Text by 大大大・吉村大地
Photo : Shiori Ikeno
今年の9月に大阪・堺で行われた全感覚祭に大大大は参加した。
「そこで何が起きていたのか?」「あれは何だったのか?」と未だに聞かれるので、僕の目線でここに残そうと思う。
たくさんのバンドやラッパー、写真家や絵描きなどのアーティストが各地から集まった全感覚祭という祭。
入場無料、投げ銭制(自由料金制)に加え、今回はフリーフードという全感覚祭の初の試みに僕らは参加した。
主催は「十三月」。バンド、GEZANのレーベルだ。
完全DIYのお祭りで協賛する後ろ盾がある訳でもなく、彼らは自力で運営をしていた。
事前の募金、クラウドファウンディング、祭当日の投げ銭で運営費を全て集めるという試みだった。
運営側は「今、これだけ集まってます」「あと、これだけ足りない」という内情を随時発信し続けていた。
普段、目にしない祭の作り方を露わにし、その真っ直ぐで、無謀とも思えるやり方に心奪われた参加者も多いだろうと思う。
来場者の心意気が無いと成立しないというこの祭の方針を一人ひとりの来場者が理解し参加すれば、それは大きな渦となるはずだと信じた。
その光景は当日確かなものとなる。
Photo : Shiori Ikeno
食材は無償提供されたもので、支援者や協力農家さんから贈られた野菜や米などが会場に集められた。
中には1トンの米を提供する農家さんもいた。
Photo : Shiori Ikeno
調理するスタッフや出店者も全て無償提供、大大大で出した食材も全て持ち出しで、全て実費。
焼きそば、豚汁、どて煮、野菜炒め、など全部で1000食以上は作った。
吉村大地
集められた投げ銭は全て運営費に回すことになっていた。
(主催側から)特に「何食お願いします」と頼まれた訳でもない、やるなら思い切りやりたいと自分が決めたこと。
そんなバカみたいなことに飛び込んでみたいから、参加しないという選択肢は無かった。
この祭で感じた値段を投げ銭という形で来場者は払う。
コップ1杯の豚汁に1000円を払う人を何人か見かけた、5円や10円の人もいる。
払わない人もいる。
普段の商売からすると価格は崩壊していたし、決して目の当たりに出来ない光景がそこにあった。
「出店者も、出演アーティストも同じ扱いにしたい」という主催者の意向からフードのタイムテーブルも組まれ発表された。
Photo : Shiori Ikeno
他の出店者も集まってきた食材で試行錯誤しながら調理し、フリーフードを出していく。
どれも心の込められた、優しくあったかい料理だった。
いいライブを見て声を上げるような、感情が揺さぶられるような、そんな可能性が料理にもあるんではないかと物凄く感じた。
僕らは3時間弱という限られた時間の中で1000食以上作ることができるのか不安ではあったが、大大大のスタッフの段取りの良さと協力的な来場者のお陰で何とか自分で掲げた目標数を乗り越え、食材を出し切ったのが、ちょうどトリが始まる20時くらい。
正直立ってるだけで精一杯だったが、GEZANの演奏になんとか間に合った自分は、意識朦朧の中、気付いたら人波に飛び込んでいた。
Photo : Shiori Ikeno
当たり前を破壊し、新しい当たり前を構築し、また破壊し、さらに新しい当たり前を構築して……。
この繰り返しの中に全感覚祭のテーマがあるように思った。
新しいことを始めるには、理解し難い事や、理不尽は常に付きまとう。
そして改善点が生まれて、規則が出来てきて、結局は現存するルールに近づいていく。
安心や安全だったり。
Photo : Shiori Ikeno
そういった現存のルールには向かわず、新しい世界に向かうきっかけを与えてくれる祭だなと強く思う。
お金が誕生してまだ2700年程、新人類の誕生から20万年の歴史から考えると本当に少ない。
DNAレベルで考えると物々交換の歴史の方がかなり多く私たちに刻まれている。
物々交換は欲しい時に欲しい人が現れなく不便だからという理由でお金が誕生したならば、これからは物々交換の時代にまた戻れるくらい便利になっていっている。
Photo : Shiori Ikeno
入場無料、投げ銭、フリーフードの全感覚祭はすごく人間らしい祭で、あらゆる人の生きる糧になりうる現象だと確信しています。
そんなバカげた無茶振りに心意気だけで付き合ってくれた大大大のメンバーなしでは全く成立しなかったです。
お陰様で本当に貴重な体験が出来ました、ありがとうございました。
Text : Taichi Yoshimura [ DAI DAI DAI ]
Photo:Shiori Ikeno
Edit : Takatoshi Takebe [ LIVERARY ]
大大大チーム/iPhoneで撮影