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仕事を辞めずにバックパッカー。名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記ヨーロッパ編⑥ノリと勢いだけで急遽ドイツ・ベルリン行きを決行。靴を脱いで寛ぐミュージックバー、世界一入場困難と言われるテクノクラブ『Berghain(ベルグハイン)』に挑戦。

Text & Photo by Ayaka Torii

仕事を辞めずにバックパッカー。
名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記
ヨーロッパ編⑥ノリと勢いだけで急遽ドイツ・ベルリン行きを決行。靴を脱いで寛ぐミュージックバー、世界一入場困難と言われるテクノクラブ『Berghain(ベルグハイン)』に挑戦。

2024年9月13日〜15日

ドイツ・ベルリンがアンダーグラウンドに特化した街だと知った私はどうしてもベルリンに行きたくなった。当初の計画ではドイツに行く予定は無かったが、居ても立っても居られず出発2日前、衝動的にイスタンブールからベルリン行きの航空券を買ったのだった。

イスタンブールはもちろん素晴らしい街だったのだが、滞在中気づいたらベルリンのことばかり考えてしまっていた。世界一入場困難と言われるテクノクラブ『Berghain(ベルグハイン)』に行ってみたくて仕方がない。

Berghainとはどんなクラブなのか。ネットで収集した情報によると、かつて発電所だった建物でゲイクラブとして営業を開始したのが始まりで、現在は世界的に有名な伝統あるクラブとして国から文化的施設に認定されており、世界各国のトップDJが回しているとのこと。
また、誰でも入れる訳ではなく、エントランスでバウンサーがゲストにいくつかの質問をし、服装や雰囲気、音楽に対する姿勢などを総合的に見定めて、入場の可否を厳しくジャッジする。複数人で冷やかしで来るような観光客はまず入れないらしい。これが世界一入場困難なクラブだと言われている所以だ。

国が認めたテクノクラブ。かつて発電所だった場所をクラブとしてリユースするという発想。選ばれし者のみが入ることを許される特別感。
入ってくる情報のひとつひとつにインパクトがあり、私は強く心を惹きつけられた。

ヨーロッパはこれまでアイルランド、オーストリア、チェコなどの比較的小さな国には渡航経験があったが、ドイツのような大きいメジャーな国に行くのはこれが初めてだ。ジョージア、イスタンブールとここまではアジア側の国を回ったが、ここから本格的に欧州に入っていく。その最初の国がまさか予定外のドイツになるとは。

早朝ホテルをチェックアウトして、バスでイスタンブール国際空港に向かった。空港ではイミグレーションの手荷物検査とは別に、空港の入り口ですべての荷物をX線に通す必要があった。飛行機に乗る予定があっても無くても、空港に入るためだけにX線検査がいるのだ。セキュリティがかなり厳重だ。

また、イスタンブールのイミグレーションでの手荷物検査は非常にスムーズだった。通常液体類とスマホなどのデバイスは鞄から出して個別でX線に通す必要があるが、イスタンブールでは鞄から出さずにそのまま通してOKだった。毎回取り出すのが地味に面倒だったので、どの国でもこうだったらな、と思った。

お昼頃イスタンブールを発ち、1時間半ほどでベルリン・ブランデンブルク国際空港へ到着。

空港から市街地まで電車で移動する。ベルリンは小雨が降っていて、気温もイスタンブールに比べて寒い。
静かな車内で、車窓から見えたのはこれまでとは違うヨーロッパの街並みだった。凹凸が少ない外壁、等間隔の窓が並ぶフラットな建築。さっきまでのドーム型のモスクが沢山ある土地にいたのに、たった1時間半でこんなに景色が変わるのか。
本格的にヨーロッパに入ったことに少し戸惑いつつ、ホテル最寄りの駅・Ostbahnhof(オストバーンホフ)駅に到着して街へ降り立った。

Ostbahnhof駅を降りたところ

ホテルは歩いてBerghainへ行ける距離の、駅前のドミトリーを予約していた。
ジョージアとトルコは比較的物価が安かったので個室のホテルに泊まっていたが、この円安の時代ユーロ高がかなりキツく、欧州ではドミトリーでも1泊1万円はした。
私は眠りが浅い体質で、ちょっとした物音で夜中に目が覚めたり、早朝に起きてしまったりということがあるのでなるべく個室がいいと思っていたが背に腹は変えられず、ヨーロッパではドミトリーを使うことにしたのだった。
これまで韓国や台湾で女性専用ドミトリーに泊まったことがあるが、欧州は基本的に男女ミックスの宿が多く、女性専用ドミトリーは選択肢が少なく立地も限られてくる。今回やむなくミックスのベッド1台を予約したので少し不安だった。
ホテル自体は綺麗で大きく、ビル一棟まるまるドミトリーのようだった。1階でチェックインして指定された部屋へ。

