映像作家の歌川達人が、2019年3月に閉場した千葉の浦安魚市場と、そこに集う人々を追ったドキュメンタリー映画『浦安魚市場のこと』が、12月24日から名古屋シネマテークにて上映される。

ある町の、ある市場をめぐる
ありのままの記憶と記録

魚屋の活きのよい掛け声。貝を剥き続ける年老いた女性。年末のお客たちとお店の賑わい。─古くから漁師町だった浦安には魚市場があった。工場汚染水の影響で漁業権を放棄し埋立地となった浦安にとって、魚市場が漁村だった町のシンボルでもある。そんな魚市場には、昼は町の魚屋、夜はロックバンドとして活動する森田釣竿がいた。時代の流れと共に変わっていく魚の流通と消費の形。脈々とつながってきた暮らしを謳歌する浦安の人々。しかし、その瞬間は、緩やかに、そして突然訪れる…。

かつての漁師町は工場汚染水のため漁業は廃れ、その意味で市場は、歴史と現在を繋いでいた。ロックバンド「漁港」でも歌う魚屋泉銀森田釣竿の心意気は、閉場後も続く未来を感じさせる。『カンボジアの染織物』の歌川達人が真摯に記録した98分。