FEATURE:各務原市
各務原市は今、最もアクティブでおもしろいまちなのかもしれない。
「各務原」と聞いて「かがみはら」なのか「かかみがはら」なのかもわからないかもしれないし、一体どこにあるの?という方もおそらく多くいるだろう。しかしながら、Suchmos、neveryoungbeachらが出演し即SOLDOUTした恒例の人気音楽フェス「OUR FAVORITE THINGS」や、広大な自然公園一帯を使ったマーケットイベント「マーケット日和」はスペシャルゲストにリリーフランキーが登場するなど、話題に欠くことのない次から次へと起こるアクションについては知っている方も多くいるのではないだろうか。
さらに、同市は昨年新たなプロジェクトとして、市民自らが市の魅力を発信するサイト「OUR FAVORITE KAKAMIGAHARA」を立ち上げ、こちらも好評を博している。当初の予定通り、ローンチ後まもなくして市民ボランティアライターたちが募集され、10数名がエントリー。彼らは実際に日々記事を更新しこのサイトは自走を始めている。(サイトはコチラ。)
これらすべてにおいて各務原市が主体となりつつも、市民のモチベーションを突き動かしながら、文字通り“市民協働”のスタンスで着実に成長を遂げてきた。市政にとっても市民にとっても、かけがえのない誇りと言えるだろう。
「OUR FAVORITE THINGS」「マーケット日和」の2大イベント。そして、それらの情報はもちろん多角的に市の魅力を外に伝えるメディア「OUR FAVORITE KAKAMIGAHARA」、それぞれに関わってきたLIVERARY編集部は、各プロジェクトに積極的に参加する各務原市民スタッフたちがどのような思いで参加しているのか?いわゆる一般市民である彼らが自身の住むまちといかにして関わってきたのか?普段はそれぞれに仕事や主婦業をこなす、バラエティ豊かなスタッフ4名にお集まりいただき話を伺った。
FEATURE :
KAKAMIGAHARA CITY
Interview with:
今井大樹、越智佳主恵(OUR FAVORITE KAKAMIGAHARAスタッフ)
片岡浩二(OUR FAVORITE THINGSスタッフ)
長縄尚史(マーケット日和スタッフ、かかみがはら暮らし実行委員会)
Text&Edit:Takatoshi Takebe [THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY]
―みなさんはいわゆる一般市民でありながらも、各務原市のさまざまな取り組みに積極的に参加されています。今日は、みなさんが普段は何をしている方なのか?簡単な自己紹介もしていただきながら、どんな風にボランティアとして活動されているのか?を伺っていきたいと思います。では、最年少の今井さんからいきましょうか。
今井大樹さん
自分の本当に好きなまちだからこそ、
楽しんで参加できそう!って思ったんです。(今井)
今井:僕はテクノプラザにある「株式会社今仙技術研究所」で福祉機器メーカーの営業の仕事をしています。元々東京にいたんですが、義足を作る免許を向こうで取って、義足のパーツを作っているメーカーが全国でも各務原にしかないことを知り、どうしてもこの仕事がしたかったので2年前に引っ越して来ました。
―各務原にそんな偉大な企業が…!さすがものづくりのまち・各務原ですね。今井さんは東京出身ということですが、各務原市についてどんな印象を持たれていましたか?
今井:岐阜と言われても、岐阜城くらいしか知らなかったし、生まれも育ちも東京なので何もないのかな〜と思って……かなり覚悟を決めて各務原に来ました(笑)。
―(笑)。
今井:で、いざ来てみたらすごく住みやすいまちだな〜って。それが最初に受けた各務原市の印象です。コンビニもスーパーもある、駅も近い。家の前には大きな公園もあるし。生活する上でとても便利なまちだな〜と。
―今井さんは各務原市の移住促進WEBマガジン「OUR FAVORITE KAKAMIGAHARA(以下OFK)」のボランティアライターとして関わっていらっしゃいますが、きっかけはなんですか?
今井:最初は各務原市の夏フェス「OUR FAVORITE THINGS(以下OFT)」に2年連続でお客さんとして参加しまして。そこでOFKのステッカーとか配ってるの見てて。
今井:インスタグラムでOFTをフォローして、そこから流れてくる情報を見てたら、OFKのボランティアライター募集の情報も出てきて。もともとライターという仕事への憧れがあったので、すぐ応募しました。
―なるほど〜!
