Assembridge NAGOYA 2016
関西を拠点に創作活動を続ける、アート集団・ヒスロム。彼らは今回の「アッセンブリッジ・ナゴヤ2016」において、最も大掛かりな創作を行うアーティストだといえるだろう。
担当者に、今回の彼らの作品について聞いてみると、「丸太を切り出し、それを川に降ろして遊びながら、港まちまで持って行き、最後はクレーンで引き上げてもらう。そして、その丸太を展示する予定です。」という耳を疑うような話が飛び出した。
どう考えても気になる彼らの企てを直に見てみたい!ということで、密着取材をさせてもらうことに。当日の作業の合間に彼らと交わした会話も交えながら、「果たして彼らは何者なのか?」というイントロダクション〜初日の動向を追ったレポート記事をここに記していこう。
SPECIAL REPORT : Assembridge Nagoya 2016
前衛集団・ヒスロムが企てた、
壮大なるフィールドプレイ。
Interview , Text & Edit : Takatoshi Takebe [ LIVERARY , THISIS(NOT)MAGAZINE ]
Photo : Takayuki Imai
写真左から、高野泰幹、吉田祐、松木直人、加藤至、星野文紀。
そもそもヒスロムとは何者なのか?
ヒスロムは、加藤至・星野文紀・吉田祐の3人からなるアート集団で、彼らはともに京都精華大学に通っていたことで知り合った。なお、今回の撮影を協力する形で、岐阜県で毎年夏に行われている高山建築学校で出会った、早稲田大学建築学科の現役大学院生・高野泰幹、松木直人が加わり、計5人でこのプロジェクトは遂行された。
ヒスロム・加藤
「実家から見えるところにある山の異変に気づいて。そこへ遊びに行ったのが今の活動のきっかけになっている。」と加藤。久々に実家に帰省した際に、もともとは緑が生い茂る山がいつしか切り崩され、その風景が変わっていたのだという。それまでは全く気にとめていなかったその名も知れぬ山へ、足を踏み入れると、想像を超える景色が広がっていた。おそらく住宅地をつくるため切り崩されたその山は、自然風景が人の手によっていつの間にか人工的な景色へと作り変えられていく、その過程を目の当たりにした彼らは、そこにある不思議な魅力に取り憑かれ、毎週日曜日になると山へと遊びに行くようになったという。
彼らのふとした好奇心から始まった、この〈山で遊ぶプロジェクト〉はその後、Documentation of Hysteresis(※ Hysteresis とは物理の用語で、ある物に力を加えると、最初の状態のときと同じに戻しても、状態が完全には戻らないという意味を持つ。履歴現象のこと)と名づけられた。時にはテントを張って年越しをしたり、友人たちを呼んで遊ぶ人数が増えたりする中で、さまざまな遊びを考えていったという。そして、それらを映像にまとめ、作家活動としてのヒスロムがスタートしたのだ。
ちなみに、ヒスロムという言葉は造語で、初作品タイトルに使ったキーワード〈Hysteresis/ヒステリシス〉という物理用語と、〈スラローム〉=丘陵の緩やかな斜面(sla)につけたスキーの跡(låm)という言葉を足した造語なのだそう。そして、〈ひっそりと人知れず何かを企て実行する〉という意味を持たせた「ひすろむ」という新しい動詞的ニュアンスもあるという。
今回のプロジェクトも、まさに〈ひっそりと人知れず何かを企て実行〉された、と言えるだろう。
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2016年9月22日(木)〜10月23日(日)
Assembridge NAGOYA 2016
会場:名古屋港〜築地口エリア一帯
休館日:9月26日(月)、10月3日(月)、10月11日(火)、10月17日(月)
※名古屋港ポートビル展示室は10月17日(月)のみ休館
主催:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会
構成団体:名古屋市、港まちづくり協議会、名古屋港管理組合、(公財)名古屋フィルハーモニー交響楽団、(公財)名古屋市文化振興事業団
問:アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会事務局
名古屋市港区名港1-19-23 港まちポットラックビル
TEL 052-654-7039(受付11:00〜19:00)
http://www.assembridge.nagoya
【音楽部門】
2016日9月22日(木)〜9月25日(日)
ピクニックに出かけるように、港まちで音楽を。
港まちに、総勢200名の奏者が集結!
