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FEATURE / 特集記事 Dec 19. 2017 UP
【SPECIAL REVIEW】
Calm×呂布カルマというサプライズも。企画者・鷲尾友公が自ら綴った回想録。
―見えない旅路、振り返る故郷。「インベーダーラダトーム3」を終えて―


見えない旅路、振り返る故郷

インベーダーラダトーム3を終えて


Text:Tomoyuki Washio /  
Photo:Tomoya Miura /  Movie:Ryota Ito /  Edit:Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE,LIVERARY]

 

スタジオのベランダから見える名鉄瀬戸線尼ケ坂駅に最終電車がやってくるのを眺める12月16日、
タバコを呑みながら一ヶ月前の出来事を思い出してみるものの当日クッタクタだった僕は
もしかしたらその出来事のことをあまり覚えてないないのかもしれないと自分を疑い始めたところだ。。
ワシントンデザイン研究室の記録員による写真と動画のスケッチを眺めながらぼんやりとした記憶を辿ってみる。

21時14分

店内に広がっていた香辛料の香りも落ち着き始めた頃、Calm Moonage Electric & Acoustic Quartetのライブが始まる。フロアライブ。幾人がステージを囲む。何人かの友人の顔も見える。2時間のフライトを経て札幌DJ Wachallの音がゆっくりとフェードアウトしていく、廊下を跨いだパグリックスペースから賑やかな談笑を経由。美しい旋律が響く。Calm Moonage Electric & Acoustic Quartet。 Calmデビュー20周年メモリアルコンサート、インベーダーラダトーム3の最終便がそれぞれの故郷へ向けて離陸する。
 

 

2017年8月 

夏休みという名目で車で富山から新潟~福島を経由して石巻市に入った僕はさわひらき(以下ひらき)の到着を待った。19時頃。あたりはゆっくりと暗くなってきた。初めて訪れた街。311以降初めての訪問で、というよりもゆっくりと東北を訪れるのは初めてだった。
 
名古屋から車で来たこともあり、道中内心どきどきしながら福島を通る自分がいる。石巻に到着しても尚僕は少し高揚していた。 街の空気は湿っていて肌にまとわりつくように感じた。20時頃ひらきと同行したスタッフ達と合流した。
 
RE-BORN ART FESTIVALに参加している彼の製作する映像作品の手伝いという名目でこの街を訪れた。展示している場所は街外れにある洞窟だという。ひらきと共に作品に使用する映像の撮影に同行する事はこの10数年の間で幾度もあったのだけれど、毎度の事ながら面倒くさい場所を好んで撮影場所を選ぶのがひらきの特徴だとおもうのは自分だけか。
 
ロンドンではダンジャネスに行こうと、何もない街に二人で出かけた。映像作家デレクジャーマンが最終地点に選んだ街。原発が見えた。台湾では古びた遊園地から望む高速道路を慣れない機材を駆使して撮影した。鳥取砂丘で遠くの砂丘を撮影し、あ、韻踏みます、伊勢神宮では朝日が昇る早朝から許可証を申請し、神聖な神宮に潜入取材を試みた。とはいってもしばらく会わない時期もあわせてだけれど。
2017年4月に能登半島の先端にある珠洲市でも奥能登芸術祭の為の作品の撮影を見守った。日頃ロンドンをベースに活動しているひらきの作家活動の中でもっとも集中的に日本で製作をしている年も珍しかった事もあってよく連絡を取った。
 
そういった流れの中、僕が石巻に足を伸ばしてこれといった観光もする事なく、他参加作家の作品も見る時間など無し、撮影は謎の宿舎から洞窟までの片道30分。主に夜、だった。
 
謎の宿舎というのはRE-BORN ART FESTIVALがプロジェクトとしていた、病院の跡地をボランティアスタッフの手によって宿泊施設として再生しようという試みがされている場所だった。僕たちはその病室の床で布団を広げて寝た。「マジ怖いんですけど……」北陸から東北へ車を走らせる車内の中で以前から新しい音源を発売する度話しをしていたcalmさんのライブを名古屋で開催できないかとぼんやり考え始めていた。
 

