠藤俊治、オル太、城戸保、クリス・チョン・チャン・フイ、コラクル+渡辺英司、ゴードン・マッタ=クラーク、下道基行、鈴木悠哉、玉山拓郎、徳重道朗、トラベルムジカ、中尾美園、ヒスロム、山本聖子
企画:服部浩之、Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya](吉田有里、青田真也、野田智子)

<関連イベント>
2016年10月22日(土)
ヒスロム関連イベント2:
ヒスロムパフォーマンス
会場:旧・名古屋税関港寮
時間:19:30〜20:30
定員:30名(予約不要)
参加費:500円

ヒスロム

加藤至、星野文紀、吉田祐によるアーティストコレクティヴ。2009年より関西を拠点に活動。場所の変化を身体で実感しながら、意味のないように見える遊びや行為を通して、土地を知る「フィールドプレイ」を行い、映像やパフォーマンス、彫刻などを発表。今回は庄内川上流から名古屋港へと1本の丸太を運ぶ壮大な新作を制作する。hyslom.com

RELATED
あなたにオススメする関連記事


PICK UP
特集・ピックアップ記事