SPECIAL INTERVIEW:小鳥美術館(Masaya Makino & Nagisa Shima )
館長・牧野(Gt)と学芸員・島(Vo)によるデュオ「小鳥美術館」の初のCD音源となる『Little Museum Of Bird』が今秋にリリースされた。10年以上、名古屋を中心に地道なライブ活動を続け、オーディエンスはもちろん、数々の競演したミュージシャンたちも虜にし、いつしか名古屋の音楽シーンを語る上で欠かせない存在となっていった彼ら。
繊細ながらもダイナミックで技巧に富んだギターに、一度聴いたら思わず口ずさみたくなるようなメロディーと一筋縄ではいかない歌詞が見事に合わさったこの作品は、多くのファンが(本当に!)待ちに待った至福の傑作となった。そして、今後この作品が人知れず羽ばたいていくことで、さらに多くの人々の耳を楽しませていくことだろう。
11月6日(日)のK.D Japonでの単独公演を皮切りに、レコ発ツアー「小鳥美術館 作品発売記念巡回展」を開催する小鳥美術館の二人に、少しだけ彼らの秘密を教えてもらうべく、インタビューをこころみた。
SPECIAL INTERVIEW :
小鳥美術館(Masaya Makino & Nagisa Shima )
Interview,Edit & Photo : Yoshitaka Kuroda [ LIVERARY , ON READING ]
―もう結成して10年以上になるんですよね?
牧野(以下:牧):そうですね、もう12年になるそうです・・・。
―初ライブから12年ですか?
牧:いや、きちんとHPとか作って、小鳥美術館として活動していこうと決めてから12年って感じですね。その前にも曲作ったり、ライブしたりもしてました。
―どんないきさつで二人で音楽やることになったんですか?
島:きっかけは18個あるんですけど。
―え、18個??
島:ちょっとこの質問はミュージック・マガジン(10月20日発売号)のインタビューでも答えていないので、ここで明かすわけには…。(笑)
―そもそも小鳥美術館をやる前は、それぞれ音楽活動はしていたんですか?
島:私は高校生の頃にフォークソング研究会に入ってて、それでギターを弾けるようになりました。組んだのは小鳥美術館が初めてですね。
牧:僕は大学の頃にビッグバンドジャズのサークルがあって、そこでギターを。その時はエレキギターをピックで弾いてました。それまでは、アコースティックギターを弾いてて。ラジオ聴いたり、雑誌やテレビで知っていいなと思った曲を弾いてみたり。
―子どものころは何やってました?
牧:僕は剣道やってました。全然上達しませんでしたが。
―あ~、似合います。姿勢いいですもんね(笑)
島:わたしは中学生の頃はボート部に入って頑張ってました。
牧:全国4位なんですよ彼女。
―え~、すごい実力ですね!なんで高校ではフォークソング研究会へ入ったんですか?
島:高校にボート部がなくて、なんか色々やってみようと。それで最初見学に行ったんですけど、実はフォークダンスと勘違いしてて。。。
―え??
島:「フォーク」だけで判断しちゃったんですよ。そのとき、フォークソングってなにか知らなくて、フォークソングっていうものにあわせてダンスするのかな~っていう感覚で。実際は全くの勘違いだったんですけどね(笑) でも見学に行ったときに先輩が上手にギター弾いて歌っているのをみて、わ~凄いなぁ~と思って。私の父親も、昔ギター弾いてたんだよとかって話も聴いて。じゃあやってみようかなと。
―じゃあ言わば偶然なんですね。そのころは何を弾いてたんですか?
島:頑張って、はじめて弾けるようになったのは、オアシスのWonderwallですね(笑)
―もうフォークソングでもないんですね(笑)でもその頃、ブリットポップ全盛期でしたもんね。他にも洋楽とか聴いていたんですか?