今井:以前から、自分の好きなものを紹介したり、周りにも知ってほしいという気持ちがあって、フェイスブックで個人的に「各務原通信」ってのをやってたんです(笑)。
―「各務原通信」!?
今井:地元東京の友達に向けて、今、自分が住んでいるまちのあれこれを勝手に発信していました(笑)。
―すご!まさに適材!ちなみにその「各務原通信」は何を載せてたんですか?
今井:自分が働いている会社の近くにハゲ山があって。それが夕日が当たっている時がエアーズロックにしか見えなくて。その写真を撮って「各務原のエアーズロック!」って載せたり。東京の友達にはすごいところに住んでるねって言われましたね(笑)もちろん、風景ばっかりではなくて、気に入ったお店をジャンル問わずUPしていました。それがまさかこういう形で市の取り組みと繋がるとは思ってもいませんでした。ただ、各務原は自分の中で特別の場所だったので、自分が前から住んでいるまちで同じようにライター募集をやっていても参加していなかったかもしれません。自分の本当に好きなまちだからこそ、楽しんで参加できそう!って思ったんです。
―記事を校正させてもらって、最初から「この人はかなり書ける人だな〜」って思ってたんですよね。
今井:ありがとうございます!実は、他の雑誌の記事はどんな風に書かれているか見たりとかして自分でもそれなりに勉強したりしました。文章を書く勉強は全く無駄にはならないと思っていて、自分のためにもなるなと思って。普段自分のしている仕事にも通じるとこがあります。義足のメーカーですけど、ただ物を作っているだけではなく、ユーザーの生活を豊かにする、使う人が自分らしい生活ができるようにと支える仕事だと思っています。それってOFKの記事を書いてまちの魅力を発信して伝えるうえで、自分の中では同じ線上にあって……。自分がいい!と思ったものを発信して、誰かが自分らしく暮らすためのヒントになれたらと思っています。
―なるほど。では、続いて同じくOFK編集部にボランティアライターとして参加している、越智さんお願いします。越智さんは普段は主婦業をされているお母さんなんですよね。
越智佳主恵さん
主婦の自分探しの旅です(笑)。(越智)
越智:はい、そうです。私も今井さんと同じく地元は岐阜ではなく、神奈川で。物心がつく前に大分、宮崎、鹿児島に行きまして。で、夫が転勤で各務原市に来ることになって今に至ります。こっちには親戚も友達も誰もいなくて……。各務原に転勤が決まってから、初めて「岐阜」って漢字を書きましたね(笑)。
―じゃあずっと九州で生活されていたんですね。不安でした?
越智:知らない土地に行く不安は当時それほどなかったと思います。しばらくして友達もできたし。で、子どもができると各務原市にはいろんな手厚い制度があることを知って。細かい所に行き届いているな〜という印象を受けましたね。各務原は広い駐車場が多いし、保育所も3日くらい前に電話しておくと何もなければ受け入れてもらえるし、家族で住むうえでの受け入れ体制が整っています。
―住みやすいまちなんですね〜!「OFK」はどういうきっかけで?
越智:「OFK」のことを知ったのは、「マーケット日和」です。
「マーケット日和」の様子
越智:マーケット日和の関係者の方のSNSをフォローをしていて、そこでライター募集を見て応募しました。昔からなんとなく文書を書くことが好きだったんです。で、下の子も幼稚園に入園したので日中、時間が空いたのでこの機会にやってみよう!と思い応募しました。主婦の自分探しの旅です(笑)。
―なるほど〜。では続いて……僕がOFTのスタッフ会議に参加させてもらった時に、一番びっくりした片岡さん。電気工事会社の社長さんなんですよね?!
片岡浩二さん
これって、誰かがやらないといけないわけで、
誰かが先陣を切らないとね。(片岡)
片岡:はい、普段は電気工事会社の社長をしています。もともとは市の青年会議所の理事長として行政と関わっていて、OFTを河川環境楽園でやる前に青年会議所主催で同じ場所でフェスみたいなのをやっていて。観光交流課の課長さんに「今度、河川環境楽園で夏フェスやるから手伝ってくれない?」って言われまして。で、二つ返事で僕が「OK!手伝うよ!」って言っちゃたんです、青年会議所全体の許可も取らずに(笑)。で、OKした後に青年会議所の理事長として関わるのは気まずいな〜ってちょっと思って、だったら個人で受けようと。最初は自分の軽はずみな返事の責任を取るために手伝うことにしました(笑)。
―そうだったんですね(笑)。OFTで見たとき、若いスタッフとともに汗だくで働いている片岡さんの姿を見てうわ〜ほんとにスタッフやってる!てびっくりした記憶があります。実際、OFTに関わってみてどうでしたか?
