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FEATURE / 特集記事 May 09. 2015 UP
人と文化の出会いを作り出す新スペース「喫茶、食堂、民宿。西アサヒ」。
その仕掛人が語る、ローカルとグローバル。

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昨今のグローバル化する日本社会において、明らかに注目を集める動き、それが<インバウンドビジネス>だ。外国人を対象とした観光ビジネスがそれである。改めて再認識されるローカルカルチャーへの傾倒も相まって、いかに自分たちの町とその生活環境、しいては当たり前のライフスタイルそのものを外部からの視点で捉え、客観視できるか…その最たる形が<インバウンドビジネス>となり新たな観光産業として発展を遂げている。

そして、ここ名古屋エリアでもその動きは徐々に加速中。これまでなかったスタイルの海外にあるような宿泊施設(ドミトリーやユースホステル的な場所)が盛んに作られ始めている。

中でも注目したいのが、2015年4月にオープンしたばかりの「西アサヒ」。円噸寺商店街の一角にある老舗喫茶店を再利用しつくられている。今回はその「西アサヒ」のオーナーであり、仕掛け人・田尾大介さんにお話を伺った。もともと、インバウンドビジネスにいち早く着手していた彼は、訪日する外国人向けのツアーコンダクター業を主軸とした株式会社ツーリズムデザイナーズを2013年よりスタート。世界を視野に入れた彼の新たな視点で見えてくる名古屋の町の魅力とは何なのか?ローカルカルチャーに根ざした弊ウェブマガジンとしても大変興味深いインタビューとなった。

 

SPECIAL INTERVIEW WITH
DAISUKE TAO ( Tourism Designers Co.,LTd. / Nishiasahi )

Interview,Text&Edit : TakatoshiTakebe[THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY]

 

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「名古屋」とはどんな街なのか?を考えてみる。

 

―まず、単刀直入に名古屋という町の魅力は何だと考えていますか?

田尾:大いなる田舎と言うことでココに来たら、本来の田舎の生活とか歴史、文化等に入っていけると思っています。つまりそれは、観光地化されていないところを楽しめるって言うところが魅力だろうなと。旅行業界からするとこんな町をツアーにして、誰が来るの?ってところもあるんだけど、最近は人も増えてきて。ある意味、通な日本の楽しみ方を求めているそういう旅のスタイルの人たちを受け入れたいなと。


―いざ海外旅行で日本に行くとなったら、やはり京都だとか東京がポピュラーではあると思うんですが、普段あまり行かないような名古屋みたいなローカルな町まで楽しめる外国人たちが対象ってことでしょうか?そこにも、今、需要があるんですね。


田尾:旅行者って、日本人でもそうだと思うんですけど、やはり段階を踏んでいくんですよね。最初はみんなが知っている有名なところに行って、その後は観光地化されていない、本来のその国の雰囲気とか生活している人とか、食べてるものとかに興味が沸いてくるわけで。そういうポピュラーな場所じゃないニッチな場所に行きたいコアな旅行者を満足させてあげたいという気持ちがあります。それによって観光地では薄れてしまう、本来の日本の良さを感じてほしい。海外の友達に聞かれることがよくあるのは、「本当に寿司は食べるの?」「デジカメいいらしいけどみんな買えるの?」とか…。本当はそういういわゆる普通の日本人の生活の部分に、今、海外の人たちはすごい興味があるんです。で、そういう方々を受け入れるうえで、拠点をつくりたいな~って思っていて、それを形にしたのが今回のゲストハウス兼喫茶店「西アサヒ」です。

 

 

創業80年の老舗喫茶店を改装した、新しい形のゲストハウス。

 

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―単純にゲストハウスにせず、一階に喫茶店としての機能を残したのは、もともとが喫茶店だったからですか?