会場:つどいの広場特設会場 水の劇場<ヴァッサービューネ>、名古屋港ポートビル、ポートハウス、港橋広場公園、名古屋港水族館、港まちポットラックビル、港まちの喫茶店、居酒屋 ほか
出演者:名古屋フィルハーモニー交響楽団、ジャン=マルク・ルイサダ、ミシェル・ベロフ、円光寺雅彦、なぎさブラスゾリスデン、三浦一馬、村治奏一、中部フィルハーモニー交響楽団、セントラル交響楽団、茂木大輔、大宮臨太郎、島田真千子、宮坂拡志、朴葵姫、赤坂智子、高橋礼恵、辻本怜、山根一仁、今峰由香、岩崎洵奈、名古屋ダブルリードアンサンブル、名古屋アカデミックウインズ、愛知室内オーケストラ、Arion Saxophone Quartet、弦楽アンサンブルフルール、Nuovo anno、La la quart、Fleurs、トリオ de ブランチ、Trio Reson、ISSAKU & SACCO、加藤恵利子、佐藤光、佐野功枝、安田祥子、吉田絵奈、KASH ほか
料金:無料 ※ヴァッサービューネでは一部サポーター席(有料)、ポートハウスの公演ではアッセンブリッジサポーター限定公演があります
企画:中村ゆかり
【アート部門】
2016年9月22日(木)〜10月23日(日)
パノラマ庭園─動的生態系にしるす─
会場:港まちポットラックビル、旧・名古屋税関港寮、名古屋港ポートビル、ボタンギャラリー、旧・潮寿司 ほか
時間:11:00〜19:00
パスポート料金:700円(「あいちトリエンナーレ2016」のチケット提示で600円)
※名古屋港ポートビル展示場入場券を含む
※中学生以下は無料(名古屋港ポートビル展示室はのぞく)
※パスポートは、ご本人に限り会期中何度でも入場可(名古屋港ポートビル展示室は1回のみ)
参加アーティスト:碓井ゆい、臼井良平、L PACK.、遠藤俊治、オル太、城戸保、クリス・チョン・チャン・フイ、コラクル+渡辺英司、ゴードン・マッタ=クラーク、下道基行、鈴木悠哉、玉山拓郎、徳重道朗、トラベルムジカ、中尾美園、ヒスロム、山本聖子
企画:服部浩之、Minatomachi Art Table, Nagoya [MAT, Nagoya](吉田有里、青田真也、野田智子)
2016年9月22日(木・祝)
ヒスロム関連イベント1:ヒスロム「美整物̶〈例えば〉を巡る」 映像上映会
本展出品作の前編として位置づけられる映像作品《美整物 <例えば>を巡る》を上映。
会場:Minatomachi POTLUCK BUILDING 1F
時間:19:30〜21:00
定員:30名(予約不要)
講演:ヒスロム(聞き手・服部浩之)
2016年10月22日(土)
ヒスロム関連イベント2:ヒスロムパフォーマンス
会場:旧・名古屋税関港寮
時間:19:30〜20:30
定員:30名(予約不要)
参加費:500円
ヒスロム
hyslom/ヒスロム(加藤至・星野文紀・吉田祐)は山から都市に移り変わる場所を定期的に探険している。2009年から始動。この場所の変化を自分たちが身体で実感する事を一番重点に置き、その時々の遊びや物語りの撮影を行う。ここでの記録資料を作るにあたり、映像、写真の他に出会った人々を演じることや、日記、スケッチの作成、立体物の制作やパフォーマンスなど様々な方法を試みている。2012年第6回AACサウンドパフォーマンス道場で優秀賞を受賞。http://hyslom.com/index.html