島:うちの父親が、CD屋さんに行って全米1位だっていうアルバムを買ってきたんです。でもそれが気持ち悪くて聴けないからって、私にくれたんですよ。それがビョークの「ホモジェニック」だったんです。小学校6年生の時で、それまで知ってた邦楽と全然違って、こんな音楽もあるんだって。それからは洋楽に興味が湧きました。
―牧野さんはどんなのを聴いてましたか?
牧:高校生のころは、エリック・クラプトンとかプレスリーとか、ブライアン・セッツァーとかいろいろ聴いてましたね。中学のころにケーブルテレビが観れるようになって、スペースシャワーとかMTVをずっと付けてました。
島:わたしたち、始めた頃はカヴァーでライブをしてて。館長が渋めのが好きで、ビートルズとかやってたんです。
―これまで小鳥美術館のライブを見てきたときに、島さんってちょっとじゃみったブルージーな歌い方をするな~って思ってたんですが、そういうのカヴァーしてたからなんですかね?
島:そうですね、カヴァーだとそういう歌い方が多くて。でも高校生の頃は、もうちょっとフラットっていうかストンって感じの歌い方に憧れていたんですが。それでいろんな歌い方を試して、今、ようやく自分たちがつくった表現したいものと歌い方の折り合いがついてきたというか。
―今回、CDの音源聴いたときに、あ、歌い方変わった!って思ったんです。すごくクリアに歌ってて。そのせいか、ずっと繰り返して聴いていられるんですよね、このCD。
小鳥美術館は歌詞も独特というか、ちょっと癖がある感じだと思うんです。それで今回CDが発売になって歌詞カードが付いてて、始めて文字として読んだんですけど、そうすると聴いていたときとはまた違った印象を受けるんですよね。少年少女が主人公の海外文学みたいな読後感というか。そういうのは今まで読んできた本などに影響受けてるんですかね?
島:私、実は本はあまり読めなくて、、、絵本とか、「みんなのうた」とかは好きなんですけど。文庫本の字を追っていると、古い紙の色や文字のフォントからもなんだかダークなイメージがどんどん頭の中に膨らんでしまうことがあって。でもなんとか克服しようと思って、宮沢賢治さんは読みました。あ、あとこれは最近の話なんですが、「ももうりのとのさま」って絵本が凄く面白かったです。
―あ~、「みんなのうた」の歌詞もすごくわかりやすいって感じではないですもんね。
島:そう、なんか変なんですよ。ちょっと怖いのもあったり。それはすごい影響を受けている気がします。
―ちなみに曲ってどうやって作っているんですか?
島:最初は二人でギターをこれにしようっていうまで練るんですよ。
牧:まずはギターだけで1曲まるまる作っちゃうんです。最初っから結構共同作業で、曲を立ち上げるきっかけも僕が無意識に弾いてたフレーズから始まる場合もあるし、島さんが弾いたものだったりもするし。そういう曲の基になるような小さなフレーズから二人で曲のイメージを共有しながら広げていく感じですね。
島:館長のフレーズから出発するときは、このメロディー弾きながら、こんな音も欲しいとか私が口を出していきます。この次のコードはもう少し明るい方がいいとか。ベース音はいいけど、もうちょっと違う感じがいいとか。オーケストラ風に(笑)とか、いろいろ無理難題を言って。(笑)
牧:そういうので、弾けないものも弾けるようになって演奏の引き出しが増えていきましたね。頑張って…(笑)
―その時はうっすらと歌のメロディーも浮かんでたりするんですか?
島:いや、その時は全然です。完全にギターの演奏ができてから、メロディーを付けていきますね。
牧:歌を入れる際に、ギターの音を引いたりすることもあります。歌の邪魔にならないように。
―なるほど~。つまりギター一本の曲だけで楽曲として聴ける状態にしているってことですもんね。だからあんなに豊かな表情が生まれているんですね~。牧野さんは、小鳥美術館の他にもHei Tanakaやguiroにも参加してますよね。プレイするにあたってどんな違いがありますか?
