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FEATURE / 特集記事 Jun 18. 2015 UP
【特別連載】OUR FAVORITE 各務原 #2 「カロトギフ」―生まれ育ったこの場所で好きなことを続けて暮らす、という気持ちのいい選択。

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行政が打ち出す音楽フェスとしては、全国的に見てもおそらく異例の内容で開催されてきた人気イベント「OUR FAVORITE THINGS(=以下OFT)」。今年で7回目を迎え、7月12日(日)河川環境楽園にて催される。

OFTの魅力は、豪華ゲストアーティストたちのライブだけに留まらない。ボランティアで参加する市民スタッフらも含め、この各務原という町とそこに暮らす人々の魅力が表出した形なのかもしれない。

ということで、OFT×LIVERARY特別連載企画「OUR FAVORITE 各務原」が始動。この連載では、OFTというイベントそのものの魅力とともに、OUR FAVORITEな各務原の町、人、そこから見えるローカル/カルチャーについて迫っていきます。

第2回目となる今回の“OUR FAVORITEな各務原”は、ハンドメイドの革製品を中心に取り扱うセレクトショップであり、喫茶店でもある店「カロトギフ」。この店を営む夫婦の物語に触れてみることに…。

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田畑の風景が広がる静かな町、各務原市・前渡東町に店を構えて一年。その魅力はすでにこの地域に根付き、さまざまな人が集まる“町のカルチャーサロン”とも呼べる場所になっているのだそう。

「カロトギフ」の前身ともいえる店舗「カロト」は2004年、岐阜各務原ではなく京都で生まれた。10周年の節目となった昨年2014年、店主・加藤夫妻は生まれ故郷・岐阜で「カロトギフ」として新たに店をスタートすることに…。

今回、京都での店舗経営の実績も持つ加藤夫妻に<各務原で住むこと・暮らすこと>をテーマにお店の魅力のほか、各務原という地域の魅力を伺ってきました。「カロトギフ」と「各務原」、それぞれの魅力を紐解くテキストの先に見えてくるものとは?

OUR FAVORITE 各務原 #02 「カロトギフ」

生まれ育ったこの場所で好きなことを続けて暮らす、という気持ちのいい選択。

SPECIAL INTERVIEW WITH
SHUNSUKE KATO AND MISA KATO [ calottegifu ]

Text & Interview : Shinichi Hirose [OFT]  and  Miho Iwai [OFT] 
Photo : Toshinori Matsui [OFT]  
Edit : Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY]

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写真左:加藤美佐さん、右:加藤俊輔さん。朗らかな雰囲気のご夫妻。

 

では、まずお店の自己紹介からお願いします。


加藤美佐(以下美佐):私たちが10年前に京都にオープンした革製品のお店「カロト」のハンドメイドの革製品と、京都と岐阜で知り合った作家さんのもの。それを「手仕事のもの」って呼んでるんですけど、その「手仕事のもの」を扱いつつ、私がアンティークというか「古いもの」が好きなので、そういったものも扱って販売しています。あと、喫茶ですね。


革製品づくりを始めたきっかけって何だったんですか?


加藤俊輔(以下俊輔):このお店の向かいが実家なんですけど、実家にいたときにふと自分の手帳カバーを作りたくなって、東急ハンズで革のハギレを買ってきて、それを使って作ったのが最初です。本当は手帳カバーが欲しくていろんなお店を探してみたんですけど、欲しいのがなくて、その日の晩に思い立って「自分で作ろう」ってなりました。道具も何もなくて、電話帳の上に釘と金槌をおいて、穴を開けて、針もないので皮ひもの先にセロハンテープをぐるぐるって巻いて、それを三角形に切って、穴にねじ込んで通すみたいな。最初だから上手いも何もないんですけど、自分が作りたいものができたという思いはありました。


もともと手作業は得意だったんですか?


俊輔:そうですね。高校生のときに自分でトートバックや服を作ってみたりしたこともありました。


若い頃から「自分が好きなものをつくりたい」という気持ちがあったんですね。

俊輔:そうですね。他人が持ってるのは嫌だなと思っていましたね。誰よりも一歩早くというか、売ってるものはそのうち追いつかれることがあるけど、自分で作ったらベストなものができるんじゃないかと思って作ってました。でも実はもともと革職人になりたいと思ったことは1度もなくて、自分のものを作ったり、友達にプレゼントしたり…誕生日のときとかにも何か作ったりすると喜ばれるので、そういうことを楽しみにただ趣味として、仕事をしながら自分の時間を使って作ってました。

なるほど。趣味からスタートしたモノづくりが、二人のお店になっていくんですね!

