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FEATURE / 特集記事 Jan 02. 2024 UP
【SPECIAL INTERVIEW】
気鋭のクリエイティブディレクター・南貴之が
「Graphpaper NAGOYA」でやりたかったこととは?
ショップマネージャー・小久保建、山本雄平(MAISONETTE Inc.)らと対談。

FEATURE:Graphpaper NAGOYA/考尺° PINQ(愛知|大須)

南貴之(Graphpaper/alpha.co.ltd)、山本雄平(考尺° PINQ/MAISONETTE Inc.)、小久保建(Graphpaper NAGOYA/J.B. Voice, Inc.)

クリエイティブディレクター・南貴之(alpha.co.ltd)が手がけた、名古屋の新たなクロスカルチャースポット「Graphpaper NAGOYA(グラフペーパー ナゴヤ)」が2023年大須に誕生した。

「Graphpaper NAGOYA」は、2階部分にアパレル部門、1階にアートブック&レコードショップ、コペンハーゲンのデザインスタジオ「FRAMA(フラマ)」のショップインショップを内包する2フロアが2023年4月28日(金)に先行してオープン。

そして、8月6日(日)には、飲食スペースとしての新たな人と文化の社交場「考尺° PINQ(以下 PINQ)」を1階奥に拡張。南が掲げる“五感を満たすコンセプトストア”というコンセプトを体現した「Graphpaper NAGOYA」は完成を迎えた。

 


Graphpaper NAGOYA 1F 内観

 

PINQ」のレセプションパーティーのタイミングで、南貴之(Graphpaper/alpha.co.ltd)「Graphpaper NAGOYA」ショップマネージャー・小久保建、「PINQ」代表・山本雄平(MAISONETTE Inc.)の3名が集結。それぞれに話を伺った。

※取材は2023年8月5日(土)に南貴之小久保建、8月6日(日)に南貴之山本雄平を迎えて実施。

 

Interview #1
南貴之(Graphpaper/alpha.co.ltd)
×
小久保建(Graphpaper NAGOYA/J.B. Voice, Inc.)


Interview & Text:Miki Murase[MAISONETTE Inc.]
Edit:Takatoshi Takebe[LIVERARY]
Photo:Kazuhiro Tsushima[TONETONE PHOTOGRAPH] 


ー「Graphpaper NAGOYA」の構想はいつからスタートされたのですか?

南貴之(以下 南):2022年の夏の終わり頃からです。そもそも「J.B. Voice, Inc.(以下  J.B.)」さんは「Graphpaper」の取り扱い店でした。J.B.さんがこの物件を借りられている流れから、名古屋店をオープンしようというお話になり、結構大きいスペースだったので、それをベースにどう組み立てるかっていうところで、僕の方でセットプランしてこの形になっている感じです。

小久保建(以下 小久保):南さんにはプライベートでもずっとかわいがっていただいていて、昔から「いつか名古屋でやってください」みたいな話がありました。それで「今回の物件を使って、ぜひお願いします」と。

ー「五感を満たすコンセプトストア」というコンセプトに基づき、どのようなイメージでコンテンツを入れられたのでしょうか?

南:五感なので、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。要は人間が持っている感覚ってあるじゃないですか。それにまつわることを基本的にはほとんどすべて網羅できたらなと。
今回は名古屋と同時に、東京・参宮橋に新しいコンセプトショップ「Graphpaper TOKYO」を作る予定があったので、そことリンクしてるっていうのが一番簡単でわかりやすい説明かなと思う。ほぼほぼ仕様としては同じ仕様になっています。
僕の考えている「Graphpaper」のショップは地域ごとに全部変えたいっていう思いがあって。京都は京都、仙台は仙台、名古屋は名古屋ならではのお店を作りたかった。ベースのコンセプトは参宮橋を軸に考えている「Graphpaper」としてのあり方みたいなところは残しつつ、名古屋にしかできないようなコンテンツとして、飲食部分だけが明確に違う方が面白いかなって思って名古屋のMAISONETTE Inc.さんにお願いしました。

 