部屋に入ったのだが。

予約時、1部屋に4ベッドと表記されていたので2段ベッドが2つあるものだと思っていたら、2段ベッド1台と、2台のシングルベッドがピッタリ横並びに隣接した状態の計4台のベッドだった。
さらに自分のベッドは2つのシングルベッドのうち2段ベッドの隣に位置する方。左側のシングルベッドとはゼロ距離だが右側の2段ベッドの下段ともまあまあ距離が近い。2段ベッドの下段には既にゲストの荷物があり、部屋のバスルームからシャワーを浴びる音がしていたのでおそらくこのベッドのゲストがいるのだろう。

真ん中が私の指定されたベッド

プライバシーが一切ない。
これまで泊まったドミトリーはベッドごとにカーテンの仕切りがあって多少は自分だけの空間があったけれど、これではベッドで着替えができない。
この状態で男女ミックス、ほぼダブルベッドと言っても過言ではない隣のシングルベッドには誰が来るのか。そして今シャワーを浴びているゲストはどんな人物なのか。
ベッドに荷物を置いて悶々としていると、シャワールームから腕にタトゥーの入った、スキンヘッドの屈強なおじさんがパンイチで出てきた。Oh my goodness…。

呆気に取られていると、ハローと声をかけられたのでこちらも挨拶を返す。おじさんは2段ベッドの下段に入り、パンイチのままそこで寛いでいた。私は動揺しつつも会話をした。彼はキルギス出身で、ドイツに8年くらい住んでいるらしい。私たちは部屋のテレビでドイツのニュースを流して見ていた。
経験したことのない状況に、もうなるようになれと半ば諦めの念を抱いていたけれど、その後、フランス人の男性が2段ベッドの上段にやってきて、私の隣のシングルベッドには若い女の子が来た。よかった。ひとまず隣が女性でホッとする。
全員1人旅で初対面、国籍も年齢も性別も違う者同士が相部屋で過ごす特異なシチュエーションを、アラサーになって初めて経験したのだった。

夕方、少しだけ周りを散歩してみることにした。
まずはやはりBerghainだ。まだオープンの時間ではないけど、一旦外観を見てみたかった。

歩いていると街にはポスターが至る所に貼ってあり、そのどれもがかっこいいデザインで目を引いた。お洒落なグラフィックが生活の中に根付いていて、素敵だと思った。

雨風の中、ホテルから5分くらいでBerghainの入り口に到着。

これがBerghain…!
無機質で、あくまで工業チックな無骨な建造物という印象だ。
今日は金曜日。ウェブサイトとGoogleの情報では、金曜の夜から日曜朝にかけて営業しているようだった。流石にまだ誰もいない。壁はグラフィティで埋め尽くされており、ジョージアの街並みを思い出す。列形成の柵があり、たくさんの人が並ぶ様子を想像できる。

ジョージアでクラブに行ったときと同じく、今回も朝に行ってみることにした。場所はわかったので明日土曜早朝にもう一度来よう。

雨風が強まってきたのでホテルに戻ることに。途中、駅に寄ってカリーヴルストというソーセージとポテトにケチャップとカレー粉がかかったベルリンの名物を食べる。

Curry 36という有名チェーン店のカリーヴルスト

部屋に着き、就寝。

翌日早朝。意外とドミトリーでも寝ることができ、他のゲストの物音なども気にならなかったので気持ちよく目覚めることができた。雨も止んでいる。
着替えて早速Berghainへ早歩きで向かった。
が。着いてみると人はおらず、音も聞こえず、なんだか閑散としている。入り口に警備員のような人がいたので、近づくと今日はもう終わりだというようなことを言っていた。
サイトでは金曜の営業開始は22時と書いてあったが、終了時刻は明記されていなかったのでてっきり朝までやっているものだと思ったが、意外と早く終わってしまうのかもしれない。
残念。出鼻を挫かれた私は仕方なくBerghainを後にした。不完全燃焼だ…。
それならいっそ、今夜土曜0時のスタート目掛けて行ってみようか。安全面を考えるとあまり人には勧められないが、自己責任の上で今夜0時、もう一度Berghainを訪れることにした。