俊輔:美佐さんが僕の道具を勝手に使って財布を見様見真似で作って、たまたま友達がやっていた服屋にそれを置いてたんです。革もいろんなハギレを組み合わせて作ってあるので、すごい奇抜というか、いろんな色が組み合わせてあったりしたので、1点ものな感じがすごくして。それがバカ売れして!飛ぶように売れるというのはこのことかなと思いました。それで「ちょっと、これは(商売として)やっていけるんじゃないか」と思い切って、革製品のお店を始めました。

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ちなみに、「京都」へ出て行くきっかけは何だったんですか?


俊輔:
僕ははじめ各務原にあった珈琲・紅茶の専門店で働いてたんですけど。メニューについてなどあれこれ試行錯誤して考えている時期に、美佐さんが京都のカフェで働いてるって話を聞いて、勉強しに行ってみようと遊びに行ったのがきっかけでした。

美佐:私は、23歳のときに京都へ行ったんですが、それまで一度も実家を出たことがなくて、これが「ラストチャンスだ!」って思って。その当時はただ単に「京都のおしゃれなカフェで働きたい〜!」ぐらいの気持ちで(笑)。で、すごく気に入ったお店を見つけて、そこで働けることになって…。17年前の話です。京都の北山という場所にあるイケてるカフェだったんですけど、今はもうなくなってしまったんですけど…。そして、私が京都に行った1年後に俊ちゃんが転がり込んでくるという。


俊輔:
それから結婚して娘が生まれたのをきっかけにいよいよ独立しようと。その時に住んでいた古い町屋でカフェをやろうと思っていました。でも京都にはカフェが多いので、もうちょっと工夫をして、自分たちにしかできない仕事をしたいなと思っていました。


それから京都で「カロト」というお店を10年続けて、昨年「各務原」に戻ってきたということですが、「京都」と「岐阜・各務原」での暮らし、何が一番違うと思います?


美佐:
親(との距離)が近いので助かる!


現実的な話ですね(笑)。


俊輔:
僕が感じるのは、スピードの違いかな。京都のほうが何かと回転が速い。古い町屋が壊されて、駐車場になる、マンションになる。16年暮らしてると僕たちが住んでた町の変化もすごく感じました。逆に盆と正月に各務原に帰ってきたりしてたんですけど、そこで感じたのは「ホント変わらんな」と(笑)。


実際に「各務原」に戻ってみて、改めて感じたことなどあれば教えて下さい。


俊輔:
今まで京都で運よくお店を10年やってこれたんですけど、正直こんな田舎に帰ってきて、果たしてこれからどうしていこうかなと。帰ると決めて1年前から計画は立てていたんですけど、本当に帰省する直前まで迷ってました。もともと、ここ(各務原)にいても何にもないなと思ってましたし、「岐阜でやっててもダメだな」と思っていた時期もあったくらいなんで…。

美佐:もちろん、戻ってきたのは、将来のこと、家族のこととかも考えてっていうのはあったんですけど。盆・正月に各務原に帰省したときにこの物件を見つけて「ココ、いいなー!」と思ってたから。ココでやるんやったらやりたい、ココなら絶対やれる!と思いました。生活していくのに、気持ちがいい暮らしができる場所やなって思ってたし、やっぱり田舎に住みたかったから。ある意味ベストな環境なんです。

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都会の京都から田舎の各務原へっていう気持ちの変化というのは、どのようにして起こったと思います?


俊輔:
京都での10年は食っていくための10年間だったなと思います。もちろん、仕事は好きですけど、これをずっとこの街(京都)で続けていくのか?って考えたときに「ちょっとナシかな」と思ったのはありますね。

―それはやはり京都という都会ならではの「速さ」にどこか疲弊してしまったのかも知れないですね…。

美佐:こっちに帰ってきたらスローライフが送れると思ってたし、家賃も安いやろし、近所から野菜ももらえるやろし、なんて想像してた。実際、5月にオープンして、最初はもちろんお客さんも、どさ!って来るわけもなく、8月くらいまでは本当にスローライフでした。あまりにスローライフ過ぎて、私は忙しい方が合ってるなと思うくらい(笑)。

