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FEATURE / 特集記事 Jan 19. 2016 UP
【SPECIAL INTERVIEW】大岩拓己(MAISONETTEinc.)
ローカルでかっこいいと思えることを続けていく覚悟。
個性の集団を、最強の組織にしていく、その秘訣。

まちのメディアピープル #02:大岩拓己(MAISONETTEinc.)

連載企画「まちのメディアピープル」#2

このコーナーでは、LIVERARY編集部が気になった、私たちが住むまちの文化形成において重要なポイントとなっているであろう【ヒト】にフォーカスし、ご紹介していきます。(第一回目は、シネマテーク支配人・平野勇次さんでした。)

しばらく間があいてしまいましたが、ここにきてこのコーナーが復活しました。ということで、第2回目となる今回は、スタイリングや撮影などのファッション系の仕事を主軸に複数の店舗運営も行う、名古屋の代表的なファッション×クリエイティブ集団、MAISONETTEinc.(メゾネットインク)。彼らは、5年前にとある古いビルに出会い、「ここで何かおもしろいことができそう」という直感とともに、「re:Li(リリ)」という飲食店をスタートさせます。その「re:Li」の立ち上げから参画し、現在では、計4店舗の運営/マネージメントをしている、大岩拓己さんにお話を伺いました。経験に基づいたリアルで、熱量の込もった言葉の数々。店舗運営に限らず、もしあなたが今何かをしたいと思っているのなら、その背中を力強く押してくれることでしょう。

 

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SPECIAL INTERVIEW:

TAKUMI OIWA(MAISONETTEinc.)

Interview,Text&Edit: Takatoshi Takebe [ THISIS(NOT)MAGAZINE, LIVERARY ]
Photo:Fumiko Kawazoe

 

何かを始めるために必要なのは、覚悟と信念。

 

―現在では、3つの飲食店と1店のギャラリー兼ショップを運営しつつ、スタイリングや撮影などファッション系のお仕事もされている、MAISONETTEinc.さんに大岩さんはそもそもどのようにして関わっていったのでしょうか?

まず、今もスタイリストとして活躍し、会社の代表でもある山本雄平と、デザインなど幅広く業務を担当する西川容代がMAISONETTEinc.という会社を立ち上げて、僕は少し後から加入したんです。当時、山本は名古屋のスタイリストの事務所に入っていて、僕はモデル事務所に入っていました。お互いにそれ一本では食べていけてなかったのでバイトはしていて、そのバイト先のカフェが同じお店で、そこで知り合いました。

 

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写真左から、大岩拓己さん、代表の山本雄平さん、デザイン業務などを手掛ける西川容代さん。

 

―そのバイト先は、何ていうお店だったんですか?

当時、日進市に「イーストパラダイス」というカフェがあって、そこの大元で栄に「n.v.cafe」ってのがあったんですけど、僕らはそこで働いていたんです。僕は、イーストパラダイスの近くの大学に通っていて、大学から近いからという理由でバイトしていたら、店長のタケさんに「お前はn.v.cafeの方に来い!」って言われて…。n.v.cafeは当時カフェブームの火付け役みたいに言われるほどの人気店だったので、まさか自分がそんなお店で働けるなんて!という感じでした。そこからしばらくカフェ店員をやりながら、モデルの仕事が入った日は撮影の仕事して、夜はクラブ行ってみたいな大学生活を送っていました。

その当時は、将来どうしようか、迷っていたんですか?

