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FEATURE / 特集記事 Dec 10. 2022 UP
建築デザイン会社・EIGHT DESIGNと、人気カレー店「八O吉」を運営するTailorsが協業。
アートギャラリーとカフェの新たな関係性に挑戦する実験的スペースが安城市に誕生。

2022.11.12 Sat【NEW OPEN】EIGHT ART HOUSE& LOOM(愛知|安城)

 

11月12日(土)、カフェ「LOOM」とそれを内包するアートギャラリー「EIGHT ART HOUSE」という合体型の新店舗が安城市に誕生した。

同店は、リノベーションや新築住宅〜大型商業施設のリニューアルを名古屋を拠点に多数手がけてきた建築デザイン会社「エイトデザイン株式会社」と、名古屋の人気カレースタンド「八O吉」を運営している「株式会社Tailors」の2社が初めてタッグを組んで臨む実験的な店舗なのだそう。

ギャラリーにカフェが併設された店舗はさほど珍しい業態ではないが、今回は両者にとって大きな挑戦と言える内容となっているようだ。果たしてどんな店なのか?関係者たちにその思いを聞いてみた。

 

写真左から:水野茂朋さん(EIGHT DESIGN)、上坪文哉さん(EIGHT DESIGN)、吉田泰翼さん(Tailors)、加藤祐基さん(Tailors)

 

日常の延長に、非日常的なアートを。ギャラリーとカフェのちょうどいい関係。

FEATURE:「EIGHT ART HOUSE」&「LOOM」

Text & Edit:Takatoshi Takebe [LIVERARY]  , Re!na
Photo:Kanji Hayano [Tailors]

 

安城市駅から徒歩6分のところに位置する新築マンションの一階路面店の形で「EIGHT ART HOUSE」「LOOM」はオープンした。しかしなぜここ安城でカフェとアートギャラリーを始めるに至ったのか? EIGHT DESIGN取締役/名古屋店店長・上坪文哉さんにそこにある思いについて聞いてみた。

 


EIGHT DESIGN取締役/名古屋店店長・上坪文哉さん

 

上坪:安城は今、人口がどんどん増えてきていて、七夕祭りという祭が残っていたり、駅前には空き家があったりと、文化と可能性があると思っています。このまちが再開発されることが決まったことを聞いて、EIGHT DESIGNとして何かできることはないか?と考えたのが出店のきっかけなんです。三河エリアにこれまで拠点がなかったのですが、ここ安城から新たな発信をしていけたら…と思っています。

同社は、これまでにも名鉄瀬戸線・清水駅〜尼ケ坂駅沿線高架下に「SAKUMACHI商店街」、犬山駅を拠点とした、賃貸リノベーションプロジェクト「SUMU INUYAMA」等を展開し、まちづくりに貢献してきた。

 

SAKUMACHI商店街

 

上坪:事業が拡大していく中でも変わらず、目の前のお客さんに対して自分たちの持つ「楽しむをデザインする」というコンセプトを軸に仕事をさせてもらってきたのですが、これからは目の前のお客さんを通して地域に関わる仕事をしていきたくて。どうやったら地域に貢献できるか、社会を豊かにできるかを自社の中で問題定義として掲げています。地域にスケールアウトするとなると、社外の仲間たちと手を組んで一緒にやることが必要だと考えました。単純にTailorsさんのこれまでの活動に興味があって今回声をかけたんですが、その上で、社会に対してどう思っているのか、意見交換をしたんです。それを言語化していったら両者ともに“まちづくり”に辿り着いて、そのビジョンが一致したので手を組みました。お互い尊厳を守って進めるにあたって、人間性を高めるためにも“アート”の領域に挑戦しようと思ったんです。

12年に渡り「楽しむをデザインする」をコンセプトに掲げ活動を展開してきた彼らが次なる挑戦のフィールドに選んだのは、安城という新たな土地であり、そこにアートギャラリーを作るという新事業だった。

 


EIGHT DESIGNアート事業部・水野茂朋さん

 

「あいちトリエンナーレ2019」会期中に有志で立ち上げたられたスペース「サナトリウムで現代アートに関わった経験が自分の中で大きなものだったというEIGHT DESIGNアート事業部・水野茂朋さん。(※サナトリウムは、「表現の不自由展・その後」の展示中止をめぐる一連の騒動を受けて、あいちトリエンナーレ2019参加アーティスト有志が急遽立ち上げた一時的なアーティスト・ラン・スペース。トリエンナーレ会期終了まで、企画や作品の提案、募集を続けながら、トリエンナーレ実行委員会/アーティスト、右派/左派といった今回の騒動における二項対立の構造を超えて、本音の意見を交換できる場を形成し、アーティスト主導で公-パブリックに対し連帯を訴えかけた)

水野さんは自社の新たな挑戦について語ってくれた。

水野:以前から『アートで何かをしたい』と思っていました。アートの考え方や見方をわかってもらうことで、自分のビジネスだとか発想の転換につなげてほしくて。そういった人が集まれば新たな出会いが生まれて、アクションにつながって、それがまちづくりに貢献していくことになるのでは?と思っています。お店の中にアートが在るというよりは、生活の中にどうアートが在るかを考えたデザインをこの場所では体現しています」

