Youtube
instagram
twitter
facebook
仕事を辞めずにバックパッカー。名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記 ヨーロッパ編7 フィンランド・ヘルシンキのアパートにまったり滞在。映画『かもめ食堂』のロケ地巡り、ランドリーがコンセプトのバーで洗濯、胃の不調で暮らすように寝込む。

Text & Photo by Ayaka Torii

 

仕事を辞めずにバックパッカー。
名古屋在住アラサーOL海外一人旅日記
ヨーロッパ編7
フィンランド・ヘルシンキのアパートにまったり滞在。
映画『かもめ食堂』のロケ地巡り、
ランドリーがコンセプトのバーで洗濯、
胃の不調で暮らすように寝込む。

2024年9月15日〜20日

Text&Photo:Ayaka Torii

9月15日 

予定外の2泊3日ベルリン弾丸旅行を終え、次はフィンランド・ヘルシンキへ向かった。
夕方にベルリン・ブランデンブルク国際空港を発ち、20時頃フィンランド・ヴァンター空港に到着。

フィンランドという国はヨーロッパの中でも日本人人気が高いと言われている。北欧諸国のひとつでマリメッコやムーミン、テーブルウェアブランドのアラビアやイッタラが生まれた国であり、首都・ヘルシンキは映画『かもめ食堂』の舞台でもある。日本で長期的にブームとなっているサウナも、本場はフィンランドだ。

ヘルシンキでは1週間ほどの長めの滞在を計画していた。なぜかというと、いわゆる「暮らすように旅をする」という経験をしてみたかったからだ。
私は海外で暮らした経験がない。そしておそらく今後も海外移住をすることはないだろう。日本で、この名古屋という街でずっと生きていくような気がしている。
いつもの旅行は可能な限り予定を詰め込み、これでもかというハードスケジュールを組みがちだが、せっかく2ヶ月も特別休暇をもらえたのなら普通の旅行ではできないことをしようと思い、Airbnbでアパートの一室を借りて擬似海外暮らしをしてみようと思ったのだった。
また、私は作家・週末北欧部chikaさんの書籍を愛読しており、chikaさんのフィンランド暮らしのエッセイに影響された部分が大きい。エッセイで描かれるようなスーパーでの買い物、自炊、散歩など、フィンランドでは観光らしい観光よりも、どちらかというと「日常生活」を体験してみたかった。

空港から電車で市街地へ向かい、途中トラムに乗り換え、アパートの最寄り駅で降りた。
フィンランドは比較的治安が良いとされているので夜便の飛行機でも問題ないだろうと思っていたが、ヘルシンキは大都会という雰囲気ではないので人もまばら、入国初日に夜の街を歩くのは少し心細かった。早歩きでアパートに向かい、建物の前に到着した。

門が閉まっている。事前にAirbnbのアプリで鍵の受け取り方はホストから教えてもらっていた。門の横にあるキーボックスの暗証番号を解き、中から鍵を取り出して入るようにと指示があった。
鍵を取り出し門を開けようとしたが、開錠の仕方がよくわからない。アパートは大通りから少し奥に入った場所にあり、周りは暗くて人の行き来もなく不安だった。私は香港のチョンキンマンションで待ちぼうけを食らった時のことを思い出していた。
すると、門の向こうから人がやってきた。どうやらアパートの管理人らしい。「Airbnb?」と聞かれたのでイエスと返事をしたら門を開けてくれた。キーボックスから取り出した鍵を見せると、アパートの部屋まで案内し、鍵の開閉の仕方などを教えてくれて管理人は去っていった。扉を開錠して中に入り、明かりを付ける。

かなり綺麗で広い。インテリアもお洒落で、可愛らしい雑貨が飾ってある。

キッチンには食器と調理器具が揃い、そしてバックパッカーとしてありがたかったのは洗濯機があることだった。
長期旅行に出てみて思ったのは、意外と洗濯が手間だということ。ホテルのランドリーを使うのが楽だけど意外と高いし、かといって近辺のコインランドリーを探して歩いてそこまで行き、洗濯が終わった頃にまた戻り、というのも億劫で毎回頭を悩ませていた。
でも今回は部屋に洗濯機があり、しかも無料。最高だ。

