REPORT : SHANGHAI FASHION WEEK 2019AW AND MORE
この記事は、名古屋拠点に東海圏のローカル/カルチャーを発信・提案してきたWebマガジン「LIVERARY」が、名古屋・東海圏の外へと飛び出し、他地域/領域のローカル/カルチャーを特集していく「LIVERARY Extra」Issue です。
今、世界から注目されている「中国・上海」のファッション/カルチャー。
2003年に始まった「上海ファッションウィーク」は、世界的にも最も勢いのあるファッション・イベントとして注目を集めている。日本からも多数のブランドが参加していた同イベント期間中、ファッション業界関係者をはじめ延べ5万人が集まった。
中国最大の経済都市である上海はファション/カルチャーにおいても勢いがある。流行の最先端をゆくアグレッシヴな若手デザイナーが増加しているという。
クラブスナップより
中国の若者たちの活動的な環境の背景には、中国国内の価値観全体の変化とともに、政府や大企業からのバックアップが見られる。とあるファッション・デザイナーが「中国に春が来ている」と称するように、自分たちの文化的背景とアイデンティティを織り交ぜながら、中国・上海に生きる若者たちは力強く文化を前進させている。
上海ファションウィーク2019AWフォトレポートより。
ファッションウィークに訪れた若者たちをスナップ。
そんな躍動する上海の今をレポートすべく、2019年3月27日(水)〜4月7日(日)の約2週間かけて開催されていた「上海ファッションウィーク2019AW」のランウェイをはじめ会場内のスナップ、さらには中国・上海のアートギャラリー、ナイトクラブなどへ取材・撮影を敢行し、その熱量を追いかけた。
LIVERARY “EXTRA” ISSUE:
上海ファッションウィーク2019AWとその周辺
Date: 2019.3.27 Wed − 4.3 Thu
Photo & Text : Yuki Shibata [ LIVERARY ]
Edit : Takatoshi Takebe [ LIVERARY ]
#FashionWeekShanghai2019AW
SAMUEL GUÌ YANG
2015年イギリス・ロンドンでデザイナーのSamuel Yangによって設立されたブランド。アレキサンダー・ワンでインターンの経験も有り、ミラノでも2017年SSコレクションの展示を開催。彼はアートの探求や、革新的な技巧、洋服の視覚言語化を得意としており、常に新しい角度からそれらの再解釈を試みている。優れた裁断技術やhigh-tech素材を使用したプロダクトは、このブランドを象徴する要素だ。
M SUPER AVENIR
2018年に始まったばかりのM SUPER AVENIR。Mは”I AM” これは多様な人々の中から個人としてのアイデンティーを思い出させ、 Avenirはフランス語で未来を意味する。ブランドネームが伝えるのは、自分らしくいること、そして輝かしい未来への信頼。
MING MA
ブランドスピリットである” an instinct for surprise “を掲げ、現代的な女性らしさを表現。現代に生きる女性の優雅な一面を再び意識させるため、デザイナーの強みである立体裁断(3D-cutting)やドレープを活かし、彫刻のようなシルエットを作り出している。
Angel Chen
デザイナー・Chen Anqiによって2014年に設立されたAngel Chen。さまざまなブランドでのインターン経験を重ね、セントラル・セント・マーチン卒業後、中国に帰国。自身のブランドでは、色の本質を見通しプロダクトへ吹き込み、東洋と西洋の両者の美的価値を融合させている。Chen Anqiは、2016にForbsの“30 under 30” (30歳未満の才能ある30人)に選ばれていて、2017年のThe Business of Fashion“BoF 500”には2年連続で選出されており、世界的にも注目されている。2019年9月にはH&Mとのカプセルコレクションをローンチすることが決定。H&Mが中国人デザイナーとカプセルコレクションを行うことはもちろん今回が初となる。
#ShowRoom
TUBE SHOWROOM
上海ファッションウィークはコレクションの発表だけでなく、トークショーやエキシビションなど多くの取り組みがされていた。そのうちの一つがTUBE SHOWROOM。ホテルを貸し切って、各部屋でブランドの世界観を表現し、ホテル一つが大きなショールームの様になっているというもの。2F〜4Fまで計19ブランドが参加した。
会場がホテルであることから、ドアプレート型のデザインとなっていたインヴィテーション。
i-am-chen
Chen Zhiによって設立されたニットブランド。もともとエンジニアの勉強をしていた経験を生かし、コンピュータープログラムを用いて、弾性と柔らかさに富んだニット素材を制作している。手編みと、機械編みのニットでは様々な面で比較できないものだと語っている。