牧:う~ん。全然違いますね。お客さんを前にして演奏するっていう点でモチベーションはそんなに変わりはないですけど。Hei Tanakaもguiroもあくまでもプレーヤーとして加わってるって感じなので。まず曲を作ってる人がいて、それに沿った演奏や在り方を求められるっていうか。それはそれで小鳥美術館とは違った遊びかたができるし楽しさがありますね。
牧:小鳥美術館では、僕がやることで島さんの歌への影響もやっぱりあるから、おいそれと何かはできないっていうか。そういう覚悟を持ったうえで演奏中に何かできることが見つかったときに、いつもと違う事をやって、それが島さんの歌とはまったときの感じとかは、やはり他でプレイするときとは違う感動がありますね。
―それは長い間一緒にやってきたからこそ、でしょうね。
島:でも、息があう瞬間っていうのを感じられるようになったのは、ここ数年の話ですね。
牧:100点がないんですよ。きっとみんなもそうだと思うんですけど。精進あるのみですね。
―今回のCDですが、ジャケットデザインがすごく潔いですよね。これも島さんのデザインなんですよね?
島:すごくいいなっていうデザイナーさんとか、絵を描く方もたくさんいらっしゃるんですけど、そういう方にお願いすると、その人の絵の印象が強くなってしまうところがあるなと思って。
牧:まずいろんな先入観なしに聴いてほしかったんです。
―ジャケからはどんな音楽かまったく想像できないですもんね。下手したらクラシックとか、ミニマルテクノかなって思われるかもしれない。でもそのデメリットよりも、とにかく純粋に自分たちの音楽の音楽を聴いてほしいってことですよね。そのためには、他のものには頼らないぞっていう。
牧:10年かかりましたが、やっと自分たちが納得できるものとしてリリースできたので、たくさんの方の手に渡ってほしいですね。ライブも是非観に来てほしいです。
小鳥美術館 / Little Museum of Bird
release:2016/10/12(wed)
price: ¥1,700(without tax) / ¥1,836(tax in)
program:
1.ハロージャック
2.ジェニー
3.鳩時計
4.アーノルド・パーマネント
5.No.37
6. Fishing (demo)
format:CD
label:書庫
distribution:Art Union, Corporation.
cat no.:ACHV-001
2016年11月6日(日)
小鳥美術館 作品発売記念巡回展
会場:K.D.japon 名古屋市中区千代田5丁目12-7
時間:開場19:00/開演19:30
料金:前売 2,300円/当日 2,800円(ともに+1D)
出演:小鳥美術館(田中馨・イトケン参加)※ワンマン公演
メール予約:kdjapon@gmail.com
2016/11/12(土)
会場:HOPKEN 大阪府大阪市中央区北久宝寺町2-5-15
時間:開場19:00/開演19:30
料金:前売 2,300円/当日 2,800円(ともに+1D)
出演:小鳥美術館 / ゆうき (オオルタイチ+ウタモ)
メール予約:info@hopken.com
2016/11/28(月)
会場:下北沢440 東京都世田谷区代沢5-29-15 SYビル2F
時間:開場19:00/開演19:30
料金:前売 2,800円/当日 3,300円(ともに+1D)
出演:小鳥美術館 (田中馨・イトケン参加) / 片想い
チケット販売・予約:
440店頭販売
イープラス(http://eplus.jp)
メール予約:shimo_reco@yahoo.co.jp
その他地域も順次開催予定。
小鳥美術館
2004年、館長・牧野、 学芸員・島 により設立。シンプルな構成の中に精緻な技法と近代的な要素がみられる作品を展開。近年では造園剪定士・田中馨、税理士・イトケンらを迎え、より複雑な構造と深みのある表現の呈示・追求がなされている。2016年10月、待望のCD作品「Little Museum of Bird」を自主レーベル「書庫」より発売し、Hei Tanakaとのスプリットカセット作品「トマデジ」も次いで発売が決定。11月には作品発売を記念した東名阪ツアーの開催も決定している。
http://little.museumofbird.org/