気持ちを切り替えて、日中はベルリンの街を散策。

朝食のダンキンドーナツ


ドイツ鉄道の切符


Ostbahnhof駅のホーム

電車に乗って中心地へ。

ウーラニアー世界時計


テレビ塔。ミラーボールみたいで可愛い


ヨーロッパらしい建物


マーケットで雑貨を売っている様子


ベルリンのシンボル、ブランデンブルク門


Curry 36を見かけて再訪。ザワークラウトと共に

午後、一旦ホテルへ戻って少し休憩した。

地下鉄のホーム。少しジョージアに似た雰囲気を感じる

Berghainまでまだ時間がある。夜どこに行こうか考えていたときに、インスタでフォロワーの方にベルリンのおすすめを教えて頂いたので、その中の気になるバーに行ってみることにした。
再度電車に乗って市街へ。

駅から見えた変わった形のビル


夜になり、どことなくアナーキーな雰囲気が増す

私は『kwia』というミュージックバーに向かった。

入り口でチャージを払い、入店。
こじんまりとした空間に多くの人がいた。驚いたのは、靴を脱ぐシステムだったこと。日本の習慣をベルリンで体感することになるとは。
バーはいくつかの部屋に分かれていて、DJやライブを行うメインの部屋と、会話を楽しむ部屋があった。写真はないが、どの部屋もラグが敷いてあってクッションと小さいローテーブルが置いてある。まるで誰かの家のリビングに来たみたいだった。

部屋の一部の様子。漢字を書いた書道用紙のようなものが貼ってある

バーカウンターで飲み物を頼む。
柚子のノンアルコールカクテルを注文した。

メニューのデザインが可愛い

他のゲストと同じように、メインの部屋で床に座ってクッションにもたれかかり、ライブが始まるのを待っていると、女性アーティストがシンセサイザーを使って演奏を始めた。アンビエントミュージックに歌声を乗せてライブがスタートする。
壁のスクリーンには幾何学模様が写し出されて、部屋の淡いオレンジの間接照明がリラックスムードを促す。演奏はダウンテンポが心地よく、皆静かに聴き入っていた。

最高すぎる。こんなに居心地のいいミュージックバーがベルリンにはあるのか。名古屋にあったら絶対に通っている。

演奏が終わると、皆ローテーブルに置いていた飲み物に手を伸ばし、各々会話をし始めた。私も柚子のカクテルを飲んでしばらく寛いでいた。
他の部屋の様子をみると、みんな各々好きな体勢で過ごし、談笑している。横になっている人もいた。
あまり事前情報を入れずに来てみたけれど、ものすごく良かったので、これを書いている今も再訪したい気持ちでいっぱいだ。ベルリンに行く予定がある人はぜひ訪れてみてほしい。

kwiaの余韻に浸りながら、いよいよBerghainに行くため一度ホテルへ戻り準備することにした。
行った人のレポートを読んでいると、全身黒い服装で行くといいらしい。しかし2ヶ月間のバックパッカー旅、機能性に全振りしたほぼオールユニクロの衣類の中で、Berghainのドレスコードをクリアできそうなアイテムはない。今だけ矢沢あいの作画になりたい。しょうがないのでグレーのワイドカーゴパンツと、ベージュのウルトラライトダウンに苦し紛れの黒キャップという出立ちで、23:30頃意を決してホテルを出た。

ホテルのロビーもBerghainに向かう道の途中も黒い服を来た人が沢山いた。みんな目的地は同じ、世界的テクノクラブへの入場に向けて足を進めている。

付近まで来ると、なんと既に長蛇の列ができており、建物からかなり離れたエリアまで列が伸びている。
完全に舐めていた。寒空の下、ディズニー並みの待機時間を覚悟しないといけないかも知れない。でもここまできたらひとまず並ぶしかない。列の最後尾に並ぶとその後もどんどん人がやってきて更に列は伸びていく。

ベルリンは寒暖差が激しく、昼は暖かいが夜はウルトラライトダウンを着ていても寒く感じる。カーゴパンツの下にタイツを履いてこなかったことを後悔した。この状態で一体どれくらいの時間並び続けることになるのだろう…。
スマホを見て時間を潰すしかなく、0時過ぎにようやく列が少し動き始めた。それでもBerghainはまだ見えない。
1時間が経ち、AM1時になった頃、遠くにBerghainが見えてきた。

夜中に外で列に並んで、まるで初詣みたいだ。
途中、コーヒーやスナックを売るキッチンカーがあり、ホットドリンクで寒さを凌ぐ人もいた。こんなに寒いのに、面積の小さいボンテージやハーネスをつけているほぼ裸の男性を何人か見かけた。今もゲイクラブの名残りがあるのだろうか。