聞くところによるとデビューして20周年を迎えるという。今年は20周年という言葉を各所で耳にする事が多かった気がするのも、僕はTHA BLUE HERBの20周年プロジェクトに関わっていた事もあり、周年という言葉に敏感になっていたのかもしれない、そういえば自分、友人の企画するクラブイベントのフライヤーを作り始めたのをきっかけにグラフィックデザイナーの活動を初めて20年ほど経つ。その中でcalmの音楽に触れる機会もたくさんあったし、calm presents K.FのCDジャケットを作らせてもらったのもデザイナーとしての自身の1つになっている。金沢21世紀美術館へ誘ってくれて粟津潔の回顧展を教えてくれたのはひらきだった。2007年くらいだったと記憶。「鷲尾氏が好きそうだから。」と。旭町にあるひらきの実家の二階にある二段ベッドの上下で寝泊まりしたのを覚えている。

 

calm presents K.F

 

石巻の過酷な(といっても比較的楽しかった)撮影から名古屋に戻った僕は心地よい風が通る円頓寺のcaféで朝のモーニングキャフェオレをちびちびと飲みながら江川線をぼーっと眺めていた。その時だったと思う。はっとcalmさんのライブとさわひらきを招いてパーティーを決めようと同時にひらきにLINE電話でその旨を伝えた。「いいんじゃない?」とひらき。9月、これまた札幌芸術祭でひらきの作品を見に札幌にいた僕は、深夜のソウルコップでHERBEST MOONのwachallと出会った。「楽しみにしてるからね。」とwachall。それと平行するようにひっそりと呂布カルマとメールをやり取りし始める。そこから僕のインベーダーラダトーム3の旅路は始まった。

どこにも所属せず、定まった仕事もなく、自由にやっていくことはいいが、たえず不安である。(中略) 自由にデザインの仕事をするといっても、デザインそのものは、然程自由なものではない。描かれたデザインやイラストレーションがかりに自由であっても、それが発表され、印刷され世に出る社会は、自由ではない。
粟津潔 造形思考ノート/「仕事」河出書房新社より

自由に企画し、箱側の条件の中でできる限りのパフォーマンスを可能にする。その場所が見慣れた、使いなれた場所だったとしても何か一つ新しい発見を来場者に提示し、喜んでもらいたい。インベーダーラダトームは僕が制作活動の道中に出会い、影響を受けた宇宙人を招いて自然発生したプロジェクト。

 
2015年に粟津潔と秩父前衛派と共に展覧会でキューバを訪れた僕たちはハバナで3週間の時間を過ごした、食中り、昼間のラム、ぼったくり、雨漏り、その時の経験やハバナに住む人たちの優しさに触れた時の記憶がこの企画の始まりとなった。寄せ集めのクラブサーキット(何が第一弾発表だっ!もうよくないっすか。)、低価格のマーケットフェス(本当に音楽を大切にしているのか!?)では提示できない個人的な思いを提示する事に重点を置いて。故郷に対する想いをもう一度思い出し、原点を考え直すということから始まった。
 

それは自分の旅(志したきっかけとして)の出発地点の地元といえるかもしれないし、多感な20代を通ったヨーロッパの時間かもしれない。誰にでもある出発地点の故郷からそれぞれ自分のやりたい事、やりたかった事を目指して、やらなかった事を見つけてその目標を叶える。叶えるために時間をかけて僕の場合は思考を重ねていく。

 

円を描くように会場を回廊する

日頃、プライベートでドローイングをしているダンサー(インベーダー)を今回のビジュアルに。会場内で、円を描くように導線を意識し、手をつなぎあって円をつくる気持ちをそのまま表現した。

 
 


会場のイメージスケッチと映像ルームのインストールスケッチ。

 

会場内に森を作る

calmの活動20周年をvioで開催する事になった初期の段階からフロアライブをしようと考えていた。ステージの美術装飾を橋の下音楽祭ですっかりおなじみとなった「造形集団・某」に具体的なプランを話しながら作戦会議を重ねた。今までに無いvioの使い方を見せたかったというのと、「円を描くように」をメインのテーマにしていたのもありフロアのデザインを考えて行った。森の中にうっすら光るミラーボールが月のように見えないかな。というアイデアから会場にたくさんの植物を持ち込んでステージを組み上げて行った。

 


あたりはずれ商店街

 
vioに隣接するパブリックスペースでは、日頃お世話になっているフリーペーパー「屋上とそら」は名古屋駅西から。松原のcultureClubから出張PineFieldsMarket。栄五丁目からMADBOOXXX。「パーティーやるなら私も展示させてよ」の愛西市から名産品の蓮根の袋売り、オカンの粘土造花の作品展示。蒲郡の「サンデースパイス」と急遽出張していただいた「だし・麺 未蕾」の食事も用意した。
 
 
 
 
喫茶レインボー
 
エレベーターからB2Fに向かうとvioがある、その手前のエレベーターホールを「喫茶レインボー」とし、2017年9月29日に閉店してしまった同店の看板を復活させ点灯させた。
 
