行政が打ち出す音楽フェスとしては、全国的に見てもおそらく異例の内容で開催されてきた人気イベント「OUR FAVORITE THINGS(=以下OFT)」。7回目を迎える今年も、7月12日(日)河川環境楽園にて催される。
OFTの魅力は、豪華ゲストアーティストたちのライブだけに留まらない。ボランティアで参加する市民スタッフらも含め、この各務原という町とそこに暮らす人々の魅力が表出した形なのかもしれない。
今回からスタートするOFT×LIVERARY特別連載企画「OUR FAVORITE 各務原」では、OFTというイベントそのものの魅力とともに、OUR FAVORITEな各務原の町、人、ローカル/カルチャーについて迫っていく……。
そんなシリーズ連載の第1回目となる今回、前々回までOFTの会場として使用されていた国指定の重要文化財でもある「村国座」にフォーカス。同イベント主催者で各務原市役所員・広瀬真一と、初回から数回に渡り出演するHandsomeboy Techniqueこと森野義貴と、2回目から出演を重ね今年も出演決定しているHALFBYこと高橋孝博の3人が、実際に「村国座」を訪れ、あの夏の思い出を振り返った。
OUR FAVORITE 各務原 #1 「村国座」
名物フェスOFT始まりの場所「村国座」に宿る、場の力。
SPECIAL INTERVIEW WITH…
YOSHITAKA MORINO (Handsomeboy Technique)
TAKAHIRO TAKAHASHI(HALFBY)
SHINICHI HIROSE(OFT)
—本日は、OFT初期の頃からゲスト出演しているお二人と主催者である広瀬君にいろいろ話を伺っていこうと思います。まず、お二人と広瀬君との出会いはどういった形だったんですか?
高橋:広瀬君との出会いは、実はお互いDJとして同じイベントに出たのがきっかけで。(OFTのフライヤーなどデザイン全般をやっているデザイナーでもある)村松君のイベントで名古屋に呼んでもらったときに一緒にDJしたのが最初だと思います。
—すごい。共演者ってことですね!?
広瀬:いや、共演といえるほどではなくて(笑)。僕はサポートDJとしての立ち位置で参加していました。
—じゃあ、初めは「広瀬君=DJ」ってところから始まったんですね。
高橋:そうそう、「名古屋のDJの子」ってくらいのイメージ。
広瀬:森野さん(Handsomeboy Technique)のセカンドアルバムのリリースパーティーを村松君と一緒にやったりもしました。その同じ年に村国座でOFTもスタートした感じかな。なので、自分が主催したイベントにもお二人に出演してもらったところから、OFTに繋がっていった感はありますね。
―なるほど。で、そのまま良い関係が続いているってことですね~。
広瀬:今回の対談を機に、お二人に聞きたいな~って思っていたのは、そもそも文化財である村国座という舞台をステージに使うこのイベントに出演してくださいって言われたときに、どう思われました?
森野:最初、話を聞いたときは、そんなにピンときてなかったんだけど、実際に行って村国座を間近で見て「ここでやるのかー!」ってびっくりした(笑)。しかも、DJしたらみんなめちゃくちゃ踊ってくれてて、それはよかったんだけど、こっちとしては正直大丈夫なのかな~、来年もこのイベントやるとしたら、絶対呼ばれないだろうなーと不安になるくらいで(笑)。
—(笑)。
広瀬:特に1年目はDJの時間が転換の時間みたいになってしまってて、そこを森野さんがぶっ壊してくれたみたいな記憶があります。そのときのOFTを撮影していた映像が残ってるんですけど、そのとき頼んでたPAさんもあまりDJとかよく分かってなくて音がすごく小さくなっていて、そしたら、森野さんが「もっと音大きくならないですか~?」って言ってたのが印象に残ってます。
高橋:じゃあ、森野君がPAさんに偉そうにクレーム言ってるシーンも、しっかり撮れてんねや。
—(笑)。高橋さんは2回目から出演ですよね?
高橋:そう、森野くんから噂だけは聞いてた感じ。靴下であがってDJするんだよって(笑)。
—確かにあれ、絵的にも少しおもしろいかったですよね。ちゃんとアーティストの方々がみんな靴脱いでて。あまり観ない光景だなって(笑)。
高橋:ビール飲んでるやつらが村国座の中で踊ってたりして、やばかったな~。
—参加された印象って何か残っていますか?
