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仕事を辞めずにバックパッカー。名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記 ヨーロッパ編9 スロバキア・ブラチスラヴァまで鉄道移動。ファンシーな水色の教会、逆ピラミッド型のラジオビル、UFOの塔。ソビエト建築との再会で旅のモチベーションを取り戻す。

Text & Photo by Ayaka Torii


仕事を辞めずにバックパッカー。

名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記

9 スロバキア・ブラチスラヴァまで鉄道移動。ファンシーな水色の教会、逆ピラミッド型のラジオビル、UFOの塔。ソビエト建築との再会で旅のモチベーションを取り戻す。

2024年9月22〜25日

9月22日

ハンガリー・ブダペストの滞在を100%楽しむことができなかった私は、テンションが上がらないまま鉄道に乗ってハンガリーを出国し、スロバキア・ブラチスラヴァへ向かった。
鉄道は特にアナウンスなく、定刻になったら静かに動き出した。さようならブダペスト。

今回のヨーロッパ周遊で鉄道移動は初めてだ。
晴れた昼下がり、鉄道は西へ向かって進んでいく。

車両はボックス席になっていて、マダムたち6人くらいがワインを開けて笑顔で乾杯していた。盛り上がっていて楽しそうだ。私も歳を重ねたらあんなふうに過ごしたい。

ブダペストを出発したときは乗客があまりおらず、空いた席に座って過ごしていたが途中の駅で急に人が増えてきた。乗客はどんどん座席に座っていく。どうやら指定席らしく、ブダペストから乗っていた乗客は予約客と交代に席を立ち、私の席も予約があったので立ち上がって廊下に出た。同じ状況の人がどんどん廊下に出てくる。

車窓から見える風景は緑が多く、ずっと田園風景が広がっていた。
2時間ほどの鉄道移動を経て、スロバキア・ブラチスラヴァへ到着した。

ブラチスラヴァ駅

雰囲気が少しジョージアに似ている。
スロバキアはジョージア同様、旧ソ連の国のひとつだ。昔はチェコスロバキアというひとつの国だったが、独立してチェコ、スロバキアという二つの国になった。
チェコは私が人生で初めて海外1人旅をした際に訪れた国。当時2016年、社会人2年目。あれから8年が経ち、今度はお隣のスロバキアに来ている。

私がスロバキアに来た理由は、やはり見たい建物があるからだった。ジョージアではたくさんのソビエト建築を見たが、スロバキアにもソ連時代の建物が残っているらしい。日本にいる間にソビエト建築の写真をネットで漁り、沢山情報収集した国のツートップがジョージアとスロバキアだった。そういう意味ではスロバキアへの熱量は高かった。

しかし、さっきまでいたハンガリー・ブダペストの旅が踏んだり蹴ったりだったので、ブラチスラヴァに到着した後もまだ心の動きが鈍く、コンクリ打ちっぱなしの、客観的に見ていかにも私が好きそうなこのブラチスラヴァ駅を見ても、ああ、ジョージアと似たような雰囲気だな、としか思わず好奇心のアンテナが上手く作動しない。
とりあえず宿に行かないといけない。駅から歩いて10分くらいのドミトリーへ向かう。

宿は縦に長いビルで、地下にレセプションがあった。チェックインを済ませて、2階にある女子のドミトリールームへ向かう。
広い部屋に2段ベッドがいくつも設置されていて、中々の密度だった。
この宿はヨーロッパ2カ月周遊旅の中で最も安価で、1泊3000円ほどだった。この円安の時代にありがたいことだ。

クオリティはというと、壁に穴が空いていて壁から出た白い粉が床に落ちていたり、小さい蜘蛛がいたり、ベッドにライトとコンセントが無いので夜中はiPhoneの明かりがないと何も見えないというところ以外は問題なしだった。横になれさえすればいい。

私はこのヨーロッパ旅を通して、良くも悪くも衛生観念が狂ったため、日本帰国後、国内旅行をするときもドミトリーにばかり泊まるようになった。宿代を安く済ませて、浮いたお金を食事や体験に回したい。たまに綺麗なビジネスホテルに泊まると、パリッとしたシーツと充実したアメニティに多少緊張するまでになった。

