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FEATURE / 特集記事 Nov 20. 2015 UP
【ダンスな女子座談会:今、知っておきたいダンスの魅力。】
世界を魅了するバレエの歴史〜話題のコンテンポラリーダンスまで。
ダンス文化は、時代とともにステップを踏み、跳躍し続ける。

愛知県芸術劇場(愛知芸術文化センター内)(愛知|栄)

 

 

「理由はわからないんですけど、何だかうわー!っと泣けてきてしまったんです…。」(榊原)

 

黒田育世 Photo Naoshi Hatori「おたる鳥をよぶ準備」の愛知公演より ©Naoshi Hatori

 

ー最後にご紹介いただくのは、日本人ダンサーの「黒田育世レパートリーダンス公演」ですね。

榊原:黒田育世さん!私、大好きなんです!

唐津:どういうところが好きなの?

榊原:あ、えっと、黒田さんのカンパニー「BATIK」て、ダンサーが女の人ばかりで。なんか、それなのに、ダンスの内容が、回り続けるとか、走り続けるとか、身体を叩き続けるとか…。極限まで追い詰められたような踊り方なんですよ。そのキリキリした感じが、女の人なら特に、見ていて泣いてしまう感じなんです。最初は、クラムボンのMVに出ていたり、映画『告白』に出演されていたりしたので、そういう入り口から好きになっていったんですが。前回、「おたる鳥をよぶ準備」の愛知公演を見たときも、理由はわからないんですけど、何だかうわー!っと泣けてきてしまったんです…。


ClammbonのPVに登場する、黒田育世。

 

ーそんな感動するんだ!?

榊原:感動します!見ていて「苦しいから、もうやめて!」とも思います。

ーあ、もう死にそうになりながら踊るってこと?

榊原:はい。ずっと同じ振りを延々とやるとか…。

ーその黒田さんによるワークショップって…かなりすごそうですね…!

 

「意味とか理屈を越えた感覚に揺さぶりをかけてくるような踊りをします。特に『ラストパイ』はそういう作品。」(唐津)

黒田育世ㇾパートリーダンス公演『ラストパイ』

 

唐津:今回のワークショップというのは、黒田さんが振りつけた「ラストパイ」という作品があって、それをみんなで踊ってみるという企画です。ちょうど明後日にオーディションがあって、踊りたいっていう人だったら誰でも受けることができます。経験者じゃなくてもOKとして募集しています。

ースケジュールを見ると、参加者はその過酷なダンスを何日もかけて練習があるみたいですね。かなり辛そうですね(笑)

唐津:そうです(笑)だから、とにかく踊りたいっていう気持ちの強い人を募集してます。根性のある人じゃないと踊れない。「ラストパイ」は特に激しい作品で、繰り返しの運動がすごく多いんです。音楽を松本じろさんというギタリストの方が演奏しているんですが、ミニマルな曲なんです。同じようなフレーズの繰り返しが続く中で、ずっと回転して飛んで、回転して飛んで、というような。

ー単純な疑問なんですが、黒田さんはなんでそんな過酷なダンスを選んだですかね?

唐津:これは私の考えなんだけど、やっぱり舞踊とか音楽の発祥って、そういうところにあると思うんですよ。ひとつのことを繰り返し続けて、それで天上と地上が繋がる。巫女の踊りとかシャーマン的な…。

ー一種のトランス状態ってことですか?

唐津:そうです、そうです。ミニマルな音楽ってトランス状態をつくるじゃないですか。それと同じで、動きを何度も何度も繰り返すことによって、今の限界を超えていく。この世を超えて、死の世界に繋がっていくというような…。そういう意味で言うと、彼女はすごく原初的な身体を突き詰めているな、と思います。元々人間が持って生まれた生と死の間にあるようなものを表現してると思いますね。だから、何かわからないんだけど、見ていると涙が出て来ちゃうような、意味とか理屈を越えた感覚に揺さぶりをかけてくるような踊りをします。特に「ラストパイ」はそういう作品。あと、もうひと作品上演しますので、2本立てとなっています。もうひとつの方は、スティーヴ・ライヒっていう現代音楽家の非常にミニマルな曲を使っています。

吉口:ちなみに、その過酷なワークショップに参加者の人たちは、最後までついていけるんですかね?