高橋:他のフェスにも出てたけど、全然違うというか。いわゆるロックファンのフェスノリではなくて、クラブに近い感じというか、DJで休憩して、バンドで暴れるみたいな感じじゃなくて、トータルでずっと踊ってるみたいな感じで。舞台の大きさが丁度よかったというか、村国座の屋外エリアもあって、そこでのチル部分と、中にいる人はずっと踊ってるみたいな棲み分けもできてて、それがよかった。
—村国座の中ってめちゃくちゃ暑くなかったですか?サウナ状態でしたよね…
高橋:暑かった!それでリミッターが外れる感じで盛り上がってたのもあるかも。でも、出演者側としても、ホンマに暑いから、こんな場所でやるんだ、というのと、もうとにかくあの熱気のせいもあって舞台に上がる時はかなり気持ち的に身構えるというか。
森野:そういえば、市長コールもあったりしたな。「市長!市長!」って観客が盛り上げてて……。
高橋:村国座のあの雰囲気だったら、普通、アコースティック系とか、もっとオーガニックなイメージのバンドがやりそうだけど、結構元気のあるバンドの方が出てたり。
森野:neco眠るとかな。
—neco眠るも、あの後ろのでかい金色の松の木の絵にすごくマッチしてましたよね。
森野:後ろのあの金色が逆に、下品に見える(笑)
―ちなみに、他の地方のフェスとかと比べても違う雰囲気とかあったりしましたか?
森野:出演者がまず全然違うな。出演者のセレクトがすごいなーと毎回思ってた。いつも旬なアーティストが出てるっていうイメージ。
広瀬:ありがとうございます!
高橋:広瀬くんのいい意味で偏った人選というか。最初からお客さんを呼ぼうとしてないような…。
広瀬:(笑)。
高橋:どのフェスもそうしたいけど、でか過ぎてかっこつけれへんところもあって。OFTは、ちょうど規模とかも、やる場所も重要文化財だとか・・・すべてが絶妙!
—お二人はOFTほぼ毎回くらい出てますよね。毎年参加する中で変わってきたな~とか、何かしら感じたことってありましたか?
森野:お客さんが増えていってたのが1番感じたかな。やる度に増えていくという。でも、ノリとかイベント全体の雰囲気とかはそのまま変わってないからすごい。
広瀬:おかげさまで3年目からチケットが売り切れるようになりました。
—地元のお祭っていうレベルから、客層が県外規模に広がった感じでしょうか?
高橋:そうそう、関西圏からもファンが来てた。
森野:ボクが気になってた女の子も知らん男と来てたりしてたしな。
一同:(笑)
高橋:実際、他の日本のフェスとか、観るようなバンドもいなくて、暇を持て余したり、ケータリングを食ってボーっとしてたりすることが多いけど。OFTは出てるバンドがおもしろいから、観てたらすぐ出番が来て、すぐ一日が終わるみたいな印象で。
—場所がおもしろいと、出演者側も新鮮な気持ちでやれますよね。例えば、普通のクラブに当たり前のようにDJブースがあって、とかではないですよね。
森野:そうそう。全然楽しい。
高橋:OFTも大きいフェスに寄っていきそうな感じなのに、全然そういう方向にはシフトしていってないところもいいし。
広瀬:(笑)。そうですね、単純に好きな人たちしか呼んでませんからね。
—お二人は、OFTがなかったら、各務原にくることもなかったと思うんですが…ざっくり「各務原」もしくは「岐阜」のイメージってあったりしますか?
高橋:OFTで初めて各務原知ったもんなー。確か、初めて岐阜に来たのは、デビューしたばっかのころ。何か堤防の近くにある車屋さんみたいかカフェでDJした記憶があるな~。
広瀬:あーそこ、「バービーブー」っていうお店ですね。あそこも、各務原市内なんですよ。
―じゃあ、OFTに出る前に実は各務原に来てたってことですね!(笑)。
高橋:そういうことか(笑)。あと、岐阜の印象は女の子たちがかわいいって思いました。岐阜にタレント事務所がすごいあるとか、誰から聞いたことがあるんだけど、実在するのかな。
広瀬:(笑)。その他に、村国座で印象に残ってるエピソードとかってありますか?森野さんどうですか?
村国座の奇跡!? 思い出あれこれ…
森野:あ、そういえば、口ロロが村国座に出たときに、ボクとやけのはらくんが一旦メンバーに入ったんやった。
—何かそんな話ありましたね。
高橋:その後に、「ボクもいれてーや」って言ったら、「ええよ」って言われて。
—あれって何だったんですか?
広瀬:あれは打ち上げやってるときのその場のノリみたいな感じでしたよね。4件目くらいの居酒屋での出来事です。
森野:結局、翌日にやけのはらくんも脱退する、みたいな。
—たしか、その一連の話を口ロロの三浦さんのTWITTERでつぶやいてるのを見ました!(笑)
森野:あれ、かなりリツイートされてたよね。実際にナタリーから確認のメールが来てたらしいし。
一同:(笑)
森野:あと、1年目のときの俊美さん(TOKYO No.1 SOULSET)がめちゃくちゃ酔っぱらってて、おもしろかったなぁ。楽屋でいきなり「今夜はブギーバック」が始まったり。1番最初って何年前だっけ?