南:まず、そもそも僕らもJ.B.さんも飲食の運営経験がないっていうのは大きな理由としてあって。僕らも東京でお店をやっていますけれども(東京店は南が考えた立ち飲みの居酒屋「寄(よせ)」が入っている)、やっぱりプロではない。そこを解決するため、地元の飲食をやっているところと取り組めた方がいいなと。
あとは僕が知らないだけかもしれないけど、なんか名古屋のお店ってすごくストイックに面白いことをやられているお店がそれぞれ点としてはあるんですけど、線や面で繋がっている印象が薄かったんです。全体感があんまり見えないというか。だから、逆に僕らみたいに外部の人間が入ることで、いろんな人たちを繋ぎやすいのかなとも思いました。
今回だったら、飲食だけでなく、本やレコードのセレクトとかも地元の書店「LIEB BOOKS」さんとレコード店hair & music parlour FAM」さんにお願いしています。もちろん運営会社のJ.B.さんも名古屋ですし、もっと言ったら飲食とかの方々の繋がりというのは、僕らよりもMAISONETTEさんの方があると思うんで、そういう人たちが繋がるハブのような場所になれたら面白いのかなっていうのが、僕が描いていたイメージです。

 

「hair & music parlour FAM」によってセレクトされたレコード売り場。国内外から集められたレコードはジャンル問わず、マニアックなものも並ぶ。「PINQ」オープン時には、ピンクのジャケットを中心にした遊び心ある提案も。


ーもともと南さんが東京で表現されている「Graphpaper」の形とは違って、地方では地元でそれぞれの取り組みをされている方と繋がりを持ってお店を作られる、と。

南:僕が東京からのつながりだけで、全部揃えてしまうこともできるとは思うんですけど、それって結局、ただ東京の人が来てなんかお店やってる、で終わっちゃう。だと、全然面白くないじゃないですか。
僕は飲食店の友人も結構多いですし、MAISONETTEの料理/企画担当・南さんも京都に飲食の友だちがいっぱいいて。南さんとは京都で出会ったんですが。そういった繋がりや出会いからやっぱりいろんなことが生まれると思っています。名古屋でお店をやるとなったら、南さんが「それでしたら、こういうお店ありますよ」っていろいろ案内してくれて、今まで知らなかったような名古屋のコアなお店だったりとか、面白いことをやっている飲食店さんたちとかと繋がることができて。音楽の方でも、現地で活動されているDJにイベント出演してもらったり。それがカルチャーだと思うので、東京から出てきて、そのまま東京!みたいなお店をやっても何も面白くない。少なくとも僕が行きたいと思う店にはならないと思ったんです。1階奥に「PINQ」さんがオープンしてやっと「Graphpaper NAGOYA」が完成を迎えました。ここから本当の理想としていた、それぞれの魅力が合わさって、相乗効果が生まれるといいなと思います。

 

南慎一(MAISONETTE Inc.)が立つキッチンの小窓から料理の香りや温度感が伝わり、会話もできる造りになっている。「PINQ」の店舗デザイン・施工は、名古屋の「THE DAY STACK co.,ltd」が担当。

 

ー飲食店「PINQ」が中に入ることについては、どういう効果を期待されますか?

南:まず、服とか物を買わなきゃ来れないお店ではなくなりますよね。なんか、物を買わないといけない場所って行きづらくないですか。一般的に考えて、服を買うとか物を買うとか以外の要素として、やっぱり飲食があることで、来店動機として強いなって思いますし、より人と人のコミュニケーションを繋げる場所にお店全体もなるのかなって。

 

「PINQ」は、カウンターとテーブル合わせて10席ほどのサイズ感。昼から飲める、まるで“小さな秘密クラブ”だ。貸切や立ち飲みにも対応し、人それぞれのタイミングやスタイルで利用できる。


南:「洋服だけ好きなんです」っていう人だけ来られても少し違うな、と。やっぱりすべてのカルチャーは繋がっていて、他の要素との繋がりっていうのを持ちたいのが僕が思ってることで、その上で洋服も見てもらえて、気に入って買っていただけたら嬉しいですし、「FRAMA」のインテリアやフレグランスもそうだし、レコードやアートブックだったりとかにも触れてもらって、知らなかったことを知ってもらえたら、それはすごく良い体験になると思うんです。


ー小久保さん(J.B.)はファッションというジャンルがメインかと思いますが、今回「Graphpaper NAGOYA」というコンセプトストアを形にしていく中で感じられたことはありますか?