なかなかどうしようか決めれず名古屋のモデル事務所だと、自分がやりたい仕事もあまりなかったので、東京の事務所を受けようかなと思って、一回代々木に住んでいた時もありました。でも、結局、「モデルやってます」って人に言っても、社会的な保証も付かない身分だったので、自分がちゃんとした社会人になれていないって思って、少し後ろめたい気持ちがありました。で、バイト先(n.v.cafe)で知り合った方から、アパレルブランドの「n°44」のバイヤーさんを紹介しもらったときに「今、募集しているけどうちで働いてみる?」って言ってもらえて。ちょうどその頃にn.v.cafeが閉店してしまったこともあって、モデル事務所も辞めてアパレルの販売で食っていこうかなと思い立ち、そのまま面接を受けて「n°44」に就職しました。最初は東京の原宿店勤務だったんですが、名古屋パルコ店がオープンすることになり、その立ち上げから入って、そのタイミングで地元(名古屋)に戻って働くことに。それが25歳くらいの時かな。その時もずっと山本とはつながりがあって、撮影用に服をリースする時にうち(n°44)の服を使ってもらうみたいな。僕と山本は、モデルとスタイリストの関係から、服屋とスタイリストの関係に仕事上では変わったんだけど、プライベートでは相変わらずな感じで交流が続いていて、ある日「自分たちでお店をやってみようよ」って話になったんです。それが今の「re:Li」になるわけですけど。その時、決心をして「じゃあ会社やめるわ」って辞めましたね。それが28歳くらいの時です。

―なるほど。で、いよいよ「re:Li」がスタートするわけですが、山本さん、西川さん、大岩さんの3人でスタートしたんですか?

僕はマネージメントをする立場として「re:Li」に携わることになって、さっき話にも出た「イーストパラダイス」っていうカフェの出身でもある管理栄養士の資格を持つ、奥村と江川の2人が料理のメイン担当として入ってもらって。カフェの実務的なところではその3人で「re:Li」はスタートしました。店やろう!ってビビっときたタイミングで物件探しもすぐ始めて、お金が貯まっていたわけでもなかったんですが、やりたいって時にやったほうが僕はいいと思って、メニューを考えながら準備して、物件決めて、急ぎ足でオープンしました。

 

12570936_896483133806412_1587556878_nオープン当時のre:Li 

 

「自分のお店がやりたい」って人ってけっこういますけど、それを本当に実現するためには計り知れない苦労があると思いますが、どうでした?

最初は、結構頭でっかちになっていて。お昼は何人くらい来て、夜は何食出れば……とかいろいろ計算していたんですけど、結局、全然認知もされていないし、店の前を通った人も「家具屋さんかな?」みたいな反応で。全然、わかりやすく「飲食店です!」って感じの雰囲気も出してなかったんで仕方がないんですけどね。で、もともと目指していたお店は、人通りの多い広い通りに店を出してランチタイム大忙し!みたいなそういうお店じゃなかったので。結果として儲けることってのは大事なんだけど、あんまりそういうことよりは、とにかくかっこいいことをやりたかった。自分たちがいいと思うことを発信したいという気持ちだけでしたね。食事に関しては、自分たち自身もここで生活していくわけなので、毎日食べても体に良いものを摂りたいですし、自信を持って出せる料理だけを提供したいって思っていたんです。

うーん、なるほど。でも、いくらメニューに自信があってもお客さん来なかったら、儲けも出ないし、やばいですよね?!

ランチ二人しか来なかった日とかもあって、そのときとかすごく不安でした(笑)。最初は固定の給料とかも、当然なくて。マネージメント的なところからしたら、「給料」って考え方は難しいものなんですが、儲かったからすぐ自分に還元していいわけでもなくて。最初は自分を「re:Li」に投資するみたいな感じでした。

―給料無しでも投資だって思えるくらいに、仕事が楽しかったんですね、きっと。

どこかへ遊びに行きたいってのも思わないくらい仕事が楽しかったです。でも、「re:Li」を始めてから疎遠になってしまった友達もいました。だから、葛藤しながらやっていた記憶もあります。

なるほど。でもなんだかんだ順調にお客さんがついていったわけですね。今年で何年目なんですか?