唐津:ねえ、どうなんでしょう?(笑)でも、現時点で、40人くらい応募が来てるんです。

ーあ、じゃあ替えが効きますね(笑)

吉口:極限まで身体を追い詰めるようなダンサーの方って他にもいるんですか?

唐津:基本的にダンサーってみんなそうだと思いますよ。そこが感動を呼ぶんだと思います。体力をセーブしながらやってたら、感動は生まれないでしょ?でも、黒田さんの場合は精神的な意味も含めて、ある意味暴力的ですよね。これでもか!これでもか!って感じなので、人によっては目を塞ぎたくなるかもしれません。だから、ハマる人は、とことん彼女の魅力にハマってしまうんだけど…。今回のワークショップ参加希望の方たちはまさにハマってしまった人たちじゃないかと思います。

榊原:私以前、黒田さんの一般向けのワークショップを受けたことがあります。

唐津:じゃあ、ひたすら走るやつやった?

榊原:走るやつ?!それは、やってないです。

唐津:最初に、とにかくもうダメ!ってなるまで走るんですよ(笑)。それが終わってから、初めてダンスを開始するんです。結局人間の体って普段は力が入っていたりとかストレスがかかっているじゃないですか。だから、本当の自然な素の身体が現れるまで走って、そこから振付をする。そういうスタイルもありますね。

 

黒田育世のカンパニー「BATIK」の公演より。

 

ー黒田さんのトレーニング方法って、誰かにそう教えられてやっているんですかね?

唐津:大体、伝承するバレエ以外は、個人で生み出すことが多いんでよ。その人が自分で、こういう振付をするためには、こういう身体能力が必要だっていうのがあるから、そしたら、そのためのメソッドが必要になってくる。もちろん、いろんな人からの影響はあると思いますが。だから、黒田さんの今のやり方は彼女独自のものだと思いますね。LIVERARYで体験レポート企画にしたらいいんじゃないですか?(笑)

吉口:え~(笑)。

榊原:ちょっとそれは…(笑)。

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「多分、これまでの歴史を考えても、今が一番ダンスが身近な時代なんじゃないかと思います。」(唐津)


吉口:
ワークショップ参加者は、県外の方が多いんですか?

唐津:地元の方もたくさん応募ありましたよ。やっぱり愛知ってダンサーが多いんですね。

吉口:え、そうなんですか?

唐津:バレエ団が多いし、習い事が盛んじゃないですか?

ー吉口さんが、ミュージカル習ってたのも納得できる(笑)。

唐津:習い事でダンスに親しんでる人が多いんですよ。小さい頃の習い事もそうだし、年配の方も、社交ダンスとかフラメンコとか日舞とか、習い事してる人が多いと思いますよ。ひとつの教養みたいな感じなのかな?どちらかというと、見ているよりも、自分でやってみることが好きな県民性なのかしら。そんな中で、本気でやりたい人たちも出てくるわけで。新国立バレエ団のプリンシパルダンサー・米沢唯さんも愛知出身だし、愛知にいたときはこういうワークショップに参加したりしていたんですよ。愛知出身のダンサーが、結構活躍されてるんです。

吉口:え〜、知りませんでした。

唐津:多分、これまでの歴史を考えても、今が一番ダンスが身近な時代なんじゃないかと思います。ストリートもそうだし。ど真ん中祭りみたいなものとか、フラッシュモブとかも。テレビを付ければ、立って歌ってる人なんかほとんどいないわけですよ。踊るのが主か、歌うのが主かわからない人だっていますよね。演歌歌手だってバックダンサーがいるし。PVも最近コンテンポラリーダンサーが出ているものがすごく多いんですよね。

榊原:最近だと森山未來さんが文化大使でイスラエルにダンス留学に行ったのも話題になりましたよね〜。

唐津:文化派遣みたいなものですね。とにかく、周り見渡せば、今はダンスのトピックがいっぱいなので、キャッチしていただけたら…と。気がついたら、もうダンスだらけですよ!

