地元・岐阜でバンドを結成し、後に名古屋に拠点を移動。みるみるうちに頭角を表し、人気バンドと化したcinema staff(シネマスタッフ)。当時から国内インディーズシーンにおける成功例として注目を集めていたレーベル「残響record」からのリリース作がさらに彼らを飛躍させ、2012年に「ポニーキャニオン」から遂にメジャ―デビュー。昨年は、アニメ『進撃の巨人』のタイアップソングなどもリリースし、大型フェスにもほぼレギュラーで出演……。ますます大きく成長していったcinema staffだが、彼らはこれまでも東京に移住した現在もずっと、自分たちが育った地元との関係性を大切に、名古屋や、地元・岐阜のバンドたちとの交流を絶やすことなく邁進し続けている。この特異なスタンスを貫いてきたのは彼らの活動において特筆すべき点だろう。
そんなcinema staffのメンバーの中で、多くのバンドマンや音楽関係者、そしてファンたちからも愛されてやまないバンドの大きな個性となっているのが、辻友貴(Gt.)。彼が大学時代から足しげく通い、今でも名古屋近辺でのライブがある度に立ち寄っているレコード店、それがstiff slackだった。
stiff slack(通称:ss)は、ハ―ドコア/エモ/マスロック/ポストロックなどの音楽ジャンルに精通した店主・新川拓哉による個人経営のレコ―ド店。独自のセレクトを展開する店舗経営とともに、同名義のレーベルも運営。すでに10周年を迎え、これまで多数の海外ア―ティストのリリ―スや招聘ツア―を企画し、その審美眼は確固たる存在証明をシーンに示してきた。toeやLITEといった国内外で活躍するア―ティストとも親交が深く、全国にssファンは数多く点在する、カリスマ化されたssブランドを築いてきた。
そんな新川さんは、元々バンドマンとしても活躍していた経歴を持つ。彼が新たにスタ―トさせたバンド・kmkms(キメキメス)と、一方、辻くんがcinema staffとは別名義で始めた新バンド・peelingwards(ピ―リングワ―ズ)。この2つが、2014年12月10日にSplit 7inchをノリでリリ―スしたことがきっかけとなって今回の対談は実現した。
相思相愛?はたまた師弟関係? 干支ひとまわり以上年の離れた2人の関係性とは? 各々が音楽に関わっていくうえでの信念、そこから生じる日々の葛藤…といった意外なまでに真面目なお話まで、包み隠さず語ってもらいました。
SPECIAL INTERVIEW WITH
Tomotaka Tsuji [ cinema staff , peelingwards , 残響SHOP , LIKE A FOOL RECORDS ]
Takuya Shinkawa[ stiff slack , kmkms , slavedriver ]
PROFILE:
辻友貴
岐阜出身。都内在住。2003年よりバンド活動をスタート。現在は、cinema staffでの活動を軸に、新バンドpeelingwardsも稼働中。時に狂気的とも思える、彼のエモーショナルなステージングは圧巻の一言。残響recordが運営するレコード店「残響shop」店長、レーベル「LIKE A FOOL RECORDS」主宰。(写真はcinema staff)
新川拓哉
名古屋市栄でレコード店兼レーベル「stiffslack」を主宰・運営。kmkms、slavedriverの2バンドでも活動中。まもなくレーベル通番100タイトルを迎えるという。こちらの記念すべき100番目のリリース作品についてはまだ口外できないがお楽しみに!とのこと。http://www.stiffslack.com/
―いつぐらいから二人の交流が始まったんですか?
新川:最初、いつ店に来たのかは知らなくって。どうやらcinema staffのメンバ―がうちに来てるらしい…みたいな(笑)。で、いつしか何かのきっかけで、話始めたんだよね。
辻:初めてssに行ったのは、軽音サ―クルの先輩に教えてもらったのがきっかけで。で、絶対、CD渡したくなかったですね…新川さん、すっげえ怖かったんで(笑)。
—(笑)。
辻:で、新川さんと話すようになる前に、ClimbTheMind(ssからのリリ―スバンド。ちなみにClimbTheMindとは、cinema staffが過去にツ―マンなども企画していた)の曲をシネマのSEでかけてたんすよね。
新川:いやいや、その前に、URTHONA(こちらもssからのリリ―スバンド)でしょw なんか人気者のバンドが、SEでURTHONA使ってるらしいよ、みたいな話が聞こえてきてw
―新川さんから見て、cinema staffってどうなんですか?どういう風に見てるんですか?
