行政が打ち出す音楽フェスとしては、全国的に見てもおそらく異例の内容で開催されてきた人気イベント「OUR FAVORITE THINGS(=以下OFT)」。7回目を迎える今年、7月12日(日)河川環境楽園にて催される。
OFTの魅力は、豪華ゲストアーティストたちのライブだけに留まらない。ボランティアで参加する市民スタッフらも含め、この各務原という町とそこに暮らす人々の魅力が表出した形なのかもしれない。
ということで、OFT×LIVERARY特別連載企画「OUR FAVORITE 各務原」が始動。この連載では、OFTというイベントそのものの魅力とともに、OUR FAVORITEな各務原の町、人、そこから見えるローカル/カルチャーについて迫っていきます。
今回は、各務原市に今でも残る昔ながらの商店街「那加商店街」をフィーチャー。
東西に横長の地形を持った各務原市。その西方に位置する那加地区には、昔ながらの商店街が残っている。その周辺にはノスタルジックな雰囲気のお店から、新規参入の新しいお店までが混在。実際、商店街をぶらり散策しながら、OUR FAVORITE THINGS市民ボランティアスタッフたちが取材・撮影を行い、自分たちの住む町・各務原の魅力を探ります。
OUR FAVORITE 各務原 #3
「那加商店街」
地元民しか知らない隠れた人気店をOFTスタッフ自らが取材!
こんにちは、OFTボランティアスタッフの加藤早紀です。自分が生まれ育ったこの「那加商店街」をぶらり散策しながら、ご紹介させていただきます。
JR那加駅より南に「那加商店街」のメインストリートがあります。新旧のお店が立ち並ぶこの商店街エリアで今、地元の方々を中心に密かな人気店となっているお店、季節のジャム「sweet-jam」さんがあるんです。
各務原産の果物を使った手作りジャムは絶品という、このお店の成り立ちには母と娘の間にあったささいなストーリーがきっかけになったようです。では、さっそく詳しいお話を伺ってみましょう。
SPECIAL INTERVIEW :
Etsuko Kobayashi [ sweet-jam ]
「各務原」で採れる旬の果物にこだわった自家製ジャムを作る、その想い。
—このお店を始めたきっかけから教えて下さい。
小林悦子(以下 小林):もともと子どもが小さい頃から手作りでお菓子を作ってたんです。今も材料はJAの産直のところで揃えたり、直接農家さんに分けてもらってるんですけど、そこでたまたま桃を作ってる農家さんがあることが分かって、「えー各務原で桃!?」と思って。で、桃のコンポートを作ったのが最初で、それが家族に好評でジャムを作り始めました。それで9年前くらいの話なんだけど、ジャムづくりの本を娘が誕生日にプレゼントしてくれて…。それを読んでどんどんジャムのレパートリーが増えていって、知り合いに分けてあげたりしてたのね。作っては人にあげて、を繰り返してたんですけど、岐阜で「小さなクラフト展」ってイベントがあって、「そこに出店してみたら?」って娘に教えてもらって。「売れるか、売れないか分からないけど、とりあえず行ってみよう」と思って出店したら、全部売れちゃったんですよ!
ーすごい!
そして、毎回出店するようになって。2年くらいやってるうちに「お店をやれたらな~」とイメージするようになっちゃったの(笑)。そうこうしているうちに、ここの貸し店舗情報を教えてもらって、見にきたら白いガラス張りの雰囲気がすごく気に入って。ほとんど何の計画性もなしにお店を始めちゃったんです。
ー娘さんの本のプレゼントがきっかけでこのジャム屋さんが始まったんですね!すごくいい話ですね!
小林:ジャムのラベルとかも娘がいろいろこだわってくれてね。私ではこんなおしゃれな感じにできないです。娘さまさまです(笑)。
ーお店でのジャム作りも娘さんといっしょにやっているんですか?