片岡:印象的だったのは、イベント終了後にお客さんが帰っていくとき、みんなすごくいい反応で「今年も楽しかった〜」とか「来年も絶対にくるから〜」とか言ってくれるんですよ。それを直接聞けたことは、僕含め関わったスタッフは間違いなく嬉しかっただろうと思います。ほんとにクレームみたいなこと言ってる人全然いなくて。なんかプラスのエネルギーが充満している感じがして、清々しい気分になりました。
―確かに。僕もLIVERARYとして関わらせてもらう前から、ほぼ毎年のようにOFTには行ってたんですが、お客さんの質がすごくいいですよね〜。おそらくスタッフさんって若者の方が多いと思うんですが、そこで一緒に動いてみて得たものはありますか?
片岡:ちなみに、僕は今年で42歳になります。OFTスタッフ周りはもちろん若い方がほとんどですが、様々な年齢の方が参加していることで何かひとつやりとりするだけでも、とてもいい刺激になります。ビジネスでもそうですけど、時間の共有をすればするほど年齢差を越えて仲良くなれるな〜と実感したというか。普通に仲良くなるとはちょっと違って、もうちょっと高いレベルで仲良くなるためには、どんな条件だったらできるのか?ってずっと考えてきて。イベントの日は暑いし、きついし、汗だくで。そんな中、時間を共有する中で起こる連携は、普通の環境では成し得ないものです。そういうことも肌で感じました。企業も人だし、まちも人。そう言った、明るい豊かなまちづくりのために働いてきたから。これって、誰かがやらないといけないわけで、誰かが先陣を切らないとね。そうやって先人たちも道を作ってきたんだし、やっていかないと。そんな思いです。
「OUR FAVORITE THINGS(OFT)」は今年も豪華メンツによるライブが行われる。詳細はコチラ。
―ご自身の会社の社員さんたちからの反応はどうですか?
片岡:僕が市の活動に参加することは彼らにとって直接的には関係ないですが、うちの社長、ちゃんとやってるんだ〜とか思ってくれて喜んでくれてます。
―そういえば、以前に片岡さんにお会いしたとき「会社のキャラクターを考えてる」っておっしゃっていましたよね。いつもはスーツを着てカッチリとされているのに変なこと考える人だなーと、すごく印象的でした(笑)。あれからキャラはどうなりました?
片岡:社員に「何か案出して!」って言ったら誰も出してくれなかったので嫌がらせで、僕の左利きの姉に右手で描いてもらいました。名刺にも載せてます(笑)。
謎のひよこ(?)のイラスト。本当に名刺に入ってます。
―これ!やばいですよね。ひよこですか?
片岡:ひよこみたいな謎の生物です。四コママンガもつくったんですよ。
―シュールですね(笑)。OFTのキャラクターも是非片岡さんに考えてもらいましょう。
片岡:やばいですね。一回、これをフェイスブックにあげたんです。そしたらすごい反応で。「なにこれ、意味わかんない!」みたいな。たくさんの「いいね!」と同時に批判もいただきました(笑)。賛否両論ありすぎるので、OFTのキャラ作りはやめておきましょう!(笑)
―(笑)。ではOFKにもOFTにもマーケット日和にも全体を通して関わっている、市民ボランティアのリーダー的存在とも言える長縄さん、お願いします。
長縄尚史さん
「各務原市が好き」というよりか、
市でいろんなことをやろうと動いている
「人」が好きなんですよ。(長縄)
長縄:はい、僕は普段は美容院のオーナーをやってますが、スタッフからは「もう長縄さんは各務原市役所の人間でしょ」と言われています(笑)。僕が各務原市に関わり始めたきっかけは、市制50周年記念のドラマの制作があって、それにふらっと参加したところ、監督さんがみんなを集めて「長縄くんリーダーね」って言われて。
―ご指名でリーダーに…!?
長縄:はい(笑)。そうすると性格的に嫌とは言わないもので。必然的に市民ボランティアスタッフさんをまとめるリーダーをやらせてもらいました。で、そのドラマの撮影後の市民スタッフの打ち上げに100人以上も集まったんですよね!