新川:ん~、まあ割り切ってやってんのかなって思ってるよ。
―売れるために?
辻:売れたいっすね。バランスとるのは難しいですけど…。
新川:音楽でメシが食えるようになりたいって話は、前から聞いてて、辻くんだけじゃなくて、三島君(cinema staffのBa)のとかも、残響recordとサインするか?ってときとかも相談しにきてくれたし。
―新川さんは、そのとき何って答えたんですか?
新川:プロとしてやっていくなら、いいんじゃない?って。でも、なんかキウイロ―ルとかも好きなんで…って(笑)。だから、そういうインディ―で続けていくことのかっこよさみたいなのにも憧れがあるってのもわかってたけど。
―プロとしてやっていくための音楽がcinema staffだとして、peelingwardsはやっぱりその中で生まれた葛藤とかに対する反動的な?
辻:それもありますけど、cinema staffではできない方向性のバンドもやりたかったってのがありますね。結成したいきさつは、たまたま、今のplentyのドラムが同じスタジオに入っていて、彼その時サポ―トバンドしかやってなくて、そこで意気投合してなんか別のバンドを一緒にやろうか、ってなったことですね。曲は、基本的に僕がリフを持って来て、みんなで合わせて作ってくことが多いですね。歌は、三島(cinema staffのBa)です。
―ちなみに、このkmkmsとのスプリットを出すに至った経緯は?
新川:ノリでしょ!(笑)
辻:そうっすね(笑)。まだkmkmsがライブとかやる前から決まってましたからね。新川さんが、新しいバンド組んだって話をしていて、じゃあそのバンドと僕らのバンドで、スプリット出しましょうよ?!みたいな感じでしたね…。もちろん、音も知らない状態でした。そのときは…。
—kmkmsの結成秘話を聞かして下さい。
新川:もう、それもノリだよね。
森:ノリでしかないっすね。
新川:最初はドラムの子と、僕でHELLAみたいな2人組のバンドやろうと思ってたんだよね(笑)。で、まあ、たまたま店にきてた渉君にバンドの話したら、「僕もやるっす」みたいな感じで加入することになって、スタジオ入ることになって。東山の246スタジオに入ったんだけど、そこにちょうど、山影君がいて。いてっていうかスタジオのスタッフなんだけど。で、「おい!山影~今、暇?」って聞いて、「ひまっちゃ暇ですけど(笑)」ってなって。4人でセッションしたんだよね?
森:そしたらけっこうそれがよかったんすよね。で、歌が欲しいって話になって。じゃあこの中で誰が唄う?みたいになって。この中にはいないな〜ってなって、新川さんが寺田さんがいいかもってつって、また呼んで…今のメンバーになりましたね。
―辻くんはkmkmsに対して、どう思ってるんですか?
辻:最初のライブ観た時は酔っぱらってたんであれすけど、ただただかっこいいって記憶だけは残りました。あと、意外といないな~って思うんでよね。
―意外といえば、僕はpeelingwardsの音楽性はかなり意外でした。辻くんが全然、細かいことしてない!って。
辻:細かいリフみたいなのは、シネマでやっちゃってるんで。ほんと、展開とかほとんどなくしてシンプルに…って感じで。
新川:いさぎいいよね。展開1つ、2つしかないよね?(笑)
辻:最初から2展開だけで曲を作ろうっていう、縛りを作ってスタジオ入ったんすよね…。These Arms Are Snakesみたいなのを目指してます。
新川:ジャンル分けは難しいけど、マスロック寄りのオルタナって感じかな。
辻:僕とかって、音楽の最初の入口がハ―ドコアとかじゃないんで、やっぱりどうしてもポップな要素が出てきてしまうっていうか。むしろそういうポップの要素も取り入れたハ―ドコアをやりたいかな、って思います。
―今作は7インチで、辻くんが始めたレ―ベル「LIKE A FOOL RECORDS」(http://lafrec.tumblr.com/)からのリリ―スなんですが。2人にとって、7インチの魅力とはどんなところですか?