小久保:南さんは本当にお友だちが多いんですよ。イベントとかお仕事で来られるときも、ただ遊びに来てるんじゃないかな?って思ってしまうぐらい飲み歩いてて、でもその結果いっぱいいろんな知り合いを増やしていく。
MAISONETTEの南さんとの出会いも飲み友達になってからですし、意外と僕の周りでもいろいろ知り合いの方はいたんですけど、その人たちを繋げるっていうことはあんまり僕も考えてなかったんです。言い方悪いですけど、南さんは地方に行って飲みまくっているだけじゃないんだなって(笑)。本気で遊んでるんですよね。なんか狙ってやってないから、みんなもついてくる、というか。そういう人だからこそみんなが寄ってきて、「南さんがやるなら、何か一緒にやりたい」っていう声が集まるんだな、と思いましたね。本当にそれを店として形にしちゃうっていうのを見ることができてすごく楽しかったです。しかも、立て続けに「Graphpaper NAGOYA」「Graphpaper TOKYO」を2カ月でオープンされて、本当にいろいろ驚かされました。他のブランドさん、ディレクターさんのやり方と全然違う。本当にできるのかな?って不安になるんですよね。それがすごい面白いんですよ。

 

 

南:大変でしたけど、楽しさがギリギリ勝ちました(笑)。名古屋の人に対する僕のイメージを言うと、多分みんな遊んでない感じがする。本当にいい意味で勤勉な日本人みたいな方々が多いイメージ。みんな働いてますよね。僕はすぐ飲みに行っちゃうんで。

ー(笑)。

小久保:南さんはいろんな声を取り入れて、作っていくのが印象的でした。他のデザイナーさんとかブランドさんは、結構しっかり緻密に設計図を書かれて、そこから組み立てていくんですけど、南さんは設計図いらない、あれ持ってこい、これ持ってこいみたいな感じ(笑)。それにはうちの社長もびっくりしてました。

 



南:
この店、本当に完成できるのかな?って僕自身も本当にちょっと思ったけど、「PINQ」さんがなかったら、僕の絵は完成していなかったんで。南さんもすごい頑張ってくれたし、MAISONETTEさん様様ですよ。あと、「LIEB BOOKS」さんっていう本屋さんは、もともと仲良くしていた東京の書店「twelvebooks」濱中さんが「名古屋だったらLIEB BOOKSがいいと思うよ」って紹介してくれて。
で、愛知県のアーティストさんって結構かっこいい人が多いんですよね。80年代、90年代とか特にやばくて。その辺りの人たちの本を「LIEB BOOKS」さんが集めてくれています。愛知の作家さんは実際僕も知らなかったんですけど、河原温さんや庄司達さんとか有名なところだとそんな感じのラインナップで。「LIEB BOOKS」さんによる古書、「twelvebooks」による新書のミックスになってます。

 

 

ー現状「Graphpaper NAGOYA」には、どんなお客様がいらっしゃってますか?

南:若い方で愛知の作家のこともみんな知らないっていうような方とかが、うちに置いてある本で興味を持ってもらって、「面白いですね、これ買ってみます」みたいな流れがすごくたくさんありました。「Graphpaper NAGOYA」ではカルチャー的なことをきちんと何かやっていきたいと思っていたのですが、意外とみんな欲しているんだっていう気づきというか、嬉しい反応でしたね。

小久保:店のオープンがコロナの収束したタイミングとばっちりあったっていうのもあるんですけど、面白いのが外国人のお客様がすごく多いのと、おじいちゃんおばあちゃんも「これはなんやねん」って言って入って来られます。若い10代の子とか、いろんなジャンルや年齢の人たちが集まってくれてますね。

ー県外からカルチャー系の物事が好きな人が来たときに、おいしいご飯屋さんとかはいくらでもあるんですけど、「何か面白い店を教えて」って言われると結構困ることがあります。まさにこういう「Graphpaper NAGOYA」のような複合的なお店は名古屋にはまだ少なくて、だからこういうお店ができたことはこの街にとってもすごくいいなって思いました。