小林:娘は一切ジャムを作らないし、作り方を聞くわけでもないですね。ラベルはつくってくれるけど、ジャム作りに関しては主に食べる担当なんです(笑)。
ー(笑)。そうするとこちらのジャムの材料を決めるところから調理まで、小林さんおひとりでやってらっしゃるんですね。
小林:「材料を決める」というか、今、ある旬の果物で作るので。いちご、ぶどう、桃、いちじく、すももとかは直接農家さんから分けてもらっています。農家さんが出荷できないようなものでも、ひと手間加えれば食べられるようなものになる訳じゃないですか?そういうのが簡単に捨てられちゃうのはもったいないなと思って。
ーもったいない!っていう思いもジャム作りにつながっているんですね…業者さんとかではない主婦である小林さんならではの発想かもしれませんね…。
「食べること」-それは当たり前だけどすごく大切なこと。
左から順に、藤丸紗月、亀井美香、野村幸代。緊張の面持ちで取材を行なう、OFTボランティアスタッフの中部学院大学生たち。
-sweet jamさんのジャムって、一般的なジャムより、さらさらしているのは特徴的ですね。どうしてなんですか?
小林:そう、あんまり固まってないもんね。それは、糖度が低くしてあるのと、ジャムを固めるものも入れていないからなの。そういうものを入れるより、果物や野菜そのものの味の方が絶対においしいので。砂糖とレモンと原材料だけっていうのにこだわって、大量生産はせず地道に作っています。
ー素朴な疑問なんですが、ジャムひとつ作るのにどれくらい時間をかけて作っているんですか?
小林:ジャムって混ぜて煮ればすぐできる、って思われるかもしれないけど、すごく時間がかかるんですよ。うちは小さい鍋で煮るのでちょっとずつしかできないけど、煮てる時間は短くて、煮る前までの工程がすごく時間がかかるんです。柑橘系なんて、すごく苦いから何回も茹でて、水にさらして、細かく刻んで、またさらしてという…そういう下準備にすごく時間がかかるんです。
ー長時間かけて、ひとつひとつ丁寧に作っていらっしゃるのが味からも伝わってくるような気がします。今まで、ジャムを作ってて一番大変だった果物は何でしたか?
小林:実はまだちゃんと作れてないのは柿なんですよね。柿って渋があるじゃないですか。ちょっとでも渋があるといくら砂糖をいくら加えても渋くなっちゃうんですよ。そこが難しくって。でもずっと柿のジャムは作りたいな〜って思っています。あと、これからの季節だと、枇杷(びわ)。とってもおいしいんだけど、種が大きかったり、中にも薄皮もあってそれを取らないと渋くなっちゃったり…すごく灰汁が強くて、手もまっ黒になっちゃうの。だから、すごく手間がかかるんだけど、枇杷のジャムっておいしいから作りたいのよね(笑)。(枇杷の旬は)すごい短い期間になると思うので、(店頭に)あったらラッキーだと思ってください(笑)。
ー素材の味を大切にされているんですね。その中でもニンジンのような新しい味に挑戦されているのもおもしろいと思います。
小林:私は「食べること」ってジャムに限らず人間が生きていくうえで、ものすごく大事なことだと思うの。私にとっては、(ジャムは)そのうちのひとつなのね。だから高いものじゃなくても、手作りしてひと手間加えたものというのは絶対おいしいはずなの。そういう気持ちでジャムを作っています。あと、自分もこのお店をやってみて、各務原で採れている野菜や果物の多さに初めて気づいたんです。冬場だけだけど、レモンもなっていたり。文旦といって、南国で採れるような果物もあったりする。
ーさっき季節によってジャムの品揃えが変わるって話も出ましたが、季節と旬の食材を大事にしていらっしゃるんですね。
小林:ここに並んでるジャムで果物の旬を感じてもらえたら、と思っています。2週間後に来て、棚に陳列してある内容が変わってたら、採れるものが変わってきたんだなと分かるし、いまどんな農作物が採れているのかもうちの店を通して知ってもらえたらうれしい。やっぱり食べることで季節を感じることは大事なことだと思います。それが生活のメリハリにもつながると思うから。
—なるほど。本日は貴重なお話ありがとうございました!
季節のジャム sweet – jam
岐阜県 各務原市那加本町31-6
営業時間 11:00 ~ 18:00 / 月・火・水定休
TEL 058-389-2901
http://sweet-jam.com/
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2015年7月12日(日)
OUR FAVORITE THINGS 2015
会場:岐阜・各務原 河川環境楽園
OPEN 12:00 / START 12:30 / END 20:30(予定)
料金:前売3,000円/当日4,000円
出演:
スチャダラパー
王舟
Yogee New Waves
ORLAND
クボタタケシ
HALFBY
シャムキャッツ
JINTANA & EMERALDS
DJ MOTIVE -sarcastic majesty- live set
問:OUR FAVORITE THINGS 実行委員会事務局(各務原市ブランド創造課内)
TEL:058-383-1042