店内を見渡すと、床・壁・天井がほぼ同色になっており、全体としてクリームがかった優しい淡いグレーで一体感が生み出されている。よくありがちなホワイトキューブの真っ白な空間ではない分、店内に入ったときの印象はホッとさせてくれる安心感や、昔からこの場所にあったかのようなイメージをもたらしてくれる。

 

 

水野:まずは飲食空間としてふさわしい空間であることと、アートが前に出るように室内のカラーリングに一体感を持たせることの両立を試みました。細かなところでは、カウンターの天板をモルタルと砂利を混ぜてそこにガラスを埋めて上から削っていて。それもプロの業者に頼んで綺麗に仕上げてしまうのではなく、一般家庭のキッチンカウンターのような「日常感」の演出のために、あえて(素人である)自分たちで天板を削ったんです(笑)。そうやって作り出した粗さや、手仕事の柔らかさが出せたと思っています。お店なんだけど、お店過ぎない「日常感」と「アート」を同居させることは自宅にアートを飾るイメージを膨らませやすくしたかった、という狙いもあります。

 

 

株式会社Tailors代表・吉田泰翼さんは今回のアートとカフェの融合について、EIGHT DESIGNとどんな対話をしていったのか?

吉田:今回のお話をいただいた時、八O吉としてではなくTailorsとして仕事をいただけたことがまず嬉しかったです。僕たちはカレー屋としての活動が前に出ていると思いますが、本当にやりたいこととしては白紙に何かを描いていくような感覚で色々なものを発想して、生み出していきたいと思っていたんです」。

 

吉田泰翼さん(Tailors)

 

吉田:デザインが日常の中に入っているのと同じように、アートと僕らの距離もだんだん近くなってきてはいるはずで。ネット上ではアート作品はたくさん気軽に見れて、ディグることもできます。でも、実際にアートを体験する場所に関しては、意外とまだまだ敷居が高く、日常との距離が遠いように思っていました。

テーブルがあって椅子があって、食事ができる環境があって、そこにアートがある。そういう環境を作ることができれば、生活の中にアートを近づけることができると思っていて、それを体現したかったんです。LOOMの“L”はLiving(生活)のLで、そこにRoom(空間)をそのまま残してLOOM(生活空間)に。アートを生活空間まで落とし込みやすくするための手法としての食事の場を作ることが僕らの今回の挑戦でした

 


野菜たっぷりの特製スープは、エスニック・トマト・クリーム・オニオンの4種類から選べる。「実家が八百屋ということもあって、野菜の魅力は僕が発信するべきという、これまでの軸は変わらずこの店でも発信していきたいと思っています」(吉田)

 

メニューは、ランチa(スープ2種、パンかパスタ、コールスロー)、ランチb(スープ2種、パンかパスタ、コールスロー、ドリンク)、モーニング(スープ1種、パンかスコーン、コールスロー、ドリンク)のほか、おやつ(スイーツ、ドリンク)といった可愛らしいメニューも。

 

「アート(非日常)と生活(日常)を近づける空間づくり」という共通のゴールポイントに向かって、「建築デザイン」と「飲食」それぞれの立場から両者は手を取り合ったと言える。

上坪:僕らの本質は楽しむをデザインすること。本質の目的をどう達成するかにコミットした結果、デザインという手法に行き着いたんです。周囲からは単に建築デザインの会社って見られがちですが、デザインは課題解決の手段に過ぎないと考えています。結果よりもプロセスを大事にしています。今回の課題は、アートに距離がある人もいかにその中に入り込みやすくできるか? 今後もさまざまな展示や企画を入れていく予定ですのでお楽しみに。

 

 

 

日々この場所にどんな人々が集い、まちの未来へどうリンクしていくのか。アートとカフェの新しい融合、というと仰々しいが、アートと食事を自然体で楽しめる、そんな空間/時間を描いてくれる場所を目指していく。あなたもアートに触れ、美味しいスープを堪能する時間を体験してみてはいかがだろう。

 

今後もさまざまな展示が予定されている。12月25日(日)までは、愛知県立芸術大学博士課程前期在籍中のアーティスト・川西りなによる個展「これまでとこれからのmyself」が開催中。11月27日(日)には本人によるギャラリートークも行われる。

 


 

 

EIGHT ART HOUSE
「アートでまちを笑顔にしよう」をコンセプトに、アートのチカラでまちに活力をあたえ、すべての世代を笑顔にしたい。アートを通して人と人が出会い、学び、一緒に活動し、感性や創造力が育まれ、まちや暮らしをより豊かなものにする。
エイトデザインのアート事業EIGHT ART HOUSEは、地域コミュニティの創造や発展を軸とするアートのあるまちづくりを目指します。

LOOM
コンセプトは「生活空間」。LOOMはカフェであり、暮らしの展示室です。

住所:愛知県安城市末広町8-4 (DENCITY 1F)
OPEN 9:00-19:00
CLOSE 水曜日
TEL 0566-57-7039(EIGHT ART HOUSE
TEL 0566-55-1432(LOOM

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