田尾:今回、ちゃんとした歴史のある老舗喫茶店「西アサヒ」さんを紹介してもらうことになったことで、やはり一階スペースには地域の人のためのカフェ・レストランスペースをつくりたいなと思いました。また、2階には国内外の人を受け入れるスペースをつくり、下(一階)で交流できるようなスペースが必要かな、と。で、立地条件もよかったんです。新幹線の駅から歩ける距離で。そういった条件が揃って、去年のこの時期からこのプロジェクトは始まりました。具体的には、昼はランチでカレーと卵サンドやコーヒーを出します。で、17時半からはうちのシェフに世界の料理を作ってもらって、そこでみんなでわいわいやってもらえたらと思っています。


―「西アサヒ」
という名前を残そうと思ったのは場所の知名度がやはり大きいですかね?

 
田尾:「西アサヒ」は、もともとは昭和7年創業で、当時は最大7、8店舗やっていた時期もあったのですが、2013年からお店が閉まっていて。で、このエリアの空き店舗活用を手掛ける、那古野下町衆のナゴノダナバンク・市原さんとの縁があって借りることになったんです。で、家主さん(息子さん)もあのお店の名前を残したいという気持ちがあると聞いて、地域活性と交流の場になればと。地域を活性化するには古いものを残しながら新しいことをやる、というのが重要だと思っています。だから、そのような想いで名前は残しました。


―僕、東京でnui(ヌイ)って宿泊施設に泊まったんですが、そこも一階がバーでありコミュ二ティスペースになっていました。まさに、西アサヒさんのモデルケースみたいな感じですか?

田尾:そうそう、nuiを知ったときは、「うわぁ、先やられた」と思いましたよ(笑)。でも、僕もnuiにいったけど、イメージとしてはもう少し民宿的な場所にしたいなって思っていて…。


―nuiはおしゃれすぎて名古屋エリアには受け入れられないかも。もっと敷居を低くしたかった、てことでしょうか?

田尾:そうそう!もともとこの地に住んでいる、地元の人もわいわいできるような場所を目指してます。海外の人を受け入れることって、格好をつけたいとかでは全然なくて。地域の人たちと外側から来た人たちとの交流が生まれる場にしたかったんです。

 

人と文化の出会いの場、それがゲストハウス?

 


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西アサヒの個室部屋


―話変わりますけど、名古屋ってゲストハウス的な宿があまりなくて、僕はたまに
外国人アーティストの来日ツアーのサポートとかもするんですが、そういうときに泊められる場所がないんですよね…。結局、自宅か、友達の家か、長楽(今池にある激安ホテル)にステイしてもらうか?ぐらいで。

田尾:結局、名古屋人の悩みとしては、外から来た外国人や友人を泊められる所がないってのが大きくあると思うんです。 自宅じゃ泊められないことだってあるだろうし、かといって普通のホテルは高いし…。でも、「西アサヒ」に預けてもらったら、一階にいたら僕らがうろうろしているし、外に出れば円頓寺商店街だから遊びにもいけるし、僕も旅行会社の資格持っているからツアー案内だってできるわけで。もちろん、ゆっくり過ごしてもらっていてもいいし。もしも、ココで仲間ができたらなら、それはすごいいいことで、みんなで遊びに行ってもらえばいいし。 仕事終わりに集合して、ここで吞むみたいな…そう言う場所にもなると思います。 外国人の友達だったらなおさらだよね。 半分ホームステイみたいな感じになるのではないか、と。名古屋の外から来た人と中の人が、文化的に繋がって広がっていけば、より楽しいだろうし。<人と文化の出会い>が、僕の事業全体のポリシーで、 そういう場になっていければ、と思います。

 

―ツアーコンダクター的なお仕事をされている田尾さんから見て、名古屋の町を歩くことって魅力的なんですか?僕自身、あまり名古屋の街って特筆すべきおもしろいエリアってない気がしていて。外から来た友人を連れて行く場所が限られているって思ってしまいます。その点、どう思っているのでしょうか?