それにしても本当に寒いし、思った以上に列が動かない。一人一人に面接のようなことをしているのだから時間がかかるだろうと多少の覚悟はしていたが、寒さで心が折れそうだった。でもようやく建物が見えてきたのだ、あと少し頑張れば…。
ひたすら耐えてAM2時になった頃、エントランスまであと50mほどのところまでやってきたが、どうにも寒さが限界で、震えが止まらなくなってきた。まずい。旅はまだまだ続くのでここで風邪を引くようなことは避けたい。
2時間半並び続け、あと少しというところで本当に限界が来たので、泣く泣く列を抜けて引き返してしまった。そのときの様子がこちら。

建物の中は紫や青のライトが点滅していた。内部は撮影禁止のためどのような構造になっているのか、入った人しかわからない。気になりすぎる。バウンサーに断られたら潔く諦めるしかないが、その前に自ら退くことになるなんて悔しい…。

帰り道はバウンサーに入店拒否された人たちが沢山歩いていた。早足でホテルに戻りながらも諦めの悪い私は、少しだけ寝て朝になったらもう一度Berghainに行ってみることにした。明日、というか正確には今日の夜にはベルリンからフィンランド・ヘルシンキに向かう予定だったのでこれが最後のチャンスだ。なんとか入場できないものか。

部屋に着くと誰もベッドにいなかった。みんなBerghainか、どこかのクラブに行っているのだろう。
そのままの服装で3時間だけ仮眠を取って、早朝5時、今度はタイツを履いて通算4度目のBerghainに向かった。

空が白んでいる。到着すると列は落ち着いていた。

それでも時間はかかり、並び始めて30分ほどでようやくエントランスの直前まで来ることができた。
いよいよ審判のときだ。果たして入れるのだろうか。バウンサが一瞥しただけでNoと言われている人もいたし、やり取りをした上で断られた人、入れた人と様々だった。結構な確率で入店不可にしており、容赦がない。
私の前にいた若い20代くらいの男性がバウンサーとやり取りを始めた。バウンサーは腕を組んで無表情で淡々と喋る。
どこから来た?年齢は? 男性が質問に答えると、バウンサーは無表情のまま、中に入って良いというようなジェスチャーをした。
想定よりかなり簡素な面接の内容に拍子抜けした。事前に調べた情報では、今日のDJは誰が来るか知っているか、普段どんな音楽を聴くのか、などを聞かれるというレポートを読んだが、そういったやり取りはされなかった。
彼が中に入った後、いよいよ自分の番が来た。愛想は振り撒かず、無表情で堂々と接することが重要と聞いたので、内心の緊張を悟られないようにあくまでクールに取り繕っていた。服装と化粧の簡素さは完全にバックパッカーのそれだが。
バウンサーと目が合う。次の瞬間、バウンサーは何か喋った。が、何を言ったのか全く聞き取れない。さっきまで普通に英語だったのに、今のはドイツ語か? もう一度、と言うと同じスピードで同じように話しかけられたが、やはり何と言ったか全く聞き取れない。私のリスニング能力の問題かもしれないが、完全に動揺してしまい、3度目を聞く勇気がなく、やめておけばいいものをついこちらからNo?と問いかけをしてしまった。するとバウンサーは無言で首を縦に振った。審判は下った。入店不可である。

ダメか…。かなりの人を入店不可にしているのを見たので入れないかもと覚悟していたが、ショックだった。Berghainに行ってみたくて急遽ベルリンまで来たけれど、結局目的を果たせず、私のBerghainへの挑戦は終わったのだった。何度も通ったBerghainからホテルまでの道を歩くのもこれで最後だ。ホテルに戻って仮眠を取った。

今夜ベルリンを出てヘルシンキに向かうので、それまで最後の散策をする事に。
ベルリンは日中も営業しているクラブがある。時間の都合で中には入れなかったが、『Sisyphos』というクラブの外観を見に行った。

クラブというか、まるでフェスの会場のようだった。フジロックを思い出すような装飾が可愛い。

その後は有名なベルリンの壁のグラフィティアートを見て、ハンバーガーをテイクアウトしてホテルの共有スペースで食べて空港に向かったのだった。

絶対またいつかベルリンに来たい。今度は黒いモードな服を持って、装いを整えてBerghainに挑戦しよう。長めに滞在して、Sisyphosや他のクラブにも行ってみたいし、kwiaももう一度訪れたい。

数日前までベルリンのことを全く知らなかった私だが、少しの滞在でこの街が大好きになった。次に来るそのときまで、音楽の知識を付け、Berghainにふさわしい人物になって戻ってこよう。

次回、フィンランド・ヘルシンキでアパートを借りて滞在。お楽しみに。

 

 

 

 

鳥居 絢香 / Ayaka Torii

1992年生まれ。名古屋在住の会社員。LIVERARYスタッフ。
海外旅行と名古屋のカルチャー、飲食店が好き。
沢木耕太郎と誕生日が同じ。

Instagram: ayaka_10r

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