新川:7インチって、“とりあえず感“があるじゃん。曲も1、2曲あればリリ―スできちゃうていうか。やっぱノリなんだよね、7インチって。10インチとか12インチとかだとやっぱり気軽に出せない。ちゃんと作らなきゃというか、アルバムになってしまうから。
辻:あと、買いやすいんですよね、価格帯的にも。たぶん、僕がやってる「残響ショップ」にも買いにきてくれるシネマのファンの人たちも居ると思うんですけど、レコ―ドっていう文化に浸ってない人たちでも手を出しやすいフォ―マットが7インチかなって思います。あと、女の子的には「このサイズ感、超かわいい~♡」みたいな(笑)。
新川:そんな解釈あるんだ(笑)。
―ちなみに、cinema staffは仲いいの?一緒に遊んだりも?
辻:いや、遊んだりはしないっすけど(笑)。でも、仲いい方だと思います。共通の知り合いとかも多いし、みんなで飲んだりするし、家も近いんで、行く居酒屋とかいっしょだったり(笑)。
新川:シネマは仲いいと思うよ。大概、もっとギスギスするもんだよ、メジャ―いってバンドが仕事ってなると。
辻:シネマは考えて考えて曲を作る楽しみがあって。Peelingwardsは、瞬発的な音づくりでやれるっていう違う楽しみがあるかなって思います。
―では、ちょっと質問を変えて…。辻くんはバンドで、新川さんはレコ―ド店で、それぞれ好きなことで食っていく、という意味では同じ考えだと思うんですが、「好きなこと=商売」にしちゃうって、何かと障壁があると思うんですが、そこら辺はどうやっていってるんですか?
新川:まあ、うちはなんとかやっていけてるって感じかな。でも、たまにヤバい波が3ヶ月に一回くらいのペ―スで襲いかかってくるんだけど、ちなみに今月はそのヤバい時期(笑)。
―(笑)。
新川:けっこう笑えないくらいヤバいんだけど(苦笑)。でも、まあ、前提として「好きなこと」だからね。だからこそ、そこは耐えられるんだと思う。
―そういう苦しいときに、何か他に仕事をしながらでも、例えばバイトとかしながらでも続けようって考えたりもするんですか?
新川:そういう考えはないかな。ボロ儲けしてやろうとかもないし。家族を養っていける分くらいの生業がたてばいいかなって思う。
―そんな新川さんをやはり辻くんはリスペクトしてるんですか?
辻:本当に新川さんはリスペクトしてますね。
新川:言わされてる感(笑)
辻:いやいや、当然してますよ(笑)。ss通ってたりする中で、自分もレ―ベルをやりたい、とかレコ―ド屋やりたいって思いが出てきたと思います。で、実際に今、ラッキ―なことに「残響SHOP」ってレコ屋をやらせてもらってるわけですけど。ただ、ここと同じような感じの店にしすぎちゃったらダメかな~とも思いますし。残響レコ―ドの流れとか、自分がメジャ―で音楽やってるとか、そういう自分の立場もうまく利用して、おもしろい感じにしたいな~って思ってます。そのバランスがすごく難しいですけど。
新川:え、でも誰かが、残響ショップ行って「ssの支店ができた~」って言ってたよ(笑)
―(笑)
辻:やっぱssに置いてあるモノは好きですし、まず店をやるうえで抑えておきたかったんで(笑)。その上で、どう色をつけていこうか、みたいな段階ですね。
―そこのお店はお酒とか出してないの?
辻:今のところは…。でも、後々そういうのもやっていきたいなって思いますね。
―それ、またssとやり方、被っちゃうんじゃん(笑)
(一同笑)
新川:でも、お客さんは結構来てるんだよね?売上も伸びてるんでしょ。
辻:まあ、場所が渋谷なんで。でも、賃料も高いですし、大変ですね。
新川:「いらっしゃいませ」とか言ってるの?