自分も初めてお邪魔させてもらったのはちょうどその頃だったと思います。そこで、各務原市の広報紙の表紙用の撮影をお願いさせてもらって


広報紙

各務原市の広報紙では市内の職人を「各務原の匠」として表紙に起用している。若い作家や職人を応援する媒体として毎月発行中。

美佐:そうですね。その(広報紙の)反響もあり、ランチタイムにたくさんのお客さんに来てもらえるようになりました。そこからはお客さんがお客さんを呼んでくれて…。

俊輔:スローライフができると思って、帰ってきたんですけど、京都のときより忙しいという(笑)。ランチの仕込をしたり…あと、朝が早いんですよね。

美佐:(街の移り変わりの)スピードは遅いけど、朝は早い(笑)。


(笑)。


美佐:でも、ホント帰ってきて来てよかった。地元(各務原)でもこんなことできるよって目標になれるように頑張ろうと思ったし。

―まさに、そういう存在のお二人が各務原にいるってことはこの町にとって大きな財産だと思っていますよ。

俊輔:生まれ故郷に帰ってきて、今までやってきたように、自分たちが楽しそうに毎日過ごしてるって様子を京都のお客さんや友達とかに知ってもらうというか、カロトはどこでも楽しそうに生きていけるんやなーみたいな。やるからには届くといいな、と思ってる。こうやってインタビューしていただく機会をいただけたり、広報紙の表紙にしてもらったり、1年前を思うとホント奇跡だと思う。お店をここで始めるって決めて、改装しているときに父親に「こんなところで店を始めてもお客なんで誰も来んぞ」って言われて (笑)。ここでこの前も若い作家さんの展示会をやったんですけど、後ろで頑張ろうと思ってる子たちにチャンスというか、そういう場所を作っていきたいなとすごく思うので。そういえば、好きな本があって、この本には影響を受けています。


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俊輔:この『よくばりくつや』は僕の人生のバイブル。大物になるとか有名になるとかじゃなくて、身の周りにいる人たちに必要とされていれば暮らしていけるんだよ…ってことが書いてある絵本なんですけど。うちのお店はお客さんに靴を脱いで上がってもらうんですけど、それもあって友達の家に遊びに来たような感じでゆっくりしてもらえたらいいなと思っています。ホントにそういう場所だから「ほっこり」できるというか「ここに住みたい」みたいなくらいに思ってもらいたい。ふらっときた人がリフレッシュできる空気がこの店に常にあったらいいなと思っています。

美佐:その感じがつくられたものではなくて、自分たちも実際にリアルに朗らかな生活をしていることが重要で。休みをちゃんととって、娘ともちゃんと遊んで、とか。そういうところまで見てもらいたいくらいの気持ちです。1年経ってようやくそういう目標ができた。まだそこには達してないですが。

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なるほど、好きなことが仕事になって、さらにそれが良き生活に繋がっていくってすばらしいですよね。ちなみに、客層は京都時代とは全然違いますか?

俊輔:客層はもちろん違うんですけど、僕らってもともと客層やターゲットを決めてないんですよ。何かのきっかけでここのことを知ってもらってわざわざ来てもらってるので、そこは皆同じお客さんなわけで…。看板も出してないし、迷いながら来てもらったりすると、逆に各務原の前渡東町でよかったなと。国道沿いだと分かりやすかったりもするかもしれないですけど、僕の思う各務原の風景は生まれ育ったここ(前渡東町)なんで。畑とか田んぼとかいっぱいあって、全然新しい建物なんてなくて、全然変わらない景色が各務原っぽいと思っているんです。大型店ができても、地域の人たちが住み、受け継いできたところはそういう良さを残してるなと思います。このお店の建物も僕が生まれる前から建っている建物だし、この雰囲気を変えたくないなと思ってるんです。ありのままの平屋の昭和の古い佇まいを残しながら変わらないようにやっていきたいなと思っています。


―では、
各務原の好きなところ、ここがイイ!って思えることはありますか?ズバリお答えください!


美佐:
市役所の職員が素晴らしい!