遅い到着だったのですぐに寝る準備をして就寝した。

9月16日 

起床。まだ少し暗いが、窓から木々が見えることに気づいた。

北欧らしい光景を見て、脳内でビートルズのノルウェイの森のテーマソングが流れる。ここはノルウェーではなくフィンランドだが。

今日の予定はスーパーに行って食材を買うこと。それ以外はアパートでゆっくり過ごそうと思い、ひとまず溜まった洗濯物を洗うべく早速洗濯機のスイッチを押したのだが。

稼働はするけれど水が全く出てこない。何度試しても、説明書をスマホで検索してみても解決方法が分からず、元の水道の蛇口も見つけられなかった。今思えばAirbnbのアプリでホストに連絡すれば良かったのだが、この時はそれをせず、結局アパートでの洗濯はぬか喜びに終わり、諦めたのだった。
残念だ。北欧は他のヨーロッパ諸国に比べ物価が高い。なるべく出費を抑えたいので洗濯機が使えるかどうかは重要だった。仕方がないので近くにコインランドリーがないかGoogleマップで検索をかけると、歩いて3分くらいの場所にランドリーをコンセプトとしたバーを発見した。飲食業だけではなく、本当にランドリーサービスを行っているらしい。ランドリーをコンセプトとしたバーというのがまず物珍しく、洗濯もでき、しかもそれが超近所にあるということで私はこのバーで洗濯をすることに決めた。まだ今日は服のストックに余裕があるので、明日行ってみよう。

スーパーに向かうため、外に出る。

そして買ってきた食材がこちら。

パン数種、卵、チーズ、ミニトマト、ヨーグルトなど。
フィンランドっぽいものをと思い、サーモン、ブルーベリージュースも購入。また、水色の缶は「ロンケロ」というフィンランドの酎ハイのようなもので、ジンベースのグレープフルーツソーダのお酒だ。サウナ後にこれを飲むのがフィンランドスタイルらしい。

昼食はインスタントのパスタを調理して食べた。

午後はヘルシンキでの散策の計画を練ったりして、ずっとアパートで過ごしていた。
夜になったので夕食の準備をする。スーパーで買った食材を色々食べてみた。ロンケロも開けて飲んでみる。

ロンケロは度数が5.5%とそこまで高くなく、すっきりとした甘さのグレープフルーツ味だった。普通に日本でも売れそうな飲みやすい酎ハイだ。
この日は旅に出てから初めて自炊をした日となった。しばらく外食が続いていたので、少し胃を休ませるいい機会になるのではないか、と思っていた。

この時までは…。

9月17日 

次の日。起きるとなんとなく胃に違和感を感じた。なんだかちょっともたれている感じがする。昨日あんなにヘルシーな食事を摂ったのになぜだろう。ロンケロのアルコールが原因だろうか。食べた後割とすぐに寝てしまったから?それともこれまでの欧州での油の多い食事が積み重なって、胃の負担になっているのだろうか。
私はもともと胃が強くない。体調不良になるとまず胃からやられるし、夜中にラーメンを食べようものなら高確率で次の日に胃もたれを起こす。
けれどそんなこともあろうかと、出国前に近所のかかりつけの胃腸科で漢方と胃酸を抑える薬を貰って持ってきていた。胃の不調には慣れている。食べる量を減らして薬を飲んでいたらそのうち治るはずだ。
朝食は冷蔵庫にあるものを少しだけ食べて胃薬を飲み、今日は散策をしてみようを外に出た。

今日は天気があまり良くなく、霧がかっていた。
ヘルシンキの街はコンパクトで、割と徒歩移動で散策できる。
まずやってきたのがこちら。

映画『かもめ食堂』のロケ地だ。
かもめ食堂は2006年公開の日本映画で、フィンランドで食堂を営む日本人女性の日々や人々との出会いを描く。ストーリーは派手なものではないけれど、ヘルシンキでの穏やかな日常を描いたこの映画は当時北欧ブームの火付役となったとも言われている。
主人公が営む小さな食堂として、実際にここで撮影が行われた。現在この場所は日本人オーナーによる『Ravintola KAMOME』という日本食レストランになっている。この近辺はオフィス街なのか、お昼どきに行ったら社員証をぶら下げた現地の人々が列を作っていた。日本人観光客が多いのかなと思っていたが、地元の人々にも人気があるようだった。
本当はここで昼食にしたかったが胃の調子が良くないので断念。外観を見るに留める。

ランチはスープを食べることにした。『Soppakeittiö』(ソッパケイッティオ)というスープの専門店へ。

お店はマーケット施設の中に位置していて、私はサーモンのクリームスープを選んだ。温かくサラサラとしたスープが胃を満たす。具はじゃがいも、サーモン、ディルなどが入っていた。胃の不調のタイミングで、行きたいと思っていたお店の候補の中にスープ専門店があって良かった。
その後も散策を続ける。

湖のほとり
白樺の中を歩く

自然を感じつつ、ヘルシンキ中央図書館『Oodi』(オーディ)にやってきた。

2018年に建てられた新しめの図書館。外観も内部もかなり洗練されたデザインで、世界的にも有名な公共図書館らしい。海外観光客向けのツアーが館内で行われているのも見た。
仕切りがないというか、フロアの端から端までが見渡せるので広く感じる。天井も高い。ヨギボーのような大きなクッションが置かれていたり、カーペットが敷かれていてそこに座ってPC作業ができたり、寛いで過ごせるようなスペースが多く、皆思い思いに過ごしていた。
調べたところ、音楽スタジオやキッチンスタジオ等を併設しているようで、図書館としての機能だけでなく、あらゆる文化的活動の提供の場として地域に根ざしているようだった。