しかもこの宿はランドリーが無料だった。洗剤だけ有料だったが、持ち込みの洗剤を使っていいとのことだったので日本から持ってきた洗剤を使って洗濯した。
旅人にとって洗濯無料の宿ほどありがたいものはない。沈没気味だった心は、宿のコスパの良さによって徐々に回復していった。おにぎりを食べると胃が治り、お得を感じるとメンタルが治るというのがこの数日で得た知見だった。

シャワーを浴びて就寝。

炭治郎柄の浴室のタイル

9月23日

早朝、起床。
今日は朝から行きたい場所があった。「青の教会」と呼ばれる、正式名称・聖エリザベス教会でミサが行われるからだ。
平日は朝夕のミサの時間だけ内部の見学ができるとのことだったので、7時半開始のミサに間に合うように起きて、最寄りのトラムの停留所まで歩いた。
9月下旬のヨーロッパは涼しい。早朝の空気が澄んでいる。

トラムの停留所の向かう途中、逆三角形の建物が見えた。

スロバキアラジオビルと呼ばれるソビエト建築だ。スロバキア放送という現地のラジオ局が所有している。
この建物をかなり楽しみにしていたのだが、あまり位置を把握しておらず、こんなに宿から近いとは思わなくて不意を突かれた。

ラジオビルは1983年に完成。建物自体はまだ丈夫そうに見えるが、オレンジ色の文字が所々剥げて白くなっている様が年季を醸し出している。
この奇抜な外観は当初多くの悲観を受け、2012年にはイギリスの新聞「テレグラフ」にて「世界で最も醜い30の建物」に選出されたこともあるが、現在はスロバキアの文化遺産に指定されている。
ラジオビルは午後に訪れる予定だったので、あとでちゃんと見に行くことにして、トラムに乗りまずは教会を目指した。

トラムに揺られながら外を眺めていると、変わった建物が視界に入った。

なんだこのビルは。真ん中を円形に切り抜いて90度回転させたような、白と茶色のストライプ。
急いでGoogleマップでビルがある方面にピンを立て、後で行くことにした。

朝からソビエト建築に立て続けに出会ってワクワクしつつ、最寄りの停留所でトラムから降りて歩いて行くと、静かな住宅街の中に水色の建物があった。

淡い水色のメルヘンチックな外観。
欧州にいると教会をよく見かける。見た目が結構似ているので、撮った写真を見返してもそれがどの国のどの教会なのか思い出すまでに時間がかかるが、この青の教会に関しては一発で判別ができる。こんなパステルカラーの教会に出会ったのは、ピンクの外観を持つベトナム・ホーチミンのタンディン教会以来だ。
中に入ってみる。

 

サンリオピューロランドのアトラクションの一部ですと言われたら信じてしまいそうなファンシーさ。これなら子供たちも進んでミサに参加しそうな可愛さだ。この教会の近くに住むブラチスラヴァの人々が羨ましい。

地元の人に紛れて空いている場所に着席し、見よう見まねでミサに参加した。観光客っぽい人は私しかいなかった。神父がスロバキア語らしき言語で教えを説いている。
ミサが終わると人々は席を立ち教会から出ていった。みんなそれぞれこれから仕事や家事を始めるのだろう。教会で祈りを捧げるという習慣がない私にとっては特別な体験に感じられたが、スロバキア及び欧州の人々にとってはこれが朝のルーティンなのだ。

その後、午前中は観光地を散策してみた。

旧市街の風景

チュミル像という有名なモニュメント。通称マンホールおじさん

聖マルティン大聖堂


 