 

「観る側の方が縛られている。それってもったいないことですよね。もっと世界は広がるはずなのに。」(唐津)

唐津:コンテンポラリーのダンサーって臨機応変に対応できるんですよ。音楽に合わせた想像を越えた発想や、それに伴った演出もできるかもしれないっていう期待感があると思うんですね。クラムボンと黒田さんがPVでコラボしたのもきっとそうでしょうし。

ー唐津さんご自身も臨機応変で、固定観念に縛られてないって感じがします。

唐津:やはり新しいことをやっていきたいっていうのが大前提であります。私自身が作品を振り付けるわけではないけれど、何か新しい表現を発信していくっていうのが劇場の使命のひとつなので。今までやっていた事の継承も大事だけれど、それ以上に何か見たことないものを見たいっていう思いがある。

ー新しい表現を発信していくことが仕事って、すごくやりがいがあっておもしろいお仕事ですよね。

唐津:でも、固定観念に縛られず、新しいことやっていこうとするのって、なかなか難しいこともありますよ〜(笑)。

榊原:気になってたんですが、唐津さんは、一年でどれくらい海外に行って振付家を発掘してくるんですか?

唐津:その年によって違うけど、年に2、3回ですよ。これは、ダンスのマーケット的なお話になるんですけど、大体ダンスに力を入れている国では、2年に1回くらい見本市を開くんですよ。そこでその国が選んだ振付家がバーっと並んで、5日間くらいでたくさん見れるようにするんですよ。そこに世界中のプロデューサーとかディレクターとかを招待するんです。

吉口:そこに唐津さんも行くんですか?それってかなりすごいことですよね!

唐津:一番最近だと、8月にイギリスのエジンバラのショウケースに招待していただきました。そこで朝から晩まで作品をひたすら見るんです。こういうの、日本はないんですよね、まだ。どんなジャンルでもそうだと思うんですけど、自国のアーティストを売り出したいと思ったら、国が予算を出してショウケースを用意して、そこにディレクターさんに来てもらって、気に入ったら招聘してもらうっていうことを計画的にやっているわけです。そうやると、効率的に見れますよね。

榊原:なるほど…貴重な裏話が聞けました!ありがとうございます。

ーでは、最後に今日のまとめの感想を皆さん、お願いします。

吉口:今回のお話でダンスが身近に感じられるようになりました。

榊原:私も、今まではコンテンポラリーとバレエは別物って考えてたんですけど、今回バレエ・リュスのお話とかを聞いて、歴史は繋がってるんだなと思いました。

唐津:そうですか。嬉しいです。オペラハウスなどで上演されていると、一見敷居が高そうに見えるけど、実は垣根はそんなにないんです。ダンサーたちの方が伝統と革新の間を自由に行き来していますね。観る側の方が縛られている。それってもったいないことですよね。もっと世界は広がるはずなのに。

 

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時世の変化とともに、常に進化し続けてきた、ダンスという表現。新たな可能性に目掛け、常に挑戦の歴史を選択してきた文化のひとつである。ダンスのみが持つ、その不思議で、独特な魅力の正体。まだ知らない人も、もう知ってる人も、この機会にぜひとも足を踏み入れ、目の当たりにしてほしい。

 

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イベント情報

2015年11月28日(土)15:00/19:00 、29日(日) 15:00
ストラヴィンスキー・トリプル・ビル
現代バレエで見る、ストラヴィンスキーの音楽【愛知公演】
会場:愛知県芸術劇場小ホール
時間:28日(土)15:00 / 19:00、 29日(日) 15:00
※28日19:00の公演終了後アフタートークあり(ユーリ・ン、ジョヴァンニ・ディ・パルマ、唐津絵理)
料金:前売:一般5,000円(学生 4,000円)/当日:5,500円(全席種)