 

田尾:僕の名古屋のイメージは「歩くだけで楽しい町」だと思っています。だけど、町に住んでいる人たちがそういう雰囲気を作る感じがなく、基本的に 受け身な姿勢があるとも思っています。それは、ある意味で豊かだからかな、と。住んでいる人たちは何も困っていなくて、僕は山口出身で地元では仕事もないし、何か買おうと思ったらわざわざ遠征して都会に出なくてはいけない。そういう面で、名古屋の人って不自由していないんですよね、きっと。


―田尾さんは山口出身で県外の人なんですね。確かに名古屋エリアで何かおもしろいことをやってる人って、県外から来た人たちが多いなと思います。 
それってある意味、名古屋の人が消極的な性格の人が多いとも捉えられると思います。ライブイベントとか行っても、ぼ~っと見てる人が多い印象です。 ファッションにおいても、このご時世で流行の時差が生じているというか、そんな気がしています。

 

 

「余力を残したままの名古屋に必要なのは、外からの視点。」(田尾)

 

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田尾:だけど、名古屋はまだまだ何でもやれる土壌がある。


―ビジネスにおいても、やり残されていることがたくさんあるってことですね。

田尾:人口200万人レベルの都市なのに、僕たちがやっているような外国人向けの観光サービスがないのはおかしい。


―それはやはり「名古屋っておもしろい場所がなくて連れて行く場所がない!」という認識があって、最初から諦めてしまっているからかもと思います。

田尾:僕は、おもしろい場所は、人が作っていくと思っていますし、 ここに住んでいる人たちがおもしろがる、 そんな場所をつくりたいと思っています。


—そういった外側からの視点が大切なんですよね。


田尾:
まず外国人の視点に立って物事を見ないと。中にいるだけの人、世間知らずな人では作れない。状況をまず把握しないと。


―「消極的だから、知ろうともしない」という名古屋人の性格は、文化面において非常に閉鎖的な名古屋をつくっている原因なのかな〜と思います。だから、アウトプットも最終的に何か小ダサいものになってしまう。 また、名古屋という街としてのコンテンツ性が弱いのもあって、大型ショッピングモールばかりできていく流れがある。愛知が車社会だから、大型駐車場のあるモールに人が群がるのかもしれないですが。そして、そういうモールに支配されている地場
の人たちが自分の町に対してのプライドがすごい希薄に見えてきます。

 

田尾:そういうノリがないですよね。 魅力の伝え方がわからないのか、なかなか全国区に出ようとしないイメージがあります。


―そういう負のスパイラルを断ち切る意味でも、新しい場の力の必要性はあると僕は思っています。 いい意味で敷居が低くて、いろんなジャンルの人たちが容易にスクランブルできる場所がないな〜と感じていました。今の若者ってどこで遊んでいるんだろうとかも思いますし。とにかく、若い人でおもしろい人がいないのは名古屋エリアにとって悪い状況だな~って思っています。


田尾:
なぜ自分が海外の人たち視線を大切にするかというと、 外の人から見れば、何もかもがおもしろく映るんですよね。 日本人がどうでもいいって思ってるところが、逆に外国人から見たらおもしろいと思えることもあるわけで。彼らの視点を理解できれば、名古屋の“普通さ”を楽しめると思います。


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西アサヒの名物メニュー「たまごサンド」は、新生西アサヒにも受け継がれている。

 

田尾氏の言う名古屋の“普通さ”という言葉を言い換えるなら、ニュートラルな町・名古屋、ということになるだろう。それは、都会過ぎず、観光地過ぎないこの町を最も的確に表す言葉なのかもしれない。

そんな普通で、ニュートラルな町だからこそ、そこに住んでいる人々も普通で、ニュートラルになってしまう。それを否定的に見てしまうか、もしくは、エンジンはかかっているから、あとはギアさえドライブに入れてあげればどこまでも進める可能性がある、と思えるか。

いかにして、このローカル/カルチャーをおもしろがれるか?中にいる私たちが、おもしろがらなければ外の人間がおもしろがってくれるはずはない。

果たして、あなたの町のすぐ近くにはおもしろいものがないなんて、本当に言えるのだろうか。あなたの視点を少し変えさえすれば、その町は確実におもしろくなる。県外や国外においても通用する良質なコンテンツを見い出せば、胸を張って自分の町を語れるはずだ。

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西アサヒ

愛知県名古屋市西区那古野1-6-13
TEL : 052-551-6800
カフェ:11:30〜23:00
宿泊施設:チェックイン 15:00〜22:00 /  チェックアウト 〜翌11:00
月曜日 / 第3日曜日

http://nishiasahi.nagoya/index.html

 

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