南:僕も最初は名古屋でどこに行けばいいんだろう?って感じでしたね。店をやればわかるだろうと。やってみたら、面白い人たちがやっぱりいるんだってわかったんです。うちで取り扱わせてもらっているレコード屋も、本屋もそうだけど、個々にはすごいお店がありますよね。面白いお店をひとつ見つけると、その周りにちゃんと面白そうな仲間たちがいるんですよね。ひとつ繋がるとそこからもダダダって繋がっていって、また別んとこ行くと、またそこで繋がるっていうようなことがよくありました。
そういうのは南さんとかが結構いろいろ紹介してくれて、飲み屋とかもそうですけど、さっき話した「LIEB BOOKS」さんの存在も僕は知らなかったし。名古屋も結構面白いお店だったり、カルチャーをちゃんと伝えようとしているお店もあるじゃん!って知ることができました。
ファッションの人、音楽の人、飲食の人とかってジャンルごとに分かれてしまうのではなく、コミュニティを横断できるような、本当にどんな人でもクロスするような場所がなかなか名古屋にはないと感じていたので、そういう場所にここがなっていけばいいなと思います。

 

Interview #2
南貴之(Graphpaper/alpha.co.ltd)
×
山本雄平(考尺° PINQ/MAISONETTE Inc.

Interview, Text & Edit :Miki Murase[MAISONETTE Inc.]
Edit:Takatoshi Takebe[LIVERARY]
Photo:Kazuhiro Tsushima[TONETONE PHOTOGRAPH] 

8月5日(土)「PINQ」のレセプションパーティーの様子 撮影:MAISONETTE Inc.

 

ー「PINQ」のレセプションパーティーはいかがでしたか?

南:すごく良い会でしたよね。J.B.さんにも言ったんですけど、「名古屋におしゃれなお客さんいるじゃん」って。さすがやっぱりおしゃれな飲食の人たちの集まりはこうやってちゃんとなるんだなと思って。全然、洋服屋さんよりおしゃれな人が多いくらいに思えました。

山本雄平(以下 山本):うちのお店にいつも来られるお客様も結構来られたんですけど、やっぱりここに来るっていうことで、結構皆さんがちゃんとおしゃれして来てくれた感じがありました。僕は大学の講師もしているんですけど、その大学の事務の方がドレスアップした普段と違う感じで来てくださって、声を掛けられたとき、「誰?!」って思っちゃったくらいキラキラしていました。

南:コロナもあって、おしゃれして出かけることって最近はあまりなかったじゃないですか。そういう機会が作れたことはいいですね。やっぱりイベントとかで定期的にやるのがいいかなと。そうすると、結構皆さんが好きな服を着てわざわざ行く目的によって、せっかく支度して家を出たから他のところにも行ってみようっていうことになる。家にこもりがちになってしまった人たちみんなを、もう1回ちょっと外へ出さないとだめですよね。これはすごく感じました。

山本:皆さんに「刺激的な時間だった」というご感想や「また改めて来ます」というお声もいただきました。この場所で、僕らがこういうのをやったら面白いなと何か思われることはありますか?

南:ご存知の通り、ここのお店で僕はスピーカーの音ばかり気にしていましたが、音楽のイベントはいいのかなと思っています。すごい踊らせるようなことじゃなくてもいいので、また今日のパーティーのような感じで、みんなが来て飲んで楽しくできるような場作り、と言うかシーンを作るみたいなことを定期的にやっていけたら面白いのかなっていうのは思いました。

 


DJブースを「PINQ」店内に常設。レセプションパーティーでは「hair & music parlour FAM」店主のDJ ton(写真)やYoshimRIOTら地元DJ陣が音楽で盛り上げた。


南:
そうすると、みんなが行こうかなとか、あそこは何か面白いらしいとか、あとは知らない人同士が知り合うきっかけになったりとか。僕の仲間は東京や京都、いろんな地域の人たちもいるんで、そういう人たちが集まったり、コラボレーションしてもらったり。何かそういうことで、新たなハブになれたら一番面白いなって思います。東京と名古屋を繋ぐみたいな、「寄」を「PINQ」さんに呼んだり、逆に「PINQ」さんが「寄」に出してもらったりってのもやりたい。

山本:相互関係ですね。それはやりたいな。

南:そうすると、現場のキッチンは助かるんだよな。休ませられるんですよね。

山本:その気持ちもわかります。「寄」さんでは何かイベントを企画されていますか?