広瀬:7年前ですね。
森野:じゃあ、息子に弁当作り出す前やな。
―(笑)。
高橋:そういえば、終演後に、ceroのあらぴー(荒内)と喋ってたら、女の子がこっちを指差しながら何か言ってるから、「これはceroのファンやな」と思って「ceroのライブ観てたん?」って話しかけたら、俺のライブを観てました!と言われて、ceroに勝った!と思って喋り続けてたら、「奇妙礼太郎さんですよね?」って言われたっていう。
一同:(笑)。
高橋:そんときボク金髪やって。奇妙君とも全然似てへんと思うんやけど……。絵に描いたような話として紹介させていただきます(笑)。
高橋:でも、その子のグループの女子6人ぐらいが、それをきっかけにボクを知ってくれて、CDも買ってくれて…去年のOFTにも遊びに来てくれたのはうれしかった。
広瀬:なるほど。それは、いい話!いただきました!そういえば、お二人のニューアルバムの制作状況はどんな感じなんですか?
高橋:ボクはもうちょっとでできる。リリースまではまだちょっとかかるけど。
森野:ボクは全然ですね。とりあえず、シングルでリリースする曲を作っている。何年もやけど。
広瀬:お二人とも楽しみにしてますね。
―僕も楽しみにしています~。じゃあ、本日はありがとうございました~。
インタビュー終了後、村国座の前で撮影していると、そこへ突如、謎のおじさんが登場!
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2015年7月12日(日)
OUR FAVORITE THINGS 2015
会場:岐阜・各務原 河川環境楽園
OPEN 12:00 / START 12:30 / END 20:30(予定)
料金:前売3,000円/当日4,000円
出演:
スチャダラパー
王舟
Yogee New Waves
ORLAND
クボタタケシ
HALFBY
シャムキャッツ
JINTANA & EMERALDS
DJ MOTIVE -sarcastic majesty- live set
問:OUR FAVORITE THINGS 実行委員会事務局(各務原市ブランド創造課内)
TEL:058-383-1042
HALFBY(ハーフビー)
DJとして全国各地のクラブや夏フェス等を飛び回りながら、リミキサー/プロデューサー/アレンジャーとしても幅広く活躍、映画音楽や企業CMなど多数手がける。2005年1st『GREEN HOURS』、2007年メジャーからの2nd 『SIDE FARMERS』、2010年3rd 『The Island of Curiosity』と計3枚のフル・アルバムをリリース。30箇所を廻る昨年の全国ツアーでは、初のバンドセットHALFBY AND HIS MYSTIC ARKESTRAのライブも敢行。デビュー10周年となる今年、通算4枚目となるフル・アルバム『Leaders Of The New School』を2011年11月16日にリリースする。現在新作を制作中。
Handsomeboy Technique(ハンサムボーイテクニーク)
デビュー直後からスウェーデンの国営放送やカルチャー誌が特集を組む等、ヨーロッパを中心に海外でも評価され、リミキサーとしても国内外のアーティストを多数手掛ける。DJとしては地元京都METROのレギュラー・イベントを中心に全国各地でプレイし、大型フェスにも多数出演。スウェーデン・ツアー時には本国最大のフェス『UMEA OPEN』に出演した。2015年、ニュー・アルバムをリリース予定。
広瀬真一
1985年2月2日生まれ。岐阜県各務原市在住。各務原市役所勤務。正式な肩書きは、「企画政策課兼中央図書館兼ブランド創造課」。音楽フェス「OUR FAVORITE THINGS」、出店イベント「マーケット日和」の企画を担当する。
村国座
壬申の乱の英雄「村国男依」を祭神にまつった村国神社の境内にあり、年に一度行われる村国神社の祭礼で、氏子が奉納する地芝居を上演するために建設された舞台。客席と舞台を備え、本格的な廻り舞台と広い花道、奈落を持っており、虚飾を廃した素朴で力強い造りの建物。明治10年ごろに創建された「村国座」は、今日まで原形を大幅に変える改築や、映画館向きに改造されることもなく保存され、江戸時代末期から明治時代初期の劇場建築の典型を今に伝える数少ない農村舞台であるとして、昭和49年には国の重要有形民俗文化財の指定を受ける。リニューアル工事を経て、各務原市主催のフェスOFTの初回から数え、計5回開催される。