辻:言いますね。
新川:俺、言わんよ。
—(笑)。
辻:そうですよね。FLAKE RECORDS(大阪のレコード店)も言わないですよね。いろんなレコ屋いくんですけど、大体みんなレコ屋店主って無愛想ですよね。
新川:「いらっしゃいませ」は言わないのがセオリ―でしょ。「え、聴きたいモノ探しにきてるんでしょ?」みたいな。
―そういうスタンスっていうか、それって誰かを手本にしてたりとかするんですか?
新川:昔からレコ屋とか客で行ってるけど、「いらっしゃいませ」言われたことないし。なんかパンクスの怖いお兄ちゃんに観られてるな~っとかって視線感じながら、ドキドキしながらレコ―ド掘るみたいな。
―店の運営の仕方とかってのは、ss立ち上げる前に働いていた「円盤屋」でノウハウ学んだって感じですか?
新川:円盤屋のときも上司とかみんな「いらっしゃいませ」言ってなかったし。
―「いらっしゃいませ」の話はもういいっすよ(笑)。
新川:いや、そこが重要だから。経営のノウハウっていうか、「いらっしゃいませ」言うか、言わないかだから(笑)。でも、最近、売上が悪いときとか、「いらっしゃいませ」って言っちゃうんだよね。でもめっちゃ小さいけど、声。
(一同笑)
辻:僕も最初、「いらっしゃいませ」言いたくないって思ってたんですけど、自分のキャラ的にもうオ―プンな感じで知られちゃってるのもあって、いきなりレコ屋に立った瞬間に無愛想にできない自分もあって…(笑)。
新川:でも、やっぱ「いらっしゃいませ」は言わない。絶対。
―ssとかってやっぱりコアなお客さんが多いんですよね?そういう人たちってでも全体で言ったらマイノリティだと思うんですけど、その分母をもっと大きくしたいなってのはあるんですか?
新川:それは常々思ってるよ。だけど、まず、うちとかだったら雑居ビルの4Fでひっそりとやっていて、普通、入りづらいよね。でも、そこは受け身にならざるを得ないっていうか。店側があまりに前に出過ぎると、なんか嘘くさいじゃん。こっちは待つしかないんだよね。もちろん、品揃えは自信もってやってるから、そこを信じて続けていくしかないよね。
―なるほど。
新川:そういう意味でもバンドをやり始められたことはよかったかな。アプロ―チをかける、ひとつのチャンネルにもなったし。30代は店を維持させることで精一杯だったから。ずっとやりたかったけど、バンドどころではなかったから。まあ、でもこのスプリットはうちと、残響ショップで売りまくるから。売れると思うよ。B面(kmkms)は聞いてもらえんかもしれんけど(笑)
辻:怖いですけどね。僕らのも聞いてもらえるか?って。
―怖いって言うのは、シネマのファンに伝わらなかったら?ってこと。それとも、cinema staff知らない人が聞いてどういうリアクションがくるか?とか?
辻:そうですね。どっちかって言うと、cinema staffっていう情報は抜きにして、いろんな人に聞いてもらいたいんで。だから、全然知らずに、普通に音楽好きな人とかたまたま聞いてくれたときに、かっこいいって思ってくれるのか?そのリアルな反応が気になりますね。だから事前情報で「cinema staffのメンバ―がやってる別の音楽」っていう耳で聞いてもらいたくないっていうか…。
新川:kmkms聞きたくて買った人が、A面も聴いて、なんかヒリヒリしてんな~、何だろこのバンド?え、cinema staffの人がやってるんだ~へ~、みたいな順番がいいんでしょ?
辻:そうです。そうです。そうすると、シネマやってる意味もより出てくるかなって。
―kmkmsもしくはssのお客さん、peelingwardsもしくはcinema staffのファン、それぞれが新しい音楽との出会いにも繋がる一枚ってことですかね。ちなみに、新しい音楽との出会いって未だにありますか?