レコード屋。スロバキアでもアナログレコードが流行っているのだろうか

レコード発売の告知ポスター

お昼は気になっていたカフェ「Cukráreň Konditorei Kormuth」へ。

壁は壁画で埋め尽くされ、天井には星座が描かれている。インテリアと食器はアンティーク調のもので統一されており、上品な華やかさ。まるで教会か美術館のような内装だ。
隣国チェコの首都、プラハはよくおとぎ話のような街並みと言われるが、スロバキアも先ほどの青の教会やこのカフェのような、度々童話の世界に出てきそうなスポットがあってチェコに通じるものを感じた。チェコのような可愛らしい雰囲気を持つ一方で、ジョージアのような旧ソ連の空気も感じられて面白い。
カフェで食事をした後、バスに乗り、旧市街から出てドナウ川の方へ向かった。通称「UFOの塔」と呼ばれる、橋にかかるUFO型の塔を見たかったからだ。それがこちら。

確かにUFOみたいな見た目だ。ここは展望台となっていて、レストランで食事をしながらブラチスラヴァの街を一望できるらしい。
ドナウ川はハンガリーのときと同様に水が濁り、水位が高く、まだ豪雨の影響が残っているように見えた。
夜に来たらSFっぽい雰囲気の光景が見れるかもと思い、今夜もう一度UFOの塔を見に行くことにした。

バスでドナウ川の向こうに行ってみる。観光地だった景色は、川を渡ると完全に地元の人の生活の場に切り替わった。スーパーやホームセンターを通り過ぎ、集合住宅のあるあたりで降りて散策してみる。

綺麗な集合住宅が並んでいた。外装はパステルカラーだったり、ビビッドな虹色だったり。昼下がりの晴れた青空が似合う建物たちだった。
少しだけ郊外に出たあとは再びドナウ川を渡って来た道を戻り、朝見たラジオビルとストライプ柄のビルをもう一度見に行く。まずはストライプ柄のビルへ。


 

このビルはホテル・キエフ・ブラチスラヴァという、かつてホテルだった場所の跡地らしい。今は廃墟になっており、下の部分は小さいショッピングモールになっていた。なんとかして中に入れないか探ってみたが、ショッピングモールからホテルのビルに続く階段は封鎖されていた。


旧ホテル・キエフ・ブラチスラヴァの近くにはシンブルな時計が。ベルのようなものが並んでいるが、定刻になったら鳴ったりするのだろうか。

その後、再びラジオビルを訪れた。

中に入ると、奥に社員用通用口があり、受付に警備員らしき人がいる。向こう側はラジオ局のオフィスのようだった。この建物はコンサートホールも有しており、見てみたかったがこの日はコンサートがないので閉鎖されていた。
出入り口の近くに売店があり、ラジオビルの建物がモチーフとなったTシャツやマグカップ、文具などが売られていた。私はここでダミーのユーロ紙幣を購入。

ヨーロッパの土産物屋では、このように金額がゼロと表示されたダミー紙幣を度々目にした。サイズも質感も本物のユーロにかなり近い。財布に入れたらうっかり会計の際に出してしまいそうなので別の場所に保管した。

夕飯はスロバキア料理店に行ってみた。

左の餃子のような料理はブリンゾベー・ピロヒ。小麦粉とじゃがいもを練った生地に、中身はマッシュポテトが入っている。
右の白い料理はブリンゾべー・ハルシュキ。これまた小麦粉とじゃがいもでできたニョッキみたいなものにクリームと焼いたベーコンがかかっている。どちらもブリンザという羊乳のチーズが使われているから、頭にブリンゾベーという言葉を冠しているらしい。見た目は違えど材料がほぼ一緒の2種の料理、途中でどっちを食べているのかだんだんわからなくなった。
飲み物のコフォラはかつてコカコーラやペプシを輸入できなかったため自国で発売したスロバキア独自の飲料。微炭酸の、優しめのコーラのような味だった。
宿に戻って少し休憩したのち、日が沈んでから夜のUFOの塔を見に行く。