 

 

映像「インベーダーラダトームを回廊する」

 

告知用に作った映像は、三浦知也のスタジオで撮影した。 

撮影当日手ぶらで自宅を出た僕は100円ショップで画用紙とはさみを買って、ビジュアルに使用したイラストレーションのダンサーを画用紙に描いて切り抜き、さわひらきの撮影の手伝いで行った石巻で使っていたヘッドライトを壁に投影して月のイメージを作った。その紙の女優たちをターンテーブルのの上に置いて撮影した。
 
 
 

 

WASHIO Tomoyukiさん(@washiotomoyuki)がシェアした投稿

 

「Migration」

2003年に発売されたcalmの代表曲「Light Years」はMVにさわひらきの作品「Migration」が使用されている。
vioに隣接するダンススタジオのスペースを使用して映像のインスタレーションを展開した。

 

 

さわひらきの代表作「dwelling」から奥能登芸術祭で披露された最新作「fish story」計4作品を2スクリーンで投影、かつて珠洲で暮らしたことがあるひらきの祖父が、海の交通によって一命を取りとめたという事実からなる「fish story」は4月の珠洲市、8月の石巻市での撮影から作られた作品。この映像ルームも円を描くような動線を意識してスクリーンを中央に配置した。

 

さわひらき+dir_ インスタレーション
 
 
Calm Moonage Electric & Acoustic Quartet feat. 呂布カルマ

 

ここはあえて告知をしないサプライズアクトとして用意していた。

呂布カルマにcalmさんのライブのフューチャリングゲストとして出演してもらった。calmさんの音楽に呂布カルマが飛び入りの妙な違和感が面白そうかもしれない、というのと名古屋独自の企画というのも入れたいと思っていた。僕の尊敬する先輩のデザイナーはその妙な違和感をレイアウトに入れるという事を教えてくれた。

 
 
 
「なるほど~、よくわかんないけど、やってみます。(呂布カルマ)」
 
思いついたら即実行。女子大の道ばたで呂布カルマに会い企画の旨、calmさんの音楽を耳元にiPhoneをあてて聞いてもらった。「やれますよ、余裕っす。」と呂布カルマの感想。
 
 
 
 
ライブは最終目的地を間近に控えた。
 
 

Calm
 
 
 
その不安を打ち消そうとして、また表現することに向かう。時折、自分をたしかめるために、未発表のための試行を繰り返すこともある。自分の方法と表現を、たえず見いだしたいと心がけ、それに近づくと、今度はそれを進化するより、離れたいと考える。
粟津潔 造形思考ノート/「仕事」河出書房新社より

 
 
 
 

コンサート終了後、泥酔したオトンを胴上げする、というのが何故か恒例行事なってきている。(写真左:父、右:友人のうっしー)


 
 
「インベーダー」と「ラダトーム」
 
ラダトームというのはファミリーコンピュータの名作「ドラゴンクエスト」の出発地点の町の名前からとった。
 
その場所から物語が始まる。そのラダトームを北に少しだけ進むと対岸に竜王の城が見える。ゲーム内ではそこが最終目的地となる、対岸から見えるその場所は近そうで実はとても遠い。海を越えれば簡単に辿り着く場所かもしれないけれど、近道してしまっては竜王に勝つことも、お姫様を救う事もできない。長い道のりを遠回りを繰り返し旅にでて地道なレベルアップを重ねてようやくたどり着ける場所。ようやくたどり着き振り返ると出発地点のラダトームが見える。それは自分が旅の出発地点でもある故郷であるという意味合いを持たせた。誰にでもある出発地点の故郷からその道中で出会う素晴らしい仲間や宇宙人達、それがインベーダーです。
 
11月17日、ご来場くださった方々、賛同してくれた仲間達、参加してくれて音楽家、DJ、芸術家。ありがとうございました。
 
インベーダーラダトーム、私たちをのせて。
 
WASHIO TOMOYUKI
 
 
 

鷲尾友公
1977年、愛知県生まれ。イラストレーター、グラフィックデザイナーなど。表現という 分野において、ジャンルや手法、高尚も大衆の別もなく独自の文脈で作品を制作し活動する。 美術館や海外でも発表された彼のオリジナルモチーフの手君は運気アップのアイテムの一つ。最近手がけたアートワークにはTHA BLUE HERBの周年ポスターからPUFFYのグッズイラストまで、と幅広く越境中。http://thisworld.jp/

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