―うわ〜、熱い人が多いんですね〜!
長縄:そうなんです。その時、この勢いはこれで終らせてしまうのはもったいないな、と!だから、各務原の魅力を映像で伝えるチーム「FunFanMediaかかみがはら」というのをつくりました。市民スタッフのエネルギーを次に繋げるために。みんなやりたいことはあっても、何をどうしたら良いかわからなくて。「FunFanMedia」が動き出して、次に吉本興業と各務原市が映画を作るって話が来たんですね。そのときの吉本興業の人たちは普段からのチームではなく、そのプロジェクトのために寄せ集められたメンバーって感じで……だから、「FunFanMedia」が市とバランス取り合って撮影のサポートを担ったんです。そこから市役所の人とも知り合いになって、さらにどんどん発展していって、「OFT」も「OFK」も「マーケット日和」も……。さらに普段の仕事とは別で社団法人も同志たちと立ち上げて、今日の取材撮影場所になってる「KAKAMIGAHARA STAND」っていうお店までスタートしてしまった…もうあれれ、いつの間に!?って感じです(笑)。
―もう市民ボランティアスタッフの領域を超えてしまったわけですね(笑)。各務原の印象についても教えて下さい。
長縄:僕はもともと地元が各務原なので、住んでるだけの時、つまり子どもの頃はいたって普通のまちだと思ってました。けど、ちょっと大人になって見てみると見え方が変わってきて、例えば、子どもの時にあってもありがたみがわからなかった大きな都市公園とか。
大規模な都市公園「学びの森」内に誕生した「KAKAMIGAHARA STAND」。長縄さんはこちらのカフェの立ち上げメンバーとしても活躍。OFKの記事はコチラ。
長縄:駅からほど近いところに大きな公園があって自然がいっぱいあるってなんて贅沢なことなんだって思います。それは子どものときはわからなくて、親側になって初めてわかる恩恵だなと。こんな大きな公園いるか?ってくらいの巨大さで、このいい意味の無駄感、好きですね。
―長縄さん、各務原大好きですね?
長縄:それ、よく言われます(笑)。僕の中では「各務原市が好き」というよりか、各務原市でいろんなことをやろうと動いている「人」が好きなんですよ。
―さすが!リーダー的発言!ありがとうございます!長縄さんも片岡さんも本業よりも熱がこもっているようにすら感じますが、そんなお二人の先輩スタッフさんたちについて今井さんどうですか?
片岡:それ、今ここで聞いちゃう!?ディスられたらどうしよう!(笑)
長縄:思う存分、褒めてくれていいよ(笑)。
今井:(笑)。お二人ともすごくキラキラしているので単純に大人として憧れますし、僕自身にとってもすごい刺激になります!
固い握手を交わす、今井さんと片岡さん。
―最後にOFKのことに話を戻したいと思います。OFKを見ていて、きっとこれまでウェブメディアにロングインタビューが載るなんてことなかったお店がたくさん載っているな〜っていういい意味でのローカル感がバリバリ出ていて素晴らしいと思うんです。なかなかここまで細かくまちのことがフックアップされるメディアってないと思いますし、「市民の魅力を市民自らが記事にして、外に伝えるメディア」というのは、もうOFKにしかない面白さだと思います。
越智:私はOFKで3件、お店の取材をさせてもらったんですが、どちらの店主も自分の仕事を愛していて情熱とプライドを持って仕事している人たちで。そういう人が作るものはやっぱり美味しいなと改めて取材を通して実感しました!各務原市にはそういう志を持っている人たちがもっともっといるんじゃないかと思えてきます。
越智さんが取材に伺った「小町酒造株式会社」。記事の続きはコチラで。
越智:自分は外から来た人間なので、これから自分が住む場所の情報が多ければ多いほどそこに訪れる人は安心すると思いますし。私は各務原に来る前に一応、GoogleMapでスーパーとかコンビニの位置とかは調べましたけど、生活するために必要な情報はGoogleだけではもちろんわかりません。そういう意味でも、OFKというサイトがあることで、遠方から来る人たちにとっての灯台みたいになってくれたらと思うんです。
―OFT、OFKともにみなさんの各務原市愛溢れる活動スタンスが支えているんだと、改めてそのパワーを実感しました。なんかすごくうらやましくなってきちゃいます。今日はありがとうございました!
最後に4人揃っての記念撮影。みなさん、ほんと仲がいい!