夜に見るとよりUFOっぽく見える。橋に等間隔で並ぶ街灯が綺麗だ。
ドナウ川に掛かる橋は歩道もあり、散歩やランニングをしている人がいたので、私も歩いてみた。

橋から見た景色
ブラチスラヴァ城

天候に恵まれたということもあり、この日は朝から晩までずっと散策していた。

9月24日

昨日は晴天だったが、この日は朝から雨が降っていた。
今後の旅の計画を立てたかったということもあり、宿の共有スペースでPCで調べ物をしながら過ごした。

共有スペースには猫が

お昼は宿近くのレストランへ。

チーズフライとフライドポテト。そろそろ胃の調子も安定してきただろうということで、揚げ物オンパレードなメニューを注文。
フライを美味しく食べられることのありがたさ。かなり量が多かったのでポテトは残りを包んでもらい、宿に持ち帰った。

近所の公園を通って帰る。

午後も調べ物の続きをして、夜は持ち帰ったポテトをつまみに、宿のバーでビールを頼んでみた。「Zlatý Bažant」という、スロバキアで一番有名なビール。
日本語で金のキジという意味で、鳥のイラストが描かれている。

夜は雨が上がっていたので、昼に行った公園をもう一度散歩した。

9月25日

スロバキア最終日。
昨日Googleマップで他におもしろスポットがないか調べていたところ、ブラチスラヴァにはもうひとつUFOがあることがわかったので行くことにした。
街からバスで20分の場所にある公園の中に、UFOの形をしたモニュメントがあるらしい。
バスを降りて集合住宅が並び立つエリアを歩いていくと、緑の多い公園に着いた。

あれだ。

斜めに刺さった支柱。銀色の円盤。
丘のように盛り上がっている場所にUFOのモニュメントがあった。調べたところ、1970年台に彫刻家によって製作されたモニュメントだそう。
昨日行った宿近くの公園の噴水もどことなく美術的な意匠を凝らした造形という印象があったが、こちらも似たものを感じる。この二つの公園設計には同じ人が関わっているのだろうか。
夜に来たらもっとSF感が増して綺麗だろうな、と日没後の光景を想像しながら、街の中心部まで戻った。

バスで戻る途中、マーケットのような場所があったので降りて散策。

マーケットらしく野菜や果物がたくさん並んでいる。中華料理屋などの飲食店もあって、大量の服が並ぶエリアは香港の女人街を思い出した。

最後にもうひとつ行きたい場所があったので、またバスに乗って今度は山の方面へ向かう。バスを降りて、途中からタクシーを呼んで山の中を走っていく。

カムジークテレビ塔という電波塔にやってきた。
上に展望台があるので、エレベーターで向かう。

静かな空間でブラチスラヴァの街を一望。天気がよかったので遠くの方までよく見えた。平日だからというのもあると思うが、私以外誰もいなかった。
タワーから出ると、横にテレビ局の建物があった。

帰りは森林浴をしながら徒歩で山を下り、バスの停留所まで向かう。

 

スロバキア・ブラチスラヴァには自分好みの建物が多く、ジョージアぶりに旧ソ連の空気を味わえたことで、失いかけた旅のモチベーションや好奇心を取り戻すターニングポイントとなった。

後に私は海外の建物をまとめたZINEを製作することになるのだが、その際にラジオビルの写真を表紙に、UFOの塔の写真を裏表紙に選んだ。
今こうしてコラムを書いて写真を見返しながら、2ヶ月のヨーロッパ周遊の中でもスロバキアの風景は特に魅力的だったなと、改めて思い出に浸っている。隣のチェコは比較的日本人の認知度があるが、スロバキアと聞いてどんな国かすぐにイメージが湧く人はそういないだろう。しかし、もしチェコ・プラハへの旅行を考えている人がいたら、ついでにスロバキア・ブラチスラヴァも訪れてみてほしい。

次回からついに西欧諸国へ突入、まずはイタリア・ミラノへ。お楽しみに。

Ayaka Torii / 鳥居 絢香 
1992年生まれ。名古屋在住の会社員。LIVERARYスタッフ。
海外旅行と名古屋のカルチャー、飲食店が好き。
沢木耕太郎と誕生日が同じ。
Instagram: ayaka_10r
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