一度アパートに戻り、洗濯物を持ってランドリーバー『Bob’s Laundry』にやってきた。

ドアを開くとまずはランドリースペースがあった。ピンクの洗濯機とネオンサインが目を引く。飾ってあるTシャツは全てお店のロゴが入っている。
ここで本当に洗濯ができるのか。あの洗濯機は本物なのだろうか。なんだかインスタ映えスポットのような若い雰囲気を感じつつ、さらにバーの扉を開けると、意外にも大人のお客さんが多く、店内は賑わっていた。
スタッフに洗濯がしたい、と伝えるとさっきのピンクの洗濯機の前に案内され、ここに入れるように促された。衣類を入れ、スイッチを押すと動き始める。ちゃんと本物の洗濯機だ。このまま乾燥もしてくれる。しかも中身が見えないように配慮されているのか、洗濯機の扉はよくある透明ではなく黒だった。

洗濯が終わるまで、バーで何か飲むことにした。メニューを受け取ってびっくり。

なんと布でできている。服のタグをイメージしているのだろうか。洗濯表示のようなピクトグラムでアルコール度数や値段が書いてある。
せっかくならお酒を楽しみたいが、胃の調子を考慮してノンアルのグレープフルーツとイチゴのドリンクを頼んだ。ボトルとグラスがやってくる。

ボトルにはBob’s Laundryのロゴの入ったラベルが貼られていた。オリジナルプロダクトなのか。さっきからメニュー表といい細部にこだわりが詰まっていてすごい。スタッフの接客も親切で、第一印象でインスタ映えなどと揶揄した自分を恥じた。部屋の洗濯機が使えなかったのは残念だけど、そのおかげで面白いお店に出会うことができたのだった。
洗濯物を受け取って、私はアパートに戻った。

9月18日

フィンランドに来てから曇り空ばかりだったが、ようやく晴れ間が出てきた。
外を散歩しながら、今日の目的地へ。

『アカデミア書店』という本屋の中に併設されている『Café Aalto』(カフェ アアルト)へやってきた。

こちらも映画かもめ食堂の舞台だ。主人公演じる小林聡美が、片桐はいりに「ガッチャマンの歌詞って分かりますか?」と話しかけるシーンはここで撮影された。フィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アアルトが手がけており、店名にその名前を冠する。このアカデミア書店の建物自体もアアルトが設計したものだ。彼は建築のみならず家具デザイナーとしても活躍し、照明等カフェ内のプロダクトもアアルトがデザインしている。

私は紅茶とシナモンロールを頼んだ。北欧はシナモンロールが有名だ。発祥自体はフィンランドではなく隣国スウェーデンらしいのだが、シナモンに加え、生地にカルダモンが練り込まれているのが北欧式で甘さは控えめ。日本のシナモンロールは甘いアイシングがかかっているが、代わりにこちらでは粒の荒い砂糖がかかっている。

お皿からはみ出しそうな、大きくて平べったい形のパン。食器にも店名のロゴが入っていた。
日本語のメニューがあり、私以外にも日本人観光客の方がいたので、日本人に人気のあるスポットのようだった。

カフェでの食事を終え、次は2つの大聖堂へ向かった。

まずはヘルシンキのランドマークとも言える、ヘルシンキ大聖堂へ。

外装工事中で、上部のドームの部分は写真がプリントされたハリボテで覆われていた。ちょっとシュールで面白い。内部の装飾はシンプル。

次はウスペンスキー大聖堂というもう一つの大聖堂を訪れる。

赤いレンガと緑の屋根、金色の尖塔。
こちらは装飾が豪華で、祭壇の絵と装飾のスタイルがジョージアで見た教会と似ているように思った。ウスペンスキー大聖堂はロシア正教会の建物らしい。ジョージアは旧ソ連の国なので、教会のつくりに通じるものがあるのかもしれなかった。

散策を終えてアパートに戻る。
軽い散策ならそこまで問題ないが、やはり依然として胃の調子がよくなかった。本当はマリメッコの社員食堂や、フィンランドのチョコレートブランド『Fazer』(ファッツェル)のカフェにも行きたかったのだが、あまり食事をする気になれず泣く泣く断念した。食べる量を減らし、薬を飲んでいるがあまり改善を感じない。毎日胃もたれと共に目が覚める。もう一晩寝たら今度こそ良くなるんじゃないか、と願掛けしながらこの日も眠りについた。