新川:本当に新しい音楽とかってのは、もう実際ないから。ずっと脈々とつながってて、その流れの中でたまたま新しいム―ヴメントとされる音楽になったりして。偶然うちの置いてある音楽がその系譜に乗っていたりしてるだけだったりする。それは、うれしいことでもあるけどね。なんかエモのリヴァイバルとかも、僕としては「今、来てるな~」とか思って入れてるとかじゃないから。ずっと普通に連絡とかしてたバンドが知らないうちにそういう波が来てて、そこに該当してたっていうか。後から、今、エモのリヴァイバルが来てる!みたいなのを知って、ああそうなんだ、みたいな感じで。でも、まあそれは無意識のアンテナっていうか。でもお客さんは今の時代の音楽とかを聞いている子たちで、そういう子たちにとっても刺激的なものと思ってくれるモノを扱ってないと、お客さんもついてきてはくれないだろうし。
―stiff slackは、その独自のアンテナで直感的に、偶然にも時代性とフィットしてきた?
新川:いや、まあ流れだよ。だいたい10年周期でム―ヴメントって来ると思うし。90年代エモが流行って、2000年代でその流れは一旦止まっちゃったんだけど。2010年、2011年くらいに「おや?」と思ってたら、PitchforkとかでもエモがNEXT WAVEみたいな感じで取り上げられたりして。なんかきてるな~みたいな。それこそ、ちょっと前は、グランジリヴァイヴァルみたいな波もあったし。なんか基本、10年周期でぐるぐるまわってるんだよね。自分は、20年くらいいるからこのレコ―ド店の業界に。なんか意識はしてなかったけど、待ち構えてるみたいな感覚はあったかな。
―次は何が来るんですか?
新川:次は、ていうか、今もう来てるけど、シュ―ゲイザ―かな。でも、もうほんとに音楽のジャンルなんてのは、出尽くしてちゃってると思うから、繰り返しではあると思う。
—時代は巡るっていう話でしたが、国内でいうところのメジャーシーンで、例えば「くるり」みたいなポジションになりえそうなバンドとかがまた出てくるとかってあるんですかね…。辻くんが、実際メジャーフィールドで活動していて感じることはありますか?
辻:自分たちの近しいところには理想的なバンドはいないっすね。くるりとかアジカンが自分たちがリスペクトする音楽をより広めたり、次の世代に繋いで行こうとする活動には憧れています。ただ、その2バンド以降、そういった活動をしているバンドってあまりいないと思いますし、僕が一番好きなシ―ンがUSエモ、ハ―ドコアとかなんでそこのシ―ンだったらシネマらしさが出せるんじゃないかと思って。
—くるりも、ディスメン(The Dismemberment Plan)とかともツア―したりしてたよね。この際、海外ア―ティストを呼ぶとかそういう話じゃなくて、もう全く新しいことやった方がいいんじゃないですか?
辻:思いついたら電話してくれませんか?(笑)
—新しい試み……あ、どっかの雑誌に企画を持ち込んで、今回の対談みたいな感じで、いろんな先輩バンドに辻君が教えを説いてもらいに行く…とか?
森:「僕ら、どうしたら売れますかね?」って。
辻:怖い、それ。(笑)
—新川さんはいますか?あの人たちはうまいことやってる、みたいな。
新川:LOSTAGEはすごいと思うよ。自分たちでやっていってるし、レコ屋(THROAT RECORDS)をやってるっていう共通点もあるし、やっぱり考え方も近い。売れることが二の次のようなスタンスだし。何かしらを犠牲にはしてるよね。
—森君はどう?
森:そういう見方で言うと、OGRE YOU ASSHOLEとか。
辻:オーガはすごいっすね。
新川:ライブも見てても圧巻だよね。
森:音楽的にも評価され、長野で生活しながらマイペースに音楽やってて。
辻:ああいうスタンスは理想的かもしれないです。
—国内ア―ティストではかなり特殊な立ち位置だよね。じゃあ、その…もしcinema staffが理想の位置に立てなかったら?もし辞めたとしたら、何するの?
辻:ん〜…。マジでわかんないっす。
—全然もう食っていけないな…ってなっても、それでもcinema staffは続けられそう?