Boundaryless
“genderful”をコンセプトにファッションを表現したユニセックスブランド。性別的な偏見のない新世代のファッションカルチャーを表現する同ブランド。そこには年齢や性別による定義は存在しない。
OOAK
コスチュームジュエリーや、アクセサリー 、ギフト、家具 、芸術作品、本などを取り扱うコンセプト・ブティック。他にはない独創性や創造性を刺激する。
DU ANN
デザイナー・Siyu duanは、Alexander McQueenなどいくつかのブランドでの経験や、ファッション誌「GQ」、Swarovskiなどでも経験を積んだ。19、20世紀のミリタリーを現代風に作り上げるために実験的な方法を用いるブランド理念は“romantic military and contemporary”。
motoguo
マレーシア発のMoto GuoとKinder Engの二人のデザイナーからなるファッションブランド。ハンドメイドによる刺繍やパッチワークが魅力的だ。LVMH (モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ)が、若手デザイナーの育成・支援を目的としたファッションコンテストでのノミネートを果たし、「Amazon Fashion Week 2017AW 」でもランウェイショーを行うなど、注目を集めている。
#SNAP
感度の高い人々がどんな服をどのように着ているのか?を観察するのも、ファッションウィークの楽しみのひとつ。
若手デザイナーのためのプラットホームでもある「LABELHOOD」の会場には、他の会場と比較して20代の若者たちが多く集まっていたようだ。ヴィヴィッドな色彩の服装が多く、小物使いにまで目を惹かれる。カバンや靴、ヘッドホンからも個性を感じ、ファッションを自由に楽しんでいる印象を受けた。
#Gallery
上海市内には複数のギャラリーが集まって、ひとつのエリアを形成している地域があり、気軽にいくつもの展示を見て回ることができる。こういったアーティストたちが発表をしやすい環境/場があることは、上海が「ネクスト・ブルックリン」とまで言われるほどに文化的な成長を遂げた要因のひとつだろう。
M50
上海アートブックフェアの会場としても利用されていたM50。絵画や写真、インスタレーション、映像アートなどの現代アートをメインに取り扱っているギャラリーがほとんどで、M50内は全て無料で公開。ビルの中や裏路地などにも小さなアトリエがある。ブランドのルックブックなどの撮影スポットとしてもよく利用されている。
West Bound
昨年から活発になっているエリア。政府が助成金を出したりと、いろいろなギャラリーがWest Boundに移りだしている。まだ全ての工事が完了していないのでこれから先も規模が大きくなり、上海注目のエリアと言っても過言ではない。絵画や写真、オブジェ、映像などの現代アートがメインで展示されている。
#NightClub
ナイトクラブでは、多くの若者がおしゃれをして集まり、夜通し踊っていた。どのロケーションも独特の雰囲気を持っており、もう一度行きたくなってしまうような魅力を持っている。
Arkham
上海のクラブ事情で驚いたのは、複合商業施設のような場所にナイトクラブが入っていたこと。しかも1店舗だけではなくジャンルの違う箱が複数。Arkhamはその中の一つで、メインはHIP HOP。Joey Bada$$もここでイベントを行ったりと、海外のアーティストも多く訪れる。日本人では卍LINEがライブを行ったそうだ。
CLUB ALL
上海のクラブシーン・アンダーグランドシーンを語る上で絶対に外せないのが、CLUB ALL。先ほどのArkhamとは対照的に少し駅から離れたところに構えている。店内は打ちっ放しのコンクリート、雰囲気のある内装に、視界がぼやけるほどのスモークが焚かれていて、踊り明かすには最高の環境だ。ジャンルはハウス、テクノ、ノイズ、ベースミュージックと幅広い。
遊びに来ていたDJのhyph11e。ドイツ・ベルリンのクラブBerghainなど海外でも活躍している。9月には東京 wwwβ、大阪 compfunkに来日予定。
上海はギャラリーも多く、クラブカルチャーも発展していて、文化的な発信地という意味ではニューヨークに来ているかのような錯覚すらあった。その理由の一つに、中国の若手デザイナーやアーティストのほとんどが、欧米での留学を経験し帰国しているという事実がある。
イギリスやフランスなど海外で過ごしたバックグラウンドを持っていて、その若い世代がギャラリーの運営やブランドを設立するなど、さまざまなフィールドで社会を動かしている。日本に届く多くの〈Made in China〉から感じるのは、安くて質の悪いネガティブなイメージかもしれないが、今後、中国国内の若者たちの手によってそれが覆される日が来るのではないだろうか。