9月19日

起床。胃がムカムカする…。今日もダメだった。胃の不調が続いてこれで3日目だ。しかも今日は当初の計画通りなら、バルト三国のうちの一つであるエストニアの首都・タリンにフェリーで日帰りで行こうと思っていたのだった。今まで香港やトルコで路線便のフェリーに乗った経験はあるが、大きなフェリーに乗って違う国へ移動する、ということをしてみたかった。けれどもこの体調で片道2時間半ほどのフェリーの旅に耐えられる自信がなく、結局エストニア行きは諦めることにしたのだった。辛いが健康には変えられない。私はベッドの中でYouTubeを開き、バキ童チャンネルのフィリピン編を観て過ごしていた。旅先で部屋から出ず、バキ童を見ることになるとは。これは普段私が名古屋で過ごす日常と何も変わらなかった。不本意ながら、ある意味結果的に「暮らすように旅をする」というコンセプトに沿った行動をとることになったのだ。画面の向こうでメンバーが楽しく飲み食いしているのが羨ましい。私も早く健康な胃を取り戻したい。

明日はフィンランドを出てハンガリーに移動しなくてはならず、今日が実質ヘルシンキ散策最終日だった。ずっと部屋にいるのが惜しくなり、午後、本来だったら乗るはずだったエストニア・タリン行きのフェリー乗り場まで散歩することにした。

本当ならここでチケットを買ってフェリーに乗るはずだったのに。
やるせなさの中、引き返して昼間のBob’s Laundryの前を通る。

こんな外観だったのか。外の旗も洋服のタグ風のデザインだった。

アパートに戻り、明日には回復していることを願いながら薬を飲んで就寝した。

9月20日

出国の日になった。願いも虚しく、遂に胃のむかつきが治らなかった。スーパーで買ったパンを食べるのもつらい。ヨーグルトしか食べたくない。薬は2週間分ほどはストックがあるが、このまま回復せず、薬が切れたらどうしようかと不安になった。現地の病院に行ってみようか…。何が起こるかわからない海外一人旅。体調不良も含め、これ以上旅を続けるのはきついと感じたら無理せずに帰国する、というのは旅を始める前から自分に課した約束だったが、本当にそうなってしまうかもしれないと思うと絶望を感じた。ただの胃のむかつきでも、4日も続くとメンタルも削られる。夕方のフライトでフィンランドを発つので、ギリギリまで部屋で安静にして、時間になったらアパートを出ようと、しばらくずっとベッドで寝ていた。

昼頃、私はお世話になったアパートを出た。

鍵をキーボックスに返して、空港に向かった。
最寄りのトラムに乗ってヘルシンキ中央駅に到着。ここから鉄道でフィンランド・ヴァンター空港へ向かう。
ふと、駅構内におにぎりや寿司を売っている売店を見つけた。和食店というよりは、現地の味にローカライズされた日本食のテイクアウト専門店のようだった。サーモンと野菜を巻いた巻き寿司や、アボカドの軍艦がある。変わらず胃はムカムカしているが、一応昼食を摂ろうと思い、フィンランド式ツナマヨおにぎりを買った。

プラスチックのケースに入っている。海苔は巻かれておらず、胡麻がまぶされていた。
一口食べる。美味しい。ご飯が少し酢飯っぽくて爽やかだ。具のツナマヨは馴染みのある、日本のコンビニで売っている味と一緒だった。
やけに美味しく感じ、あまり食欲がなかったが一瞬で食べ終えてしまった。

そして信じられないことに、このおにぎりのおかげであんなに長く続いていた胃痛が治ったのである。
私の胃を復活させたのは漢方でも胃酸を抑える薬でもなく、ツナマヨおにぎりだった。
日本食がご無沙汰だった私の胃は、母国の味を欲していたのだろうか。とにかく治って本当に良かった。まだ帰国せずに済みそうだ。

胃の不調に見舞われたフィンランド・ヘルシンキ旅。やむを得ず断念したスポットも多いが、元々アパートで過ごすことに重きを置いていたのが不幸中の幸いだった。これがドミトリー宿泊、散策メインの旅だったら辛い思い出になってしまっていたかもしれない。

今後定期的に日本食を食べて胃を労わろう。フィンランドで得た学びを胸に、ハンガリー・ブダペスト行きの飛行機に乗ってフィンランドを後にした。

 

 

 

 

Ayaka Torii / 鳥居 絢香 

1992年生まれ。名古屋在住の会社員。LIVERARYスタッフ。
海外旅行と名古屋のカルチャー、飲食店が好き。
沢木耕太郎と誕生日が同じ。

Instagram: ayaka_10r

RELATED
あなたにオススメする関連記事


PICK UP
特集・ピックアップ記事

LATEST
特集・ニュースの最新記事

RANKING
今読まれている記事

COLUMN
最新の連載コラム記事