辻: 続けられないかも…とは思ってしまいますけど、ただ、最近は何とか続けるのもアリかなって気持ちが強くなっていってるかもしれません。
新川:フリ―タ―でしょ。まだ猶予あるし(笑) カテキョのバイトやってたじゃん。カテキョやりなよ。
(一同笑)
辻: もう今から普通の会社に就職して…とかは考えられないですね。さっきも話に出てきた、LOSTAGEみたいな、そういうやり方ができたら嬉しいんですけどね。でも、メジャーでやっていく意味もやっぱり実感としてあるし、その中で面白いことができれば!って思ってます、今は。
—ちなみに、新川さんは今まで一度も店を辞めようって選択肢はなかったんですか?
新川:ない。なんか、さっき話したヤバイ波みたいなのが来ると本当どうしよっかな…と思っちゃうときもあったけど、今はその波がある程度予想できるというか。たぶん何ヶ月かすればまた大丈夫になるだろうな〜て楽観してるというか。あとは、やっぱり「辞める」って選択肢を持っちゃうとブレちゃうと思うよ。突き進んでないと。品揃えとか、レ―ベルのカラ―にも反映されると思うし。
—レコ屋でやってく、みたいなのは、20代の頃とか若い時から決めてたんですか?
新川:20代は……何も考えてない(笑)
(一同笑)
新川:まあ、でもほんとにヤバイ時が来たら、潮時かなとは思うけど。本当に。そしたら、もうkmkmsでやってくわ。
—じゃあ、次の選択肢は、kmkmsってことで。
森:メジャ―レ―ベルと契約しますか。
新川:うん…。で、カウントダウンジャパンとか出よう。
—(笑)。
新川:でもさ、やっぱDIYでやってる人たちって、すごく頼もしいじゃん、見ていて。ディスコ―ドとかDCのバンドしか出さないし。DIYでやってるバンドはなんとかやりくりしてるじゃん、うまいこと。そういうの見てると、やっぱり、やりたいことを貫いてるって最高だなって思う。
—では、店始めるときも不安とかなかったんですか?
新川:不安もあるけど、やっぱその…見えない自信というか。自分のやってることは認めてくれるでしょ!みたいな。そういうのしかないかな。
—なるほど…。辻くんってなんか、自信満々って感じは出さないですよね?
辻:そうですね、全然自信ないっす(笑)。
(一同笑)
新川:辻くんは、いい意味で盲目的だから。やっぱ全てを受け入れようって姿勢で来るから。だからみんな面白がってるんだと思う。五味くん(LOSTAGE)とかさ、魚頭くん(OSRUM)とかも。「なんか面白いやつ来た」って思ってると思うし、なかなかいない特殊な存在だと思うよ。メジャ―でそこそこやっていて、なのにこういうアンダ―グラウンドなバンドとかも好きで、ライブにも行くし、音源もちゃんと買ってるってミュージシャンはおそらく辻君ぐらいじゃないかな。
—どこまでも貪欲に吸収し続けたいっていう姿勢が、辻くんが「愛されキャラ」であることにも繋がってるんでしょうね。
辻:いろんな人が僕らをおもしろがってもらいたいってのは思ってます。cinema staffっていう名前も利用してもらっていい。
新川:cinema staffは、そういう状況を楽しんでるのが見えるからいいよね。
森:一時、名古屋でライブする対バンの若いバンドがどれもみんなcinema staff好きそうやな〜っていうバンドばっかりだったときもあったしね。
新川:そういうバンドやっぱり多いってことは、やっぱりシネマの影響力でしょ、まさに。影響力は絶対あるから。
辻:ありがとうございます。
新川:孤高の存在というか、カリスマというか。そこまでもう一歩だよ。
<以下、リリースインフォ>
peelingwards / kmkms split 7”
LFR-002 / 7”+mp3
2014年12月10日発売
¥1200(+tax)
ジャケットデザイン:山内幸次郎(climb the mind)
カラーヴァイナル3色展開
限定500枚 ※すでに完売間近!
peelingwards
kmkms