―ありがとうございます
(笑)。


俊輔:
遠くから遊びに来てくれた人がみんな驚いていたのは「飛行機」。これは各務原ならではの特色のひとつだと思う。美佐さんは週1のナイトフライトを楽しみにしてるし。

航空祭

現存する日本最古の飛行場で航空自衛隊の飛行開発実験団が所在している岐阜基地、日本では数少ない航空機製造工場である川崎重工業岐阜工場が基地の反対側に位置してるなど、「飛行機の街・各務原」とも呼ばれるほど。

俊輔:この1年間の中でいろいろな人と出会えて、各務原の良さもどんどんわかってきたかなと思うんですけど、これから先もっとこの町のことを知りたいな~と思って住んでます。これから過ごす毎日の中で、「各務原って何なんだろう」っていうのを日々知っていきたいなと。


「もっと知りたい町」、いいフレーズですね!いただきます(笑)。お二人とも本日はどうもありがとうございました。

 

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最後に、前回同様、各務原市が開催する音楽イベント「OUR FAVORITE THINGS」のタイトルに絡めて、“MY FAVORITE THINGS”を聞いてみたいと思います。

あなたのお気に入り、教えて下さい!

美佐:私は、陶芸教室のちゃわんむしさんです。ちゃわんむしさんが4月にオープンしたばかりの時に早速予約して陶芸教室に参加しました!窓が広い気持ちの良い店内で、私はハンコを作って、娘は手びねりで器を作りました。磁器の固まりから自分の好きな(ハンコの)文字を少しずつ少しずつ削り出していきます。気がつけば1時間、ちゃわんむしのご夫婦のやさしいトークで本当に時間を忘れて集中してできました!工房前の小さな畑には野菜や草花が育ち、なんだか友人のお家にお邪魔したようなゆったりとした時間が流れていました。教室のプランも色々あって面白いんです。娘も陶芸にはまったようで、次に作る物を決めていました。ひと味違う陶芸教室、オススメですよ!


ちゃわんむし


<さらに、こんな方々にも聞いてみました>

中部学院大学 子ども学部子ども学科2年・亀井美香:今年、OFTにボランティアスタッフとして参加させてもらっています。私以外にも中部学院大学生の多くの人が通学時に訪れる場所、「学びの森」がお気に入りです。近くに名鉄駅もあり、朝に自然の中を通り学校に行くことで気持ちのいい朝になり、時間を問わず散歩コースに利用している地域の方も多くいます。天気のいい日は、もちろんひなたぼっこ!たまに芝生に寝転んでみてもとても気持ちいいです。敷地内にカフェもあるため、自然の中でちょっと一息というときに最適です。地域の方とも触れ合え、自然とも触れ合える。そんな素敵な場所なんです。

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写真は、「中部学院大学(各務原キャンパス)」の学生のみなさん。写真中央が、亀井美香さん。

ちなみに、同公園では秋に各務原市主催のマーケットイベント「マーケット日和」も開催されています。(昨年の内容はコチラから)

マーケット日和

最後に、昨年に引き続き、今年のOFTにも出演が決まっているこちらのバンドにも聞いてみました。

Yuma Osako(ORLAND):最近のお気に入りは、「日本酒」です。イベントや、打ち上げではもっぱらビールをオーダー!だったので、あまり日本酒に接する機会がありませんでした。(飲んだとしても石油みたいな味がする日本酒ばかり。)それが、とある酒屋で購入した名古屋の「醸し人九平次」という地酒を飲んでから日本酒にはまっています。スパークリングとか、バナナやメロンの香りがするものなどもあって、衝撃を受けました。米の品種、精米具合や、アルコール添加の有無など、奥か深いです。まだまだ勉強中なのであまり知識はありませんが。皆さんのオススメの日本酒があったらぜひ教えてください!

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各務原の人と町を発信していく連載シリーズ「OUR FAVORITE各務原」。次回の#3は、各務原に残る昔ながらの商店街をOFTボランティアスタッフたちが取材します。お楽しみに!

イベント情報

2015年7月12日(日)

OUR FAVORITE THINGS 2015

会場:岐阜・各務原 河川環境楽園

OPEN 12:00 / START 12:30 / END 20:30(予定)
料金:前売3,000円/当日4,000円

出演:
スチャダラパー
王舟
Yogee New Waves
ORLAND
クボタタケシ
HALFBY
シャムキャッツ
JINTANA & EMERALDS
DJ MOTIVE -sarcastic majesty- live set

 

問:OUR FAVORITE THINGS 実行委員会事務局(各務原市ブランド創造課内)

TEL:058-383-1042

http://www.ourfavoritethings.jp

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カロトギフ

「カロトギフ」は岐阜県各務原市で革製品・手仕事のもの・古いものを扱うお店です。ゆっくり和める喫茶もしています。全て手作業で作るカロトレザーハンドメイドの革製品と私たちが好きな作家さんの作る、手仕事の温もりを感じるものを中心にものづくりが身近にある暮らしをお伝え出来たら…と思います。http://calotte-web.com/gifu/

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