南:クニモンド瀧口さん(流線形/CMT)のシティー・ミュージックのリリースパーティーですね。そういうのとかも本当だったら、名古屋でやっても面白かったんですけど、スケジュールが直近すぎて。僕らもまだバタバタしますけど、飲食店って大変なんだなと思います。まともに普通に運営していくのがこんなにも気を揉むのかと。東京の店で飲食店はやったことがないもんだから、オープンのときは全然寝つけなかったですよ。店を作るときに、初めて結構プレッシャーを感じましたね。洋服屋は慣れていたんで、刺激があってちょうど良かったです。

山本:やっぱり違いますか?アパレルと飲食とでは。

南:例えば、洋服のお店の場合は僕ももう何十年もやっているんで、自分ができることはもちろんあるんですけど、それが飲食店だと全然何にも役に立たないので。自分自身が手伝えることがないし、すごく不安でした。かと言って、僕が店で酒作ってるのも多分みんな嫌だろうし(笑)。

山本:それはそれで楽しそうです。「スナック南」とかやってほしいですよ。

南:マイク繋げて歌っちゃいますよ。J.B.さんがよければ全然良いです。

山本:本当は僕らもカラオケ入れたかったんですよ。さすがに防音までは無理だなって諦めてしまったんですが。「スナック南」でカラオケ大会やりたいすね。

南:(笑)。

ー「Graphpaper Tokyo」の「寄」と、「Graphpaper Nagoya」の「PINQ」では、また全然雰囲気が違う飲食店が入っているというのも面白いですよね。形になった「PINQ」をご覧になっていかがですか。

南:最初に僕がやろうって言ってた喫茶店っていう起点から、音楽などのカルチャー的な要素も入れたいっていう意図も汲んでくれたんだろうなって感じました。あと、ワインのセレクトがやばすぎてびっくり。

山本:今後は酒販免許も取って、2階で服買って、1階でワイン買って帰るみたいなこともできるようにしたいなっていうのは考えていることの一つです。

 


ー今回、協働することになった「MAISONETTE」の印象について教えてください。

南:僕は結構、意思疎通がスムーズで助かりましたね。本当にゴリゴリの飲食の人だったら、多分喧嘩しちゃうでしょうね(笑)。不安になっちゃってしょうがないから、図面も都度確認するとか。もともとデザインの感覚的に、飲食だけどファッションとかカルチャー的な文脈をわかっていただいている会社さんだったので、かなりお任せしちゃったというか。こんなに何も言わなくて大丈夫かなっていうくらいでした。

山本:お任せスタイルというプレッシャーしかない中で、南さんの世界観と「MAISONETTE」の世界観の双方をうまく落とし込めたのかなと。一番最初に僕がお会いしたときにもお話ししましたが、南さんの世界観が全部になっちゃうと僕らがやる意味がなくなってしまうので、せっかくご一緒するので、イベントとかも何か一緒に定期的にやれたら面白いなって。

 


山本:僕はもともと「Graphpaper」のことが好きで、それこそ「寄」さんも、南さんが手掛けられたいろんなものを見たりしてきました。そういう知識や経験を素直に自分の中で落とし込んで、僕が「alpha」さんの一員だったらどういう店をやるかなっていうアウトプットの仕方です。名古屋っていうまちでやるなら、せっかくなのでなるべく食材も石材とかも近郊エリアから集めて。このエリアでやる意味を、ということは意識しました。レセプションには東海エリアの作家さんたちにも大勢来ていただきましたし。関係値のあるいろんな作家さんにお願いして、割と近い人とお店を作っていくことができると面白いかなと思います。


南:そういうのは大賛成。

山本:イベントも今後はできれば何か複合的なことをやっていけたら、と。音響やレコードをやっていただいてる方とかもみんな面白い繋がりがあるので、そこから派生していったりするのも面白いかなって。点だけだとなんか面白くない印象になっちゃうけど、点と点がどんどん繋がって、そこから面にまで広がっていくきっかけを生む場になりたいですよね。「MAISONETTE」の新店舗っていうだけだったら来ない人たちも、「Graphpaper」さんだからレセプションに来てくれたっていう人たちがいて。それこそ普段僕らとは点でしか繋がっていない人たちがちゃんと顔を出してくれるっていうのが結構あったので、すごい嬉しかったです。

 



南:
僕らは名古屋にとっては外側の人間なので、このエリアで一緒に商売をしているもの同士ではないからこそ、そもそもの関係性とか関係値とかもあんまり知らない。だから、人と人を繋げやすいのかも。相手側も気が楽だと思うんですよ。

山本:なんとなく「Graphpaper」さんの場をうまく使って、いつの間にか今まであんまり付き合いなかったけど、みんなが全体として繋がるきっかけみたいなのがちゃんと生まれてくると良いのかなって。

 
ー「PINQ」のレセプションパーティーのメニューには「味噌カツ」などもありました。南さん、お味の方はいかがでしたか?