201118日にオープンしたので今年で5年目を迎えました。「re:Li」の後に同じビルの3Fに、ギャラリー&ショップTHINK TWICEをつくったのが2013年の6。その翌年に栄のl’atelier du savonと同じビル内maison YWE(取材記事はコチラ)、続けて名古屋パルコ内に&EATという2つの飲食店をオープンさせました。この2つは、1年の間に2店舗一気に作ったので、2014年は激動の年になりましたね。その後、僕は「re:Li」から離れて、それらすべてのお店を統括する立場になりました。

 

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―店舗のマネージメント業務に関しては、「n°44」から始まり、今の会社内でも続けてやってきた店舗マネージメントの能力を、現在は、外側に出て複数のお店のプロデューサー的な仕事で発揮しているんですね。そんな大岩さんから、「今、お店をやりたい」と思っている人たちに対してのアドバイスってありますか?

そうですね。「maison YWE」「&EAT」をすごいスピードで作った経験からも言えるのは、やりたいことがある人は、そう思っているうちに、今すぐにでも動いた方がいいんじゃないかなと思います。予期せぬ事態をも、いかに楽しむか?僕もお店やってみて、最初に描いたビジョン通りになんて、なかなかうまくいかないんだと知りましたし、イレギュラーなことはたくさん発生すると思いますが、そういう状況下でイレギュラーな事態にいかに対応していけるか?それは、やってみないとわからないことですしね。「今からお金貯めて、料理の専門学校へ行って、3年後に開業しよう!」って思っていても、今やりたいお店は3年後にニーズがあるかもわからないし、自分自身も3年後に店をやりたいかどうかもわからないわけで。そう考えると、お金を借りてでも今すぐやった方がいいと僕は思います。

ー鉄は熱いうちに打てってことですね。すごくよく分かる話なんですが、借金することって普通に考えるとちょっと怖いですよね?

借金に対してあまりいいイメージがないのわかるし、リスクではあるかもしれないけど、そんなに悪いことばかりではないんです。結果として返済能力があれば企業力も認められるし、次にまた大きな事業をするときも融資を受けやすくなったりもします。あとは、勇気と覚悟さえあればなんとかなると今は思えます。お店をやることが楽しいと思えたのは、その覚悟があったが故になんですよね。何かやりたいって人がいればすぐにでもやってほしいですし、同じようにカフェがやりたいって人なら応援もできるし。同じ地域でそれぞれ活躍することで、良い関係になれると思います。

―お店を立ち上げたばかりのがむしゃらに突っ走っていた頃と、他店舗のことも面倒をみる立場になった今とでは、考え方がいろいろ変わったんじゃないでしょうか?

前はお店にずっといて、店長って立場だからお店をどうするか?お店の中から外しか見てなかったし、考えてなかったですね。今は外に出ることが多いので、手に入る情報量が全然違うし、外側から「re:Li」を見ることができるようになりました。岐阜に引っ越したこともあって、違うローカルも見ることができて、そこから「サンデービルディングマーケット」(岐阜・柳ケ瀬商店街の活性化と利活用を目的としたマーケットイベント)のプロデュース的なことも個人的に関わらせてもらったり…。視野が一気に広がりましたね。

―なるほど。

立ち上げた頃は、変に他店をライバル視してしまって、あそこに負けてるとかそういうのも思ったことありますけどね。それって小さい考え方だったと今は思えます。お客さんに選んでもらう立場なんだということも思うし。うちを選んで使ってくれるお客さんにはもちろんずっとついて来てほしいと思ってるけど、そうじゃない人のことを相手にしないわけでもない。ある程度いろいろなお店にも行ってもらって、その後にうちを選んでもらえたほうがいいかなって。僕らだって焼き肉も食べに行く時もあるし、味仙の台湾ラーメン食べたい時もある。で、胃もたれもする。でも、その翌日に「re:Li」のご飯食べたいな〜って、ふと思ってうちに来てくれたらうれしいです。

 

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大岩 拓己(MAISONETTEinc.)

19歳の頃からモデル事務所に所属し、スタイリストの山本雄平 (現MAISONETTEinc.代表)と、同じバイト先のカフェで意気投合し、その後「re:Li」立ち上げるタイミングで、MAISONETTEinc.に入社。現在では、飲食(re:Li、Maison YWE、&EAT)と物販(THINK TWICE)4店舗の統括マネージャーを務める。http://maisonetteinc.com/

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