『火の鳥』のパ・ド・ドゥ
出演 : アレクサンダー・ザイツェフ、酒井はな
振付 : マルコ・ゲッケ
『悪魔の物語』(「兵士の物語」より)
出演 : 小㞍健太、津村禮次郎、酒井はな、ジョヴァンニ・ディ・パルマ
演出・振付 : ユーリ・ン
振付:江上悠
『春の祭典』
出演 : アレクサンダー・ザイツェフ / 高比良 洋(Wキャスト)
振付 : ウヴェ・ショルツ
振付指導 : ジョヴァンニ・ディ・パルマ
詳細:http://stravinsky3.com/

 

2016年1月13日(水)
月夜に煌めくエトワール Stars in The Moonlight 【愛知公演】
会場:愛知県芸術劇場コンサートホール
時間:19:00
料金:SS席 12,000円/S席 10,000円/A席 6,500円/B席 4,500円/B席学生 3,000円/車椅子席 5,200円/チャレンジシート 1,000円 ※全席指定
出演:
Dance:エルヴェ・モロー、ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ
Music:ジョルジュ・ヴィラドムス(ピアニスト)、三浦 文彰(ヴァイオリニスト)

 

2016年2月11日(木・祝)
黒田育世レパートリーダンス公演
会場:愛知県芸術劇場 小ホール
時間:2016年2月11日(木・祝) 15:00、19:30(30分前開場/2公演)
料金:一般(前売)2,500円(当日)3,000円/学生(前売)1,500円(当日)2,000円
出演:BATIK、オーディション選抜メンバー

3公演ともに問い合わせ:愛知県芸術劇場:http://www.aac.pref.aichi.jp/

唐津絵理(からつ・えり)
愛知県芸術劇場シニアプロデューサー。あいちトリエンナーレ2016キュレーター。幼少時からモダンダンス、バレエ、新体操などさまざまな身体表現を学び舞台活動を行う。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修了後、愛知県文化情報センターにてダンスを中心とした舞台公演等の企画制作を行う。2014年から現職。文化庁やアサヒグループ芸術文化財団等の審査員を歴任。年間150公演以上の作品を観に行く、ダンス界のおてんば娘(?)。


 

ストラヴィンスキー・トリプル・ビル
現代バレエで見る、ストラヴィンスキーの音楽

【東京公演】
2015年12月8日(火)19:00、9日(水)19:00
会場:草月ホール
時間:各日19:00~
料金:前売り 5,000円、当日 5,500円
主催・問い合わせ:株式会社アーキタンツ TEL 03-5730-2732 (平日10:30-20:30/土日 10:30-19:00)

【熊本公演】
2015年12月12日(土)19:00
開場:熊本・市民会館崇城大学ホール
時間:19:00~ ※18:20より唐津絵理によるプレトークあり
料金:一般 3,000円/大学生以下 1,500円(前売り・当日)
主催・問い合わせ:熊本市・熊本市文化事業協会 TEL 096-355-5235 (8:30-19:00)

月夜に煌めくエトワール Stars in The Moonlight

【東京公演】
2016年1月10日(日)18:00、11日(月・祝)15:00
開場:Bunkamura オーチャードホール
料金:S席 13,000円 / A席9,000円 / B席7,000円
主催・問い合わせ:Bunkamura TEL 03-3477-3244(10:00~19:00)

【大阪公演】
2016年1月14日(木)19:00
開場:フェスティバルホール
料金:S席 12,000円 / A席9,000円 / B席7,000円 /BOX席 15,000円/バルコニーBOX 24,000円(2席セット・電話予約のみ)
主催・問い合わせ:フェスティバルホール TEL 06-6231-2221

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