 


南:
美味しくいただきましたよ。みんな喜んで食べたり飲んだりしててね。お酒も進むし、おしゃれな料理だなって。僕らの「寄」にはない感じで、ちょっと嫉妬しちゃうくらいでした(笑)。

山本:今回初めて「名古屋名物」と呼ばれるものにもちょっと手を出したんですよ。それを名古屋の味として変に押し出しているつもりもなくて。僕たちが手がける料理のひとつとして提供しているスタンスです。

南:きしめんも出されていましたよね。豆乳だしの。あれもおいしかったです。名古屋名物をアップデートしていこうと意図してるんだなと思いました。

山本:名古屋名物=B級グルメとか、世の中的にはちょっとネタっぽく扱われがちで。せっかく飲食業をやっているなら「名古屋名物おいしいよね」って言われたいじゃないですか。名古屋名物にこだわりたいわけじゃないんですけど、最近それが楽しくなってきて。味噌カツ、きしめんの次には、僕が好きな台湾ラーメン、ういろうも考えています。できたてのういろうってめちゃくちゃおいしいんですよ。蒸して作るんですけど、わらび餅と同じくらいモチモチしているんです。それを作家さんの器で提供すると面白いかなって。

南:なるほど。ちなみに、僕はういろう苦手です(笑)。

山本:では、南さんがういろうを好きになれるように頑張らせてもらいます!(笑)。


写真左→右
小久保建Graphpaper NAGOYA/J.B. Voice, Inc.
1987年生まれ。岐阜県出身。専門学校卒業後、2008年「J.B. Voice, Inc.」入社。名古屋市中区大須 MICOWBER」で販売、発注、インショップ企画などを担当。N.HOOLYWOOD NAGOYA、FACTOTUM NAGOYA、BEDWIN & THE HEARTBREAKERS IN NAGOYA、GOLDKISSの4店舗を複合した店舗「JACK IN THE BOX」の2011年オープンから勤務、数年後ショップマネージャーへ。2023年「Graphpaper NAGOYA」のショップマネージャーを兼任。

南貴之/Graphpaper/alpha.co.ltd
1976年名古屋市生まれ、千葉県で幼少期を過ごす。1996年「H.P.FRANCE」入社。CANNABISなどの業態を立ち上げ、2008年「alpha.co.ltd」設立。クリエイティブディレクターとして、Graphpaper、FreshService®、OGAWA COFFEE LABORATORYなど様々なブランドやショップのディレクションを行う。2023年「Graphpaper NAGOYA」に続き、東京初となるGraphpaperのブランドショップを含めた3つの新たなショップを参宮橋に開店。角打ちスタンド「寄 (よせ)」、新レーベルの「Vektor shop®(ベクターショップ)」などファッションのみならず、食やカルチャーにまつわるあらゆる領域を手がける。

山本雄平考尺° PINQ/MAISONETTE Inc.
1980年生まれ。名古屋市出身。料理人・アパレル・カメラアシスタント・インテリアコーディネーター・食器販売・デザインアシスタントなどを経て、2007年独立しフリーランスのスタイリスト/クリエイティブディレクターへ。2010年、食とクリエイティブの会社「MAISONETTE Inc.」設立。「TT” a Little Knowledge Store」「Maison YWE」「考尺° PINQ」をはじめ、これまでに名古屋で20店舗(期間限定ショップを含む)を展開し、東京「Sta.」のフードプロデュースにも携わる。DJ、自社農園の野菜作り、椙山女学園大学や愛知淑徳大学などで講師も務める。

 

SHOP INFO:

Graphpaper NAGOYA
住所:愛知県名古屋市中区大須 2-6-15
営業時間:12:00~20:00
TEL:052-228-3900
https://graphpaper-nagoya.com/

考尺° PINQ
住所:愛知県名古屋市中区大須2-6-15 Graphpaper NAGOYA 1F 奥
営業時間:12:00~20:00
TEL:070-9139-1916
https://peopleinq.jp/

 

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